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裁量労働制とは|労働時間の仕組みや残業代などをわかりやすく解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

働き方改革が進められている現在、裁量労働制は注目を浴びている制度です。

裁量労働制とは、あらかじめ定めた時間を労働時間とみなして給与を支払う制度です。労働者本人の判断で働く時間を決められるため、有効に活用できれば生産性の向上が期待されます。
ただし、すべての職種に適用することができない点や残業代の計算方法が通常とは異なる点など、注意点も多々あります。

本ページでは、裁量労働制の概要、裁量労働制の導入方法と2024年4月の法改正、裁量労働制を導入するメリット・デメリットなどについて、わかりやすく解説していきます。

裁量労働制とは

裁量労働制とは、実際に労働者が働いた時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間分を労働したとみなす制度です。
例えば、裁量労働制の契約でみなし労働時間を1日8時間としたならば、実際の労働時間が3時間であろうと9時間であろうと、8時間働いたものとみなされることになります。

裁量労働制が適用されれば、出退勤時間が自由になります。そして、賃金は「実際の労働時間」ではなく、「あらかじめ決められたみなし時間」に応じて決定されます。

裁量労働制は、時間にとらわれない働き方によって生産性を高めることを目的に、1987年に導入された制度です。1998年の法改正により対象が広げられ、さらなる適用対象の拡大を求める声もありますが、過酷な労働を強いられる労働者が増えることも懸念されており、議論されています。

裁量労働制の種類と対象職種

裁量労働制はすべての職種に適用できるわけではありません。
裁量労働制は専門業務型と企画業務型の2種類に分けられ、いずれも裁量労働制を適用できる職種が厚生労働省により定められています。

それぞれについて、以下で解説します。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制とは、専門性が高い職種に対して適用され、あらかじめ労使で定めた時間だけ労働したとみなす制度です。
ただし、単にこれらの業務に従事していることや肩書が与えられていることだけでなく、対象業務の遂行の手段や時間配分等の決定について、使用者が具体的な指示を行えないことが要件になっています。

そのため、該当する職種であっても、会社や上司から細かい指示を受けながら仕事を進めているケースなど、仕事の仕方や時間配分の決定について本人に裁量がない場合には、裁量労働制の対象とは認められない可能性があります。

専門業務型裁量労働制の対象となる業務は、労働時間では給与の算出がしにくい、以下の19業務に限定されています。この中から、対象となる業務を労使で定めます。

  • (1) 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
  • (2) 情報処理システムの分析又は設計の業務
  • (3) 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送番組若しくは有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送の放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務
  • (4) 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  • (5) 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
  • (6) コピーライターの業務
  • (7) システムコンサルタントの業務
  • (8) インテリアコーディネーターの業務
  • (9) ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  • (10) 証券アナリストの業務
  • (11) 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  • (12) 学校教育法に規定する大学における教授研究の業務
  • (13) 公認会計士の業務
  • (14) 弁護士の業務
  • (15) 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
  • (16) 不動産鑑定士の業務
  • (17) 弁理士の業務
  • (18) 税理士の業務
  • (19) 中小企業診断士の業務

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制とは、「事業の運営上重要な決定が行われる会社の本社などにおいて、企画、立案、調査及び分析を行う労働者」について、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ労使で定めた時間を労働時間とみなす制度をいいます。仕事の仕方や時間配分の決定などを、労働者に大幅にゆだねる必要のある仕事に従事するホワイトカラー向けの制度です。

専門業務型と同じく、単にこれらの業務を担当しているだけでなく、「業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関して、使用者が具体的な指示をしないこと」が裁量労働制の適用条件となります。
また、企画業務型の対象者は3~5年程度の職務経験者に限定されているため、新入社員等には適用できないと考えられています。
さらに、本制度を適用するには、労働者一人ひとりの同意が必要であり、同意が得られない場合は適用できません。

企画業務型裁量労働制の適用対象となる業務や事業場、労働者は、以下のとおりです。

 

【対象業務】(すべてを満たす)

  • 事業場の事業の運営に関する業務(例えば、事業の運営に影響を及ぼす業務や、事業場独自の事業戦略に関する業務等)
  • 企画、立案、調査及び分析の業務
  • 遂行の方法を、大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務
  • 企画・立案・調査・分析という相互に関連しあう作業を、いつ、どのように行うか等についての広範な裁量が労働者に認められている業務

【対象となる事業場】(いずれかに該当)

  • 本社又は本店である事業場
  • 事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場
  • 独自に、事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社又は支店等のある事業場

【対象労働者】
対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有し、対象業務に常態として従事する労働者(大学卒業後実務経験3年~5年以上。ただし、本人の同意が必要)

裁量労働制の労働時間の仕組み

裁量労働制はみなし労働時間を採用しています。
みなし労働時間は、実際に働いた時間のことをいうのではなく、あらかじめ定めておいた時間働いたとみなす時間のことです。

みなし労働時間は、実態に応じた適切な労働時間を定めなければなりません。ある仕事を行う者が、その仕事をするために通常ならば9時間かかるのであれば、みなし労働時間は9時間に設定する必要があります。

時間外労働・残業代

裁量労働制は、実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ定めた時間分を働いたとみなす制度です。そのため、みなし労働時間より長く働いたとしても、その時間分の残業代(時間外労働の割増賃金)は発生しません。

例えば、みなし労働時間を1日8時間と定めた場合は、実際に働いた時間が3時間であっても、8時間労働したものとみなされ、8時間分の給与が支払われます。一方、9時間働いた場合であっても、残業代は発生しません。

ただし、みなし労働時間そのものが、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えている場合は、これを超える時間分は時間外労働とされるため、基礎賃金に加えて25%の割増賃金を支払う必要があります。
計算式は以下のとおりです。

残業代(時間外労働の割増賃金)=1時間あたりの基礎賃金×1.25×時間外労働の時間数

例えば、みなし労働時間が9時間の会社で、1時間あたりの基礎賃金が3000円の労働者の残業代は、3000円 × 1.25 × 1 = 3750円となります。

深夜労働

裁量労働制においても、深夜労働に対する割増賃金は支払わなければなりません。
深夜労働は、午後10時から午前5時の労働とされており、これに対しては割増賃金を支払うことになります。

通常の労働者のケースでは、働いた時間あたりの賃金に加えて25%の割増賃金を支払う必要があります。
ただし、裁量労働制の労働者については、働いた時間あたりの賃金は支払ったとみなされます。そのため、割増の部分である25%のみを支払います。

なお、通常の労働者について、深夜労働が時間外労働でもある場合には25%を上乗せして、50%の割増賃金を支払う必要があります。しかし、裁量労働制の労働者は、働いた時間あたりの賃金だけでなく時間外労働割増賃金も給与に含まれているため、25%のみを支払います。

休日労働

裁量労働制が適用されている労働者についても、例えば日曜日などの法定休日に休日出勤させた場合には、休日労働に対する割増賃金を支払う必要があります。

法定休日とは、労基法で定められた「少なくとも週1日または4週4日以上」労働者に与えるべき休日のことをいい、法定休日に労働者を働かせることを「休日労働」といいます。通常、休日労働に対しては、基礎賃金に加えて35%の割増賃金を支払います。

裁量労働制が適用される場合には、通常の労働時間に対する賃金は支払われたことになっているため、支払う賃金は以下のようになります。

休日労働 35%
休日労働かつ時間外労働 35%
休日労働かつ深夜労働 60%(35%+25%)
休日労働かつ時間外労働かつ深夜労働 60%

割増賃金について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

割増賃金とは|割増賃金や請求された場合の対処法について

法定労働時間を超えるみなし労働時間を定める場合や、休日労働、深夜労働をさせる場合には36協定を締結し、労基署に届け出る必要があります。
また、36協定を結んだ場合でも、時間外労働は原則「月45時間以内、年間360時間以内」と定められています。

なお、繁忙期や納期のひっ迫など臨時的な事情がある場合に限り、あらかじめ特別条項付き36協定を結ぶことで、原則の上限時間を超える時間外労働が可能です。ただし、特別条項を適用する場合でも、「年間720時間以内、複数月平均80時間以内、月100時間未満、月45時間超えは年6回まで」に抑える必要があります。

36協定を締結しないままで時間外労働などを行わせることは違法となります。
そして、裁量労働制であっても、36協定で決めた時間外労働の上限を超えることはできず、1ヶ月の時間外労働を30時間以下と定めた場合は、30時間を超えると違法になってしまいます。

裁量労働制と他の制度の違い

裁量労働制の特徴をまとめると、主に以下のとおりです。

  • 仕事の仕方や時間配分等を大幅に労働者に任せる必要のある業務
  • 厚生労働省で定められた業務に従事する労働者(SE、研究開発者、企画、立案など)が対象
  • 労使協定や労使委員会で定めた時間を労働時間とみなす

なお、裁量労働制と似ている労働時間制度として、以下が挙げられます。

  • フレックスタイム制:労働者が始業・終業時刻を自由に決める制度
  • 高度プロフェッショナル制:高度な専門知識を持つ労働者の労働時間等を制限しない制度
  • 事業場外労働のみなし労働時間制:会社外の業務で所定労働時間働いたとみなす制度
  • みなし残業制(固定残業代制):一定時間分の残業代を給与に含める制度
  • 変形労働時間制:労働時間を調整し、繁忙期等で労働時間が増えても時間外労働としない制度

裁量労働制と各労働時間制度について、どのような違いがあるのか見ていきましょう。

フレックスタイム制との違い

フレックスタイム制は、1日単位ではなく、最長3ヶ月以内の一定期間における総労働時間を定め、従業員はその時間内で日々の始業・就業時刻を自由に定めて働く制度です。
裁量労働制と比べると、時間配分が労働者にとって自由であること等には共通点があります。

しかし、裁量労働制は事前に決めた時間分を働いたと「みなす」制度です。一方、フレックスタイム制は、コアタイム以外の働く時間を自由にする制度であり、実際に働いた時間のみが労働時間になります。

なお、フレックスタイム制については以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

フレックスタイム制とは

高度プロフェッショナル制度との違い

高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門知識を活用して働いており、労働時間と成果の関連性が低い職務の内容が明確に定められていて、年収が1075万円以上の従業員について適用される制度です。
裁量労働制とは異なり、高度プロフェッショナル制度が適用される従業員には、労働基準法が適用されなくなります。そのため、休日労働や深夜労働に関する割増賃金は適用されません。

短時間で成果を出せば、それだけ働く時間が短くて済む等、生産性の高い従業員にとってメリットのある制度です。しかし、成果が出たと評価するのは簡単ではなく、場合によっては長時間労働が横行するリスクがあることも否定できません。

なお、高度プロフェッショナル制度について、さらに詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

高度プロフェッショナル制度とは

事業場外労働のみなし労働時間制との違い

事業場外労働のみなし労働時間制とは、外回りや出張等の外出が多い従業員について、事前に取り決めた時間分だけ働いたとみなす制度です。
裁量労働制もみなし労働時間制の一つですが、事業場外労働のみなし労働時間制とは適用対象が異なります。

事業場外労働のみなし労働時間制は、営業職の外回りのように「社外で業務に従事し、実際に働いた労働時間の算出が難しい場合」を対象としています。そのため、たとえ外回りの営業マンであっても、頻繁に会社と連絡を取ることが可能であったり、出退勤の際に必ず出社する場合等には適用されません

なお、本制度では、基本的に所定労働時間働いたとみなされるため、残業代の支払いは不要です。
ただし、業務に通常は必要とされる時間が所定労働時間を超える場合は、通常必要な時間分労働したとみなされます。例えば、所定労働時間が8時間でも、業務を行うのに平均10時間かかる場合は、10時間働いたとされ、法定労働時間8時間を超えた2時間分の残業代が発生します。

事業場外労働のみなし労働時間制について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧下さい。

事業場外みなし労働時間制の基礎や算定方法について

みなし残業制(固定残業代制)との違い

みなし残業制(固定残業代制)とは、事前に定めた時間分の時間外労働が発生するものとして割増賃金を支払う制度です。

定めた時間よりも時間外労働が短かったとしても、割増賃金を減らすことができないのが特徴です。制度の採用に当たっては、一定の要件(明確区分性など)を充足していなければ、割増賃金を払ったものと認められない可能性があるため、注意が必要です。

なお、裁量労働制と固定残業代制は、実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ定めた時間を働いたとみなす点では共通しています。しかし、実際の残業時間がみなし時間を超えた場合の処理方法に違いがあります。

例えば、裁量労働制では、事前に定めた「みなし時間」より長く働いても、割増賃金は支払われません。一方、固定残業代制では、時間外労働が事前に定めた「みなし時間」よりも長かった場合には、超過した時間分についての割増賃金が支給されます。

みなし残業制について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧下さい。

みなし残業制とは

変形労働時間制との違い

変形労働時間制とは、労働時間を週・月・年単位で調整することで、繁忙期等により労働時間が増えたとしても、時間外労働として取り扱わない制度をいいます。

例えば、経理課の一般的な繁忙期は、月単位だと「月末・月初」とされています。この場合、比較的手の空いている月半ばの労働時間を減らし、月単位での労働時間を法定労働時間内に抑えます。繁忙期や閑散期のある業種や職種では、変形労働時間制の導入により、残業代コストを削減できるというメリットがあります。

なお、裁量労働制との違いは、適用される職種に制限がない点や、各変形期間における法定労働時間を超えて働いた時間分は残業代(時間外労働割増賃金)を支払う必要がある点にあります。

また、働く時間を自由に決められる裁量労働制と異なり、変形労働時間制では、労働者に労働時間の裁量はなく、時期によって会社が定めた労働時間を働かなければなりません。

裁量労働制の導入方法と2024年4月の法改正

専門業務型と企画業務型では、導入の手順が異なります。各導入手順については、次項以下で解説します。

なお、2024年4月に裁量労働制が改正され、裁量労働制の導入や運用が大きく変わる予定です。
主な改正点は以下のとおりです。

  • 専門業務型の要件に「労働者の同意・同意の撤回」が適用
    企画業務型のみの要件であった「労働者の同意」及び「同意の撤回」に関する手続きが専門業務型にも適用されます。
  • 専門業務型の対象業務にM&A業務が追加
  • 企画業務型における賃金・評価制度の変更時の労使委員会への説明
    企画業務型の対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する際に、使用者が労使委員会に変更内容を説明することが義務付けられます。

2024年4月1日より、新たに、又は継続して裁量労働制を採用するためには、労働者本人の同意を得た上で、労使協定を結び直し、裁量労働制を採用するまで(継続では2024年3月末日まで)に、労基署に協定届・決議届の届け出を行わなければなりません。

裁量労働制の導入手順や法改正については、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご覧下さい。

裁量労働制の導入方法

専門業務型裁量労働制の場合

専門業務型裁量労働制を導入するには、以下の手続きが必要です。

  • 労使協定の締結
  • 労働基準監督署への届出
  • 労働者に労使協定を周知させる

なお、労使協定では、下表①~⑩の事項を定める必要があります。
このうち、以下⑥~⑧及び⑩の事項が2024年4月1日より新たに、又は継続して専門業務型裁量労働制を導入する場合の変更点です。

  • 労働者本人の同意を得ること(⑥)
  • 同意しない場合の不利益取扱いの禁止(⑦)
  • 同意の撤回の手続き(⑧)
  • 同意や同意の撤回に関する記録の保存(⑩)
  • ① 制度の対象とする業務
  • ② 労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
  • ③ 対象業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者が対象労働者に具体的な指示をしないこと
  • ④ 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置
  • ⑤ 対象労働者からの苦情の処理のため実施する措置
  • 制度の適用に当たって労働者本人の同意を得ること
  • 制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
  • 制度の適用に関する同意の撤回の手続
  • ⑨ 労使協定の有効期間
  • ⑩ 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中及びその期間満了後5年間(当面の間は3年間)保存すること

企画業務型裁量労働制の場合

企画業務型裁量労働制を導入するには、次の手続きが必要です。

  • 労使委員会を設置する
  • 労使委員会で、出席している委員の4/5以上によって決議する
  • 労働基準監督署に決議を届け出る
  • 裁量労働制を適用する労働者から同意を得る

なお、労使委員会で、下表①~⑪の事項を決議しなければなりません。
この中で、以下⑧・⑨・⑪の事項が2024年4月1日以降に新しく、又は継続して企画業務型裁量労働制を導入する際の変更点です。

  • 同意の撤回の手続(⑧)
  • 労使委員会への賃金・評価制度の変更の説明(⑨)
  • 同意や同意の撤回に関する記録の保存(⑪)
  • ① 制度の対象とする業務
  • ② 対象労働者の範囲
  • ③ 労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
  • ④ 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置
  • ⑤ 対象労働者からの苦情の処理のため実施する措置
  • ⑥ 制度の適用に当たって労働者本人の同意を得ること
  • ⑦ 制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
  • 制度の適用に関する同意の撤回の手続
  • 対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
  • ⑩ 労使委員会の決議の有効期間
  • ⑪ 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を決議の有効期間中及びその期間満了後5年間(当面の間は3年間)保存すること

【その他変更点】

  • 労使委員会は6ヶ月以内ごとに1回開催し、制度の実施状況の把握と運用改善を行うこと
  • 定期報告の頻度は、労使委員会の決議の有効期間の始期から起算して初回は6ヶ月以内に1回、その後1年以内ごとに1回とすることなど

裁量労働制を導入するメリット

裁量労働制を導入することは、労使双方にとってメリットのあることです。
具体的なメリットについて、以下で解説します。

労働者のモチベーションアップ

裁量労働制を導入することのメリットとして、労働者が時間に縛られず業務ができるため、モチベーションが上がることが挙げられます。

効率よく仕事をして、短い時間で成果を上げることができれば、給与は変わらずに仕事が早く終わるため、仕事のスピードを上げるための努力をするでしょう。
そうなれば、労働者は時間に余裕ができるため、疲労などによって効率が落ちたまま働かずに済みます。
会社にとっても、労働者がより良い成果を出すことを期待できるようになります。

人件費が予測しやすい

裁量労働制では、一般的な働き方で生じる時間外労働に対する割増賃金(残業代)など、変動しやすい要因を考慮に入れる必要がほとんどありません。使用者にとって、月々にかかる人件費が予測しやすくなることは、裁量労働制を導入する大きなメリットとなり得ます。

裁量労働制を導入するデメリット

裁量労働制は、運用を誤ると多くの問題を生じさせるおそれがあるため、デメリットをしっかりと認識しておく必要があります。
裁量労働制の主なデメリットについて、以下で解説します。

導入の手続きが複雑

裁量労働制は、導入のためには労使協定の締結や、労使委員会の設置など、一定の手続きを行うことが要件となっています。手続きに不備があれば、裁量労働制が無効となるおそれもあります。また、実施後も就業規則の改定や、苦情処理窓口の設置、労働基準監督署への報告なども行わなければなりません。

これら多くの手続きを行わなければならないこと、またその煩雑さは、裁量労働制を導入するうえでのデメリットといえるでしょう。

過重労働となるおそれ

裁量労働制のもとで働く労働者は、その専門性や職務経験によって高い成果を出すことが期待されていますが、1日8時間の労働では到底出せないような成果を要求されてしまうと、長時間労働をすることになり過重労働に陥ってしまいます。

通常であれば、長時間労働によって残業代が高額になるため、使用者側にとっての歯止めとなりますが、裁量労働制では残業代は生じないので、長時間労働が抑制されにくくなっています。

過重労働による健康被害が起こらないようにするためには、実労働時間の把握や、定期的な健康診断等を確実に実施することが必要です。

組織づくりが進まないおそれ

裁量労働制のもとでは、労働者が労働時間の配分を自身の裁量で行えるメリットがあります。しかし、裏を返せば労働者同士がコミュニケーションをとる機会が少なくなることを意味しています。使用者として意図する組織づくりが進まなくなることは、デメリットになり得ます。

裁量労働制を導入した後も、労働者同士が組織の中で良好なコミュニケーションを維持できるような仕組みづくりが必要になります。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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