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従業員の子育て支援制度「子の看護休暇」について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

子供を持つ従業員が、子供が負傷したり疾病にかかったりした際に、休暇を取得できるよう定めた「子の看護休暇」制度があります。

これは、子育てや介護をしながらであっても、離職せず労働を継続できるようにするための「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称:育児・介護休業法)」で定められた制度です。
2021年には、「子の看護休暇」を使いやすくするための改正が行われました。

本記事では、「子の看護休暇」制度について、その内容や、事業主として知っておくべきこと等について解説していきます。

子の看護休暇とは

子の看護休暇とは、負傷し、または疾病にかかった子供の世話、あるいは疾病の予防を図るために必要な世話を行うために取得できる休暇です。

育児による従業員の離職を防ぎ、子供を育てながらでも働きやすくすることを目的としており、年次有給休暇とは別に取得できるよう導入された制度です。

対象は、小学校就学の始期に達するまでの子供を養育する従業員です。当該従業員が事業主に申し出たときには、1年度において5日(子供が2人以上のときには10日)を限度として取得させる必要があります。事業主は、休暇の取得を基本的に拒否できません。

子の看護休暇の付与が必要となる事由

子の看護休暇は、小学校就学の始期に達するまでの子供について、以下のような事由があるときに取得できます。

  • 病気にかかったとき
  • けがをしたとき
  • 通院のための付き添い
  • 乳幼児健診
  • 健康診断
  • 定期のもの以外の予防接種(インフルエンザ予防接種等)

休暇が適用できる疾病・負傷に制限はありませんので、たとえば風邪等、短期間で治癒するものでも取得が可能です。

子の看護休暇は欠勤扱いとなるか

従業員が子の看護休暇を取得しても、その日を欠勤扱いにすることはできません。
欠勤扱いにしてしまえば評価や査定に影響しますが、事業主は、育児・介護休業法によって義務づけられた休業・休暇、制度を従業員が申し出たこと、利用したことを理由に、その従業員に対して不利益な取扱いをすることは禁じられています(育介法10条・16条の4)。

なお、子の看護休暇を含む様々な権利の行使に対する不利益取扱いの禁止については、以下の記事をご覧ください。

不利益取扱いの禁止

子の看護休暇中の給与は無給でよいか

子の看護休暇を取得した日の給与については、育児・介護休業法での定めはありません。
よって、ノーワーク・ノーペイの原則により事業主に賃金を支払う義務も発生しませんが、各企業の判断によって有給としてもかまいません。

子の看護休暇取得時に有給となるのか無給となるのかは、就業規則に定めておく必要があります。

子の看護休暇の対象となる従業員

子の看護休暇は、日々雇用される者(1日限りの雇用契約、または30日未満の有期契約で雇用されている従業員)を除く、すべての男女従業員が取得できます。有期雇用の従業員、派遣社員、パート・アルバイトの従業員も休暇取得の対象者となります。

労使協定により除外できる従業員

事業主は、基本的に従業員からの子の看護休暇取得の申出を拒むことができませんが、あらかじめ労使協定の定めがあれば、申出を拒めるケースがあります。

申出を拒否できるのは、以下のいずれかに該当する従業員です。

  • 継続して雇用されている期間が6ヶ月に満たない者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の者
  • 休暇申出の日から起算して6ヶ月以内に雇用契約が終了することが明らかな者

従業員の配偶者が専業主婦(夫)の場合

従業員の配偶者が専業主婦(夫)であることを理由に、休暇取得の申出を拒むことはできません。

平成22年の改正以前は、配偶者が専業主婦(夫)であり常態として子供を養育できる者は、労使協定により適用対象外とできる定めがありましたが、現在では、配偶者が専業主婦(夫)であっても子の看護休暇を取得できます。

対象となる子供の年齢と取得日数

対象となる子供 小学校就学の始期に達するまで(子供が6歳に達する日が属する年度の3月31日まで)
子の看護休暇の日数 ・子供が1人の場合は1年度に5日まで
・子供が2人以上の場合は1年度に10日まで

年度に関しては、事業主が特に定めない場合、その年の4月1日から翌年の3月31日までとなります。

また、表に記載した「対象となる子供」や「子の看護休暇の日数」はあくまでも法定の最低条件であり、就業規則によって6歳以降の子供についても対象とする企業が増えてきています。また、休暇の日数についても、上限を上回る日数を取得可能とすることには、特に問題はありません。

2021年1月の法改正による時間単位取得の義務化

時間単位の看護休暇

画像引用元:厚生労働省 リーフレット「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!

育児・介護休業法が改正されて、2021年1月1日より、子の看護休暇を時間単位で取得できるようにすることが義務化されました。

改正前は、半日単位での取得が可能であり、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は子の看護休暇を取得できませんでした。しかし、今回の改正により、時間単位での取得が可能となって、全ての労働者が取得できるようになりました。

これは努力義務ではなく義務であるため、半日や2時間単位での取得しか認めないといった取り扱いはできません。なお、既に分単位での取得を認めている場合には、その規定を変更する必要はありません。

いわゆる「中抜け」への対応について

中抜けとは、始業時刻から連続しておらず、終業時刻にも連続していない休暇です。
簡単に言えば、仕事中に子の看護休暇を取得して帰ってくるということを意味しています。法律では中抜けの許可を義務づけていません。しかし、中抜けを可能とする配慮を求めています。

なお、既に中抜けを認めていた状態から中抜けを認めない変更をするのは、従業員にとって不利益変更に該当するので、原則として労使間の合意が必要になるため注意が必要です。

子の看護休暇と年次有給休暇の違い

従業員から子の看護休暇の取得申出があったとき、これを労働基準法が定める年次有給休暇扱いとすることはできません。

また、子の看護休暇は有給休暇とは違いますので、事業主に時季変更権はありません。これは、急病等により子の看護休暇を申請したときに、時季変更権を行使されてしまっては意味がないからです。

年次有給休暇や時季変更権についての詳細は、以下の記事で詳細に解説していますのでご参照ください。

年次有給休暇の基礎知識

年休付与における出勤率の算定

年次有給休暇を付与する際に、子の看護休暇を取得した日を出勤とみなすか欠勤として扱うかについては育児・介護休業法に定めがありませんので、事業主の裁量に委ねられています。

ただし、年次有給休暇の付与においては「出勤した日」を算定することになっており、時間単位や半日単位の取得の場合であっても出勤している扱いをする必要があります。そのため、「1時間の欠勤」や「0.5日の欠勤」とする等の取り扱いはできません。

子の看護休暇の運用における注意点

子の看護休暇を適切に運用するためには、就業規則に規定することや、職場を従業員から申出をしやすい環境にすることが必要です。また、子供が病気になったこと等を証明する書類の提出を求めるのは可能ですが、杓子定規な対応は望ましくありません。

子の看護休暇が適切に運用されないと、法的な紛争に発展するリスクがあるので注意が必要です。

就業規則に規定する必要性

子の看護休暇は、付与する条件、期間、取得時の待遇などについて就業規則に記載する必要があります。
これは、労働基準法では休暇等について、必ず就業規則に記載しなければならない「絶対的必要記載事項」であると定められており、子の看護休暇も「休暇」に含まれるからです。

就業規則には、子の看護休暇を付与する条件、期間、取得時の待遇等について記載しなければなりません。具体的にどのように記載すれば良いかわからない場合には、厚生労働省が例示している就業規則を参考として規定を設けると良いでしょう。

厚生労働省 育児・介護休業等に関する規則の規定例(リンク先はPDF)

申出に関するルールの明確化

子の看護休暇の申出は、どのように申し出るのかをルールとして明確化し、従業員に周知しておく必要があります。

子の看護休暇は、その性質上、緊急を要することも多いと考えられるため、当日の電話等、口頭での申出も認めるのが望ましいでしょう。この場合には、後日、申出書の提出を求めることができます。

従業員には、以下の項目を明らかにして申し出てもらいます。

  • 従業員本人の氏名
  • 子供の氏名・生年月日
  • 看護休暇を取得する年月日(1日未満の取得の場合には、開始及び終了の年月日時)
  • 子供が負傷、あるいは疾病にかかっている事実、または疾病の予防を図るために必要な世話を行う旨

従業員へ証明書類の提出を求めてもよいか

従業員が子の看護休暇を取得した際、事業主は、子供が負傷、もしくは疾病にかかっている事実、または疾病の予防を図るために必要な世話を行うことを証明する書類の提出を求めることができます。ただし、事後の提出を可能とする等、従業員に過重な負担を強いることのないよう配慮が求められます。

また、子の看護休暇は取得できる負傷・疾病に特段の制限はありませんので、例えば風邪等、医師の診断書が得にくい疾病でも取得が可能です。そのため、証明する書類としては、薬を購入した際の領収書等も認める等、事業主には柔軟な対応が求められます。

子の看護休暇を導入する事業主への助成金

家庭と仕事の両立を支援するため、制度の導入や促進を実施した事業主に国から助成金を支給する「両立支援等助成金」があります。
「育児休業等支援コース」の「職場復帰後支援」では、以下の条件を満たせば助成金が交付されます(内容は令和3年のものです)。

助成金の受給要件 ・育児・介護休業法を上回る子の看護休暇制度を導入していること。
・対象従業員が1ヶ月以上の育児休業から復帰した後の6ヶ月以内であること。
・子の看護休暇制度の利用が10時間以上あること。
助成金額 【制度導入時】28.5万円(生産性要件を満たすと36万円)
【取得時】1000円(生産性要件を満たすと1200円)×看護休暇の時間

なお、育児休業に関して全体的なことを知りたい方は、以下の記事で詳細に解説していますのでご参照ください。

育児休業

子の看護休暇以外の育児支援について

子の看護休暇以外の育児支援としては、以下のような制度が存在します。

所定外労働・時間外労働・深夜業の制限

育児・介護休業法では、一定の年齢に達していない子供を養育する従業員から請求があったときには、基本的に所定外労働等を免除しなければならないと定められています。

所定外労働等の制限について、詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

所定外労働・時間外労働・深夜業の制限について

勤務時間短縮措置

育児・介護休業法では、育児休業を取得せずに3歳に満たない子供を養育する労働者が希望する場合には、勤務時間短縮措置を講じなければならないと定められています。

勤務時間短縮措置について、詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

育児・介護休業法における所定労働時間の短縮措置について

育児時間

労働基準法には、満1歳未満の子供を育てる女性労働者から請求された場合には、通常の休憩時間とは別に、原則として1日2回各30分以上の育児時間を付与しなければならないと定められています。

育児時間について、詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

育児時間とは | 労務管理上の注意点や時短勤務との併用について

母性健康管理

雇用機会均等法には、妊産婦(妊娠中および産後1年以内の女性)が、妊産婦のための保険指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保しなければならないと定められています。

母性健康管理について、詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

母性健康管理

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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