初回1時間 来所・zoom相談無料

0120-630-807

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません 会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

裁量労働制

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

裁量労働制は、仕事の進め方や時間配分等を労働者に委ねるのが望ましい業務について、従業員が各々に適した多様な働き方をするための制度です。
本人の裁量によって1日の労働時間を管理することが生産性の向上のためにも有用であるということから、働き方改革においても注目されています。

有効に活用すれば使用者・従業員共にメリットの大きい制度ですが、残業時間を管理しなければならないことや賃金の計算方法など、注意しなければならない点もあります。

このページでは、裁量労働制の概要について簡単に解説していきます。

裁量労働制とは

裁量労働制とは、あらかじめ一定の時間を定めて、実際に労働者が働いた時間にかかわらず、定められた時間分を労働したとみなす制度です。

この制度は、1987年に導入されて、1998年には法改正が行われ対象が広げられました。さらに適用対象を拡大することを求める声もありますが、過酷な労働を強いられる労働者が増えることが懸念されており、議論されています。

裁量労働制が適用されれば、出退勤時間が自由になります。そして、賃金は「実際の労働時間」ではなく、「あらかじめ決められたみなし時間」に応じて決定されます。

裁量労働制と他の制度の違い

裁量労働制には、他にも似たような制度があります。労働時間の自由度を上げるための制度について、以下で解説します。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は、1日単位ではなく、最長3ヶ月以内の一定期間における総労働時間を定め、従業員はその時間内で日々の始業・就業時刻を自由に定めて働く制度です。

裁量労働制と比べると、時間配分が労働者にとって自由であること等には共通点があります。しかし、裁量労働制は事前に決めた時間分を働いたと「みなす」制度です。一方、フレックスタイム制は、コアタイム以外の働く時間を自由にする制度であり、実際に働いた時間のみが労働時間になります。

なお、フレックスタイム制については以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

フレックスタイム制とは

高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門知識を活用して働いており、労働時間と成果の関連性が低い職務の内容が明確に定められていて、年収が1075万円以上の従業員について適用される制度です。

裁量労働制とは異なり、高度プロフェッショナル制度が適用される従業員には、労働基準法が適用されなくなります。そのため、休日労働や深夜労働に関する割増賃金は適用されません。

短時間で成果を出せば、それだけ働く時間が短くて済む等、生産性の高い従業員にとってメリットのある制度です。しかし、成果が出たと評価するのは簡単ではなく、場合によっては長時間労働が横行するリスクがあることも否定できません。

なお、高度プロフェッショナル制度について、さらに詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

高度プロフェッショナル制度とは

事業場外労働のみなし労働時間制

事業場外労働のみなし労働時間制とは、外回りや出張等の外出が多い従業員について、事前に決めた時間だけ働いたとみなす制度です。

裁量労働制もみなし労働時間制に含まれますが、事業場外労働のみなし労働時間制とは適用対象が異なります。事業場外労働のみなし労働時間制は、営業職の外回りの時間のように「実労働時間を算出するのが難しい」場合を対象としています。

この制度は、あくまでも実労働時間を把握するのが困難な場合に適用されるものであるため、頻繁に会社と連絡を取っていたり、出退勤の際に必ず会社に来ていたりする者に対しては適用されません。

なお、事業場外労働のみなし労働時間制について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

みなし労働時間制とは

みなし残業制(固定残業代制)

みなし残業制(固定残業代制)とは、事前に定めた時間だけ時間外労働が発生したとみなして割増賃金を支払う制度です。定めた時間よりも時間外労働が短かったとしても、割増賃金を減らさないのが特徴です。制度の採用に当たっては、一定の要件(明確区分性など)を充足していなければ、割増賃金を払ったものと認められないことがあるため、注意が必要です。

なお、裁量労働制の場合には、事前に定めた労働時間より長く働いても割増賃金は増額されません。一方で、みなし残業制(固定残業代制)の場合には、時間外労働が事前に定めた時間よりも長かった場合には、超過した時間についての割増賃金が支払われます。

みなし残業制とは

裁量労働制の労働時間のしくみ

裁量労働制はみなし労働時間を採用しています。
みなし労働時間は、実際に働いた時間のことをいうのではなく、あらかじめ定めておいた時間働いたとみなす時間のことです。

みなし労働時間は、実態に応じた適切な労働時間を定めなければなりません。ある仕事を行う者が、その仕事をするために通常ならば9時間かかるのであれば、みなし労働時間は9時間に設定する必要があります。

時間外労働・残業代

裁量労働制は、事前に決めた時間分を働いたと「みなす」制度なので、みなし労働時間よりも長く働いたとしても、その時間の残業代は発生しません。

基本的に、裁量労働制には「時間外労働」や「残業」といった概念は存在せず、残業代(時間外労働割増賃金)は発生しません。そのため、みなし労働時間より長く働いたとしても、契約した時間分のみが給与となります。

例えば、みなし労働時間が8時間だったとして、実際には9時間働いたとしても8時間分の給与のみが支給されます。

ただし、みなし労働時間について、法定労働時間(1日8時間)を超えている場合には、その時間分は時間外労働とみなされます。
具体的には、みなし労働時間を1日9時間と設定していた場合、1時間分は時間外労働として割増賃金が加算されます。

深夜労働

裁量労働制においても、深夜労働に対する割増賃金は支払わなければなりません。
深夜労働は、午後10時から午前5時の労働とされており、これに対しては割増賃金を支払うことになります。

通常の労働者のケースでは、働いた時間あたりの賃金に加えて25%の割増賃金を支払う必要があります。
ただし、裁量労働制の労働者については、働いた時間あたりの賃金は支払ったとみなされます。そのため、割増の部分である25%のみを支払います。

なお、通常の労働者について、深夜労働が時間外労働でもある場合には25%を上乗せして、50%の割増賃金を支払う必要があります。しかし、裁量労働制の労働者は、働いた時間あたりの賃金だけでなく時間外労働割増賃金も給与に含まれているため、25%のみを支払います。

休日労働

裁量労働制が適用されている労働者についても、法定休日に労働した場合には、休日労働割増賃金を支払う必要があります。

法定休日とは、「週に1日又は4週に4日」について与えられる休日です。通常の労働者の場合には、法定休日の労働に対して35%の割増賃金を支払います。
裁量労働制が適用される場合には、通常の労働時間に対する賃金は支払われたことになっているため、支払う賃金は次のようになります。

休日労働 35%
休日労働かつ時間外労働 35%
休日労働かつ深夜労働 60%
休日労働かつ時間外労働かつ深夜労働 60%

割増賃金について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

割増賃金とは|割増賃金や請求された場合の対処法について

36協定

裁量労働制が適用される場合であっても、時間外労働や休日労働を行わせるためには36協定を締結しなければなりません。36協定を締結しないままで時間外労働などを行わせると違法になります。

そして、裁量労働制であっても、36協定で決めた労働時間の上限を超えることはできません。つまり、1ヶ月の時間外労働を20時間以下と定めた場合には、20時間を超えると違法になってしまいます。

裁量労働制の種類と対象職種

裁量労働制は、専門業務型と企画業務型の2種類があります。そして、どちらであっても、裁量労働制を適用できる職種は限定されています。
それぞれについて、以下で解説します。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制とは、専門性が高い職種に対して適用される、事前に労使で定めた時間だけ労働したとみなす制度です。
専門業務型裁量労働制の対象となる業務は、弁護士や税理士などの専門職や記者、デザイナー、プログラマー等限定的に列挙された業務のみです。

ただし、単にこれらの業務に従事していることや肩書が与えられていることだけでなく、対象業務の遂行の手段、及び時間配分等の決定について、使用者が具体的な指示をしないことが条件になっています。

そのため、記者やデザイナー等であっても、会社や上司から細かい指示を受けながら仕事を進めているケースなど、業務の進め方や時間配分の決定について本人の裁量権がない場合には、裁量労働制の対象とは認められないこともあります。

対象職種

専門業務型裁量労働制の対象となる業務は、厚生労働省令及び厚生労働大臣告示で19業務が指定されています。
以下の中から、対象となる業務を労使で定めます。

  • (1) 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
  • (2) 情報処理システムの分析又は設計の業務
  • (3) 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送番組若しくは有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送の放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務
  • (4) 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  • (5) 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
  • (6) コピーライターの業務
  • (7) システムコンサルタントの業務
  • (8) インテリアコーディネーターの業務
  • (9) ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  • (10) 証券アナリストの業務
  • (11) 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  • (12) 学校教育法に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
  • (13) 公認会計士の業務
  • (14) 弁護士の業務
  • (15) 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
  • (16) 不動産鑑定士の業務
  • (17) 弁理士の業務
  • (18) 税理士の業務
  • (19) 中小企業診断士の業務

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、企業で働く労働者のなかで「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務に従事している者」を対象としています。

専門業務型裁量労働制よりも、適用対象として導入するための要件はより厳しく設定されています。また、導入できる事業場は本社・本店等、対象業務が存在する事業場だけです。

さらに、導入にあたっては、労使委員会を設置して必要事項を決議し、所定の様式により所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要な点に注意しなければなりません。

対象職種

企画業務型裁量労働制の適用対象は、業務内容、事業場の性格、労働者の資質の3点から判断されます。
対象となる業務及び事業場は、以下のとおりです。

【対象業務】

  • 事業場の事業の運営に関する業務(例えば、事業の運営に影響を及ぼす業務や、事業場独自の事業戦略に関する業務等)
  • 企画、立案、調査及び分析の業務
  • 遂行の方法を、大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務
  • 企画・立案・調査・分析という相互に関連しあう作業を、いつ、どのように行うか等についての広範な裁量が労働者に認められている業務

【対象となる事業場】

  • 本社又は本店である事業場
  • 事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場
  • 独自に、事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社又は支店等のある事業場

専門業務型裁量労働制の場合と同様、単にこれらの業務を担当しているだけでなく、「業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関して、使用者が具体的な指示をしないこと」が裁量労働制の対象となるための条件とされています。

さらに、従業員の資質についても「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」という限定もあります。「適切に遂行するための知識、経験」としては、3年~5年程度の職務経験が目安とされているため、新入社員等には適用できないと考えられます。

裁量労働制を導入するメリット

裁量労働制を導入することは、労使双方にとってメリットのあることです。
具体的なメリットについて、以下で解説します。

労働者のモチベーションアップ

裁量労働制を導入することのメリットとして、労働者が時間に縛られず業務ができるため、モチベーションが上がることが挙げられます。

効率よく仕事をして、短い時間で成果を上げることができれば、給与は変わらずに仕事が早く終わるため、仕事のスピードを上げるための努力をするでしょう。
そうなれば、労働者は時間に余裕ができるため、疲労などによって効率が落ちたまま働かずに済みます。

会社にとっても、労働者がより良い成果を出すことを期待できるようになります。

人件費が予測しやすい

裁量労働制では、一般的な働き方で生じる時間外労働に対する割増賃金(残業代)など、変動しやすい要因を考慮に入れる必要がほとんどありません。使用者にとって、月々にかかる人件費が予測しやすくなることは、裁量労働制を導入する大きなメリットとなり得ます。

裁量労働制を導入するデメリット

裁量労働制は、運用を誤ると多くの問題を生じさせるおそれがあるため、デメリットをしっかりと認識しておく必要があります。
裁量労働制の主なデメリットについて、以下で解説します。

導入の手続が複雑

裁量労働制は、導入のためには労使協定の締結や、労使委員会の設置など、一定の手続を行うことが要件となっています。手続に不備があれば、裁量労働制が無効となるおそれもあります。また、実施後も就業規則の改定や、苦情処理窓口の設置、労働基準監督署への報告なども行わなければなりません。

これら多くの手続を行わなければならないこと、またその煩雑さは、裁量労働制を導入するうえでのデメリットといえるでしょう。

過重労働となるおそれ

裁量労働制のもとで働く労働者は、その専門性や職務経験によって高い成果を出すことが期待されていますが、1日8時間の労働では到底出せないような成果を要求されてしまうと、長時間労働をすることになり過重労働に陥ってしまいます。通常であれば、長時間労働によって残業代が高額になるため、使用者側にとっての歯止めとなりますが、裁量労働制では残業代は生じないので、長時間労働が抑制されにくくなっています。

過重労働による健康被害が起こらないようにするためには、実労働時間の把握や、定期的な健康診断等を確実に実施することが必要です。

組織づくりが進まないおそれ

裁量労働制のもとでは、労働者が労働時間の配分を自身の裁量で行えるメリットがあります。しかし、裏を返せば労働者同士がコミュニケーションをとる機会が少なくなることを意味しています。使用者として意図する組織づくりが進まなくなることは、デメリットになり得ます。

裁量労働制を導入した後も、労働者同士が組織のなかで良好なコミュニケーションを維持できるような仕組みづくりが必要になります。

裁量労働制の導入要件

専門業務型と企画業務型では、導入の手順が異なります。それぞれの導入手順について、以下で解説します。

なお、裁量労働制の導入までの流れについては次の記事で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

裁量労働制の導入方法

専門業務型裁量労働制の場合

専門業務型裁量労働制を導入する場合には、次の手続きが必要です。

  1. 労使協定の締結
  2. 労働基準監督署への届出

労使協定では、次のような事項を定める必要があります。

  • 対象とする業務
  • 業務を遂行する手段
  • みなし労働時間
  • 健康、福祉を確保するための措置
  • 苦情を処理するために実施する措置
  • 労使協定の有効期間(3年以内が望ましい)
  • 健康確保の措置や苦情処理の措置などの記録の保存(有効期間の満了から3年間)

企画業務型裁量労働制の場合

企画業務型裁量労働制を導入する場合には、次の手続きが必要です。

  1. 労使委員会を設置する
  2. 労使委員会で、出席している委員の4/5以上によって決議する
  3. 労働基準監督署に決議を届け出る
  4. 裁量労働制を適用する労働者から同意を得る

なお、労使委員会では次の事項を決議しなければなりません。

  • 対象とする業務
  • 対象とする労働者の範囲
  • みなし労働時間
  • 労働者の健康及び福祉を確保するための措置
  • 労働者からの苦情を処理するための措置
  • 労働者の同意を得なければならないこと等

労使委員会の決議は、有効期間の満了から3年間は保存する必要があります。

裁量労働制の適用範囲拡大の議論について

裁量労働制は使い勝手の悪い制度だと考えられており、適用範囲を拡大するための議論が行われています。

働き方改革関連法では、裁量労働制の適用範囲拡大が見送られました。当初は、裁量労働制の適用範囲拡大を視野に入れた法案の提出が見込まれていましたが、法案の根拠とされた統計に不正があったことが分かり先送りされています。

しかし、改正を求める意見は根強く、デジタル化やテレワークの普及などにより、労働時間よりも成果を評価するべきだという考え方も広がりつつあります。

過重労働を防止するために、どのような対策が提案されるかなど、今後の動向も継続して注視する必要があります。

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-630-807

受付時間:平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

0120-630-807タップで電話開始

平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます