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労働契約

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

「労働契約」は使用者と労働者が結ぶ契約となります。社会人だけでなく、学生等をアルバイトとして雇う際にも労働契約を結ぶ必要があります。もっとも、そもそも労働契約とはどのような契約なのか?契約内容はどのような内容を定めれば良いのか?等、疑問や不安に思う方もいらっしゃるでしょう。本記事では、「労働契約」についての全般的な知識を説明していきます。

「労働契約」の意義

「労働契約」とは、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者が給与を支払うことについて、両者が合意することで成立します(労契法6条)。日本での働き方は、日々、多様化してきています。それに伴い、使用者と労働者の労働関係がうまく築けるように制定されたのが労働契約法です。

労働契約は、労働契約法の条文を見る限り、文書での締結を義務付けられていません。そのため、口頭で労働契約を結んだとしても、有効であると考えられるでしょう。ただし、口頭で契約する場合は、労働条件を書面にて通知しなければならないので注意しましょう(労基法15条、労基法施行規則5条4項)。

労働契約における「労働者」とは

労働契約上の「労働者」は、使用者に雇用される側と捉えられることが一般的です。しかし、「労働者」といえるかどうかは、実質的な使用従属性を基準に判断する必要があります。

労働契約における「使用者」とは

労働者と対になる「使用者」は、労働者を雇用した者であり、労働基準法の規制について権限と責任を有しています。

「労働契約」の基本原則

使用者と労働者とが交わす労働契約に関して、その契約の締結や変更はどのようにして行われるのでしょうか?労働契約法3条には、労働契約における5つの原則が定められています。本項では、これら労働契約の基本原則について説明していきます。

労使対等の原則

労働契約の締結時や内容の変更時には、労使間の合意が必要になっていますが、実際には、使用者と労働者との間には力関係の不平等が存在しています。そこで、労働契約法3条1項では、「労働者及び使用者が対等の立場における合意」に基づく労使間対等の原則が定められており、これは労働契約における基本原則を確認したものになっています。

均衡考慮の原則

労働契約法3条2項で定められている均衡考慮の原則は、「就業の実態に応じて、均衡を考慮」すべきものとしており、労働契約の締結時・変更時は均衡が重要であることを示しています。

仕事と生活の調和ヘの配慮の原則

労働契約法3条3項では、現代社会において必要な「仕事と生活の調和にも配慮」すべきものとする均衡考慮原則が規定されており、いわゆるワーク・ライフ・バランスを要請しています。

信義誠実の原則

労働契約は遵守すべきものとして、労働契約法3条4項には「信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行」する信義誠実の原則が定められています。これは、民法上の一般原則を労働契約にも適用するものと考えられます。

権利濫用の禁止の原則

契約を締結した当事者は、契約に基づく権利を濫用してはならないとされており、労働契約法3条5項では、「権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」と権利濫用の禁止の原則が定められています。

労働契約法の適用範囲

労働契約法は、原則として使用者と労働者との労働契約に適用されます。しかしながら、労働契約が存在しない職業等、労働契約法が適用されないケースもあります。以下でみていきましょう。

適用範囲外のもの

国家公務員・地方公務員は任命権者との間に労働契約がなく、労働契約法は適用されないものと定められています(労契法21条1項)。また、同居している親族は経済関係等の結びつきが強いことが考えられるため、一般的な使用者と労働者の関係と同様の扱いは適当でないとし、同居の親族のみを使用する場合の労働契約については適用しないと定められています(同法同条2項)。

さらに、特例として船員法の適用を受ける船員に関しても、労働契約法の一部は適用しないものとされています(同法20条1項)。

「労働契約」の締結

労使間で労働契約を結ぶ際、使用者が労働者に対して労働条件を明示する必要があります。使用者が合理的な内容の就業規則を労働者に周知していた場合においては、就業規則で定められている条件が労働条件となります。

「労働契約」の変更

労働者と使用者が合意

労働契約の変更をする場合は、労働者と使用者の合意が必要となります(労契法8条、9条)。また、合意による変更であっても、就業規則に定められている労働条件を下回る変更はできないので、注意しましょう(労契法12条)。

使用者が一方的に変更

就業規則によって、労働条件を不利益に変更する場合には、変更内容が合理的かつ、全労働者に周知させていることが必要となります(労契法10条)。

「労働契約」の終了

期間の定めのない労働契約の場合

期間の定めがない労働契約の終了は、辞職(労働者自ら労働契約を解約すること)、合意解約(労使間で労働契約の解約を合意すること)、解雇(使用者が一方的に労働契約を解約すること)の3つのケースに分けることができます。

より詳しい内容は、以下のページをご覧ください。

退職及び解雇

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の場合

期間の定めがある労働契約(有期労働契約)の場合は、原則、期間の満了によって自動的に契約終了となります。ただし、有期労働契約については、労働契約法18条、19条において特別なルールが定められています。なお、やむを得ない理由がある場合には、期間の途中であっても契約を終了させることも可能です(労契法17条1項)。

解雇の場合

解雇は、使用者が労働者に対して一方的に労働契約を解約することをいいます。ただし、客観的に合意的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は解雇することはできません(労契法16条)。また、使用者が経済的な理由により解雇せざるを得ない場合に行う整理解雇や、解雇と間違いやすい退職勧奨といったものもあります。それらについては、以下のページにて詳しく説明していますので、ご覧ください。

退職勧奨について

「労働契約」の禁止事項

労働者に労働契約違反があった場合に、会社側がその労働者に対してペナルティ等を課すといった行為は禁止されています。これは法律においても、労働者が不当に会社に拘束されないよう、労使間で労働契約を結ぶ際に契約に入れてはならない禁止事項が定められています。本項では、その禁止事項について説明していきます。

賠償予定

例えば、労働者の契約不履行を防止するために、「労働者が遅刻した場合は、罰金○○円を科す」といったように、会社が労働者との間で、労働契約に違反した場合に違約金や損害賠償を予定する契約を結ぶことは、禁止されています(労基法16条)。

前借金相殺

労働者が労働をすることを条件に会社から借金を負う形をとらせ、給与からその借金を一方的に天引きし、返済させるような契約は禁止されています(労基法17条)。

強制貯金

労働者に対して、社員旅行の積立等の理由にかかわらず、給与の一部を強制的に会社に積み立てさせるようなことは禁止されています(労基法18条1項)。ただし、社内預金制度等があり、労働者の意思に基づき給与の一部を委託させることは許されています。

黄犬契約

黄犬契約とは、労働者が労働組合に加入しない、又は労働組合から脱退することを条件とする労働契約のことをいいます。このような労働契約を結ぶことは、労働組合の団結権を侵害するものであるとして、禁止されています(労組法7条1号)。

有期雇用契約の場合について

有期雇用契約とは、会社と労働者が労働期間を定めたうえで、労働契約を結ぶことをいいます。また、この場合の労働期間の上限は原則3年と定められています。ただし、例外的に5年の契約期間に該当する労働契約もあります(労基法14条1項)。

労働契約と就業規則、労働協約、法令の関係

労働契約にかかわる法令や就業規則等の関係性と優先順位について解説していきます。まずは、優先順位をみていきましょう。

  • (1) 法令(労働基準法等)
  • (2) 労働協約
  • (3) 就業規則
  • (4) 労働契約

労働協約(労働組合と使用者が結んだもの)、就業規則(使用者が労働基準法に基づき、労働条件等を定めたもの)、労働契約(使用者と労働者個人間で結んだもの(詳細は項目1))が、労働基準法等の法令(強制法規)以下の内容であれば、法令が最優先です。

就業規則は労働協約に反することはできず(労基法92条)、就業規則の基準に達しない労働契約については、該当部分が無効となるため(労基法93条)、無効となった部分は就業規則の基準によります(労契法12条)。このような関係性であるため、上記のような優先順位となります。

就業規則、労働協約についての詳細は、以下の各ページをご覧ください。

就業規則について
労働協約について

労働契約と雇用契約の関係

よく耳にする「雇用契約」という言葉は、民法で用いられる概念であり、実際に民法623条で定義されています。対して、本記事のテーマである「労働契約」は、労働関係諸法規で用いられる概念となります。このようにして並べると、2つが異なる意味に感じますが、実質的には雇用契約と労働契約は同一であると捉えられています。

しかしながら、労働者に着目すると、民法と労働法の概念や範囲は同一ではないこと等が挙げられ、両者は同一ではないといった議論を生んでいます。

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