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労働安全衛生マネジメントシステム「OSHMS」の仕組み・運用について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

会社は、仕事中に見舞われる災害から労働者を守り、また、労働者の心身の健康を維持できるよう、適切な措置を講じなければなりません。あらかじめ定めていた措置が実務に則しておらず、実質的に機能していない場合や、定めにないリスクが生じる可能性が新たに浮上した場合などには、安全衛生管理システムを都度アップグレードする必要があります。

このページでは、日常的、継続的にシステムのアップグレードを図ることができる「労働安全衛生マネジメントシステム」、別称【OSHMS】という仕組みについて解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

目次

労働安全衛生マネジメントシステム「OSHMS」とは

労働安全衛生マネジメントシステム(Occupational Safety and Health Management System=【OSHMS】)とは、使用者が、事業場の安全衛生水準の向上を図るために継続的に行う、自主的な安全衛生管理の仕組みのことをいいます。

本記事は、【OSHMS】の呼称で、まずは目的や背景などからみていきましょう。

OSHMSの目的

【OSHMS】の目的は、事業場の安全衛生水準の向上に継続的に取り組むことによって、労働災害の防止のみならず、働く人すべてが健康で安全が確保できる職場の形成を目指すことです。

OSHMS制定の背景

OSHMSには、「ISO45001」という国際規格が存在します。

品質マネジメントシステム(ISO9001)、環境マネジメントシステム(ISO14001)のように、目標達成のために組織を管理する仕組み(=マネジメントシステム)の国際規格が普及したことにより、労働安全衛生に関する標準化された管理システムの必要性にもスポットがあたるようになったことが、「ISO45001」制定の背景です。

「ISO45001」は、後述の厚生労働省が定める“OSHMSに関する指針”の改正にも影響を与えていますが、「ISO45001」と“指針”とでは、対象者など運用について異なる点があります。

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労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針

労働安全衛生規則
第24条の2

厚生労働大臣は、事業場における安全衛生の水準の向上を図ることを目的として事業者が一連の過程を定めて行う次に掲げる自主的活動を促進するため必要な指針を公表することができる。

一 安全衛生に関する方針の表明
二 法第28条の2第1項又は第57条の3第1項及び第2項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置
三 安全衛生に関する目標の設定
四 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善

下線部がOSHMSを指し、1号~4号がその主な内容であることを示しています。厚生労働省は、これを促進するためのガイドラインとして、『労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(以下、「OSHMSに関する指針」)』を定めています。

指針の改正内容

ISO45001に加え、これを翻訳したJIS Q 45001や、日本独自の要求事項を追加したJIS Q 45100が制定されたこと、健康確保への関心が高まったことなど国内外の動きを踏まえて、OSHMSに関する指針は令和元年の7月に改正されています。

この改正では、主に次のような内容の見直しが行われました。

複数の事業場を一の単位とした運用(第4条)

OSHMSに従って行う措置の実施単位について、かつては事業場ごとの運用が基本とされていましたが、飲食・小売業といった多店舗展開の企業等、さまざまな組織でOSHMSが普及されることを前提に改正がなされ、同一の法人に属する複数の事業場を一つの単位として運用することが可能になりました。

幅広い業種での導入・運用を明示(第7条)

OSHMSが、第三次産業を含む幅広い業種での運用を前提としたことで、OSHMSを担当する管理者(=システム各級管理者)が所属する事業実施部門についての定めが、「生産・製造部門」から「製造、建設、運送、サービス等の事業実施部門、安全衛生部門等」に改められました。

化学物質リスクアセスメントの実施(第10条)

平成26年の労働安全衛生法改正で、対象となる化学物質を扱う事業者のリスクアセスメントが義務化されたことを受け、OSHMSでの危険性又は有害性等の調査及び実施事項に、「危険性又は有害性等の調査に関する指針(労安法28 条の2第2項)」に加えて「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(同法57 条の3第3項)」に従って行うべきことが書き加えられました。

健康の保持増進のための活動の実施(第12条)

安全衛生計画を作成する際の内容として、「健康の保持増進のための活動の実施に関する事項」と、安全衛生教育に加えて「健康教育に関する内容・実施時期に関する事項」の2つが追加されました。

OSHMSの4つの特徴

PDCAサイクル

OSHMSのコアとなるのは、Plan(計画)➡Do(実行)➡Check(評価)➡Action(改善)の作業を継続的に繰り返す「PDCAサイクル」の構築です。「PDCAサイクル」の詳しい解説は、以下のページに譲ります。

労働安全衛生マネジメントシステムにおける「PDCAサイクル」の構築

手順化・明文化・記録化

OSHMSでは、システムの適正な運用のために、関係者の役割、責任、権限及び各種手順等を文書によって明確化し、記録を保存することを重要視しています。

リスクの調査及びその結果に基づく措置

労働災害を未然に防ぐために、OSHMSに関する指針に従い、リスクアセスメントとその結果に基づく措置の実施について定めることとしています。

全社的な推進体制

OSHMSでは、経営トップの指揮のもと、全社的に安全衛生を推進する体制で定期的なシステムの見直しがなされるものとなっています。

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OSHMSの仕組みと導入手順

下図のように、OSHMSは、OSHMSに関する指針に基づく14の項目から成る3つのステップを段階的に踏んで導入することとなります。それぞれの段階に応じて必要な14の取り組みについて、細かくみていきましょう。

OSHMSの仕組みと導入手順

基本的な仕組みの導入

まずは、主に「PDCAサイクル」の構築など、OSHMSの目的達成のための基本的な仕組みを導入します。

①安全衛生方針の表明(指針第5条)

事業者が、OSHMSの目的である“事業場の安全衛生水準の向上を図るため”の基本的な方針(=安全衛生方針)を表明し、労働者に周知することが、OSHMSを効果的に運用するための基盤となります。

②リスクアセスメント及び実施事項の決定(指針第10条)

リスクアセスメント(=危険性又は有害性等の調査)の実施手順や、リスクアセスメントの結果に基づく必要な措置を決定する手順を定めたうえで、これらの手順に従ってリスクアセスメントを行います。

③安全衛生目標の設定(指針第11条)

①の安全衛生方針に基づいて、安全衛生目標を設定します。この目標は、②のリスクアセスメントの結果や、以前設定した安全衛生目標がある場合、その達成状況等を踏まえ、実現可能な範囲で、かつ後から評価がしやすいよう数値で示せると良いでしょう。

④安全衛生計画の作成(指針第12条)

②のリスクアセスメントの実施事項に基づき、③の安全衛生目標を達成するための具体的な安全衛生計画を作成します。これは、「PDCAサイクル」の「Plan(計画)」の工程にあたります。

⑤安全衛生計画の実施等(指針第13条)

④で作成した安全衛生計画に沿って、適切かつ継続的に実行します。「PDCAサイクル」の「Do(実行)」にあたります。

⑥日常的な点検、改善等(指針第15条)

④の安全衛生計画に沿って実行できているかどうか、実行した結果、目標が達成できそうかといった実施状況を日常的に点検し、良かった点・悪かった点の要因を分析して、問題点を改善していきます。「PDCAサイクル」の「Check(評価)」「Action(改善)」に該当する作業で、洗い出しの結果を次の安全衛生計画へと繋げていきます。

以下のページでは、「PDCAサイクル」の詳細を解説しています。ぜひこちらも併せてご覧ください。

労働安全衛生マネジメントシステムにおける「PDCAサイクル」の構築

効果的とする仕組みの導入

続いては、基本的な仕組みをより効果的に運用するための取り組みを行っていきます。

⑦体制の整備(指針第7条)

システム各級管理者の指名など、OSHMSのスムーズな運営のための、体制の整備を行います。

⑧労働者の意見の反映(指針第6条)

①の安全衛生目標の設定や、「PDCAサイクル」に、現場を良く知る労働者の意見を反映させるための仕組み(安全衛生委員会等)を定めます。

⑨明文化(指針第8条)

OSHMSを労働者に周知し、適切に運営するために、安全衛生方針、目標、計画、上記までに定めた事項の実施手順などを文書により明確にしておきます(=明文化)。

⑩記録(指針第9条)

「Plan(計画)」に沿って実行した内容を後から「Check(評価)」できるように、安全衛生目標や計画に対する進捗といった実施状況や、システム監査の結果など、プラスの内容もマイナスの内容もきちんと記録し、保管しておくことが重要です。

⑪緊急事態への対応(指針第14条)

あらかじめ、危険が急迫する状態(例:火災や化学物質の大量漏えい、地震など)が発生する可能性を考慮して、緊急事態の際に労働災害が起こらないよう防止するための措置を定め、また、実際に緊急事態が生じた際にはそれに基づいた対応を行えるよう備えておきます。

⑫労働災害発生原因の調査等(指針第16条)

事業場で労働災害や事故が発生した場合の原因調査、問題点の把握・改善を実施する手順をあらかじめ決めておき、実際に労働災害等が発生したときは、二度と同類の災害が起きないようその手順に従って原因調査を行い問題点の改善ができるようにしておきます。

仕組みの見直し

ステップ1、ステップ2の導入、運用の結果を検証し、OSHMS全体の見直しを図ります。

⑬システム監査(指針第17条)

①から⑫までの項目を的確に押さえられているかどうか、監査する手順を作成し、定期的に監査を実施します。システム監査の結果、改善の必要が見られる項目については、見直しを図ります。

⑭労働安全衛生マネジメントシステムの見直し(指針第18条)

⑬のシステム監査の結果を考慮して、OSHMSが有効に働くよう、基盤となる①の安全衛生方針を含め、定期的にOSHMSの全体的な見直しを行います。

OSHMSの導入効果について

OSHMSを導入した事業場の9割以上が、職場の危険・有害要因を減らす効果があると認識しています。継続的、有効的な安全衛生管理の実行が可能になり、事業場の安全衛生水準のレベルアップを図ることが期待できます。

具体的には、OSHMSを導入している事業場とそうでない事業場を比較すると、災害の発生率が3割以上低いといった結果が出ています

※厚生労働省 平成16年2月17日発表 「大規模事業場における安全管理体制等に係る自主点検結果」より

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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