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労働安全衛生法改正による「健康情報取扱規程」策定の義務化

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

働き方改革の一環として、労働安全衛生法が2019年4月に改正されたことに伴って、「健康情報取扱規程」を定める必要が生じています。

労働者にとって、健康情報は他人に知られたくない情報です。さらに、会社が不正に利用することを心配しなければならないとしたら、自身の健康情報をなるべく隠そうとするおそれがあります。

健康情報取扱規程を策定し、それに従って労働者の健康情報を扱うことにより、健康診断や産業医等による健康相談などが安心して利用できるようになると考えられます。

労働者の健康状態に配慮した「健康経営」は、社会からの要請であり重視するべきものです。そこで、会社が扱う健康情報について解説します。

法改正により「健康情報取扱規程」の策定が義務化

健康情報取扱規程とは、労働者の健康情報を取り扱うためのルールです。これは、労働安全衛生法の改正により策定が義務付けられました。

企業が労働者の心身の状態に関する情報を収集・保管・使用するときには、労働者の健康の確保に必要な範囲内で情報を収集し、収集した目的の範囲内で保管・使用しなければなりません(労働安全衛生法104条1項)。

適切な取り扱いを行うことを明らかにするために、健康情報取扱規程を策定して運用する必要があります。

健康情報取扱規程を策定したら、労働基準監督署に届け出なければなりません。なぜなら、実質的に就業規則の一部だと考えられるため、届出の義務が生じるからです。
また、就業規則と同様に、労働者への周知も必要となります。

健康情報取扱規程を策定する目的

健康情報取扱規程を策定する目的は、労働者に対して健康情報の適切な取り扱いを約束することです。

法改正の前であっても、健康情報は重要な個人情報なので、外部への流出等は規制されていました。しかし、社内での目的外の使用については禁じられていないケースがありました。

そこで、健康情報によって不利益な取り扱いを受けないようなルールを設けることになり、健康情報取扱規程を設けることが義務づけられました。

「健康情報」とは

健康情報とは簡単にいえば、会社が入手できる、従業員の心身の状態に関する情報のことです。
代表的な健康情報として、次のものが挙げられます。

  • 健康診断の結果、医師等から聴取した意見、それに基づく事後措置、保健指導の内容
  • 長時間労働者への医師による面接指導の結果、医師から聴取した意見、事後措置の内容
  • ストレスチェックの結果、それに基づく医師による面接指導の結果、医師から聴取した意見、それに基づく事後措置の内容
  • 健康相談の結果
  • がん検診の結果
  • 職場復帰のための面談の結果
  • 治療と仕事の両立支援等のための医師の意見書
  • 通院状況に関する情報
  • 産業医等が労働者から得た情報
  • 任意に労働者等から提供された本人の病歴、健康に関する情報

健康情報取扱規程で定める9つの事項

健康情報取扱規程に定めるべき内容として、厚生労働省の指針では主に以下の9点を挙げています。

【①健康情報を取り扱う目的、取扱方法】
目的には、医師による面接指導やその事後措置、就業上の措置の検討や実施、治療と仕事の両立支援の実施などが該当します。
また、取扱方法には、健康情報の収集や保管、使用、加工、消去といったことが該当します。

【②健康情報を取り扱う者とその権限、取り扱う情報の範囲】
取り扱う者として、直接の権限を持つ者や産業医等を定めます。
また、取り扱う者にどの程度の権限を与えるか、どこまでの情報を開示するかについても定めます。

【③目的、取扱方法などの通知方法と本人同意の取得方法】
労働者本人への通知方法及び本人の同意を取得する方法を決めます。従業員に承諾してもらうときには、書面により、サインをしてもらう方法が望ましいでしょう。

【④健康情報の適正管理の方法】
情報漏洩を防止するために管理方法を定めます。例えば、パスワードをかけたサーバーで情報を管理することや、担当者への研修を実施するなどの方法があります。

【⑤健康情報の開示、訂正、使用停止等の方法】
情報の開示請求があった場合、労働者からの訂正・追加・削除の依頼があった場合、及び使用停止の請求があった場合について、それぞれの対応方法を定めます。

【⑥健康情報の第三者提供の方法】
第三者への情報提供の可否を決めます。また、情報提供する場合には、提供方法についても定めます。

【⑦事業承継、組織変更に伴う健康情報の引継ぎに関する事項】
合併や分社化、事業譲渡など事業承継のときに健康情報等を取得する場合、どのように情報を引き継ぐのかを定めます。

【⑧健康情報の取扱いに関する苦情の処理】
健康情報の取扱いについての苦情を、電話やメール等により受けつける窓口を設けます。また、その後の処理方法についても定めます。

【⑨取扱規程の労働者への周知の方法】
社内報への掲載や社内研修の実施など、取扱規定を労働者に周知する方法を定めます。

健康情報取扱規程の策定方法

健康情報取扱規程の策定方法は、衛生委員会の有無によって異なります。

衛生委員会がある会社では、衛生委員会において労使の協議を行えます。
衛生委員会がない会社では、労働者の意見を直接聴取するための集会などを開催して協議する必要があります。

従業員50人以上の事業場

常時雇用している従業員が50人以上いる事業場では、衛生委員会の設置が義務づけられています。

衛生委員会とは、労働者の健康や安全を守ることを目的として、労使が話し合うために設置される会議です。
衛生委員会が設置されていれば、健康情報取扱規程を策定するための労使協議の場として活用できます。人事部などで原案を作成して、衛生委員会において労使で話し合って、必要があれば修正するようにしましょう。

従業員50人未満の事業場

常時雇用している従業員が50人未満の事業場では、衛生委員会を設置する義務がありません。そのため、労働者による集会等の場において意見を聴取する必要があります。

労働者から意見を聴取する場を設けたことは、策定した健康情報取扱規程の有効性にも影響する事実です。そのため、聴取した意見は、書面や音声データとして残しておくようにしましょう。

健康情報取扱規程の周知義務

健康情報取扱規程は、労働者への周知義務があります。
必ず労働者全員への周知が必要なので、全員が見ることのできる方法で公開し、労働者が常に閲覧できる状態にしておくようにしましょう。

周知する方法として、次のものが考えられます。

  • 掲示板や社内ネットワークに掲載する
  • 社内メールで送付する
  • パンフレットや冊子にして労働者へ配布する
  • 社内研修を通じて周知する

単に口頭で説明する方法や、一部の人間のみに伝える方法では周知したことにならない可能性があるので注意しましょう。

健康情報の取り扱い方法と注意点

健康情報によって、労働者が人事で不利に扱われる等の不利益が生じないように取り扱わなければなりません。
また、健康情報を取得するときには、基本的に本人の同意を得なければなりません。

情報の入手や、その後の取り扱いには次のようなものがあります。

収集 健康情報等を入手すること
保管 入手した健康情報等を保管すること
使用 健康情報等を閲覧・活用すること、又は第三者に提供すること
加工 健康情報等を他者へ提供するときに、必要な範囲内で使用されるように変換すること
消去 収集、保管、使用、加工した情報を削除するなどして使えないようにすること

健康情報の不適切な管理に対する罰則

健康情報を不適切な方法で管理していると、労働基準監督署から是正を指導されることがあります。
また、悪質だと判断された場合には、個人情報保護法違反となり、1年以下の懲役刑又は100万円以下の罰金刑を受けるおそれがあります。

労働者からの健康相談へ対応するための体制整備

労働安全衛生法の改正では、産業医等による健康相談のための体制整備について、努力義務が課されました。

なお、「産業医等」とは、産業医と、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する保健師のことです。
事業者は、産業医等が労働者の健康を適切に管理できるように、健康相談を受けて対応するための体制を整えることや、その他の必要な措置を講じる努力義務を負っています(労働安全衛生法13条の3)。

法改正により役割が大きくなった産業医について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

産業医の機能強化・活動環境の整備の改正要点

事業者が体制整備のためにすべきこと

産業医等が労働者の健康相談を直接受け、適切に対応できる体制を整備するために、事業者は、各事業場への掲示や書面での通知、企業のサーバーへのアップロード等によって、労働者に対して次の事項を周知しなければなりません。

  • 産業医の業務内容
  • 産業医への健康相談の申出方法(健康相談の日時・場所等を含みます)
  • 事業場における労働者の健康情報の取扱方法

ただし、労働者50人未満の事業場の事業者は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師又は保健師について、これらの事項を周知する努力義務を負うに留まります。

なお、産業医等による健康相談等は、個人のプライバシーが確保される場所で実施できるように配慮する必要があります。また、相談等の結果得られた労働者の健康情報は、健康情報取扱規程に従って、適切に取り扱わなければなりません。

産業医等の業務内容の周知について

産業医等は、次の3つを労働者に周知しなければなりません(労働安全衛生法101条2項)。

  • 事業場における産業医の業務の具体的な内容
  • 産業医に対する健康相談の申出の方法
  • 産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取り扱いの方法

また、周知の方法としては、次の3通りが考えられます。

  • 常に各作業場の見やすい場所に掲示し、備え付ける
  • 書面を労働者に交付する
  • 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録するとともに、各作業場に労働者が当該記録の内容を常に確認できる機器を設置する

労働者50人未満の事業場の事業者については産業医を選任する義務がなく、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師又は保健師に関する事項を周知するよう努めなければなりません(同条3項)。

産業医の法定業務について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

産業医の法定業務
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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