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特別休暇の「慶弔休暇」を解説 社内で導入する際の注意点とは

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

使用者は、労働者の心身の健康等のために適切に休暇を与える場合がありますが、そのひとつに、労働者本人や近親者の結婚や出産、不幸等を理由とする「慶弔(けいちょう)休暇」を与えることがあります。

本記事では、慶弔休暇について、取得できる者の範囲や日数、給与支払の必要性の有無等、企業内に導入する際の注意点等を踏まえて解説していきます。

慶弔休暇の定義

慶弔休暇とは、お祝い事である「慶事」や、お悔やみ事である「弔事」の際に取得できる、特別な休暇をいいます。慶事や弔事の具体例としては、本人や近親者の結婚や出産等(慶事)、近親者の死亡やそれに伴う葬祭等(弔事)が挙げられます。

多くの企業で制度化されている慶弔休暇ですが、これは、法律上使用者が労働者に対して付与することが義務づけられている休暇(法定休暇)ではなく、使用者の裁量で付与される休暇(特別休暇)です。したがって、慶弔休暇の制度がない場合、労働者は年次有給休暇等を使用することになります。

特別休暇の概要や法定休暇との違い等、詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

休暇

導入時に必要な就業規則の策定

慶弔休暇を制度として導入するためには、企業内のルールについてまとめた就業規則に、取得条件をはじめとした規程を設ける必要があります。具体的には、慶弔休暇に該当する事由や対象となる近親者の範囲、付与する休暇の日数、休暇中の賃金の取扱い等について規定します。なお、新たに慶弔休暇に関する規定を設けた場合、変更した就業規則は行政官庁に届け出る必要があります(労基法89条1号)。

また、慶弔休暇の制度をより実用的なものにするためにも、朝礼の場や社内報等で、労働者に当該制度について周知することが大切です。

労働基準法
(作成及び届出の義務)第89条

常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

① 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

慶弔休暇を取得できる範囲

法律上、慶弔休暇に関する規定はないため、慶弔休暇制度の利用対象となる労働者についても定められていません。したがって、例えば「1年以上勤続している正社員のみ取得できる」とする等、雇用形態や勤続年数によって制度の利用対象者を限定することも可能です。

なお、正社員用の就業規則に慶弔休暇の規定があっても、パートタイマー用の就業規則に当該規定を設けていなければ、パートタイマーは慶弔休暇制度を利用できません。ただし、パートタイマー用の就業規則がない場合は、正社員用の就業規則が適用されるため、慶弔休暇についてパートタイマーへの適用を除外していなければ、パートタイマーも慶弔休暇を利用できることになります。これは、契約社員や嘱託社員、アルバイトとして働く労働者についても同様です。

入社して間もない労働者への対応

入社して間もなく慶事や弔事があった労働者から、慶弔休暇の取得を請求された場合、使用者は、就業規則に従って休暇を付与しなければなりません。換言すれば、就業規則に「入社後○ヶ月以内の労働者は慶弔休暇を取得できない」旨を規定していれば、使用者は慶弔休暇を付与する必要はありません。

一般的に、半年~1年程度継続勤務している労働者に対して、慶弔休暇を取得できる権利を付与する企業が多くみられます。

慶弔休暇の日数

慶弔休暇は、事由や労働者との関係性に応じて、付与する日数が定められます。企業によって異なるため一概には言えませんが、一般的に、以下の日数を付与するのが平均的なようです。

【慶事休暇の例】

  • ・本人が結婚した場合:3~5日
  • ・子が結婚した場合:1~2日
  • ・配偶者が出産した場合:1~3日

【弔事休暇の例】

  • ・0親等(配偶者)が亡くなった場合:7~10日
  • ・1親等(父母、子、配偶者の父母)が亡くなった場合:5~7日
  • ・2親等(祖父母、兄弟姉妹、孫)が亡くなった場合:2~3日
  • ・3親等以上の親族が亡くなった場合:1日

※遠隔地に出向く必要がある場合、往復に必要な日数を加算するよう取り扱う企業もあります。

慶弔休暇の分割取得

慶弔休暇は、基本的には、就業規則に明記したとおりに付与することになります。特に定めがない場合には、原則として、休暇の起算日から連続して付与するべきでしょう。

もっとも、最近では、分割付与を希望する労働者も出てきているようです。このようなとき、特に就業規則に規定がない場合には、労働者からの請求に応じて分割して付与する必要があると考えられます。

運用上の混乱を招かないためにも、「連続取得を原則としたうえで、使用者が認めた場合には分割取得を可能とする」というような柔軟な規定を設けておくと良いでしょう。

休日の取扱いについて

慶弔休暇中に休日が挟まる場合、休日も慶弔休暇の日数に含めて計算するのが原則です。もっとも、使用者の判断によって含めないことも可能であり、どちらにするのか(慶弔休暇を暦日単位で付与するのか、労働日単位で付与するのか)、就業規則に明記する必要があります。

休暇と休日の違いについては、下記の記事で説明しています。

休暇と休日の違い

慶弔休暇が発生するタイミング

慶弔休暇の起算日は、就業規則に規定されたとおりとするのが原則です。

もっとも、例えば近親者が亡くなった日と葬儀まで期間が空く場合、慶弔休暇の起算日によっては、慶弔休暇の目的が果たされないおそれがあります。慶弔休暇の取得時期に関しては、臨機応変に対応できるような制度にするのが理想です。

そこで、就業規則に起算日を明記して取得時期に関する無用なトラブルを防ぐとともに、臨機応変な対応ができるよう、「会社の承認がある場合には、例外を認める」といった補則を加えておくと良いでしょう。

慶弔休暇の有効期限

慶弔休暇は、その性質上、取得できる事由が発生してからある程度の期間内に付与することが望ましいので、就業規則で有効期限等を設定することをお勧めします。

一般的に、弔事休暇に関しては、近親者が亡くなった日から1週間以内というように短く設定されるケースが多いのに対して、慶事休暇に関しては、半年~1年程度と設定されることが多いようです。なぜ慶事休暇の有効期限が長めに設定されているのかというと、事由の発生する日(結婚式や出産日)が大幅に変更となる可能性があったり、必ずしも入籍・結婚式・新婚旅行を連続して行ったりするとは限らないため、休暇の期日を定めにくいからです。

慶弔休暇中の賃金について

慶弔休暇中の賃金の支払に関する法律の規定はありません。そのため、無給とするか有給とするかは、使用者の判断に委ねられます。ただし、就業規則に賃金の支払に関する規定を設けると、使用者はこの規定に拘束されることになります。

無給とする場合の注意点

一般的に、慶弔休暇を有給として取り扱う企業が一般的です。そのため、慶弔休暇に関する規定があるにもかかわらず賃金の支払について明記せずにいると、労働者が「有給として取り扱われる」と誤解し、トラブルに発展するおそれがあります。

慶弔休暇を無給とする場合は、就業規則にその旨を明記することが重要です。

慶弔見舞金の支給

「慶弔休暇」と併せて「慶弔見舞金」を支払う制度を導入している企業もあります。慶弔見舞金とは、労働者やその近親者の慶事あるいは弔事に対して、使用者が支給するお金をいいます。慶弔休暇と同じく、法定の制度ではありませんが、この制度を導入すると、労働者の企業への帰属意識や愛着心を強めることに繋がります。支給する見舞金の種類や金額に関しては、就業規則に定めておきましょう。

○慶弔見舞金と支給額の例

  • ・結婚祝金:結婚したときに支給する(3~5万円)
  • ・出産祝金:本人または配偶者が出産したときに支給する(1万円)
  • ・死亡弔慰金:本人や近親者が亡くなったときに支給する(100~3000万円)
    ※本人が亡くなったときの支給額は、業務中か業務外での死亡かで異なります。
  • ・傷病見舞金:本人が病気や怪我等で入院する等、欠勤したときに支給する(10~50万円)
  • ・災害見舞金:本人が自然災害や人為的災害(火災・事故等)の被害に遭ったときに支給する(2~5万円)

慶弔休暇の申請に関する定め給

慶弔休暇は、法律で定められた休暇ではないため、事前の申請を義務づけることが可能です。また、申請方法も企業ごとに定められます。労働者がスムーズに申請手続きを行えるようにするためにも、申請する際のフォーマットや書類等を用意しておくと良いでしょう。フォーマットや書類等の形式としては、使用者側が次の事項等を把握できる内容であれば問題ありません。

  • ・申請者名
  • ・申請理由
  • ・希望日程
  • ・連絡先

なお、特に弔事の場合、虚偽の事由での取得を防止するために、証明書(会葬礼状や死亡診断書・火葬許可証のコピー等)の提出を求めることもできます。また、弔事は突然発生するため、休暇を取得する連絡のみを取得前に行わせ、正式な申請に関しては事後に行うことを認めるという運用にするのが良いでしょう。

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