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危険又は健康障害から労働者を守るために企業が取るべき対応とは

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

事業者は、労働者を危険や健康障害等から守らなければなりません。そのために会社は、どのようなときに、どのような危険が潜んでいるか等を考えながら、それに基づく措置をとる必要があるでしょう。

本記事では、労働者の危険や健康障害を防止するための措置等について解説していきます。また、併せて有害業務従事者についても触れていきます。

労働者の危険や健康障害を防止するための措置

労働安全衛生法では、事業者が、労働者の危険または健康障害を防止するための措置を講じなければいけないとされています。そのため、例えば、危険物を扱う作業、重量物を扱う作業等、作業の内容によって事業者が行わなければならない措置等が本法に定められています。

以降の項において、作業内容別に事業者が講ずべき措置を解説しています。

労働者の安全衛生に関する責任の所在

労働者の危険防止に対する責務を負う者は、以下のとおりになります。

  • ・事業者…事業を行う者、労働者を使用する者のこと(労安衛法2条3号)。
  • ・元方事業者…一つの場所で行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている者のこと。数段階の請負関係がある場合は、その最も先次の注文者のこと(労安衛法15条1項本文括弧書)。
  • ・請負人…請負契約において、仕事を請け負う者のこと。
  • ・注文者…仕事を注文する者のこと。

事業者が講ずべき措置

事業者は、危険防止に関して講ずべき措置があり、その措置は大きく3つに分けられます。次項以降、3つの措置について説明していきます。

危険防止の措置

事業者は、事業場において労働者を危険から守るためにも、危険を防止するための措置を講じる必要があります(労安衛法20条、21条)。以下が業務において予測できる危険な物・作業等になります。

  • ➀機械、器具その他の設備による危険
  • ➁爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険
  • ③電気、熱その他のエネルギーによる危険
  • ④掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険
  • ⑤労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険

健康障害防止の措置

事業者は、以下にあげるものを扱う作業によって、労働者の健康障害を防止するために必要な措置をとる必要があります(労安衛法22条)。

  • ・原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等
  • ・放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等
  • ・計器監視、精密工作等の作業
  • ・排気、排液または残さい物

危険が急迫した際の措置

万が一、労働災害の急迫した危険があるときは、直ちに作業を中止し、労働者を退避させる等の措置を講じる必要があります(労安衛法25条)。

より詳しい労働災害時の措置については、下記のページをご覧ください。

労働災害時の措置

元方事業者が講ずべき措置

そもそも元方事業者とは、請負契約のうち最も先次(発注者側)の請負契約における注文者のことを指します。元方事業者には、労働安全衛生法を遵守させるために関係請負人およびその労働者を指導し、違反を認めた場合には是正のため必要な指示をなす義務が課されています(労安衛法29条)。

また、建設業では、土砂崩れが起きるおそれがある場所、機械等が転倒するおそれがある場所等で関係請負人の労働者が従事する場合に、関係請負人に技術上の指導その他必要な措置を講ずる義務があります(労安衛法29条の2)。

注文者が講ずべき措置

注文者が講ずべき措置としては、以下のようにケース別に分けられます。

特定事業(建設・造船業)の仕事を行う注文者は、建設物、設備、原材料を、当該仕事を行う場所においてその請負人の労働者が使用するようなときは、当該建設物等について、それら労働者の労働災害を防止するために必要な措置をとるよう義務付けられています(労安衛法31条1項)。

また、化学物質を取り扱う設備の改造、修理、清掃等について外注が行われる場合も、注文者には請負人の労働者の労働災害を防止するための措置をとる義務が定められています(労安衛法31条の2)。さらに、労働安全衛生規則644条から662条に、必要な措置をとらなければならないと規定されています。

このように、注文者は請負人に対して、当該仕事に関する労働安全衛生法違反となる指示をしてはいけないとされています(労安衛法31条の4)。

労働者が遵守すべき事項

労働者に対しても、事業者の措置に応じて必要事項を守る義務が課されています(労安衛法26条)。労働者は、事業者が行う安全衛生措置を遵守することにより、労働災害を防止することにつながるためです。それを怠ると、他の労働者にも危害を及ぼすおそれがあるため、義務違反をすると罰則が科されます(労安衛法120条柱書、同1号)。

詳しい内容については、下記のページをご覧ください。

労働者の自己保健義務

「リスクアセスメント」の実施について

労働者が作業する事業場では、危険性が多々あります。事業場での危険性、有害性の特定、リスクの見積もり、優先度の設定、リスク低減措置の決定の一連の手順を「リスクアセスメント」といいます。また、事業者はこの調査結果に対して、労働災害を防止するための対策を講じるよう努める義務があります(労安衛法28条の2)。

上記のような措置の効果としては、➀職場のリスクが明確になる、②リスクに対する認識を職場全体で共有できる、③安全対策についての合理的な方法で優先順位を決めることができる等が挙げられます。/p>

安全衛生法上の機械・有害物に関する規制

労働安全衛生法には、労働災害を防ぐために、機械等及び有害物に関する規制が定められています(労安衛法37条~58条)。

規制の詳細については、下記のページにて解説していますので、ご覧ください。

機械・有害業務に関する規制

危険有害業務従事者に対する安全衛生教育

事業者は、危険・有害業務に就いている管理者や労働者に対して、事業場における安全衛生の水準を図るため、安全衛生教育が必要となります。さらに、事業者は安全衛生教育の実施にあたり、事業場の状況を踏まえつつ、実施するように努める必要があります。

各管理者についての詳細は、下記のページをご覧ください。

企業における安全衛生管理体制

また、安全衛生教育については、下記のページをご覧ください。

安全衛生教育の重要性
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