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財形貯蓄制度を導入する際に知っておくべきこと

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

財形貯蓄制度は、労働者の資産作りを支援するための福利厚生です。計画的な貯蓄をサポートしてもらうことで、労働者はより安心して働くことができるでしょう。また、企業の経済的負担も少ないため、労使ともにメリットが大きい制度といえます。

ただし、財形貯蓄制度にはいくつか種類があり、加入条件も異なるため注意が必要です。また、導入の適切な流れを把握し、労働者が不利にならないよう運営していくことも求められます。

本記事では、企業の財形貯蓄制度に焦点をあて、概要や注意点等を詳しく解説していきます。導入を検討されている方や、福利厚生を充実させたいとお考えの方は、ぜひ参考になさってください。

財形貯蓄制度の定義

財形貯蓄制度とは、労働者の毎月の給与やボーナスから一定額を天引きし、企業から金融機関に送金する貯蓄制度です。企業から自動的に送金されるため、労働者は確実に貯蓄することが可能になります。福利厚生として、企業が任意に導入することができる制度です。

この制度は、労働者の資産作りを国や会社が連携して支援する「勤労者財産形成促進制度」に含まれ、「勤労者財産形成促進法」に基づいて実施されます。同法7条では、事業主の責務について、“労働者が財産貯蓄制度を利用する場合、必要な協力をするとともに、当該財産形成貯蓄契約等の要件が遵守されるよう指導等に努めなければならない”と定められています。

財形貯蓄制度の目的

財形貯蓄制度は、勤労者の計画的な財産形成を促し、生活の安定や国民経済の健全な発展に寄与するために制定されました(勤労者財産形成促進法1条)。

具体的には、勤労者財産形成促進制度のひとつとして、主に労働者の貯蓄・持ち家の取得・退職後の生活の安定を図ることを目的としています。

財形貯蓄制度の加入

財形貯蓄制度の加入は労働者の任意であり、強制加入させることはできません。

なぜなら、法律上、事業主による強制貯蓄は禁止されているためです。具体的には、“事業主は、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は預貯金を管理する契約をしてはならない”と定められています(労基法18条1項)。

また、事業主は、財形貯蓄制度を実施するにあたり、労働組合との書面の締結や規約の策定といった手続きも踏む必要があります。

財形貯蓄制度導入のメリット

財形貯蓄制度を導入することで、企業には以下のようなメリットがあります。

・福利厚生の充実
労働者の資産作りをサポートし、福祉の充実を図ることができます。
また、福利厚生の充実は採用時のアピールポイントとなり、人材(応募者)を確保することにもつながります。

・労働者の定着率向上
財形貯蓄制度を利用することで、労働者はマイホーム購入や子育てといった人生設計を立てやすくなります。それによって安心感や意欲が生まれ、定着率の向上にもつながるでしょう。

・社内融資制度の充実
財形貯蓄制度と一緒に「財形持家転貸融資制度」を行うことで、労働者の住宅ローン借入を支援することができます(財形持家転貸制度については、後ほど解説します)。

財形貯蓄制度の対象

財形貯蓄制度は、職種や雇用形態を問わずすべての労働者が利用できます。よって、アルバイト・パート・派遣社員等も利用可能です。ただし、正社員以外については一定の利用条件があるため注意が必要です。詳しくは以下のページをご覧ください。

有期労働契約
派遣労働|派遣の仕組みとメリット・デメリット

なお、財形貯蓄制度を利用できるのは、「制度を実施する企業で働く労働者」のみですので、自営業やフリーランスの方は利用できません。また、法人の役員も労働者にあたらない場合には、利用できないのが基本です(ただし、代表権や業務執行権を持たずに役職を兼任し、役員報酬の他に賃金を得ていれば利用可能となります)。

対象となる貯蓄商品

財形貯蓄制度では、銀行・保険会社・証券会社といった金融機関の貯蓄商品を選び、お金を積み立てていくことになります。貯蓄商品には、以下のようなものがあります。

  • 定額貯金や定期預金
  • 貯蓄型の生命保険や損害保険
  • 投資信託(金銭信託・貸付信託・公社債投資信託・株式投資信託など)
  • 有価証券(国債・地方債・社債・政府保証債・利付金融債など)

財形貯蓄制度の種類

財形貯蓄制度には、以下の3種類があります。

一般財形貯蓄

一般財形貯蓄とは、使用目的が限定されない貯蓄です。車やマイホーム購入・結婚・子育て・旅行等さまざまな用途に利用できるため、自由度が高い制度といえます。

ただし、いくつか利用条件が設けられているため、以下で概要を確認しておきましょう(勤労者財産形成促進法6条1項)。

  • 加入年齢:不問
  • 積立期間:3年以上(貯金開始1年間後から引出し可能)
  • 積立上限額:なし(ただし、生命保険3000万円・郵便貯金1550万円等、商品によって上限あり)
  • 利子等の税金:全額課税(非課税の税制優遇措置なし)
  • 複数契約:可能

なお、振込については、労働者の給与やボーナスから天引きしたうえで、事業主又は事務代行団体によって行われます。また、事業主は、給与天引き以外の業務について第三者に委託することも可能です。

財形年金貯蓄

財形年金貯蓄は、老後の資金作りを目的とした制度です。積み立てた資金は、60歳以降の所定時期(契約による)から5年以上20年以内ににわたり、年金として支払われます。なお、年金支払回数は商品によって異なりますが、生命保険の場合、終身受け取りができる可能性もあります。

財形年金貯蓄は公的年金や厚生年金に上乗せして支払われるため、より豊かな老後を送るために有用な制度です。具体的な概要について、以下で確認しておきましょう(勤労者財産形成促進法6条2項、3項)。

  • 加入年齢:55歳未満
  • 積立期間:5年以上
  • 利子等の税金:財形住宅貯金と合わせ、元本550万円まで非課税(保険商品の場合、単体の振込額385万円まで非課税)
  • 複数契約:不可(一般財形貯蓄・財形住宅貯蓄との併用は可能)

なお、契約途中で一般財形貯蓄や財形住宅貯蓄に変更すること(積立金を振り替えること)はできません。

また、積立中断期間が2年を超えた場合、それ以降に支払われる利子は課税対象となります。さらに、年金以外の引出しを行った場合、残高は財形年金貯蓄として扱われないことにも注意が必要です。

財形住宅貯蓄

財形住宅貯蓄とは、住まいの資金作りを目的とした制度です。積立金は、マイホームの建設や購入、リフォーム費用に充てることができます。概要について、以下で確認しましょう(勤労者財産形成促進法6条4項、5項)。

  • 加入年齢:55歳未満
  • 積立期間:5年以上
  • 利子等の税金:財形年金貯金と合わせ、元本550万円まで非課税(保険商品の場合、単体の振込額550万円まで非課税)
  • 複数契約:不可(一般財形貯蓄・財形年金貯蓄との併用は可能)

財形年金貯蓄と同じく、契約途中における貯蓄制度の変更(積立金の振替)は認められません。また、積立中断期間が2年を超えた場合、それ以降に支払われる利子は課税対象となります。

また、住宅の建設や購入、リフォーム以外の目的で資金を引き出した場合、非課税の税制優遇措置は適用されません。さらに、床面積や建設時期、工事費用といった一定の要件(適格払い出し)を満たす必要があるため注意が必要です。

財形貯蓄制度の金利

財形貯蓄制度の金利は、一般的に「0.01%」となっています。つまり、100万円を10年貯金しても、1000円の利子しか付かないということです。また、どの銀行でも金利に大差はないため、財形貯蓄を利用したからといって大幅に利益が増えるわけではありません。

財形貯蓄の引出・解約

一般財形貯蓄は、貯蓄開始1年後から自由に引き出すことができます。

一方、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は用途が定められているため、基本的に目的外で引き出すことはありません。目的外で引き出すと非課税措置が適用されず、利子等には国税15.315%、地方税5%が課されるため注意が必要です。

また、退職や役員への昇格によって財形貯蓄制度の利用資格を喪失した場合(退職等不適格事由)、基本的に積立金を引き出して解約することになります。この場合も目的外の引出しとなり非課税措置を受けられないため、元本割れにも注意が必要でしょう。

転職・退職時の取扱い

労働者が退職した場合、事業主は、退職から半年以内に財形貯蓄取扱金融機関へ「退職等の通知書」を提出しなければなりません。

なお、退職後2年以内であれば、労働者は転職先の企業で財形貯蓄制度を再開することができます。つまり、利子非課税の状態を継続して貯蓄を続けることが可能となります。この場合、転職先の企業を経由し、財形貯蓄取扱金融機関に以下の書類を提出することが必要です。

  • 同一の金融機関で継続する場合:勤務先異動申告書
  • 他の金融機関で継続する場合:転職等による財形貯蓄継続適用申告書

一方、転職先の企業に財形貯蓄制度がない場合や2年以内に転職しない場合、基本的に財形貯蓄は解約となります。また、この場合は退職等不適格事由にあたり、利子は課税対象となります。

財形持家転貸融資制度の適用

財形持家転貸融資制度とは、財形貯蓄を行っている労働者が利用できる住宅ローンです。労働者のマイホーム取得資金を、勤労者退職金共済機構が事業主を通して融資する公的制度です。

融資額は財形貯蓄の残高に応じて決められ、労働者は長期・低利で融資を受けられるというメリットがあります。また、企業も大きな負担を負うことなく社内融資制度の充実を図ることができます。

ただし、制度の導入には以下の条件があります。

  • 一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄のいずれかを導入していること
  • 労働者に対し、利子補給金の支給といった「負担軽減措置」を実施していること
  • 社内融資規程として、財形持家転貸融資規程を作成していること

また、着実な資金計画のため、事業主は労働者と融資条件(返済期日や担保)・退職時の対応・債務保証等について取り決めておくことが重要です。

育児休業等取得者の特例制度

財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄は、積立が2年以上中断されると非課税措置を受けられなくなります。そのため、長期間の育児休業等取得者は貯蓄を継続できないという問題点がありました。

そこで、育児休業等を取得する労働者については、企業を通して事前に金融機関へ所定の申告書を提出することで、職場復帰後も非課税で貯蓄を継続できる制度が設けられました。

ただし、申告書を提出したにもかかわらず休業中も振込が行われた場合や、復帰直後に振込が再開されなかった場合、非課税措置が適用されないため注意が必要です。

育児休業の概要等は、以下のページで詳しく解説しています。併せてご確認ください。

育児・介護休業法とは|改正内容や企業が講ずべき措置について

他制度との違いについて

社内預金制度との違い

社内預金制度も、労働者の給与やボーナスから一定額を天引きして貯蓄する制度です。ただし、資金の運用元が企業である点や、金利が高いといった点で財形貯蓄制度と異なります。

確定拠出年金との違い

確定拠出年金も、労働者の老後を支えるための年金制度です。ただし、確定拠出年金は退職金の代わりに支給されるものであり、個人の貯蓄として利用できる財形貯蓄とは性質が異なります。

また、財形貯蓄の積立額(拠出額)は商品によって異なりますが、確定拠出年金は一律に決められています。

さらに、財形貯蓄は利息等について非課税措置がありますが、確定拠出年金は掛金拠出時・運用時・給付時においてさまざまな税制優遇措置が設けられています。

確定拠出年金の詳細については、以下のページで解説しています。ぜひご覧ください。

企業の福利厚生としての「確定拠出年金」について

財形貯蓄制度の導入方法

財形貯蓄制度は、労働者を1人でも雇用していれば導入することができます。導入の具体的な流れは、以下のとおりです。

  1. 取扱金融機関の決定
    導入を決定したら、まず財形貯蓄制度の取扱金融機関を選定します。また、制度をスムーズに運営するため、金融機関と事務分担について取り決めておきましょう。
  2. 労使協定の締結
    労働者の給与の一部を天引きする場合、労使協定の締結が必要です(労基法24条1項)。
    具体的には、給与の天引きについて、労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がなければ労働者の過半数を代表する者)と書面を取り交わす必要があります。
  3. 社内規程の整備
    労働者と合意したら、制度の運営について社内規定(就業規則)を作成します。規定では、制度の種類・取扱金融機関・加入対象者・積立金の払出時期等について定めておきましょう。
  4. 契約希望者の募集
    労働者に制度の説明を行い、契約希望者を募ります。なお、説明においては、正社員だけでなくアルバイトやパート、派遣社員も対象にすることが望ましいでしょう。 契約希望者が決定したら申込書を提出してもらい、取扱金融機関に提出・契約を行います。

財形貯蓄制度の廃止

財形貯蓄制度を従業員に無断で廃止すると、不利益変更にあたる可能性があります。不利益変更とは、従業員の合意なく就業規則を変更し、労働条件を従業員にとって不利な内容に変更すること等をいい、労働契約法9条で禁止されています。

一方、同法10条では、変更後の就業規則を従業員に周知させ、かつ就業規則の変更が合理的といえる場合、従業員との個別合意は不要だとされています。この点、福利厚生の廃止は、賃金・労働時間の変更と比べて不利益が小さいため、合理的な変更に含まれる(個別合意は不要)と捉えられる可能性があります。

財形貯蓄制度は従業員の生活に関わりますので、廃止する際はその理由をしっかりと説明し、不利益を補うための代替案を提示することが望ましいでしょう。

なお、労働条件の不利益変更については、以下のページでも詳しく解説しています。

労働条件の不利益変更

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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