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従業員の子育て支援制度「子の看護休暇」について

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

子供や要介護状態の家族を持つ従業員が、離職せずに子育てや介護をしながら労働を継続できるよう、さまざまな制度を法制化したのが「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称:育児・介護休業法)」です。その中には、子供を持つ従業員が、子供が負傷したり疾病にかかったりした際、休暇を取得できるよう定めた「子の看護休暇」制度もあります。

本記事では、「子の看護休暇」制度について、その内容や、事業主として知っておくべきこと等について解説していきます。

子の看護休暇の概説

「子の看護休暇」とは、小学校就学の始期に達するまでの子供を養育する従業員が、事業主に申し出ることにより、1年度において5日を限度とし、負傷し、または疾病にかかった子の世話、または疾病の予防を図るために必要な世話を行うために取得できる休暇です。育児による従業員の離職を防ぎ、子供を育てながらでも働きやすくすることを目的に、年次有給休暇とは別に取得できるよう導入された制度です。

子の看護休暇が適用される事由

子の看護休暇は、小学校就学の始期に達するまでの子供が体調不良のとき、病気にかかったとき、けがをしたとき等に取得できます。その他にも、通院のための付き添い、乳幼児健診、健康診断、定期のもの以外の予防接種(インフルエンザ予防接種等)にも適用されます。

休暇が適用できる疾病・負傷に制限はありませんので、たとえば風邪等、短期間で治癒するものでも取得が可能です。

子の看護休暇申請の拒否について

従業員からの子の看護休暇の申出に関しては、「事業主は、労働者からの…申出があったときは、当該申出を拒むことができない(育介法16条の3第1項)」と、拒否できない旨が定められています。以前は努力義務とされていましたが、平成16年の改正により権利規定とされました。

ただし例外もあり、それについては後述します。

就業規則における規程の必要性

子の看護休暇について、厚生労働省の指針では「あらかじめ制度が導入され、就業規則などに記載されるべきもの」とされていますが、労働基準法では、休憩、休暇、休日、始業・終業時刻、給与等に関して必ず就業規則に記載しなければならないと定められています。子の看護休暇は、この絶対的必要記載事項である「休暇」に含まれますので、付与する条件、期間、取得時の待遇などについて就業規則に記載する必要があります。

育児・介護休業法の改正による変更点

育児・介護休業法は時代とともに改正が重ねられています。子の看護休暇の取得単位が柔軟化されたことも改正内容の内のひとつです。

それまでは取得が1日単位とされていましたが、改正によって半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能となりました。

子の看護休暇の対象者

子の看護休暇は、日々雇用される者(1日限りの雇用契約、または30日未満の有期契約で雇用されている従業員)を除く、すべての男女従業員が取得できます。有期雇用の従業員、派遣社員、パート・アルバイトの従業員も休暇取得の対象者となります。

労使協定により対象外にできる従業員

事業主は、原則として従業員からの子の看護休暇取得の申出を拒むことができませんが、次のいずれかに該当する従業員は、あらかじめ労使協定の定めがあればその対象外とし、申出を拒むことができます。

  • ・継続して雇用されている期間が6ヶ月に満たない者
  • ・1週間の所定労働日数が2日以下の者
  • ・休暇申出の日から起算して6ヶ月以内に雇用契約が終了することが明らかな者

従業員の配偶者が専業主婦(夫)の場合

平成22年の改正以前は、配偶者が専業主婦(夫)であり常態として子供を養育できる者は、労使協定により適用対象外とできる定めがありましたが、現在では、配偶者が専業主婦(夫)であっても子の看護休暇を取得できます。配偶者が専業主婦(夫)であることを理由に、休暇取得の申出を拒むことはできません。

子の看護休暇の期間

子の看護休暇については、「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」が申出により取得できる休暇として定められていますが、この「小学校就学の始期に達するまで」とは、子供が6歳に達する日が属する年度の、3月31日までのことを指します。

子の看護休暇の日数

従業員が取得できる子の看護休暇の日数は、1年度に5日まで、養育する小学校就学の始期に達するまでの子供が2人以上の場合は10日までと定められています。子供の人数に比例して増えるものではなく、3人以上でも上限は10日となります。

年度に関しては、事業主が特に定めない場合、その年の4月1日から翌年の3月31日までとなります。

また、就業規則で上限を上回る日数を取得可能とすることには、特に問題はありません。

子の看護休暇の取得単位

子の看護休暇は、1日、あるいは半日(所定労働時間の2分の1。労使協定により2分の1ではない時間が半日と定められている場合には、その時間)での取得が可能です。

労働時間が日により異なるケースでは、1年間における1日の平均労働時間数を割り出し、その2分の1を半日とみなします。どちらも1時間に満たない端数がある場合には、切り上げて処理します。

1日単位の取得のみとすることができる従業員

以下のいずれかに当てはまる場合、事業主は、当該従業員による子の看護休暇の取得を1日単位でのみ認め、半日単位での取得の申出は拒むことができるとされています。

  • ・1日における所定労働時間が4時間以下
  • ・半日単位での休暇を取得することが困難であると、労使協定により認められている業務に就いている

子の看護休暇中の給与

子の看護休暇を取得した日の給与については、育児・介護休業法での定めはありません。よって、ノーワーク・ノーペイの原則により事業主に賃金を支払う義務も発生しませんが、逆に有給としてもかまいません。子の看護休暇取得時に有給となるのか無給となるのかは、就業規則に定めておく必要があります。

年次有給休暇や欠勤との違い

子の看護休暇は欠勤扱いとなるか?

従業員が子の看護休暇を取得しても、その日は欠勤扱いにはなりません。欠勤扱いにしてしまえば評価や査定に影響しますが、事業主は、育児・介護休業法によって義務づけられた休業・休暇、制度を従業員が申し出たこと、利用したことを理由に、その従業員に対して不利益な取扱いをすることは禁じられています(育介法10条・16条の4)。

年次有給休暇との違い

従業員から子の看護休暇の取得申出があったとき、これを労働基準法が定める年次有給休暇扱いとすることはできず、それとは別に与える必要があります。子の看護休暇は有給休暇とは違いますので、事業の正常な運営を妨げる場合に事業主が取得日を変更させることができる、いわゆる時季変更権はありません。

前年度からの繰越に関しては、育児・介護休業法に定めはありません。よって、事業主の裁量に委ねられることになります。

年次有給休暇、時季変更権についての詳細は、以下のリンク先で詳細に解説していますので、ご参照ください。

年次有給休暇

年休付与における出勤率の算定

年次有給休暇の付与に関して、労働基準法では、出勤率が8割に満たない場合は付与しなくともよいと定めています。年次有給休暇を付与する際には、子の看護休暇を取得した日は出勤とみなすか欠勤として扱うかは育児・介護休業法に定めがありませんので、事業主の裁量に委ねられています。

ただし、年次有給休暇の付与においては「出勤した日」を算定しますので、1日単位での子の看護休暇の取得日は欠勤として扱うことができますが、半日単位の取得の場合、出勤はしているので0.5日の欠勤として取り扱う等のことはできません。

子の看護休暇の申出に関する規定

子の看護休暇の取得については、その性質上、緊急を要することも多いと考えられるため、当日の電話等、口頭での申出も認め、書面の提出を求める場合には後日でも可能とすることが望ましいとされています。従業員には、以下の項目を明らかにして申し出てもらいます。

  • ・従業員本人の氏名
  • ・子供の氏名・生年月日
  • ・看護休暇を取得する年月日(1日未満の取得の場合には、開始および終了の年月日時)
  • ・子供が負傷、あるいは疾病にかかっている事実、または疾病の予防を図るために必要な世話を行う旨

従業員への証明書類の請求

従業員が子の看護休暇を取得した際、事業主は、子供が負傷、もしくは疾病にかかっている事実、または疾病の予防を図るために必要な世話を行うことを証明する書類の提出を求めることができます。ただし、事後の提出を可能とする等、従業員に過重な負担を強いることのないよう配慮が求められます。

また、子の看護休暇は取得できる負傷・疾病に特段の制限はありませんので、例えば風邪等、医師の診断書が得にくい疾病でも取得が可能です。そのため、証明する書類としては、薬を購入した際の領収書等も認める等、事業主には柔軟な対応が求められます。

子の看護休暇を導入する事業主への助成金

家庭と仕事の両立を支援するため、制度の導入や促進を実施した事業主に国から助成金を支給する、「両立支援等助成金」があります。「育児休業等支援コース」の「職場復帰後支援」では、育児・介護休業法を上回る子の看護休暇制度を導入しており、対象従業員が1ヶ月以上の育児休業から復帰した後の6ヶ月以内で、子の看護休暇制度の利用が10時間以上あれば助成金が交付されます(内容は令和2年のものです)。

育児休業に関しては以下のリンク先で詳細に解説していますので、ご参照ください。

育児休業

子の看護休暇以外の育児支援について

子の看護休暇以外にも、育児中の従業員を支援するさまざまな法制度があります。所定外労働・時間外労働・深夜業の制限、勤務時間短縮措置(いわゆる時短勤務)等です。

それぞれ以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。

所定外労働等の制限
育児・介護休業

また、育児中の女性を支援する法制度もあります。生後1年に満たない子供を育てる女性は、1日2回、各30分まで子供を養育する時間をとることができる「育児時間」や、働く女性の母性を保護するため、妊産婦の危険有害業務の就業制限や、保健指導や健康診査を受けられるよう休暇や短時間勤務等の措置を講じなければならないとされています。

育児時間、母性健康管理に関してはそれぞれ以下のページで解説していますので、ご参照ください。

育児時間
母性健康管理
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