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海外派遣・出張

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

近年グローバル化が進み、日本国内だけでなく、海外にも事業場をもつ会社が増えつつあります。そのような会社は、従業員に対して海外派遣や海外出張を命じるケースが多々あります。その場合、会社や使用者は従業員に対してどのような対応や対策等をとるべきでしょうか。本記事では、そもそも海外派遣・海外出張の違いは何か、従業員を海外勤務させる際に会社が留意すべき点等を解説していきます。

海外派遣・海外出張の定義

海外派遣、海外出張と聞くと、どちらも同じようなものだと捉えてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかしながら、実際のところ、両者は明確に区別されています。

海外派遣は、海外の事業場に所属し、そこの使用者の指揮に従って業務に従事することやその事業場の使用者として勤務することを指します。これに対して、海外出張は、日本国内の事業場に所属したまま海外で労務提供を行い、日本の使用者の指揮に従って勤務することを指します。派遣に対し、出張は海外に労働提供の場があるだけにすぎません。明確な違いやそれぞれの勤務例については、次項以降にて解説していきます。

海外派遣と海外出張の明確な違い

上記のとおり、海外派遣と海外出張は明確に区別されます。ここでは、より明確な違いを解説していきます。

海外派遣をする際、使用者は、その旨を事前に厚生労働大臣に届け出なければなりません(労働者派遣法23条4項)。これは、海外において日本の法律が適用されないことが多々あり、従業員の適正な就業の確保が困難であるため、従業員の保護を図るという目的に基づいています。

これに対し、海外出張の場合、厚生労働大臣への届出は必要とされていません。

海外派遣と海外出張の勤務実態例

海外派遣と海外出張の勤務の実態例としては、以下のとおりです。

《海外出張の例》

  • ・商談
  • ・技術、仕様等の打ち合わせ
  • ・市場調査、会議、視察、見学
  • ・アフターサービス
  • ・現地での突発的なトラブル対処
  • ・技術取得等のために海外へ赴く場合 等

《海外派遣の例》

  • ・海外関連会社(現地法人、合弁会社、提携先企業等)へ出向する場合
  • ・海外支店、営業所等への転勤をする場合
  • ・海外で行う据付工事、建設工事(有期事業)に従事する場合(統括責任者、工事監督者、一般作業員等として派遣される場合) 等
出典:厚生労働省「特別加入制度のしおり(海外派遣者用)」

海外勤務ではどの国の法律が適用されるか

日本で勤務する従業員には日本の法律が適用となりますが、海外派遣等によって海外で勤務する従業員は、日本と海外どちらの法律の適用となるのか、という準拠法の疑問が生じるでしょう。通則法では、法の適用基準について規定されています。この7条によると、労働契約に関わる問題においては、準拠法となるのは従業員が選択した地のものとされています。また同法8条1項では、選択がない場合は、「最も密接な関係がある地の法」を適用するとしています。

海外勤務の労働基準法適用の有無

海外派遣、海外出張の従業員には、労働条件等が定められている労働基準法は適用されるのでしょうか。

海外勤務で会社側が留意しておく点

従業員が海外勤務をするにあたり、会社側は会社としての規則や従業員の安全衛生等について留意すべき点がありますので、本項にて解説していきます。

就業規則や給与体系

多くの会社では就業規則が定められており、そこには労働条件等、働くうえでのルールが定められています。海外勤務を予定しているが会社では、海外勤務がある旨の記載をしなければなりません。また、日本と海外においては給与規定にも差異があるでしょう。そのため、海外勤務をする場合に備えた海外勤務規程や海外勤務者の給与体系をあらかじめ定めておく必要があるでしょう。

海外派遣の安全衛生対策

海外の地域によっては、日本より衛生的に問題がある地域や医療が充実していない地域もあります。もしも、海外派遣をした従業員がそのような国で怪我や病気をした場合、会社側は対応や処置について問われることになるでしょう。

詳しくは以下のページをご覧ください。

海外派遣者の安全衛生について

海外派遣・海外出張における社会保障

日本で加入している社会保障は、海外勤務になった場合でも継続して適用となるのでしょうか。結論からすると、海外派遣と海外出張、保険の種類とで異なります。本項では、海外勤務における社会保障の適用について解説していきます。

労災保険特別加入制度

労災保険は、日本の事業場に所属し勤務している従業員に適用されます。海外派遣者には、現地の補償制度が適用となりますが、補償内容が十分でない場合もあります。そのようなときに、日本と同じような補償が受けられるのが特別加入制度です。

その他社会保険の適用

従業員にはいくつかの社会保険の適用がなされています。労災保険については、前項で解説したとおりですが、ここではその他4つの保険について、海外勤務時の適用はどうなるのか解説していきます。

健康保険…そのまま使用関係が継続していれば、海外勤務していても給付を受けられます。もっとも、海外で保険証は使用できないため、医療費は一旦全額本人が負担し、のちに、日本で海外療養費を請求し払い戻しになります(自己負担額は控除されるため、支払った費用の全額が払い戻されるわけではありません。)。

厚生年金保険…健康保険と同様、日本と同じような取扱いができますが、保険料の支払いを継続する必要があります。5年以上の派遣の場合は、現地の年金制度に加入をし、日本の年金制度は適用除外となります。なお、現地での年金制度加入期間は日本での加入期間に通算されます(国により、内容が異なります)。

介護保険…40歳以上65歳未満の被保険者が海外勤務をする際に、「介護保険適用除外該当届」を使用者経由で保険者に提出をすれば、海外に赴任した月から保険料を支払う必要はありません。

雇用保険…日本の使用者との雇用関係が継続していれば、継続して被保険者となります。雇用関係が終了していれば、資格を喪失します。

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