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資格審査

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

本記事においては、まず、労働組合の資格審査とは何か、資格審査はどのようなときに、どのような形で行われるのかといった点につき解説します。次に、使用者の立場から、資格審査に不備があったことを理由として、不当労働行為の救済命令の取消を求めることができるかどうかという点につき、判例上の判断を概観します。最後に、使用者と労働者団体が団体交渉を行う場合において、資格審査を経ていない労働者団体との交渉に応じるべきか否か、応じなかった場合に何らかのペナルティを受けるリスクはないかといった点につき解説します。

労働組合の資格審査について

労働組合は、労働委員会に証拠を提出し、労働組合の定義(労組法2条)及び規約の必要的記載事項に関する規定に適合すること(労組法5条2項)、すなわち、労働組合が「法適合組合」であることを立証しなければ、労働組合法に規定された手続に参与する資格を有さず、かつ、労働組合法に規定される救済を与えられません(労組法5条1項)。この適法性の判断について、労働委員会による「資格審査」と呼ばれています。資格審査は、一度適法である(法適合組合である)と認められた後に、永続的に適法性が認められるわけではなく、個別の手続又は救済の都度、資格審査が行われます。

資格審査はどのようなときに行われるのか

資格審査は、労働組合の法人登記(労組法11条)、労働協約の地域的一般的拘束力の申立て(労組法18条)、労働委員会の労働者委員の推薦(労組法19条の3 2項、19条の12 3項)、不当労働行為の救済の申立て(労組法27条以下)等、労働組合法に規定される手続を申し立て、又は救済を受ける場合に行われます。

資格審査の具体的な内容

規約記載事項の場合

資格審査のうち、組合規約の記載事項の審査については、記載内容をチェックする書面審査(形式審査)のみで足りますが、労働組合が定義に合致するかどうか(主体、自主性、目的、団体性)の審査は、本来立ち入った実質審査が必要とされます。

しかしながら、労働委員会の実務上は、これらの要件該当性についても、基本的には書面審査によって判断されており、書面上問題が看取される場合において、労働委員会が書面上の補正を指導し、労働組合が当該補正に従うという運用が一般的に行われています。

労働組合法についてのさらに詳しい解説は、以下のページをご覧ください。

「労働組合法」に関する詳しい解説は、別ページで解説します。

団体交渉

資格審査に不備があった場合、使用者は不当労働行為の救済命令の取消を求めることができるか

資格審査に不備があった場合、使用者側として、不当労働行為の救済命令の取消を求めることができるのかどうかは問題となり得ますが、判例においては、資格審査に手続上又は実体判断上の瑕疵があったとしても、使用者は、そのことのみを理由に救済命令の取消を求めることはできないとされています(最高裁 昭和32年12月24日判決)。

その理由として、資格審査を労働委員会が行う義務は、労働委員会が、労働組合が法適合組合の要件を具備するよう促進するという国家目的に協力することを要請されているという意味において、国家に対して負う義務であり、使用者の法的利益を保障するという意味で使用者に対して負う義務ではないことから、労働組合法が使用者の法的利益を保障しているとはいえないということを述べています。

労働者団体と使用者が団体交渉を行う場合の懸念について

ここでは、団体交渉における懸念点について2つあげ、説明します。なお、【団体交渉】に関する詳しい解説は、以下のページに譲ります。

団体交渉

資格審査を経ずして、団体交渉を行うことができるのか

資格審査は、不当労働行為の救済申立て等の手続を申し立てた際に、労働組合が、労働組合法上の救済を受け得る法適合組合であるか否かを判断するための手続です。もっとも、団体交渉権が、憲法28条において保護される労働者の権利でもあることからしますと、資格審査を経ることは、労働組合が当事者として団体交渉を行うための要件ではないといえます。そのため、労働組合は、資格審査を経る前から、団体交渉を行い得ると考えられます。

使用者は団体交渉の申し入れをした労働者団体に対し資格審査を経ていないことを理由に団体交渉を拒否することができるのか

労働組合法上、使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉することを正当な理由なく拒むことは禁止されています(労組法7条2号)。そこで、資格審査を経ていないことを理由に団体交渉を拒否することが、正当な理由のない交渉拒否なのか否かが問題となりますが、団体交渉権は、法適合組合であるか否かとは別に、憲法28条によって保障された権利であることからすれば、資格審査を経ていないことを理由に団体交渉を拒否することは、労働組合法上又は一般に民事法上違法になる可能性があると考えられ、拒否することについては慎重に判断することが求められます。

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