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未払い割増賃金に付される遅延損害金・付加金について

弁護士が解説する【未払い賃金に付される遅延損害金・付加金】について

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弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働基準法では、法定時間外、法定休日、深夜に労働者を働かせた場合、使用者は割増賃金を支払わなければならないと定められています。

この割増賃金の支払いを怠ると、遅延損害金や付加金の支払いを命じられるおそれがあります。

このページでは、割増賃金にかかる遅延損害金・付加金について詳しく解説します。

未払い割増賃金請求における遅延損害金と付加金

割増賃金を含む賃金全般(賞与、退職金等も含む)が未払いの場合、支払いが遅延しているあいだの利息に相当する、「遅延損害金」が発生します。

また、割増賃金や休業手当、有給休暇に対する賃金、解雇予告手当が未払いの場合、裁判で悪質だとされれば、制裁措置として割増賃金分と同額の「付加金」の支払いが命じられることもあります。

割増賃金の概要に関しては、以下のページで解説していますので、ぜひご一読ください。

割増賃金請求について

遅延損害金について

割増賃金が未払いである場合、使用者は遅延損害金を支払う義務を負います。遅延損害金は、本来であれば賃金を支払わなければならなかった日の翌日から、支払いが遅延している期間について発生します。

遅延損害金を計算するとき、以前は法定利率として年6%が定められていましたが、現在は民法上の法定利率と同じ3%となっています。法定利率は3年ごとに見直されるため(民法404条3項)、2023年に利率が変更される可能性があります。

遅延損害金の計算方法

割増賃金にかかる遅延損害金の計算方法は、未払いである割増賃金の額に、利率と、遅延している日数を掛け、日割りにして算出します。

例えば、6月25日に支払われるはずだった未払いの時間外労働分の割増賃金(残業代)5万円を、在職中の7月31日に請求するとします(退職後の場合は利率が変わります)。

計算式は、

5万円(割増賃金)×0.03(利率)×36日(遅延日数分)÷365日=148円(小数点以下切り上げとする場合)

となり、割増賃金にかかる遅延損害金は148円となります(小数点以下の扱いについては、労働基準法に明確な定めはありません。切り上げか、四捨五入が一般的です)。

なお、割増賃金自体の計算方法については以下のページで詳細に解説していますので、ぜひご参照ください。

割増賃金の計算方法

遅延損害金の請求期限

遅延損害金の請求期限は、割増賃金と同じく、現時点では3年となります。

なお、割増賃金請求の消滅時効は、かつては2年とされていましたが、2020年4月の民法改正により、当面のあいだ3年とされました(今後、時期未定で5年となることが予定されています)。

遅延損害金を請求された場合

労働者から遅延損害金を請求された場合には、次の式を用いて金額を計算します。

遅延損害金額=未払い賃金×遅延損害金の利率÷1年の日数×遅延日数

「遅延損害金の利率」は、労働者が在職している期間については年3%として計算します。ただし、2020年3月31日までに発生した賃金については年6%の利率により計算します。
また、労働者が退職した後の期間については、利率を年14.6%として計算します。

なお、以下のページでは、割増賃金の計算について解説していますので、ぜひご参照ください。

割増賃金の計算方法や割増率の改正、請求されたときの対処法

退職後の遅延利息

遅延損害金の利率は3%ですが、退職後の未払い期間の利率は、年14.6%と非常に高額になるおそれがあります。これは民法419条1項、賃金の支払の確保等に関する法律(以下、賃金支払確保法、賃確法)6条1項、同施行令1条、それぞれによるものです。

ただし、賃金支払確保法6条2項では、未払いがやむを得ない事由による場合は適用しないと定めており、これに該当する可能性があれば、当該利率の遅延損害金が適用されない場合もあります。

遅延利息の規定が適用されない場合

賃金支払確保法6条2項は、退職後の未払い割増賃金の遅延損害金利率年14.6%を例外的に適用しない期間を定めています。
この例外として、次の事由が定められています。

  • ①天災地変
  • ②事業主が破産手続開始の決定等を受けた
  • ③法令の制約により賃金の支払に充てるべき資金の確保が困難である
  • ④支払が遅滞している賃金の全部又は一部について、合理的な理由により、裁判所又は労働委員会で争っている
  • ⑤その他、①~④に準ずる事由

付加金とは

付加金とは、使用者が支払う義務のある賃金等を支払わなかったことに対する制裁金としての性質を有する金銭です。労働者は裁判において、使用者に付加金の支払いを求めることができます。

付加金の支払いの対象となる金銭として、次のものが挙げられます。

  • 解雇予告手当(労働基準法20条)
  • 休業手当(労働基準法26条)
  • 割増賃金(労働基準法37条)
  • 有給休暇への対価(労働基準法39条)

ただし、裁判において付加金の請求は必ず認められるわけではなく、裁判所が、使用者による労働基準法違反の程度や態様、さらに労働者が受けた不利益の内容や性質等の諸般の事情を考慮して、支払い義務を認めるか認めないか、さらに義務がある場合の金額も判断することとなります。

労働基準法

(付加金の支払)第114条
裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。

付加金の請求期限

労働基準法114条では、付加金の請求期限について『この請求は、違反のあった時から5年以内にしなければならない』と定めています。

割増賃金の消滅時効は現状3年(2020年8月時点)ですが、労働審判や訴訟を提起することによって時効は中断します。しかし、114条但書に定められているのは付加金の消滅時効ではなく除斥期間ですので、付加金に時効の中断というものはありません。違反から5年が経てば、請求権は消滅します。

なお、割増賃金の消滅時効に関しては以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

割増賃金の消滅時効

労働者からの付加金請求について

労働者からの付加金請求を受けたとしても、次に挙げるケースでは支払う必要がないとされています。

  • ①任意交渉の場で付加金の請求を受けたケース
  • ②労働審判で請求を受けたケース
  • ③訴訟において控訴する等したケース

これらのケースについて、以下で解説します。

任意交渉の場での付加金請求

付加金は、「裁判所」が「支払いを命じることができる」という性質のものです。ですから、未払い割増賃金があったとしても、裁判の判決において支払いを命じられない限り、支払い義務は発生しません。

例えば、任意交渉の場で労働者側の弁護士から付加金を請求されたとしても、支払いに応じる義務があるわけではありません。

労働審判での請求

労働審判とは、労働審判委員のあっせんによって労使間の紛争を図る制度です。労働審判は「裁判」ではないので、この場合も付加金の支払いが命じられることはなく、義務が発生することもないと考えられています。

ただし、訴訟に移行することを見越して、5年の除斥期間を守るために、労働審判手続申立書には付加金を請求する旨が記されていることが一般的です。

訴訟の場合

付加金は、未払いの割増賃金等に伴って支払う必要性が発生します。よって、訴訟において、原審で付加金を支払うよう命じられても、控訴審で口頭弁論終了時までに未払い賃金の精算を完了させることで、付加金の支払い義務の消滅が可能になります。

例えば、原審で企業側が、割増賃金に加え付加金も支払うよう命じられたとします。企業側が控訴すれば、原審の判決は仮執行宣言がなされているものを除き効力がなくなります。控訴審の判決前に原審で認められた分の割増賃金を支払ってしまえば、控訴審では、まだ支払われていない割増賃金が残っているという状況から脱しているため、付加金を支払う必要もなくなることになります。

付加金が認められた場合

付加金は、使用者の賃金未払いが悪質であると判断された場合に、制裁として科されることが多いです。
付加金の請求が認められた事例として、次の裁判例があります。

【大阪地方裁判所 令和元年11月1日判決】

この裁判において、被告会社は給与明細に「固定時間外手当含む」と記載していたと主張しました。しかし、毎月記載されていたという確証がなく、通常の賃金と割増賃金との「判別」を可能とするに足りず、また、被告会社は賃金に時間外労働分が含まれていたことを原告は了承していたと主張するもののその裏付けはないこと等を指摘しました。

そして、被告会社に対し、訴え提起日において支払日から2年以内の未払割増賃金額等と同一額の付加金の支払を命ずることが相当であるとして、未払い割増賃金と同一額の付加金の支払いを被告会社に命じました。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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