代休と振替休日の違い|割増賃金や注意点などをわかりやすく解説
休日振替と代休の違いについてYouTubeで配信しています。
休日振替が行われると法定休日の労働ではなくなり、法定休日の割増賃金は不要となります。一方、代休は法定休日の労働に変わりはなく、法定休日の割増賃金は必要となります。
動画では、休日振替を適法に行うためにはどのような要件が必要なのか、実務的にはどのような点に注意が必要なのかについて解説しています。

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
休日出勤への対応として何気なく使われることの多い「代休」と「振替休日」。しかし、この2つは名前こそ似ているものの、法律上の意味や会社が負う賃金の義務は異なります。
代休と振替休日の違いを正しく理解していないと、未払い残業代などトラブルの原因になりかねません。労働時間管理が厳しく求められる今だからこそ、違いを押さえておくことが大切です。
この記事では、代休と振替休日の違いや割増賃金の取扱い、運用上の注意点について解説します。
代休と振替休日の違い
会社には、労働者に対して週1日以上、または4週間で4日以上の法定休日を与える義務があります。そのため、法定休日に従業員が働いた場合は、別の日に休みを確保しなければなりません。
このときに利用されるのが、「振替休日」と「代休」です。どちらも休日労働の代わりに休みを与える制度ですが、以下のとおり、休みを決めるタイミングや割増賃金の扱いなどが異なります。
| 代休 | 振替休日 | |
|---|---|---|
| 代休と振替休日の定義 | 休日労働を行った後に、別の日を休みとする制度 | あらかじめ休日と勤務日を入れ替える制度 |
| 休みを設定するタイミング | 事後に定める | 事前に定めなければならない |
| 割増賃金の支払 | 休日労働であるため、35%の割増賃金が必要になる | 賃金の締め日をまたがなければ割増賃金は不要だが、時間外労働を行った場合には、25%の割増賃金が必要になる |
| 36協定の締結 | 休日労働を可能にする36協定が必要 | 休日労働の36協定は必要ではないが、時間外労働については36協定が必要になる |
定義の違い
振替休日と代休は似た制度と思われがちですが、内容は大きく異なります。厚生労働省によると、以下のように定義されています。
- 代休:休日労働を行った後に、その代わりとして別の労働日を休みにする制度
- 振替休日:あらかじめ休日と労働日を入れ替える制度
例えば、日曜日に出勤した後で金曜日を休みにする場合は代休、あらかじめ日曜日を出勤日、月曜日を休日と決めておく場合は振替休日にあたります。
なお、代休と振替休日の導入は、法律上の義務ではありません。制度を設ける場合は、取得条件や手続きなどを就業規則に定めて、従業員へ周知することが重要です。
運用方法の違い
振替休日と代休の大きな違いは、休みを決めるタイミングにあります。
振替休日とは、あらかじめ定められた休日と別の労働日を、事前に入れ替える制度です。適法に運用するためには、休日出勤を行う前日までに、「どの日を勤務日とし、どの日を休日とするのか」を明確に定めて、従業員へ通知しておく必要があります。
これに対し、代休とは、実際に休日出勤をした後、その代わりとして別の日に休みを与える制度です。代休の取得時期については、就業規則で「休日出勤から○日以内」や「賃金計算期間内に取得する」などと定めておくのが一般的です。実際の取得日は、休日出勤後に会社や従業員の都合を考慮しながら決定します。
割増賃金の違い
振替休日と代休では、割増賃金の取扱いが大きく異なります。
振替休日は、あらかじめ休日と労働日を入れ替える制度です。そのため、本来休日だった日に出勤しても、その日は通常の労働日として扱われます。振替休日の要件を適切に満たしていれば、休日労働に対する割増賃金は発生しません。ただし、振替によって1日8時間または週40時間の法定労働時間を超えた場合は、時間外労働として割増賃金が必要になります。
これに対し、代休は休日出勤をした後に別の日を休みにする制度です。休日出勤した事実は変わらないため、後日代休を取得したとしても、休日労働に対する割増賃金の支払い義務はなくなりません。
このように、振替休日は休日労働そのものを回避する制度であるのに対し、代休は休日労働後の休息を確保する制度であるため、割増賃金の取扱いが異なります。
| 制度 | 割増賃金 | 備考 |
|---|---|---|
| 振替休日 | 発生しない | 事前に出勤日と振り替えられ、休日出勤として扱われないため |
| 代休 | 発生する | 後日代休を与えた場合でも、休日に労働した事実は残るため |
割増賃金の計算方法や適用される割増率についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページで詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
法定休日と法定外休日の違い
休日出勤が法定休日と法定外休日(所定休日)のどちらにあたるかで、給与計算の考え方が異なります。
法定休日とは、労働基準法で会社に付与が義務づけられている休日をいいます。一方、法定外休日とは、法定休日とは別に会社が独自に設けている休日のことです。例えば、週休2日制の会社では、日曜日を法定休日、土曜日や祝日を法定外休日としているケースがよくあります。
振替休日では、事前に休日と勤務日を入れ替えるため、出勤した日は通常の労働日として扱われ、休日労働の割増賃金は発生しません。
これに対し、代休は休日出勤をした後に別の日を休みにする制度です。そのため、法定休日に出勤した場合は休日労働となり、35%以上の割増賃金が必要です。なお、法定外休日の出勤は休日労働にはなりませんが、1日8時間または週40時間を超えて働いた場合は、時間外労働として25%以上の割増賃金が発生します。
法定休日について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
振替休日の労働基準法上のルール
振替休日は、休日出勤が必要になったときに活用できる便利な制度ですが、会社が自由に運用できるものではありません。定められたルールに従わずに運用すると、振替休日として認められず、休日労働として割増賃金の支払いが必要になる場合があります。
未払い残業代などの労務トラブルを防ぐためにも、振替休日のルールを正しく理解しておくことが大切です。以下では、厚生労働省が定める振替休日の要件や、注意すべきポイントについて解説します。
振替休日の要件
振替休日を有効に与えるために、厚生労働省は次のような要件を満たす必要があるとしています。
- ①就業規則等に振替休日の規定をする
- ②振替日を事前に特定する
- ③振替は近接した範囲内とする
- ④遅くとも前日の勤務時間終了までに通知する
これらの要件について、以下で解説します。
①就業規則等に振替休日の規定をする
「振替休日」は、基本的に、労働協約や就業規則上の根拠規定に従って行われる必要があります。したがって、休日をほかの日に振り替えることがあるという旨を、あらかじめ規定している場合に有効となります。
ただし、労働者の個別の同意を得ることができれば、根拠規定がない場合でも「振替休日」を行うことができます。
就業規則の作成方法について詳しく知りたい方は、こちらの解説を併せてご覧ください。
②振替日を事前に特定する
休日労働の“後で”ではなく、“事前に”「振替休日」が決まっていることがポイントです。
具体的には、どの休日と、どの労働日とを入れ替えるのか、日付を特定する必要があります。
③振替は近接した範囲内とする
振替休日は、休日出勤日とできるだけ近い日程で設定することが重要です。
法律上、「〇日以内に振り替えなければならない」といった明確な期限はありません。しかし、従業員の休息を確保するとともに、労働基準法が定める、週1日または4週4日の法定休日を守るため、基本的に同じ週内に設定するのが望ましいとされています。
実務上は遅くとも4週間以内に振り替えることが一般的な目安です。休日出勤日からあまりにも離れた日を振替休日にすると、実質的には代休と判断され、休日労働に対する割増賃金の支払いが必要になる可能性もあるためご注意ください。
④遅くとも前日の勤務時間終了までに通知する
振替休日を適法に運用するためには、休日と勤務日を入れ替えることを事前に労働者へ通知しておく必要があります。少なくとも、休日勤務を行う前日の勤務時間終了までには、振替後の勤務日と休日を明確に伝えなければなりません。
また、振替休日を実施するためには、就業規則等にその旨を定めておくことが必要です。さらに、後々のトラブルを防ぐためにも、事前に従業員へ説明し、納得を得たうえで運用することが望ましいでしょう。
代休や振替休日を与える際の注意点
従業員に代休や振替休日を与える際に注意すべき点として、以下があげられます。
- 36協定の締結や上限規制に気を付ける
- 代休・振替休日の取得状況を適切に管理する
- 同一賃金支払期間内に取得させることが望ましい
- 有給休暇への変更条件や手続きを明確にする
- 再度の振替と賃金管理に注意する
- 代休・振替休日の取得単位を明確にする
36協定の締結や上限規制に気を付ける
従業員に1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて働いてもらう場合や、法定休日に出勤してもらう場合は、あらかじめ36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
一方、振替休日を適法に設定している場合、出勤日は通常の勤務日として扱われます。そのため、休日労働に関する36協定は必要ありません。
ただし、振替によって特定の週の労働時間が週40時間を超えた場合は、時間外労働として25%以上の割増賃金が発生します。このような時間外労働を行わせるには、時間外労働に関する36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出ておかなければなりません。
なお、36協定を締結していても、時間外労働には法令上の上限規制があるため、労働時間を適切に管理することが重要です。
36協定や時間外労働の上限規制については、以下の記事で詳しく解説しています。
代休・振替休日の取得状況を適切に管理する
代休や振替休日は、付与するだけではなく、その後の取得状況までしっかり管理することが大切です。特に振替休日については、あらかじめ休日を変更したにもかかわらず実際に休暇を取得させない状態が続くと、違法と判断されるおそれがあります。取得状況を定期的に確認し、未取得のままにならないよう会社側がフォローすることが求められます。
一方、代休には法律上の取得義務はありません。しかし、未消化の代休が蓄積すると管理が複雑になるため、あらかじめ就業規則などに取得可能な期間や申請手続を明記しておくとよいでしょう。
また、代休・振替休日のいずれについても、勤怠管理システムなどを活用し、付与日や取得期限、残っている日数を適切に管理しておくことが必要です。
同一賃金支払期間内に取得させることが望ましい
振替休日や代休は、できるだけ同じ賃金支払期間内に取得させることが望ましいでしょう。
振替休日・代休ともに法律上の明確な取得期限はありません。しかし、取得が翌月以降に持ち越されると、労働時間の集計や給与計算が複雑になり、勤怠管理の負担が増えてしまいます。例えば、休日の設定日が給与締切日をまたぐ場合、いったん休日出勤分の給与を支払い、実際に振替休日や代休を取得したタイミングで、通常勤務分の賃金を差し引かなければなりません。
さらに、代休の取得が長期間先送りされると、未取得日数や付与履歴の管理が難しくなり、従業員・会社ともに状況を把握しにくくなるおそれがあります。給与計算や勤怠管理を円滑に行うためにも、振替休日や代休は早く取得させるのが適切です。
有給休暇への変更条件や手続きを明確にする
休日出勤後に、「振替休日や代休ではなく、有給休暇として休みたい」という希望が出ることがあります。有給休暇へ変更すること自体は可能ですが、安易に認めると、振替休日なのか休日労働なのかが曖昧になり、割増賃金の計算や休日数の管理に影響が生じるおそれがあります。
そのため、休日出勤が発生した際は、原則として振替休日または代休で対応するルールを定めておくことが大切です。また、例外的に有給休暇への変更を認める場合には、申請方法や承認手続き、対象となるケースをあらかじめ明確にしておきましょう。
さらに、給与計算や勤怠管理のミスを防ぐため、勤怠管理システム上でも、振替休日・代休・有給休暇をそれぞれ正しく区別して記録・管理することが重要です。
再度の振替と賃金管理に注意する
振替休日に指定した日に、どうしても出勤しなければならない緊急の業務が生じることがあります。この場合、再度の振替を行っても法定休日が確保できるのであれば、労働者に休日を与えるという「振替休日」の趣旨に反することなく、再度の振替を行うことが可能と考えられます。
ただし、再度設定した振替休日が賃金の締め日をまたぐ場合には注意が必要です。締め日よりも後に与える予定の「振替休日」の賃金を差し引いてしまうと、労働基準法24条1項本文に定められている「賃金の全額払いの原則」に違反してしまいます。
この場合には、締め日よりも後に与える予定の「振替休日」の賃金は差し引かずに支払い、次の期日の賃金から差し引くようにしましょう。
代休・振替休日の取得単位を明確にする
代休と振替休日は似た制度ですが、取得単位に違いがあります。振替休日は、あらかじめ休日と労働日を入れ替える制度であるため、原則として1日単位で取得しなければならず、半日単位や時間単位で付与することはできません。
これに対し、代休は休日労働を行ったことに対して休みを与える制度であり、就業規則などで定めていれば、1日単位だけでなく半日単位や時間単位で付与することも可能です。
もっとも、半日代休や時間単位の代休を認めるかどうかは企業ごとに異なります。そのため、取得単位や申請方法などのルールを就業規則に明記し、従業員へ周知しておくことが重要です。
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この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、企業法務担当執行役員を務め、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある


