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勤務間インターバル制度のメリットや導入方法、助成金について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

働き方改革関連法の成立に伴い、労働時間等設定改善法が改正された結果、2019年4月から「勤務間インターバル制度」が創設されました。

「勤務間インターバル制度」は、勤務終了から次の勤務を開始するまでに、一定の時間を確保する制度です。この制度の導入は、今のところ強制されていないものの、労働者の健康のために普及を促進していくことが望ましいでしょう。

そこで、勤務間インターバル制度の具体的な内容や会社に課される義務について解説していきますので、今後会社がとるべき対応について共に考えてみましょう。

働き方改革で努力義務化された「勤務間インターバル制度」とは

「勤務間インターバル制度」とは、前日の終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、一定以上の「休息時間」を設ける制度をいいます。

労働者の生活時間や睡眠時間の確保のために重要な制度であり、いわゆる「働き方改革」の一環として注目されました。そして、働き方改革関連法案の成立に基づく労働時間等設定改善法の改正により、2019年4月以降、事業主に対して導入するように努力することが義務づけられました。

厚生労働省が発表している2022年の「就労条件総合調査」によれば、勤務間インターバル制度を導入した企業の割合は5.8%にすぎません。しかし、2021年の4.6%よりも上昇しています。
また、導入を予定又は検討している企業が12.7%あります。

勤務間インターバル制度のイメージ

勤務間インターバル制度を推進する目的

勤務間インターバル制度を推進する目的は、以前から問題となっている長時間労働を改善して、過労死等の発生を防止することです。

長時間労働は、心身を疲弊させるだけでなく、疲労を回復するための休養をとることも妨げるため、過労死等の原因になってしまいます。

そのため、2021年9月15日には労働災害の認定基準が見直され、労働時間以外の要因の1つとして「勤務間インターバルがおおむね11時間未満であること」が追加されました。

勤務間インターバル制度を導入することで、使用者に、労働者の健康を守る義務を認識させて、時間外労働を抑制し、労働者の健康確保を後押しできる可能性があります。

「努力義務」の効力と罰則について

「努力義務」とは、「努力すること」を義務づけるものです。導入が難しいことなどに配慮しており、強制しているわけではないため、違反したからといって罰則を受けることはありません。

しかし、法的には意味があり、無視しても良いわけではありません。
勤務間インターバル制度を導入しなかったとしても、勤務終了から翌日の勤務開始までに十分な時間が必要であることに変わりはありません。

そのため、勤務間をあえて短くすると、監督官庁からの行政指導を受けるリスクが生じます。

また、勤務間を短いままにしていたことが原因となって、労働者に損害が生じてしまうと、損害賠償を請求されるリスクもあります。

勤務間インターバルは何時間に設定すべきか

厚生労働省は、勤務間インターバルとして9~11時間の休息を推奨しています。その根拠として、労働者の睡眠時間を7時間は確保することが望ましく、通勤に片道1時間程度かかることが多いことが挙げられます。

EUでは11時間以上のインターバルが義務化されており、労働者が生活するための時間が必要なので、なるべく11時間のインターバルを設けた方が良いでしょう。

勤務間インターバル制度の運用について、下記の例を用いて考えてみましょう。

【例】始業時刻:8時 終業時刻:17時 休息時間(インターバル時間):11時間

この例では、仮に17時~21時までの間に4時間未満の残業を行ったとしても、翌日の始業時刻までに11時間のインターバル時間を確保できるため、問題ありません。

しかし、仮に4時間以上の残業を行った場合には、終業が21時よりも後になってしまい、始業時刻である8時までに所定のインターバル時間を確保することはできません。このような場合には、始業時刻よりもインターバル時間の確保が優先されるので、始業時刻を後ろ倒しにすることになります。例えば、17時~23時まで残業した場合には、始業時刻が翌8時ではなく翌10時になります。

勤務間インターバル制度

夜勤明けの労働日の取り扱いについて

工場や病院等に勤務している労働者には夜勤をする方も少なくありませんが、夜勤は疲労しやすく回復もしにくくなるため、勤務間インターバル制度を導入するメリットが大きくなります。

十分なインターバル時間を設けることで休息時間を確保するのは、夜勤をする労働者の健康を守るために重要なことです。

夜勤の後で休むと、日勤の後で休んだ場合よりも回復が遅いケースが多いので、インターバル時間は最低でも11時間は必要であり、なるべく13時間程度まで延ばすのが望ましいでしょう。

勤務間インターバル制度導入のメリット

勤務間インターバル制度を導入することによるメリットについて、次のものが挙げられます。

  • ①ワーク・ライフ・バランスの実現
  • ②生産性向上
  • ③優秀な人材の確保・定着

これらのメリットについて、以下で解説します。

ワーク・ライフ・バランスの実現

勤務間インターバル制度により、労働者は十分な睡眠・休養時間の確保に加えて、家族や友人と過ごす時間、趣味を楽しむ時間、スキルアップのための時間等を増やすことができます。仕事と私生活の切り替えを促すことで私生活の充実にもつながるため、当該制度はワーク・ライフ・バランスの実現に寄与するものといえます。

生産性向上

勤務間インターバル制度を導入し、長時間労働を防いで労働者の健康を確保するとともに、私生活を充実させられるだけの時間を与えることで、労働者の仕事へのモチベーションの上昇が期待できます。また、疲労の回復によって集中力や注意力の低下を防ぐことも期待できるため、仕事の能率が上がります。

さらに、労働時間が制限されるため、効率の悪い作業を減らし残業を抑制できる可能性があります。勤務間インターバル制度のこうした効果によって、労働者各人の作業効率が上がり、結果として会社全体の生産性の向上につながります。

優秀な人材の確保・定着

勤務間インターバル制度が導入された企業は労働者にとって魅力的なため、採用活動の面で有利になるとともに離職率の低下にもつながり、優秀な人材を確保・定着させやすくなります。

現状では勤務間インターバル制度を導入している企業が少ないことから、導入した企業のイメージは向上するでしょう。ワーク・ライフ・バランスに配慮していることをアピールすれば、求職者の注目を集める効果が期待できます。

勤務間インターバル制度導入のデメリット

勤務間インターバル制度は、会社にとってデメリットを生じさせる場合があります。
具体的なデメリットとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 労働者1人当たりの労働時間が限定されるため、人員確保が必要になりコストが増える
  • 生産効率を向上させねばならず、IT機器等を導入するための初期投資が必要になる
  • 繁忙期には、人員の調整も考慮した対応が必要になる
  • 営業等の職種では、顧客の理解を得る必要がある
  • (派遣会社の場合)派遣先会社が当該制度を導入しないと実現が困難である

勤務間インターバル制度の助成金

勤務間インターバル制度の導入に取り組む中小企業事業主に対して、厚生労働省が助成金を支給しています。

労務管理担当者に対する研修や、労働者に対する研修などの取り組みが支給対象となり、その取り組みの目標は勤務間インターバルの新規導入や適用範囲の拡大、時間の延長です。
なお、残念ながら交付申請期間は終了しています。

助成金の内容は下表のとおりです。

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
対象者 中小企業事業主(労災保険の適用事業主である等の要件を満たしている場合)
申請要件 勤務間インターバルについて、以下のいずれかを行うこと
・新規導入
・適用範囲の拡大
・時間延長
支給額 40万円~100万円

より詳しく知りたい方は、以下の厚生労働省のウェブサイトもご確認ください。

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

※過去には「人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)」という助成金もありましたが、こちらは2021年度で廃止されています。

勤務間インターバル制度の導入のポイント

勤務間インターバル制度の採用の検討には、当該制度を導入する流れや、実際に運用するにあたっての制度設計等について確認することが必要といえます。

労働時間の実態を把握する

勤務間インターバル制度を導入するために、従業員の労働時間を確認して実態を把握する必要があります。そして、現状を確認してから、自社での導入が可能なのか、導入できるのは何時間のインターバルかといったことを検討します。

従業員の労働時間を確認するためには、タイムカードやパソコンのログ等、客観的なデータを取得すると良いでしょう。場合によっては時間管理ツールを導入する等、始業・就業時刻を正確に把握することによって、現状を踏まえた制度を作ることが可能になります。

実態を踏まえた休息時間の確保

自社の従業員の労働時間を把握したら、その実態に即してインターバル時間を設定します。

例えば6時間程度のインターバル時間を設定しても、疲労の回復等には寄与しません。かといって、13時間を上回るほどのインターバル時間を設定してしまうと、多くの企業で実現性が乏しく、定着させるのは困難でしょう。

判断が難しい場合には、厚生労働省が推奨する9時間に設定し、定着してから時間を延ばすことを検討すると良いでしょう。

就業規則の規定と見直し

勤務間インターバル制度を円滑に運用するためには、就業規則に規定を設けて従業員に周知し、ルールを浸透させることが重要です。さらに、インターバル時間が確保されなかったときの対応についても、事前に決めておくと良いでしょう。

なるべく定期的に制度を見直し、必要があれば就業規則を修正する等の作業も必要です。事業所によってインターバル時間を変える等の工夫も大切ですが、なし崩しにならないように、例外の規定はなるべく増やさずに運用するのが望ましいでしょう。

勤務間インターバル制度の導入事例

代表的な導入実績は厚生労働省のHP上に掲載されており、広く名前を知られている企業では、森永乳業株式会社や株式会社ニトリホールディングス、KDDI株式会社等が勤務間インターバル制度を導入しています。

導入による効果として、以下のことが挙げられています。

森永乳業株式会社

元々似たルールがあったものの、最低でも8時間(事業所によっては9~10時間、本社は10時間)のインターバルを設けたところ、リフレッシュの必要性やワーク・ライフ・バランスが意識されるようになり、年次有給休暇の取得が1人当たり2日分増えた。

株式会社ニトリホールディングス

10時間のインターバルを設けたところ、定時で仕事を切り上げる意識が高まり、無駄な時間外労働がなくなった。就業時間から逆算して業務量を決めるといった計画性が生まれた。特に、若い社員から「働きやすくなった」と歓迎されている。

KDDI株式会社

最低でも8時間のインターバルの確保を義務化し、11時間のインターバルを健康管理の指標として規定したところ、労働時間だけでは見えてこなかった過重労働を発見できるようになった。健康リスクを回避することが可能になってきた。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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