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外国人雇用の就業規則

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働基準法の定めにより、常時10人以上の労働者を雇用する使用者には、就業規則を作成し、周知しなければならない義務があります。
職場環境を整えたり、労使間のトラブルを防いだりするためにも、就業規則は非常に重要なものです。

このページでは、外国人労働者を雇用する場合の就業規則に関して、詳しく解説します。

外国人従業員への就業規則の適用について

労働基準法89条では、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、始業・終業時刻、休憩、休日、賃金等に関して就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならないとされています。

この就業規則に関する定めは、外国人を雇用した際にも同様に適用されます。例えば、雇用している労働者全員が外国人労働者だとしても、使用者はこの定めに則り、就業規則を作成し、届け出なければなりません。

なお、就業規則の概要に関しては以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。

就業規則の作成意義と法的効力

外国人雇用における就業規則作成の重要性

就業規則は、労働者に対しての規定を定めたものであると同時に、使用者側が守らなければならない事項を規定したものでもあります。労働基準法では、雇用している労働者が10人未満の場合には作成義務はありませんが、労使間でトラブルが発生した際や、イレギュラーな事態が起こった際に備え、作成しておくことが望ましいでしょう。

また、就業規則は事業場において労働者がスムーズに労務を提供するためのものでもあり、労働者同士や労使間で良好な関係を築くためにも重要なものです。異なる文化の国から来た外国人を雇用するのであれば、日本の文化や慣習を知り馴染んでもらうためにも、就業規則の作成は重要です。

就業規則の作成・変更

労働基準法90条では、就業規則を作成・変更する際、使用者は、過半数労働組合、又は労働者の過半数を代表する者の意見を聴取し、届出に際してはその意見を記した書面を添付しなければならないとされています。

この「労働者の過半数を代表する者」に関しては、管理監督者(いわゆる“管理職”にあたる者)は除外されますが、外国人労働者でも代表者になることができます。

従業員の母国語で就業規則を作成すべきか

労働基準法106条により、使用者には労働者への就業規則の周知義務が定められています。

労働基準法上、就業規則の作成言語についての定めはありませんが、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(平成19年8月3日 厚労告276号)」において、外国人労働者との労働契約締結に際し、労働条件について、当該外国人労働者が理解できるようその内容を明らかにした書面の交付、外国人労働者の理解を促進するため必要な配慮をするよう努めることを事業主に求めています。

そのため、事業場で外国人労働者を雇用している場合、当該外国人労働者が理解できるように、外国語でも就業規則を作成するよう努めるべきだといえるでしょう。

外国人従業員に向けた就業規則記載事項

絶対的必要記載事項

就業規則を作成する際には、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」があります。始業・終業時刻、休憩などの労働時間について、賃金の計算方法や支払い方法について、退職・解雇について等がこれにあたります。

国籍による差別的取扱いは労働基準法3条で禁じられていますので、例えば外国人労働者と日本人労働者のあいだに賃金格差をつけることなどはできません。また、就業規則と締結した労働契約とのあいだに食い違いがないかなど、細心の注意を払わなければなりません。

入管法による賃金規定

労働者の賃金に関しては、労働基準法をはじめとする労働関係法規に定められていますが、外国人労働者の賃金に関しては、「出入国管理及び難民認定法(通称:入管法)」でも定められています。これは、特定の在留資格において、日本人労働者が従事する職務と同じものに従事するときには、外国人労働者も同額の賃金を受け取らなければならないというものです。

例として、「技術・人文知識・国際業務(通訳、デザイナー、外国語講師等)」、「技能(外国料理の料理人等)」、「企業内転勤」などの在留資格を持つ外国人が対象となります。また、在留資格「興行(俳優、歌手等)」を持つ者に対しては、月額20万円以上の賃金を支払う必要があります。

相対的必要記載事項

就業規則には、「絶対的必要記載事項」に対して、「相対的必要記載事項」もあります。労働基準法上、退職金、臨時の賃金(賞与等)・一時手当金、安全や衛生、表彰や制裁等の制度を設ける際に、当該事項を就業規則に必ず記載しなければならないというものです。

在留資格を踏まえた配転・職務変更

配置転換、職務変更などの規定についても、「相対的必要記載事項」にあたります。

外国人労働者は取得している在留資格によって就業できる業務が制限されますので、外国人労働者を雇用している場合はこれらの規定に関して特に注意が必要です。当該外国人労働者の在留資格と、その資格で就業できる業務をよく確認するようにしましょう。

任意的記載事項

「任意的記載事項」は、その名の通り、使用者が自由に内容を決め、就業規則に記載できる事項のことをいいます。法的な定めはなく、一般的には、就業規則の趣旨、服務規律、企業理念などを記載します。

外国人労働者を雇用している場合は、文化の違いによって不合理さを感じさせてしまったり、国籍による差別を助長したりするような内容を記載することは避けなければなりません。

就業規則による差別の禁止

国籍や信条、社会的身分を理由に、労働者に対して差別的取扱いをすることは禁じられています(労基法3条)。この定めに基づき、外国人労働者のみに適用される就業規則を別途作成すること、あるいは外国人労働者には就業規則を適用しないとすることなどは差別的取扱いとされますので、注意しなければなりません。

外国人のみ適用の就業規則作成

労働基準法3条に基づき、外国人労働者のみに適用される就業規則を作成することは、原則、禁止されています。しかし、『法第3条に反しない限りにおいて、一部の労働者についてのみ適用される別個の就業規則を作成することは差し支えない(昭和63年3月14日 基発第150号)』と、例外が認められています。

外国人労働者は、母国の文化との違いなどから、意図せずして就業規則に違反してしまうことも考えられます。そのような事態に備え、合理的な内容ならば、別途、外国人労働者に向けた就業規則を作成することも認められます。

例えば、必ず定時で帰宅できるとは限らないと示すため、「場合によっては残業を命じることがある」、在留期間が過ぎてしまうことを理由に突然退社することを防ぐため、「退社する場合は2週間以上前に申し出る」などの規定を設けることが考えられます。ただし、差別的取扱いにならないよう、細心の注意を払う必要があります。

就業規則の周知義務

労働基準法106条に基づき、使用者は、就業規則を労働者に周知する義務があります。就業規則は作成しただけでは意味をなしませんので、効力を持たせるため、この“周知”は非常に重要です。

外国人労働者を雇用しており、当該外国人労働者が日本語を理解できない場合は、“周知”できているとはいえません。当該外国人労働者が理解できる言語でも就業規則を作成し、提示することが望ましいといえます。

翻訳する際の言語は、話者が多く、高度人材ならば習得していると思われる英語が一般的ですが、中国などのアジア圏からの外国人労働者である場合は、当該言語でも翻訳し、周知を徹底することを心がけるようにしましょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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