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「労働者の権利と義務」について

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働者を使用する使用者にも、使用者に使用される労働者にも、立場に応じた権利・義務があります。それぞれが持つ権利・義務については、お互いに理解し、知っておく必要があるでしょう。そこで、本記事ではまず、労働者の権利・義務について解説していきます。

労働者の権利

労働契約法においては、労働者は「使用者に使用され労働し、賃金を支払われる者」と定められています(同法2条)。そして、労働者は働くにあたって、さまざまな権利を有しています。その権利について、本項でみていきましょう。

また、労働契約や労働者についての詳細は、以下の各ページをご覧ください。

労働契約について
「労働者」について

賃金を受け取る権利

労働者には、提供した労働に対して会社から賃金を受け取る権利があります。賃金が確実に労働者に支払われるように、支払い方法にも決まりがあります。また、賃金には割増賃金や退職金等も含まれます。

「先取特権」

先取特権とは、債権を優先的に回収できる権利のことです。一般に、お金を支払ってくれない相手から支払ってもらうためには、裁判をして確定判決を得るか、和解調書を作成する必要があります。しかし、先取特権では、権利を有していると証明することができれば、強制執行と同様のことができ、強制的にお金を回収することが可能になるので、通常より時間がかかりません。よって、残業代等の賃金は、他の債権よりも優先して支払いを受けることができます。

休憩・休暇の権利

使用者は、労働時間が一定以上の場合は規定の休憩時間を与えなければなりません(労基法34条)。また、労働者には、所定の休日以外に給与の支払いを受けて休める年次有給休暇を取得する権利も与えられているため、該当者にはこれらの休暇を与える必要があります(同法39条)。

休暇についての詳細は、以下のページをご覧ください。

休暇について

労働者の時季指定権

年次有給休暇は法律で定められている労働者の権利であるため、原則として労働者が請求した時季に与えなければなりません。ただし、請求された時季が業務の正常な運営を妨げる場合、使用者は他の時季に変更する権利があります(労基法39条5項)。

使用者の時季変更権についての詳細は、以下のページをご覧ください。

年次有給休暇の時季変更権について

退職する権利

民法では、雇用期間の定めがない労働者の場合、2週間の予告期間をおけばいつでも退職することができるとされています(同法627条1項)。労働基準法においてこの民法と異なる規定はなく、労働者は民法の規定に従って自由に退職する権利があるとされています。

民法における退職については、以下のページをご覧ください。

民法における退職の定め

労働者の義務

労使間で労働契約を結んだ場合、使用者には契約上定めた賃金の支払い等の義務が生じ、労働者には労務の提供等の義務が生じます。本項では、労働者の義務をいくつかに分けて解説していきます。また、以下の義務は就業規則等に定め、周知するべきでしょう。

労務提供義務(誠実労働義務含む)

労働契約を結んだ労働者には、会社に対して労務を提供する義務が発生します。ただし、ただ単に出勤して働くだけではなく、労働契約で交わした内容の労務を提供する義務があります。また、使用者には労働者に対して業務についての命令等をする権利もあり、労働者はその命令に従う義務が生じます。それにより、業務を円滑に進め、労働契約に沿った労務を提供することができます。

秘密保持義務(守秘義務)

労働者は、勤務している会社の重要な情報等を外部へ漏らすことは禁止されており、会社の就業規則にも規定されている場合がほとんどです。また、在職中の労働者だけでなく、退職者に対しても適用する場合があります。

競業避止義務

この義務は、労働者が自身の勤めている会社と競合している会社へ雇用されたり、退職後に独立して競合するような会社をつくったりする等の行為を禁止しています。誓約書や就業規則等に規定し、義務違反した場合は罰則等を課す場合もあります。

信用保持義務

信用保持義務とは、労働者は会社内外にかかわらず、会社の信用を失墜させるような行為を禁止する義務のことを指しています。

例えば、労働者が退社後や休日等の勤務時間以外に行った行為が、上記に該当すれば規制の対象となり得ます。また、業種によっては暴力団等の反社会的勢力とのかかわりを禁止しているケースも多いです。

企業秩序維持義務

使用者は、労働者に業務に関する指示や命令をします。それに対して、労働者はその指示等に従わなければなりません。従わなかった場合、職場の秩序が維持できなくなってしまうおそれがあるため、従う義務が労働者には課されています。判例においても、「職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、企業秩序に服することを求めることができる」と判示しています(最高裁、昭和54年10月30日第3小法廷判決)。

職務専念義務

労使間で結ぶ労働契約はお互いに義務を負う契約であり、労働者は、就業時間中は業務に専念する義務を負っています。例えば、労働者が転職をするために、勤務中に資格等の勉強をした場合は、職務専念義務に違反したことになります(会社での業務に必要なため勉強する場合には、必ずしも職務専念義務に違反することにはなりません)。何が違反行為に該当するか否かは、会社の職務内容等によって異なるため、就業規則等に規定しておくと良いでしょう。

兼業禁止義務

会社が就業規則等に兼業禁止義務を規定している場合、労働者が副業をすることは禁じられています。しかしながら、副業を許可した場合には認められる「兼業許可制」を規定している会社が多くなっています。兼業許可制をとっている会社が労働者の要求を許可しなかった場合、その理由によっては会社が労働者の権利を侵害したとされ、無効となるケースもあるので注意しましょう。

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