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リスクアセスメント実施の必要性とその手順

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働者が安全に働ける職場を作るのは、事業者の責務といえます。そこで、労災の発生を未然に防ぐ手法として「リスクアセスメント」が重要です。職場ごとにリスクは異なりますので、それぞれに合った適切な手順・方法で実施することが求められるでしょう。

しかし、「どのような流れで行うのか」「必ず実施しなければならないのか」といったご不安も多いと思います。また、「リスクの見つけ方がわからない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、リスクアセスメントの概要から導入の手順まで詳しく解説していきます。労働者の安全や健康を守るため、しっかり把握しておきましょう。

リスクアセスメントの定義

リスクアセスメントとは、職場に潜在する危険性や有害性を見つけ出し、早期に除去・低減するための手法です。

事業主は、法律や国からの指針に基づき、適切な手順でリスクアセスメントを実施しなければなりません。労働者の安全を守るための措置を講じることは事業主の責務であり、リスクアセスメントもその一環といえるためです。

では、リスクアセスメントの効果や手順はどういったものなのか、次項からみていきましょう。

なお、事業主が講じるべき措置については、以下のページでも詳しく解説しています。リスクアセスメント以外も解説していますので、ぜひご覧ください。

危険・健康障害の防止措置

リスクアセスメントの目的

リスクアセスメントの目的は、「労働者全員が職場のリスクや対策について実情を把握し、事前にリスクを取り除くことで、労働災害が発生しない職場を作ること」とされています。

ポイントは、事業主だけでなく、労働者もリスクアセスメントに参加すべきだということです。具体的には、災害等が発生しうる状況を把握・指摘すると同時に、災害防止策を遵守しなければならないと定められています。

このように企業全体でリスクアセスメントを実施することで、事業場の安全衛生を組織的・継続的に維持することが可能となります。

リスクアセスメントの必要性

リスクアセスメントは、労災の発生を未然に防ぐために重要な措置です。

かつての労災防止策は、災害発生後にその原因を調査し、再発防止策を確立・徹底するというものでした。そのため、潜在的なリスクは放置され、新たな災害の発生を招くおそれがありました。

さらに、技術の進展によってさまざまな機械設備や化学物質が導入され、事業場における危険性や有害性も多様化しつつあります。

そこで、安全衛生対策を見直し、「自主的に潜在的なリスクを見つけ出すこと」「事前に的確な措置を講じること」を柱としたリスクアセスメントが導入されることになりました。

安全衛生の詳細については、以下のページで解説しています。併せてご確認ください。

労働安全衛生法の概要と健康保持増進のための措置

リスクアセスメントの法的位置付け

リスクアセスメントの実施は、労働安全衛生法(以下、労安衛法といいます)28条の2で“努力義務”として規定されています。

対象の事業場における事業主は、業務に起因する危険性や有害性を調査し、法律や命令に基づく措置を講じるほか、労働者の危険や健康障害を防止するため必要な措置を講じるよう努めなければなりません。

なお、対象の事業場とは、危険性が高い化学物質を取り扱う業種の他、製造業・清掃業・電気業・卸売業・小売業・旅館業・自動車整備業・機械修理業等も含まれます。

化学物質に係るリスクアセスメント

労安衛法の改正(平成28年)により、“一定の危険有害性のある化学物質”について、リスクアセスメントの実施が義務付けられました。

化学物質におけるリスクアセスメントの詳細は、以下のページをご覧ください。

化学物質におけるリスクアセスメントの実施手順

リスクアセスメントの効果

リスクアセスメントの導入により、以下の効果が期待できます。

  • 職場のリスクが明確になる
    潜在する危険性や有害性の芽を摘むことで、労災の発生を未然に防ぐことができます。
  • リスクに対する認識を共有できる
    リスクアセスメントは、現場の作業員や監督者の参加を得て実施するため、職場全体でリスクに対する共通認識を持つことができます。
  • 安全衛生対策の合理的な優先順位を決定できる
    リスクアセスメントによって“許容できないリスク”が見つかった場合、リスクを低減させる必要があります。その際、検討したリスク見積もり等をもとに優先順位を付けることができます。
  • 残留リスクに対する“遵守事項”の理由が明確になる
    すぐに低減措置をとれない場合、暫定的な管理的措置を講じたうえで、対応を作業者の注意に委ねることになります。このとき、リスクアセスメントに作業員が参加していると、「なぜ注意すべきなのか」という理由が理解され、ルールが遵守されるようになります。
  • 職場全体が参加することで、危険に対する感受性が高まる
    職場の全員が参加することで、業務経験が浅い労働者も、職場に潜む危険性や有害性を把握できるようになります。

リスクアセスメントの実施時期

リスクアセスメントの実施時期は、労働安全衛生規則(以下、労安衛則といいます)24条の11で以下のとおり定められています。

  • 建設物を設置・移転・変更又は解体するとき
  • 設備や原材料等を新規に採用又は変更するとき
  • 作業方法や作業手順を新規に採用又は変更するとき
  • その他、事業場のリスクに変化が生じたとき又は生じるおそれがあるとき

上記に該当する場合、対象事業主はリスクアセスメントを実施することが義務付けられています。

また、既存の設備や作業方法でも、調査を実施していないものについては定期的に点検・見直しを行うことが重要です。その場合、設備の種類や事業場規模を踏まえ、事業主が適切な実施頻度を決定することになります。

リスクアセスメントの実施体制

まず、企業の経営トップがリスクアセスメントの導入を宣言します。
また、導入後は、各事業場の「総括安全衛生管理者」(所長や工場長)がリスクアセスメントの統括管理として、「リスクアセスメント責任者」の選任等を行います。この責任者は、リスクアセスメントが適切に実施されているか評価する等重要な役割を担うため、職務実態に精通し、リスクアセスメントの教育訓練を受けた者(又はそれと同等の知識・能力がある者)を選任することが重要です。

なお、総括安全衛生管理者は、労災を防止するために必要な業務を統括管理することが義務付けられており(労安衛法10条5項)、リスクアセスメントもこのひとつといえます。

また、各事業場の「安全管理者」も、労働者の安全に係る技術的事項を管理することが義務付けられています(労安衛法11条)。例えば、危険を見つけた際の応急措置・安全装置等の定期点検・作業員の教育や訓練等を担います。

職務実態に詳しいことから、安全管理者をリスクアセスメント責任者に選任するのも良いでしょう。

リスクアセスメントの基本的な手順

リスクアセスメントの手順については、厚生労働省が公表する「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に記載されています。どのような流れで進めれば良いのか、順番に見ていきましょう。

危険性・有害性の特定

まず、職場に潜在するリスクを特定します。収集した情報をもとに、特定に必要な単位で作業を洗い出し、「どんな危険性や有害性があるか」を検討しましょう。

また、機械設備や作業等に応じて危険性や有害性を分類しておき(爆発による危険性・ガスによる有毒性等)、検討結果をそれにあてはめることでリスクを特定します。

なお、情報源として、以下のようなものを集めておくと良いでしょう。

  • 作業標準や作業手順書
  • 機械設備のレイアウトや仕様書
  • ヒヤリハット、労災事例
  • 安全衛生目標の達成評価
  • 安全施行サイクル
  • 前年度の労災発生状況

また、リスクを特定する際は、労働者の疲労等による付加的影響も考慮する必要があります。

リスクの見積もり

労災の発生確率や労災による怪我の重さ等を想定し、リスクの大きさを見積もります。また、見積もり結果に基づき、対応の優先順位を決定します。
このとき、リスクの程度を数値化していくと、優先順位を付けやすくなるでしょう。

リスクの見積もり方法については、以下のページでさらに詳しく解説しています。併せてご確認ください。

リスクアセスメントにおけるリスクの見積りと評価方法

リスク低減措置の検討・実施

優先順位を付けたら、実際にリスクを除去・低減するための措置を決定します。
措置を検討する際は、「除去できるリスクかどうか」を判断することが重要です。除去できるのであればその策を、完全に除去するのが難しいのであれば低減策を検討します。

ただし、法令で定められた措置がある場合、まずは法令に従う必要があります。

具体策が決まったら、リスクアセスメント責任者が中心となってスケジュールを組み、措置を実行します。なお、すぐに実行できないものや、計画的に実行すべきものについては、次年度計画に盛り込むようにしましょう。

また、低減措置を実行した事実について、関係者や関係部署への周知・報告も忘れずに行いましょう。

では、リスク低減措置とはどういったものか、以下で具体的にみていきましょう。

低減措置の優先順位

リスク低減措置には何種類かあり、法定事項以外は優先順位が決められています。
まずは「本質的対策」から検討し、難しい場合は「工学的対策」→「管理的対策」→「個人用保護具の使用」の順番で実行していくことになります。

それぞれどんな措置か、以下でご説明します。

  • 法定事項
    リスク低減措置として、法令で定められた事項です。法定措置に優先順位の概念はなく、基本的に必ず実行する必要があります。
  • 本質的対策
    設計や計画の段階で危険性や有害性を除去・低減する方法です。危険な作業を廃止・変更する、人体に無害な物質に代替する、安全な施工方法に変更するといった対応により、リスクを本質的に排除します。
  • 工学的対策
    防護柵や安全装置、インターロック、排気装置等を設置し、物理的に危険を回避する方法です。
  • 管理的対策
    安全マニュアルの整備、立入禁止の掲示、ばく露管理、安全教育や訓練等、労災発生を防ぐための管理を徹底する方法です。ただし、ヒューマンエラーを完全になくすことは難しいため、徹底した対策が求められます。
  • 個人保護具の使用
    労働者に保護服や保護マスク、安全靴等を着用させ、リスクを軽減する方法です。ただし、上記3つの対策を講じても除去・低減できなかったリスクに対してのみ実施することになります。

リスク低減措置の記録・見直し

リスクアセスメントの結果や低減措置の内容は、必ず記録に残し保管しておきましょう。労災防止のノウハウが蓄積され、次回のリスクアセスメントでも活用することができます。

また、実施したリスクアセスメントの手法は適切だったか、有効性はあったか等を検討し、必要であればやり方の見直しも求められるでしょう。

さらに、低減措置の実施後は、その成果の追跡まで行いましょう。当初の想定と異なる結果になったり、新たな危険性や有害性を生み出したりしている可能性があるためです。

このような確認を踏まえて新たなPDCAサイクルを回し、安全衛生対策の継続的な改善を図ることが重要です。
PDCAサイクルの詳細は以下のページで解説していますので、ぜひご覧ください。

労働安全衛生マネジメントシステムにおける「PDCAサイクル」の構築

安全衛生教育の必要性

労働者への安全衛生教育は、安全な職場を作るために重要なプロセスです。
というのも、労災の発生を未然に防ぐには、事業主だけでなく、労働者1人1人が職場の安全衛生について理解しておく必要があるためです。

「作業中は何に注意すべきなのか」「なぜ注意が必要なのか」といった点を具体的に教え、職場全体でリスクに対する意識を共有できれば、より高い効果が期待できるでしょう。

安全衛生教育については、以下のページで解説しています。ぜひ参考になさってください。

企業が実施すべき安全衛生教育の重要性について

管理者への教育

安全管理者の選任に伴う研修や、職長・安全衛生責任者に受講が義務付けられている「職長教育」又は「職長・安全衛生責任者教育」の内容には、リスクアセスメントに関する項目が含まれています。

というのも、安全管理者は、「安全に係る技術的事項を管理するのに必要な知識について研修を修了していること」という資格要件が定められているためです(労安衛則5条)。

よって、事業場の管理者は、リスクアセスメントについて十分理解したうえで業務にあたる必要があります。

リスクアセスメントの実施に関する罰則

リスクアセスメントの実施は努力義務に留まるため、実施しなくても罰則はありません。ただし、法令で定められた事項の対応を怠った場合は法律違反となり、労働基準監督署から行政指導を受ける可能性があります。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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