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不当労働行為の救済申し立て|手続きの流れと会社側の対応

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

不当労働行為は、労働者が労働組合を結成する権利などを侵害することになるため禁止されています。
不当労働行為があったときには、労働者や労働組合は、労働委員会に対して救済の申立てを行うことができます。

この記事では、救済手続の概要や流れを解説しながら、救済の申立てをされたときや救済命令が下されてしまったときに、会社がとるべき対応について解説します。

不当労働行為の救済申立て制度

不当労働行為の救済方法として、「司法救済」と「行政救済」の2種類があります。
この2種類のうち、本記事では「行政救済」への対応について解説します。

「行政救済」は労働委員会による救済手続であり、申立てを受けた労働委員会は、遅滞なく当該不当労働行為の有無の調査、審問を行います。不当労働行為の事実が認められた場合には、救済命令又は和解による救済を図ります。

「司法救済」は裁判などによる救済手続であり、賃金の請求や地位保全の仮処分などを請求します。

司法救済 訴訟提起、仮処分の申立、労働審判の申立て
行政救済 労働委員会への救済申立て

労働委員会については、以下のページでも解説しています。ぜひご覧ください。

労働委員会

不当労働行為とは

不当労働行為とは、憲法で保障された労働組合に関する権利を侵害する行為のことです。
労働組合法7条には不当労働行為とされる行為が挙げられており、それは次に挙げるような6つの類型に分けることができます。

  • ①不利益取扱い
  • ②黄犬契約
  • ③団体交渉拒否
  • ④支配介入
  • ⑤経費援助
  • ⑥報復的不利益取扱い

不当労働行為について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。

不当労働行為について

救済申立ての審査手続きの流れ

不当労働行為の救済申立て制度は、次のような流れで行われます。

  1. 救済申立て
  2. 調査
  3. 審問
  4. 合議及び命令

この流れについて、以下で解説します。

①救済申立て

不当労働行為の救済申立て手続は、労働組合又は労働者が都道府県労働委員会に申し立てることによって開始されます。
救済の対象となるのは、不当労働行為があった日又は継続的な行為の終了した日から1年以内のものに限られます(労組法27条2項)。

なお、都道府県労働委員会の決定に不服のある者は、国に設置されている中央労働委員会に再審査請求を申し立てることができます。

②調査

労働組合や労働者から救済申立てが行われると、使用者に対して申立書の写しが送付され、調査が行われます。

使用者は、基本的に申立書の写しが到着した日から30日以内に、答弁書を提出しなければなりません(労委規則41条の2第2項)。答弁書には、申立書に記載された事実に対する認否と、申立書による主張への反論を具体的に記載する必要があります。

また、答弁書と併せて、使用者側の主張を裏付けるための証拠を提出します。

その後、調査期日が開かれて、双方の主張や証拠を確認する作業が行われます。

③審問

調査手続が終了すると、審問手続が行われます。

審問では、労使双方が参加して、当事者尋問や証人尋問、証拠調べなどが行われます。この手続は公開の審問廷で開催されます。
労働組合の中には、審問の期日に多数の組合員を派遣して圧力をかける手法を用いる組合もあるため、動揺してしまわないように、事前の心構えが必要です。

また、審問において、宣誓をしてから虚偽の陳述を行った証人は、3ヶ月以上10年以下の懲役に処せられます(労組法28条の2)。同様に、宣誓をしてから虚偽の陳述を行った当事者は30万円以下の過料に処せられます(同法32条の3)。

④合議及び命令

審問の後で、労働委員会の中の公益委員会において合議が行われます。そして、使用者の不当労働行為の全部又は一部が認定された場合には、事案の内容に応じた救済命令を発します。

労働委員会の救済命令は、どのような命令を出すかについて幅広い裁量権を有しており、従わなければ罰則が適用されるおそれがある等、強い効力があります。

救済命令の内容として、次のようなものが挙げられます。

不当労働行為の内容 下される命令
解雇 原職復帰命令
バックペイ(不当解雇期間中の賃金支払)命令
団体交渉拒否 誠実交渉命令
支配介入 支配介入行為の禁止命令
ポストノーティス(陳謝等を内容とする文書の掲示)命令

なお、不当労働行為はなかったと認定されれば、棄却命令が出されます。

救済命令 労働組合や労働者の申立ての全部又は一部に理由があるときに下される命令
棄却命令 労働組合や労働者の申立てに理由がないときに下される命令

和解による解決について

救済申立てが行われてから「救済命令」や「棄却命令」が下されるまでに、平均的な審理期間でも1年半程度はかかります。そのため、早期解決を目指す場合には、和解することも検討しましょう。

和解には、当事者双方が自主的に話し合う方法(自主和解)と、労働委員会が仲立ちをする方法(関与和解)があります。関与和解では、労働委員会から和解案が提示されることがあり、お互いが歩み寄って解決を図ります。

救済申立てに対する会社側の対応

労働組合や労働者から救済申立てが行われると、会社側は次のような流れで対応します。

  1. 答弁書の作成・提出
  2. 主張を裏付ける証拠の添付
  3. 労働委員会への出席

この流れについて、以下で解説します。

答弁書の作成・提出

申立書が送付されたときには、その内容を確認して、どのような言動が不当労働行為だと指摘されているのかを正確に把握する必要があります。

基本的に、申立書が送付されてから30日以内に答弁書を作成して送付しなければならず、時間的な余裕はありません。弁護士などの専門家の力を借りながら対応すると良いでしょう。

答弁書には、以下の項目を記載しましょう。

  • 作成日
  • 会社の主たる事務所の所在地、名称及び代表者の氏名等
  • 申立の趣旨に対する答弁(請求棄却を求める旨等)
  • 申立書に記載された事実に対する認否
  • 会社側の答弁を理由づける具体的事実
  • 予想される争点及び争点に関連する重要な事実
  • 予想される争点ごとの証拠
  • 当事者間において行われた交渉等の経緯

主張を裏付ける証拠の添付

申立書と答弁書の内容が異なる点については、証拠を添付して証明する必要があります。
例えば、次に挙げるようなものが証拠となります。

  • 団体交渉申入書
  • 団体交渉の議事録
  • 労働組合や労働者の発言の録音や録画

不当労働行為とされた行為についての証拠は、会社の方が多く持っている場合が多いので、出し惜しみすることなく、提出できる証拠を活用して反論しましょう。

労働委員会への出席

労働委員会での手続には、不当労働行為とされている行為に関わった者が出席する必要があります。

労働委員会で行われる尋問には、弁護士が代理人として出席して、適切にサポートすることができます。
しかし、労働者側の不当労働行為についての認識が誤っている場合には、そのことを説明できる者が出席することによって、説得力のある主張ができるでしょう。

早期の解決を望んでおり、和解するのが得策となる状況であれば、会社の人事権や決裁権を有する者が出席して判断するのが望ましいでしょう。

救済命令に対する不服申立て

都道府県労働委員会の救済命令に不服がある使用者は、不服申立てができます。不服申立ての方法として、「再審査請求」と「取消訴訟」の2種類があります。

再審査請求 都道府県労働委員会の救済命令に対して不服があるときに、中央労働委員会に対して申立てを行う。
取消訴訟 都道府県労働委員会又は中央労働委員会の救済命令に対して不服があるときに、裁判所に対して訴訟を提起する。

これらの不服申立てには、それぞれ期限が定められています。この期限については、次項より解説します。

再審査請求

再審査請求とは、都道府県労働委員会によって発された救済命令に不服があるときに、中央労働委員会に対して申し立てる手続きです。
都道府県労働委員会への救済申立てと同じように、次の流れで手続が行われます。

  1. 調査
  2. 審問
  3. 合議及び命令

最終的には、「再審査申立棄却」又は「初審命令変更」の命令が下されることになります。それぞれ、次のようなときに下されます。

再審査申立棄却 再審査申立てに理由がないと認めるとき
初審命令変更 再審査申立ての全部又は一部に理由があると認めるとき

再審査請求は、基本的には、救済命令が交付されてから15日以内に申し立てる必要がありますので、ご注意ください。

取消訴訟

都道府県労働委員会による救済命令や、中央労働委員会による救済命令に不服がある場合には、命令が交付されてから30日以内に取消しの訴えを提起することが可能です。訴訟の相手方は、労働委員会が所属している都道府県又は国です。

都道府県労働委員会の救済命令に対して、使用者が取消訴訟を提起するときには、再審査請求を同時に申し立てることはできません。

救済命令違反に対する制裁

再審査の申立ても取消訴訟の提起もしなかった場合には、救済命令が確定し、命令交付の日からその効力が生じます。そのため、使用者は遅滞なく命令を履行する必要があります。履行しない使用者には50万円以下の過料の罰則が適用されます。

また、取消訴訟の結果、裁判所の判決により救済命令が確定した場合、命令違反の使用者には1年以下の禁錮又は100万円以下の罰金の罰則が適用されます。

さらに、不当労働行為は民法の不法行為(民法709条)にあたるため、損害賠償請求の民事責任を問われるおそれもあります。

不当労働行為の救済命令に関する判例

労働委員会において、特定の言動が不当労働行為であると認定されて救済命令が下されたとしても、取消訴訟によって争うことにより、救済命令が取り消されるケースがあります。

これに関連する、次のような裁判例があります。

【大阪地方裁判所 平成31年2月20日判決】

この事例は、労働組合の組合員である労働者が、小中学校の英語指導助手の指導等を行う役職で働いていたところ、役職が廃止されたため契約が更新されなかったという事例です。

契約を更新しなかったことについて「組合を嫌悪して行われた」支配介入であるとする労働委員会の救済命令が発出されたので、原告は救済命令の取消しを求める本件訴訟を提起しました。

その結果、当該労働者が組合に加入する前に、役職の廃止を前提とする事業計画調書が作成されていること等から、役職の廃止を決めたのは労働者が組合に加入した後ではなかったと裁判所は認定し、本件救済命令を取り消しました。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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