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不正競争防止法に違反した場合の措置

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

不正競争防止法は、企業に公正な事業運営を義務付け、健全な経済活動を促すための法律です。例えば、営業秘密の侵害等も不正競争行為にあたり、違反した者には懲役や罰金刑も科せられます。
また、損害賠償請求等の民事的措置を受ける可能性もあるため注意が必要です。

本記事では、不正競争防止法違反に関する罰則や措置を具体的に解説していきます。不正競争をめぐる訴訟は特殊な部分もありますので、ぜひご確認ください。

不正競争防止法について

不正競争防止法とは、企業同士が公平な競争を行うための法律です。それぞれが適正な事業を行い、本来の利益を上げることができるよう、一定の不正競争行為を禁止しています。

例えば、同業他社と類似した商品を製造すること、人気企業のロゴを模倣すること、他社の営業秘密を盗むこと(又は盗ませること)、生産地を誤認させる表示をすること等が禁止されています。
また、同法違反には様々な罰則が設けられているため、しっかり理解しておくことが重要です。

不正競争防止法についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。

不正競争防止法

不正競争防止法に違反した場合の刑事的措置

不正競争のうち一定の行為を行った者には、刑事罰が科せられます。また、違法行為の内容によって罰金や懲役等の罰則が具体的に定められています。

なお、不正競争防止法は、刑法やその他法律の適用を阻害するものではありません。よって、同法と刑法どちらにも抵触する場合、それぞれの罰則を受ける可能性があります(不正競争防止法21条9項)。

では、不正競争防止法(以下、同法といいます)の罰則を詳しくみていきましょう。行為の類型ごとに整理していきます。

個人への罰則

個人が違法行為を行った場合、その内容によって罰則が異なります(同法21条)。

  • 営業秘密侵害罪:10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金、又はその両方
  • その他の罪:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はその両方

その他の罪とは、不正に利益を得る等の目的で、以下の行為に及ぶことをいいます(同法2条)。

  • 混同(又は誤認)惹起行為
  • 著名表示冒用行為
  • 虚偽表示
  • 秘密保持命令違反など

つまり、他社と類似した商品を製造したり、意図的に他社の信用を傷つけたりした場合、罰則の対象となりえます。

営業秘密侵害罪とは

営業秘密侵害罪とは、企業の営業秘密を不正に取得したり、不当な利益を得る目的で使用・開示したりすることをいいます(同法2条)。

例えば、社員が機密情報に不正アクセスし、自身のディスクにコピーする行為です。また、機密情報を扱っていた社員についても、退職後や転職後にその情報を不正に開示・使用することは罪にあたります。

なお、不正取得された営業秘密の開示を受けた第三者も同様の責任を負いますが、その情報が不正に得たものであると知らなかった場合(又は不正取得について善意無重過失だった場合)、不正競争にはあたらないとされています。

もっとも、営業秘密に該当するかは、情報の秘密管理性・有用性・非公知性を踏まえて判断されます。
例えば、情報が製造過程や研究開発に関するものであり、世間にも公表されていないことが営業秘密の要件となります。

また、秘密管理性については、ある情報について、会社が秘密であると認識しているだけでは足りず、具体的な秘密管理措置によって、従業員にとっても当該情報が秘密であることが容易に認識できる必要があります。したがって、秘密として扱いたい情報については、アクセス制限を設けたり、秘密である旨の表示(「マル秘」と書類に記載)をしたりしておかないと、当該情報は営業秘密と評価されないおそれが高いと考えられます。

国外での行為に対する処罰

営業秘密侵害罪については、国外犯についても、国内犯と同様の罰則が適用されます。

具体的には、「日本国内で事業を営む者の営業秘密」を、国外で不正に取得・使用・開示した場合、10年以下の懲役又は2000万円以下の罰金、又は両方が科せられます(同法21条6項)。

また、もとより国外で利用する目的で本行為に及んだ場合、10年以下の懲役又は3000万円以下の罰金、又は両方が科せられます。

その他、日本国外で秘密保持命令に背いた場合、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金、又は両方を科すとされています(同条7項)。

なお、かつて国外犯の対象となる情報は、「日本国内で管理される営業秘密」のみでした。
しかし、グローバル化の進行等を背景に、「日本国内において事業を行う保有者の営業秘密」に対象が拡大され、海外サーバなど物理的に国外で管理される営業秘密についても、処罰の対象となりました(平成27年法改正)。

営業秘密侵害行為による不当収益等の没収

営業秘密を不正に取得・使用・開示・受領したことによって得た利益は、不当利益として没収することができます(同法21条10項)。具体的には、以下のものが没収の対象となります。

  • 当該行為によって生じた(又は得た)財産
  • 当該行為の報酬として得た財産
  • 上記利益の果実又は対価として得た財産
  • 上記利益の保有又は処分に基づいて得た財産

また、組織犯罪の場合、不当利益が他の財産と混合し、不法財産部分が特定できないこともあります。その場合、不当利益の額や量さえ判明すれば、それに相当する部分を没収することが可能です(同条11項)。

なお、これらの財産が没収できない場合や、没収するのが相当ではない(第三者の権利や利益を侵害するような)場合、没収対象に相当する金額を犯人から追徴することができます(同条12項)。

法人への処罰

法人に関わる者が、その業務に関して不正競争を行った場合、実行行為者だけでなく法人にも以下の処罰が科されます(両罰規定、同法22条)。

  • 営業秘密侵害罪の一部:5億円以下の罰金(海外使用等の場合は10億円以下)
  • その他の罪:3億円以下の罰金

かつて罰金の上限額は3億円で統一されていましたが、営業秘密侵害行為をさらに抑制するため、厳罰化されることとなりました。
ただし、正当に営業秘密を開示された者が、その情報を不正に取得・使用・開示したケースでは、両罰規定は適用されません。
※法人の代表者や法人又は人の代理人、使用人、その他の従業員を指します。

公訴時効期間

法人に対する公訴時効期間(犯罪の発生から起訴できるまでの期間)は、個人の処罰と同様です。
したがって、営業秘密侵害罪については7年その他の罪については5年で公訴時効が成立します。

かつて法人処罰の公訴時効期間は3年でしたが、平成18年の法改正によって延長されました。
というのも、不正競争防止法における犯罪行為は、個人よりも企業の利益に資することが多く、法人の公訴時効のみ短くするのは不公平といえるためです。

刑事訴訟手続きの特例

訴訟等の刑事手続きでは、営業秘密の内容が外部に公開されるリスクがあります。
そこで、被害者や弁護人は、裁判所の許可を得たうえで、公開の法廷において営業秘密の漏洩を防ぐための措置をとることができます。

具体的には、以下の措置が認められています。

営業秘密の秘匿決定

被害者や被告人は、当該事件に関する営業秘密について、その全部又は一部を非公開(秘匿)にするよう求めることができます。この申し出は検察官に行い、最終的に裁判所が秘匿決定を下すことになります(同法23条)。

もっとも、秘匿決定が認められるのは、情報が公開されることで当事者の事業活動に大きな支障をきたす場合です。そのため、秘匿決定を求める際は、営業秘密を構成する情報を列挙したうえで、秘匿にする範囲を明確に定めることが重要です。

秘匿決定がなされた場合、起訴状の朗読も秘匿情報が特定されない方法で実施されます(同法24条)。この場合、被告人には起訴状が提示されるため、起訴内容が伝わらないという心配はありません。

秘匿決定の場合の尋問

秘匿決定がなされると、証人尋問等でも一定の措置がとられます。
例えば、証人尋問の内容に営業秘密構成情報が含まれる場合、裁判所は尋問を制限することができます。また、検察官や弁護人がこれに従わない場合、懲戒処分等の処置を受ける可能性があります(同法25条)。

さらに、証人尋問や被告人質問を公判期日外で行ったり、秘匿情報に仮の名前をつけて特定を防いだりする措置も設けられています(同法26条、27条)。

証拠書類の朗読方法

公判期日では、証拠書類の朗読も行われるのが通常です。秘匿決定された場合、朗読も営業秘密構成情報が明らかにならない方法で実施されます(同法28条)。
例えば、当事者や代理人が決定した呼称に沿って読み上げられるのが一般的です。

公判前整理手続等における決定

公判前整理手続きは、一番初めの公判期日前に、裁判所・弁護人・検察官が集まり審理計画を立てるための手続きをいいます。前もって争点を整理したり、必要な証拠を厳選したりして、スムーズな審理を目指します。

秘匿決定された場合、本手続きでは以下の決定を下される可能性があります(同法29条)。

  • 秘匿決定若しくは呼称の決定の取消し(秘密管理性が低い、有用性や非公知性がないとの心証が形成された場合など)
  • 証人尋問や被告人供述を公判期日外で行うこと

証拠開示の際の営業秘密の秘匿要請

検察官や弁護人は、公判前整理手続き等において、相手方へ証拠の開示を求めることができます。
また、開示に際しては、営業秘密の内容が事件の関係者(被告人を含む)に知られない方法で行うよう求めることが可能です(同法30条)。

没収に関する手続き

営業秘密侵害行為によって得た不正収益等は、没収の対象となります。そこで、没収の手続きについても以下の規定が設けられています。

【第三者からの没収手続き】
第三者から財産(債権)を没収する場合、公平性を確保するため、当該第三者を訴訟に参加させなければならない等(同法32条、33条)

 

【保全手続き】
犯人が判決前に財産を処分し、没収できなくなるという事態を防ぐため、あらかじめ裁判所が当該財産の処分禁止命令を発することができる等(同法35条、36条)

【国際共助手続き】
国外で営業秘密侵害行為が行われた場合、外国からの要請に応じて没収裁判の執行協力をすることができる等(同法37条~39条)
※外国で没収の確定判決が出され、没収対象の財産が日本国内にあるケースなど

不正競争防止法に違反した場合の民事的措置

不正競争行為に対しては、損害賠償請求等の民事的措置をとることもできます。これは、被害者の損害を補償するだけでなく、営業侵害行為の抑止力としても重要な措置です。
では、民事的措置の内容を具体的にみていきましょう。

 

差止請求

不正競争によって“営業上の利益”を侵害された場合、又は侵害されるおそれがある場合、侵害者に対して差止請求をすることができます。具体的には、以下の措置が認められています(同法3条)。

  • 侵害行為の停止
  • 将来の侵害行為の予防を求めること
  • 侵害行為の組成物等の廃棄や、侵害行為に供する設備の除去等
    ※営業秘密の取得に用いた記録媒体、他社の技術を利用して製造した製品、他社の技術に基づき製造するための製造ライン等

なお、“営業上の利益”とは、経済的価値だけでなく、信用や名声、ブランド力等も含むとされています。そのため、病院・学校法人・文化の振興を図る公益法人等も請求権者になりえます。

また、差止請求については、侵害者の故意や過失は要件ではありません。よって、善意無過失で侵害行為が行われた場合も、差止めを求めることができます。

もっとも、取引によって営業秘密を取得した者(ただし、取得時に営業秘密不正開示行為及び営業秘密不正取得行為等があったことを知らず、知らないことについて善意無重過失である者)については、その取引によって取得した権原の範囲内においてその営業秘密を使用又は開示する行為は差止請求の対象外とされており、差止請求を求めることができないケースがあることに注意が必要です(同法19条)。

差止請求権の時効

不正競争行為に対する差止請求権は、以下の期間が経過すると消滅時効が成立します。

  • 不正競争行為により営業上の利益を侵害されてから、又は請求権者が不正競争行為および行為者を知ってから3年
  • 不正競争行為が行われてから20年

損害賠償請求

不正競争行為によって営業上の利益を侵害された場合、侵害者に対して損害賠償請求することが可能です。

ただし、損害賠償請求では、差止請求と異なり、侵害者の故意又は過失が要件となります。したがって、侵害行為の事実だけでなく、相手の故意や過失についても立証する必要があります。
一方、時効については、差止請求と同じとされています(詳しくは前項をご覧ください)。

なお、損害賠償請求では具体的な損害額も示す必要がありますが、簡単に証明できるものではありません。そこで、以下のような救済措置が設けられています。

損害額・不正使用の推定

損害賠償請求を行うには、不正競争行為による損害額を具体的に示す必要があります。しかし、これは簡単に立証できるものではないため、以下の方法で損害額を推定することが認められています。

【逸失利益】
「侵害者が譲渡した物の数量」×「権利者が販売する物の単位数量あたりの利益」

【損害額】
「侵害者がその侵害行為により受けた利益の額」を適用

【商標法5条3項に基づく請求】
「ライセンス料相当額」を適用(例:「侵害者の売上」×「商品表示等のライセンス料率」)

書類提出命令

訴訟の当事者は、裁判所に対し、相手方へ必要書類を提出させるよう求めることができます(書類提出命令、同法7条)。

訴訟では、営業秘密侵害行為の被害者(原告)が、相手方(被告)の侵害行為について立証する必要があります。しかし、被告がどの営業秘密を用いて侵害行為に及んだのか、証拠をもって証明するのは非常に困難です。

そこで、書類提出命令により、原告の立証負担の軽減が図られています。本制度によって、原告が侵害行為の事実を容易に証明したり、損害額の算定に役立てたりすることができると期待されています。

営業秘密の民事訴訟上の保護

民事訴訟上の保護を図るため、手続上の秘密保持命令等も規定されています。具体的には、以下のような規定です。

【秘密保持命令(同法10条)】
裁判所は、訴訟の当事者に対し、準備書面や証拠書類に含まれる営業秘密を訴訟追行以外の目的で使用・開示しないよう命じることができる

【秘密保持命令の取消し(同法11条)】
秘密保持命令の要件を欠く場合、又は事後的に要件を欠いた場合、裁判所は当事者の申立てによって秘密保持命令を取り消すことができる

【訴訟記録の閲覧請求の通知(同法12条)】
秘密保持命令を受けていない者から訴訟記録の閲覧請求があった場合、裁判所は、その旨を秘密保持者(秘密保持命令の申立人)に通知しなければならない

なお、秘密保持命令に違反した場合、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科せられます(同法21条2項第6号)。

当事者尋問等の公開禁止

裁判所は、以下に挙げる事情が認められる場合、当事者尋問や証人尋問を非公開で行う旨を決定することができます(同法13条)。

  • 公開の法廷で陳述すると、当事者の事業活動に著しい支障をきたすことから、当事者等が十分な陳述をすることができないとき
  • 当該陳述を欠き、他の証拠だけでは不正競争行為について適正な裁判をすることができないとき

ただし、本決定には裁判官全員の賛成が必要です。また、裁判所は、あらかじめ当事者の意見を聴取したうえで公開禁止を決定する必要があります。

信用回復措置

不正競争行為によって自社の信用を害された場合、侵害者に対して信用回復措置をとらせることも可能です(同法14条)。
例えば、新聞への謝罪広告の掲載、ホームページへの謝罪文の掲載、取引先に謝罪文書を発送させるといった措置が考えられます。

ただし、不正競争行為の程度によっては、信用回復措置の請求が認められないケースもあります。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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