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子の看護休暇|対象範囲や時間単位での取得について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

子供を持つ従業員が、子供が負傷したり疾病にかかったりした際に、休暇を取得できるよう定めた制度が「子の看護休暇」です。

これは、子育てや看護をしながらでも、労働者が雇用を継続できるようにするため、「育児・介護休業法」に定められています。
また、2021年には、「子の看護休暇」を時間単位で取得できるよう改正が行われました。

本記事では、「子の看護休暇」について、その内容や、事業主として知っておくべきこと等について解説していきます。

子の看護休暇とは

子の看護休暇は、文字通り、養育する子供の看護が必要な状況下で取得できる制度です。具体的には、以下のような事由が生じた際に取得できます。

  • 病気にかかったとき
  • けがをしたとき
  • 通院のための付き添い
  • 乳幼児健診
  • 健康診断
  • 定期のもの以外の予防接種(インフルエンザ予防接種等)

休暇が適用できる疾病・負傷に制限はありませんので、たとえば風邪等、短期間で治癒するものでも取得が可能です。

事業主は、労働者から休暇の請求があった場合には拒否することはできず、年次有給休暇とは別に休暇を付与しなければなりません。
また、就業規則には以下の項目を記載する必要があります。

  • 付与要件(対象となる労働者の範囲等)
  • 取得に必要な手続
  • 期間

何歳までの子供が対象か

子の看護休暇を申し出ることができる対象は、法律上、小学校就学の始期に達するまでの子供を養育する労働者となっています。

ただし、この小学校就学前までという条件はあくまでも育児・介護休業法に定められた最低条件です。そのため、6歳以降も子の看護休暇の取得を認めるという育児・介護休業法が定める条件を上回る制度を設けることに関しては何ら問題がありません。むしろ、人材の確保や女性の活躍促進の観点からは企業の付加価値を高める制度といえるでしょう。

子の看護休暇の対象となる従業員

子の看護休暇は、日々雇用される者を除く、すべての男女従業員が取得できます。有期雇用の従業員、派遣社員、パート・アルバイトの従業員も休暇取得の対象者となります。

また、従業員の配偶者が専業主婦(夫)であることを理由に、休暇取得の申出を拒むことはできません。

労使協定により除外できる従業員

事業主は、基本的に従業員からの子の看護休暇取得の申出を拒むことができませんが、あらかじめ労使協定の定めがあれば、申出を拒めるケースがあります。

申出を拒否できるのは、以下のいずれかに該当する従業員です。

  • 継続して雇用されている期間が6ヶ月に満たない者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の者
  • 半日単位で子の看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する者(この場合には、一日単位での取得の申出は拒否できません。)

※日雇い労働者については、元々、子の看護休暇の対象となる従業員でないため、労使協定がなくても申出を拒むことができます。

子の看護休暇と介護休暇の違い

子の看護休暇の他に介護休暇という制度もあります。子の看護休暇と同様に育児・介護休業法に定められています。

介護休暇は対象家族を介護等するために1年度において5労働日を上限として取得することが認められており、子の看護休暇と以下の違いがあります。

子の看護休暇 介護休暇
対象労働者 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(日々雇用されるものを除く) 要介護状態にある対象家族の介護その他の厚生労働省令で定める世話を行う労働者(日々雇用されるものを除く)
取得目的 負傷し、もしくは疾病にかかった養育する子の世話、予防接種または健康診断をうけさせること等 対象家族の介護、対象家族の通院等の付き添い、対象家族が介護サービスの提供を受けるために必要な手続きの代行等

2021年1月の法改正による時間単位取得の義務化

育児・介護休業法の改正にともない、2021年1月1日より、子の看護休暇を時間単位で取得できるようになりました。

改正前は、子の看護休暇を半日単位までしか取得ができず、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は子の看護休暇を取得できませんでした。しかし、時間単位での取得が可能となったことにより、全ての労働者が1日未満の単位で取得できるようになりました。

これは努力義務ではないため、半日や2時間単位での取得しか認めないといった取り扱いはできません。なお、既に分単位での取得を認めている場合には、その規定を変更する必要はありません。

では、いわゆる中抜けについてはどうでしょうか。
ここでの中抜けとは、始業時刻から連続しておらず、終業時刻までにも連続していない休暇をいいます。

簡単に言えば、仕事中に子の看護休暇を取得して帰ってくるということを意味しています。この点、育児・介護休業法上で取得できる時間単位としては、中抜けまでは想定されていません。しかし、取得できる時間単位としては、中抜けを可能とする配慮が求められています。

有給・無給の取り扱いについて

子の看護休暇を取得した場合の給与について、育児・介護休業法に特段の定めはありません。
そのため、ノーワーク・ノーペイの原則により、事業主に賃金を支払う義務は生じません。

ただし、各企業の判断によって有給とすることでも問題はありませんし、利用を促進するためには、賃金の一部を補償するなどの対応が望ましいでしょう。
国家公務員の一般職は、子の看護休暇は有給と定められているようです。

なお、子の看護休暇を取得した際に、有給となるのか無給となるのかについては、就業規則に定めておく必要があります。

子の看護休暇の日数・時間の定め方

子の看護休暇は、取得日数や時間について、法で定められています。また、就業規則に明示しなければならない「休暇」に該当する事項のため、必ず就業規則に規定する必要があります。

それぞれについて、以下の項目で詳しく解説いたします。

取得日数

・子供が1人の場合は1年度に5日まで
・子供が2人以上の場合は1年度に10日まで

年度に関しては、期間を特定するために、いつからいつまでとするかを定めておく必要があります。事業主が特に定めない場合、その年の4月1日から翌年の3月31日までが1年度となります。

また、「対象となる子供」や「子の看護休暇の日数」はあくまでも法定の最低条件であり、法定を上回る日数を取得可能とすることには、制度上の問題はありません。

取得単位

子の看護休暇は、改正により、時間単位で取得できるようになったため、就業規則や労使協定についても見直しが必要となります。
その際の注意点は下記の通りです。

  • ① 1日単位、半日単位、時間単位について定める。
  • ② 1日未満の単位は、時間であって、始業の時刻から連続し、または終業の時刻まで連続するものとする。(いわゆる「中抜け」を認めることまでは求められていない。)
  • ③ 時間単位で取得する場合の休暇の「時間」は、1日の所定労働時間数に満たない範囲とする。
  • ④ 休暇を取得する日の所定労働時間数と同じ時間数の休暇を取得する場合には、1日単位での取得として取り扱う。(なお、日によって、所定労働時間数が異なる場合、子の看護休暇を取得しようとする日の所定労働時間数を1日の労働時間数とする。)
  • ⑥ 1日の所定労働時間数に1時間に満たない端数がある場合は、1時間に切り上げる。(たとえば、7.5時間の所定労働時間の場合には、8時間分の休暇=1日分の休暇となります。)

時季変更権の行使

時季変更権とは、事業の正常な運営を保持するための必要な場合に、労働者が指定した年次有給休暇の時季を変更することができる事業主の権利をいいます。

ただし、子の看護休暇は年次有給休暇とは異なる休暇ですので、事業主は時季変更権を行使することができません。これは、急病等により子の看護休暇を申請したときに、時季変更権を行使されてしまっては労働者にとって意味がないからです。

子の看護休暇は欠勤扱いとなるか

従業員が子の看護休暇を取得しても、その日を欠勤扱いにすることはできません。
事業主は、育児・介護休業法によって義務づけられた休業・休暇、制度を従業員が申し出たこと、利用したことを理由に、その従業員に対して不利益な取扱いをすることは禁じられているからです(育介法10条・16条の4)。

そのため、欠勤は評価や査定に反映させることができますが、子の看護休暇については、賞与や昇給で不利益な算定を行ったりすることはできません。

なお、子の看護休暇を含む様々な権利の行使に対する不利益取扱いの禁止については、以下の記事をご覧ください。

不利益取扱いの禁止

年休付与における出勤率の算定

年次有給休暇は出勤率が80%以上である労働者に付与されるもので、出勤率は以下の式で算定されます。

出勤率=出勤日÷全労働日

では、子の看護休暇は上記式における出勤日に含めて算定できるのでしょうか?

出勤日については、子の看護休暇を出勤とみなすか欠勤として扱うかについては法律に定めがありません。そのため、出勤率の式に含めるかは事業主の裁量に委ねられているといえます。

ただし、子の看護休暇を出勤したと扱う場合、時間単位や半日単位で取得した場合であっても1日単位で出勤したと扱う必要があります。

子供の看護休暇の申請ルール

子の看護休暇は、就業規則に明示しなければならない「休暇」に含まれるため、あらかじめ就業規則に必要事項を記載する必要があります。そのうえで、どのように申し出るのかをルールとして明確化し、従業員に周知しておく必要があります。

子の看護休暇は、その性質上、緊急を要することも多いと考えられるため、当日の電話等、口頭での申出も認めるのが望ましいでしょう。この場合には、後日、申出書の提出を求めることができます。

従業員には、以下の項目を明らかにして申し出てもらいます。

  • 従業員本人の氏名
  • 子供の氏名・生年月日
  • 看護休暇を取得する年月日(1日未満の取得の場合には、開始及び終了の年月日時)
  • 子供が負傷、あるいは疾病にかかっている事実、または疾病の予防を図るために必要な世話を行う旨

従業員へ証明書類の提出を求めてもよいか

従業員が子の看護休暇を取得した際、事業主は、子供が負傷、もしくは疾病にかかっている事実、または疾病の予防を図るために必要な世話を行うことを証明する書類の提出を求めることができます。ただし、事後の提出を可能とする等、従業員に過重な負担を強いることのないよう配慮が求められます。

また、子の看護休暇は取得できる負傷・疾病に特段の制限はありませんので、例えば風邪等、医師の診断書が得にくい疾病でも取得が可能です。そのため、証明する書類としては、薬を購入した際の領収書等も認める等、事業主には柔軟な対応が求められます。

子の看護休暇を導入する事業主への助成金

家庭と仕事の両立を支援するため、制度の導入や促進を実施した事業主に国から助成金を支給する「両立支援等助成金」があります。
「育児休業等支援コース」の「職場復帰後支援」では、一定の条件を満たせば助成金が交付されます(内容は令和3年のものです)。

受給要件

助成金を受給するためには以下すべての要件を満たす必要があります。

  • ① 中小企業であること
  • ② 平成30年4月1日以降に、子の看護休暇制度を就業規則または労働協約に規定していること。
  • ③ 育児休業を1か月以上取得した労働者に、育児休業から原職等への復帰後6か月以内に、②の制度について一定の利用実績があること
  • ④ 育児休業取得者を育児休業開始日において、雇用保険被保険者として雇用していたこと
  • ⑤ 育児休業取得者を、原職等復帰後、引き続き雇用保険の被保険者として6ヶ月以上雇用しており、さらに支給申請日において雇用していること
  • ⑥ 育児・介護休業法第2条第1号に規定する育児休業の制度及び育児のための短時間勤務制度について、労働協約または就業規則に規定していること
  • ⑦ 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長に届け出ている。また、その一般事業主行動計画を公表し、労働者に周知するための措置を講じていること

助成金額

要件を満たした事業主が受給できる助成金額は下記表の通りです。
制度導入時のみの申請はできませんが、平成30年3月31日時点で本助成金の要件を満たした制度を導入していた場合は制度利用時のみの申請が可能です。

※生産性要件を満たした場合は()の額が支給されます。
時期 助成金額 上限
制度導入時 28.5万円(36万円) 事業主1回限り
取得時 1時間当たり1,000円(1,200円)×看護休暇の時間 1事業主あたり上限200時間(240時間)

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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