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割増賃金の消滅時効|成立要件と時効の起算日

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

時間外勤務等をして割増賃金が生じた場合、会社は支払わなければなりません。もしも、未払状態が続いたとしたら、労働者から支払うよう請求されるでしょう。しかし、未払いの賃金が生じているにもかかわらず、労働者が請求しなかった場合は、時効によりその請求権が消滅してしまいます。本記事では、このような消滅時効について、特に割増賃金と絡めて説明していきます。

割増賃金の消滅時効について

割増賃金とは、労働者が時間外労働等を行った際に、使用者が労働者に対して支払う賃金のことをいいます。また、時効には取得時効と消滅時効の2種類があり、本記事に説明する消滅時効とは、一定期間が経過することにより権利を消滅させることを指します。

これらを踏まえると、割増賃金における消滅時効とは、未払いの割増賃金が生じているにもかかわらず、労働者が使用者に請求しないままに一定期間が経過することにより、請求権そのものが消滅してしまうことだといえます。

金銭にかかわる消滅時効について耳にすることが多いと思いますが、本記事では割増賃金にかかわる消滅時効についてみていきましょう。

割増賃金についての詳細は、下記のページを参照してください。

割増賃金請求

制度の趣旨

では、そもそもなぜ消滅時効制度、いわゆる時効制度がつくられたのでしょうか?民事法に沿って考えた以下のような考え方があるといわれています。

  • (1)永続した事実状態の保護
    これは、事実状態が一定期間継続した場合は、社会の法律関係の安定のために、そのまま継続的に法律関係を覆さないことが正当である、と捉える考え方です。
  • (2)権利上に眠れる者は保護しない
    これは、権利があるにもかかわらず、長期間その権利を使用しなかった場合は、法律上保護されないとする考え方です。
  • (3)証明困難の救済
    たとえば、賃金契約があった際に生じた資料等は、時間が経つにつれて散逸していくため、何十年後かに事実を証明することが困難になります。そこで、このような場合には、債務者の主張を認める必要があります。すなわち、時効を証明する困難から救済する、といった考え方です。

(1)に関しては取得時効に、(2)(3)に関しては消滅時効に該当する考え方となります。これらの趣旨を踏まえたうえで、時効制度にまつわる問題解決に向けた指針であるといえます。

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消滅時効制度が成立するための要件

消滅時効が成立するには、以下の要件が必要になります。

  • ・権利を行使できる状態である
    権利内容によって、行使できる状態がいつかは異なります。
  • ・権利が行使できる状態になった時点から一定期間が経過している
    上記と同様に、権利内容によって異なりますが、権利を行使できる状態になってから、一定期間経過していることが必要になります。また、債権の場合は、原則10年が消滅時効期間とされています。
  • ・時効であると主張した者が、消滅時効を援用した
    権利を行使可能な状態から、一定期間経過しても、消滅時効は確定的に生じません。より効果的に確定するには、消滅時効を援用する必要があります。つまり、時効の利益を受けることを伝えないと、消滅時効は成立しません。

割増賃金消滅時効までの期間

時間外・休日労働等に対する割増賃金が生じると同時に、労働者が使用者に請求する割増賃金請求権が生じます。その請求権は発生した時(賃金支払日)から2年で消滅時効にかかるものとされてきましたが、法改正によってその期間が変更となったため、次項にて解説していきます。

法改正による消滅時効期間の延長

2020年4月1日より、労働基準法の一部が改正となりました。それによって、賃金請求権の消滅時効期間も改正され、これまでは消滅時効期間が「2年」であったのが、「3年」となりました(5年に延長となりましたが、当面は3年と取り扱われます。)。

消滅時効期間延長の対象は、割増賃金のほかに、金品の返還(労基法23条、賃金の請求のみ)、賃金の支払(労基法24条)、年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項)、未成年者の賃金(労基法59条)等があります。ただし、2020年4月1日以降に支払われる賃金が対象となるので、注意しましょう。

消滅時効の起算日

消滅時効の起算日は、原則民法に則って考えられます。民法上は、消滅時効は権利を行使することができる時から進行する、と定められています。したがって、割増賃金の消滅時効は、労働者が賃金を受け取る時、つまり給料日(支給日)が起算日となります。

消滅時効における、使用者の義務

使用者は、事業場ごとに賃金台帳を作成し、賃金額等の事項を支払時に遅滞なく記入する必要があります(労基法108条)。また、労働者に関する名簿、賃金等の労働関係の重要な書類を3年間保存する必要があります(労基法109条)。

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消滅時効となる場合について

割増賃金等の賃金を請求する権利は、会社が支払う期日から一定期間経過すると、時効によって消滅します(消滅時効)。消滅時効が成立してしまうと、未払賃金等を請求することができなくなります。賃金債権の消滅時効期間は法改正により、3年に延長されましたが、この消滅時効を止める方法として、「時効の更新」と呼ばれる制度があります。これは、それまで進行していた消滅時効の期間がリセットされることを指します。未払状態の割増賃金等があると、労働者からこの時効の更新がなされる場合があります。

本項では、消滅時効の更新をするための手続について、説明していきます。

催告

催告は、時効の完成を猶予する制度を指します。そのため、時効の更新をする場合には、催告があった時から6ヶ月以内に、裁判上の請求等(民法147条)を行わなければなりません。

請求

具体的な方法として、裁判上の請求があります。ただし、訴訟を取り下げると、時効中断の効力はなくなります。その他にも、支払督促の申立、和解及び調停の申立があった際にも時効を中断することが可能です。ただし、支払督促や調停を申し立てる旨を直接、相手方に伝えても効力はありません。

差押え・仮差押え・仮処分

差押え・仮差押え・仮処分は、割増賃金等の賃金について、強制執行や民事保全手続がなされることを意味します。

差押えは、債務者が必要な支払いをしなかった場合に、財産を処分できないようにすることを指しますが、債権者が公正証書等の強制執行力があるものを所持している場合に限り行えます。

また仮差押え・仮処分は、債権者が強制執行力のあるものを所持しなくても、債務者の財産隠しを禁止するために利用します。仮差押え・仮処分が認められると、時効の中断が成立します。

未払割増賃金債権が消滅時効にかかった場合

会社から支払われる割増賃金のうち、消滅時効にかかった部分について、不法行為による損害賠償として割増賃金相当額を請求できる場合があります。

以下にて、未払割増賃金に関する不法行為の成立を認めた裁判例、及び否定した裁判例のどちらもご紹介します。

不法行為の成立を認めた裁判例

【広島高等裁判所 平成19年9月4日判決、杉本商事事件】

事件の概要

Yは、精密測定機器等の販売及び輸出入を業とする会社であり、Xはそこへ入社し、勤続30年以上、内勤業務に従事していました。しかし、Xは入社して以来、時間外勤務手当の支給をほとんど受けることなく長時間時間外労働を行っていました。Xは、このような職場環境下で勤務することに耐えられず、依頼退職をしました。

Yは、会社全体で行った会議や棚卸等に生じた時間外勤務に対しての時間外勤務手当は支払っていましたが、それ以外で生じた個人の時間外勤務に対する手当は未払いでした。

そこで、XはYに対して、退職前の未払い時間外勤務手当や本来受けるべき退職金の額と実際に支払われた金額の差額金、不法行為に基づく損害賠償・慰謝料等を求めて争った事例です。

裁判所の判断

時間外勤務については、会社の管理者が黙示的に命令していたと認めました。また、不法行為に基づく損害賠償・慰謝料等の請求については、精神的慰謝料は認めなかったものの、未払時間外勤務手当に相当する金額は、会社や管理者による労働基準法上の義務違反という不法行為を原因として会社に請求できるとし、時間外勤務の割増賃金相当分の支払いを命じました。

不法行為の成立を否定した裁判例

【東京地方裁判所 平成19年3月28日判決】

事件の概要

医師向けの有料職業紹介事業を営むBへ勤務しているAが、Bに対して、未払賃金、出張旅費、賃金未払等の不法行為に基づく慰謝料及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事例です。

裁判所の判断

Aが請求した賃金及び賞与の一部は、Bの時効援用により消滅しているとして、賞与の一部、出張旅費及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める限度で請求を認容し、不法行為に基づく慰謝料請求を否定しました。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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