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労働基準法における振替休日・代休の付与ルール

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

昨今、長時間労働の抑制等を目的とした働き方改革が進められていますが、残業とともに注視しなければならないのが休日労働です。このページでは、休日労働の代わりに労働者に与える「振替休日」と「代休」にいて解説していきます。

会社には、法律に則って労働者の休日が確保できているかどうか、休日労働に見合った適正な額の賃金が支給されているかどうかを管理する義務があります。また、これらは、労働者のモチベーションやパフォーマンスに影響する要素でもありますから、ここできちんと整理しておきましょう。

休日労働の代わりに与える休みについて

会社は、労働者に対して週に1回又は4週以内に4回以上の【法定休日】を与える義務を負っています(労基法35条)。したがって、労働者に休日出勤をさせたことで法定休日の要件を欠く場合には、休日出勤の代わりとして、別の日に休日を与えることが求められます。

そこで、代わりの休日を付与する方法として考えられるのが、「振替休日」と「代休」の2つです。似ているような印象を受けるかもしれませんが、この2つには明確な違いがあります。特に、割増賃金の計算に影響してくるため、この2つの違いをきちんと把握しておきましょう。

なお、法定休日や割増賃金の概要は、以下のページでそれぞれ説明していますので、ぜひ併せてごらんください。

休日について
割増賃金について

休日規定の適用が除外される労働者

労働基準法41条で定める労働者には、例えば前項にあげた法定休日(労基法35条)の規定など、労働時間や休日に関する規定は適用されません。つまり、“休日”の概念が一般の労働者とは異なるため、就業規則等に特段の定めがない限り、「振替休日」や「代休」を与える必要はないと考えられています。

なお、具体的にどのような者が《適用除外となる労働者》にあてはまるのかは、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

休日規定の適用が除外される労働者

振替休日とは

「振替休日」とは、就業規則等であらかじめ定めた休日労働日にして、ほかの労働日休日にすること、つまり、“休日”と“労働日”を入れ替えるものです。行政通達等では、「休日の振替」と呼ばれていますが、本記事では、日常的になじみのある「振替休日」との用語で解説します。

下図の例を参考に、もう少し詳しく説明しましょう。

振替休日と労働日

会社が法定休日と定めた日(図の例では日曜日)に、労働者を出勤させなければならないことが“事前に”わかっていた場合、本来ならば労働日である日(図の例では木曜日)を「振替休日」に指定することで、法定休日のルールに則った休日日数を確保することができます。

これにより、もともと休日だった日曜日は労働日として、労働日だった木曜日は休日として扱うことになるため、日曜日は休日労働には該当しません。したがって、日曜日の労働に対して“休日労働の割増賃金(基礎賃金の35%)”は発生しないことになります。

振替休日の要件

①就業規則等に「振替休日」の定めがあること
「振替休日」は、基本的に、労働協約や就業規則上の根拠規定に従って行われる必要があります。したがって、休日をほかの日に振り替えることがあるという旨を、あらかじめ規定している場合に有効となります。
ただし、労働者の個別の同意を得ることができれば、根拠規定がない場合でも「振替休日」を行うことができます。

②出勤する休日と、振り替える日とを“事前に”特定しておくこと
休日出勤の“後で”ではなく、“事前に”「振替休日」が決まっていることがポイントです。
具体的には、どの休日と、どの労働日とを入れ替えるのか、日付を特定したうえで、休日出勤をさせる前日までに、労働者に通知する必要があります。

③法定休日の要件を満たしていること
「振替休日」を行っても、1週1日の休日又は4週4日の休日が確保されていることが要件となります。法定休日のルールの中で「振替休日」を設定しなければならないため、できるだけ出勤することとなった休日に近い日に「振替休日」を指定するのが望ましいでしょう。

週を越える振替

週をまたいで「振替休日」を行った場合は、法定労働時間(労基法32条)を超過しているおそれがあります。法定労働時間は、労働基準法上、1日につき8時間又は1週につき40時間を労働時間の上限とされています。

「振替休日」を行ったことにより法定労働時間を超過した場合、会社には、超過した労働時間に対して“時間外労働の割増賃金(基礎賃金の25%)”を支払う義務が生じます。

例えば、1日の労働時間を8時間と定めている週休2日制の会社で、法定休日と定めた休日を労働日に振り替えて、翌週に「振替休日」を指定した場合、労働日が1日増えた週の労働時間は48時間となります。この場合、35%の割増賃金は発生しないものの、40時間を超えた8時間に対して、25%の割増賃金を支払わなければなりません。

代休とは

「代休」とは、休日労働の代わりに、ほかの労働日を休日にすることです。
「振替休日」との違いがわかるでしょうか。下図の例で理解を深めましょう。

代休と労働日

大きな違いは、休日を決定する“タイミング”と、“休日労働の割増賃金(基礎賃金の35%)”の有無です。「代休」は、休日(図の例では日曜日※法定休日)に労働が行われた“後で”、代わりにほかの労働日(図の例では木曜日)を休日にできる制度です。

もともと休日だった日曜日に休日労働をして、労働日だった木曜日の労働義務を免除したものとして扱います。したがって、日曜日の労働に対しては“休日労働の割増賃金(基礎賃金の35%)”の支払いが必要となります。

なお、「代休」と似た用語として、「代替休暇」(労基法37条3項)があります。これは、1時間について60時間超の労働をした場合に、割増賃金の支払いに代えて、有給の休暇を与える、という制度です。「代休」とは全く意味が異なりますので、注意しましょう。

代休の要件

「代休」には、「振替休日」のような要件は特にありません。そもそも、“36(サブロク)協定※1”のもと休日出勤が行われた場合、法定休日のルールは適用されないため、労働基準法上では必ず「代休」を取得させなくてもよいとされています。そのため、「代休」の必要が生じた際には労働者の個別の合意を得て取得させることもできますが、「代休」を制度化して運用するのであれば、トラブル防止のためにも、労働協約や就業規則等に「代休」の規定を設けるのが得策でしょう。

※1:労働者に休日出勤や時間外労働をさせる場合に、労働基準法36条に基づいて締結する労使間の協定。

36協定の概要については以下のページをご参照ください。

36協定について

就業規則への記載

「振替休日」・「代休」を制度として円滑に運用するためには、就業規則等への記載は欠かせません。

「振替休日」は、労働契約上の根拠が必要です。就業規則等に規定を設けていなければ、法定休日の出勤に対して“休日労働の割増賃金(基礎賃金の35%)”の支払義務が生じるおそれがあるためです。

また、「代休」は、明確な要件が示されていない分、取得させる条件や、代休日に賃金を支払うのかどうかといったルールを、具体的に明記しておくべきでしょう。

振替休日や代休の取得期限

「振替休日」は、事前に対象の日を特定したうえで実施されることから、法定休日が確保されているのであれば、基本的には期限はありません。また、「代休」も、会社は取得させる義務を負っていないため、法律上の期限はありません。したがって、いずれも各会社で定めている就業規則等の規定に従って運用することになります。

では、どの程度の期間を期限と定めるのが適当なのでしょうか。

この点、労働基準法115条及び同条に関する行政通達(昭和23年12月15日基発501号)によれば有給休暇の取得請求権は2年の消滅時効にかかります。代休を有給休暇と同様に考えて、最大2年を上限と解することもできますが、労務管理が煩雑になり、長時間労働や未払い賃金の発生が懸念されるため、“労働日の○ヶ月以内”などと賃金計算期間内に取得させるよう期限を定めることが望ましいでしょう。

未消化の振替休日や代休が累積した場合

休日労働が生じた場合、例えば基礎賃金が1万円であれば、割増賃金分の3500円を加算した1万3500円を支払うのが通常です。一方、「振替休日」や「代休」の場合は割増賃金分のみを支払う方法が一般的です。これは、休日出勤をした日の基礎賃金と、休日出勤の代わりに休日とした日の賃金とを相殺する考え方によるものです。

この点、未消化の「振替休日」や「代休」が累積している場合、未消化の休日の賃金と相殺することになります。休日を取得させていないにもかかわらず賃金を相殺することは、【賃金の全額払いの原則(労基法24条1項本文)】に反するとして、30万円以下の罰金に処せられるおそれがあります(同法120条1号)。

法定外休日の振替

法定外休日の労働に対して「振替休日」や「代休」を与えるのか、割増賃金は発生するのか、金額はいくらかといったことは、労使間で自由に決められます。

法定外休日の労働は、労働基準法上の“休日労働”には該当しません。そのため、休日労働に関する“36協定”も“休日労働の割増賃金(基礎賃金の35%)”も必要なく、法定休日のルールの縛りもありません。

ただし、法定外休日の労働時間は、通常の労働時間として換算され、法定労働時間を超過すれば“時間外労働の割増賃金(基礎賃金の25%)”が発生するため、時間外労働に関する“36協定”の締結は必要ですし、制度化するのであれば就業規則等に根拠規定が必要になるでしょう。

振替休日や代休を与える際の注意点

事後の振替は代休扱い

休日労働が発生した“後で”代わりの休日を決定する場合は「代休」となり、“休日労働の割増賃金(基礎賃金の35%)”が発生します。例えば、35%の割増賃金の支払いを免れるためなどの理由で「振替休日」として扱うことは認められず、仮にそのような扱いをしたときには、未払い賃金の請求を受けるおそれがあります。

「振替休日」と「代休」とでは、休日を決定するタイミングと割増賃金の計算方法が異なりますから、会社は双方の仕組みをよく理解したうえで運用しなければなりません。

再度の振替の可否

「振替休日」に指定した日に出勤しなければならない事情が生じた場合に、再びほかの日に振替を行うことの可否について、労働基準法上には明確に示されていません。とはいえ、ルールや罰則がないことを理由に、「振替休日」を濫用して労働者に休日労働をさせることがあってはなりません。

そのため、どうしてもその日でなければならない緊急の業務が生じてしまい再度の振替を行っても法定休日が確保できているといったケースであれば、“労働者に休日を与える”という「振替休日」の趣旨に反することなく実施することが可能と考えられます。また、再度の振替日が一賃金支払期をまたぐと【賃金の全額払いの原則(労基法24条1項本文)】違反となるおそれがあるため、注意しましょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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