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賞与

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

2020年の「賞与」は、新型コロナウイルスの影響を受けた会社も多いことでしょう。ステイホーム期間の長期化で需要が増え、賞与額が増額した業種もあるようですが、減額、あるいは不支給となってしまった業種も少なくないようです。

また、近年では働き方改革が進み、男女の平等な待遇の確保や、正規雇用と非正規雇用との格差是正に向けた取り組みが行われていますが、まだまだこれらに絡めて「賞与」の査定方法などの扱いが問題となるケースがあります。

では、いざ労働者との間にトラブルが起こったとき、会社側は適切な対応ができるのでしょうか。

このページでは、「賞与」の扱いで問題となり得る基本的な事項について解説していきます。

賞与の定義

賞与とは、「ボーナス」などとも呼ばれる、固定給とは別に支給する給与のことです。
具体的には、以下に該当するものとされています(昭和22年9月13日発基17号)。

  • 定期または臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるもの
  • 支給額があらかじめ確定されていないもの

一般的には、夏と冬の年2回、賞与を支給している会社が多いようですが、支払時期や回数などについて法的な定めはなく、そもそもボーナスが支給されない企業もあります。

賞与の支払い義務

賞与を“当然”に支給しなければならないとする法律上の義務はありません。したがって、賞与を支給する場合には、就業規則等に賞与に関する規定を設けたうえで、その規定に基づいて運用する必要があります。このように、就業規則等にルールを定めたことで初めて、使用者にはそのルールに基づいた支払義務が生じます。
さらに掘り下げてみましょう。

しかし、「賞与」と名のつくものでも、労働の対償として支給する【賃金(労基法11条)】の性質を有する支払いで、かつ、就業規則等で支給の有無や金額等条件が明らかにされており、当該条件を満たす場合には「支払う」等の規定がされている場合には、原則として、月給等と同様に支払義務を負います。なお、【賃金】は通常毎月1回以上支払うものですが、賞与についてはその限りではありません(同法24条2項)。

一方、賞与支給の有無や金額が、業績や人事評価等を考慮したうえ、使用者の裁量によって左右される“恩給”的な性質を主とするものである場合、つまり、「支払うことがある」等の規定がされている場合、会社は必ず賞与を支払わなければならないとする義務を負いません。ゆえに、減額とすることや不支給とすることも、基本的には問題になりません。

賞与の類型

賞与は、主に<通常賞与>と<決算賞与>の2類型に分けることができます。

通常賞与
「賞与」、「ボーナス」のほか、「夏期手当」、「年末手当」、「期末手当」といった名称で支給するものなどを指します。
業績が著しく悪化するなどの事情がなければ、基本的には毎年一定の時期に支給します。

決算賞与
「臨時賞与」、「年度末手当」、「特別賞与」など、その名称は会社によりさまざまですが、会社の事業年度の業績に応じて支給する賞与を指します。
決算とは、年間の収入と支出を計算し、業績を明らかにすることで、業績が好調な場合に労働者への利益還元という形で臨時に支給します。つまり、毎年必ず支給するものではありません。会社としては、節税対策としても有用です。

賞与の査定方法

賞与の査定は、あらかじめ賞与の支給対象者査定対象期間等を定めたうえで、主に以下の3つの観点から対象者を評価し、支給額を決定する運用が一般的です。

  • 業績評価
  • 能力評価
  • 行動評価

また、対象者の上司のみならず、同僚や部下からの評価も査定の対象とする 「360度評価」を採用する会社も増えています。
査定方法に関する詳しい解説は、以下のページをご覧ください。

賞与の査定方法

産休や育休取得者の賞与

産休・育休を取得したことを理由として賞与を支給しないことは、違法となるおそれがあるので注意しましょう。産休を理由とした賞与の不支給は雇用機会均等法9条3項、育休を理由とした育児・介護休業法10条の【不利益取扱い】にあたり、禁止されています。

ただし、産休・育休のために実際に出勤していなかった不就労日数の割合に応じて減額することを賞与規程に定めて運用することは、問題ありません。

なお、以下のページでは、産休の手続や、賃金・有給休暇の扱い等について詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

産前産後休業の期間と手続き

中途採用者の賞与

中途採用者に対する賞与支給の有無及び支給額は、各社の賞与規程の内容と、入社時期によって変わってきます。
賞与が支給される場合の、支給額の計算方法には、主に次の2パターンが考えられます。

  • 賞与の査定期間のうち、在籍期間に対応する分だけ、日割りあるいは月割りで支給する方法
  • 在籍期間にかかわらず、一律一定額を支給する方法

例えば、「査定期間の●割以上在籍している者」や、「入社●ヶ月以上経過した者」等を支給対象とする定めがある場合、その割合に満たなければ賞与の支給はありません。また、「賞与」という名目ではなく、「寸志」として一定額(数万円程度)を支給するケースもあります。

退職者の賞与について

賞与の査定期間には在籍していたものの、賞与の支給日に到達する前に退職した労働者に対して賞与を支給するかどうかについては、度々問題となります。この場合、就業規則等の賞与規程に“支給日在籍要件”を明記していれば、不支給としても原則として適法となります。

“支給日在籍要件”に関する詳しい解説は、以下のページに譲ります。

支給日在籍要件

賞与支給の取りやめ

例えば、業績が悪化した際に、賞与の支給を取りやめとすること、あるいは減額とすることが可能かどうかの判断は、就業規則等に定めた賞与規程が、どのような記載になっているかで異なります。

賞与の支給額や計算方法が明確に記載されている場合には、基本的には規定のとおり支給すべきです。支給を取りやめたり、減額したりすると、労働条件の不利益変更にあたるとして問題となるおそれがあります。

他方で、“業績によって支給しない場合もある”等の記載がある、あるいは、賞与支給の有無や支給額が、使用者の裁量で都度変動する内容の規定となっている場合に加え、後にご説明するような労使慣行が成立しない場合には、賞与を不支給・減額とすることも可能です。

賞与の減額については、さらに詳細に説明しているページがありますので、ぜひこちらもご覧ください。

賞与の減額

賞与の請求権

労働契約や就業規則などに、賞与の支給額や支給時期が明確に定められている場合は、【賃金】としての扱いとなるため、労働者はその賞与について請求権を有するといえます。また、これらに明確な定めがなくとも、“労使慣行”が成立する場合には、賞与の請求権が認められるケースがあります。

“労使慣行”とは、会社で長期間にわたって継続・反復して行われてきた行為が、労使双方の異議なく受け入れられ、事実上の制度となっていることをいいます。

つまり、例えば何年にもわたって夏季・冬季の2回、一定額の賞与を支給している場合などには、事実たる慣習として労働契約と同様の効果を持ち、年2回の賞与について、労働者に一定額の請求権が生じ得ることになります。

未払いの賞与

賞与が、労働基準法11条の【賃金】の性格を有するものであるにもかかわらず支給しなかった場合、支給要件を満たしている労働者は、賞与未払いとして会社に請求することができます。したがって、請求にあたり労働者側には以下2点の立証責任が生じます。

  • 賞与が【賃金】に該当すること
  • 支給要件を満たしていること

これらは、主に賞与の支給の有無及び支給要件に関する根拠規定が明記されている就業規則や労働契約書、労使慣行を証明できる資料(例:過去の賞与等)などを証拠とし、争われますから、会社側は賞与の目的・性質をよく理解したうえで、賞与規程を作成・運用することが求められます。

もっとも、すでに支払い済の賞与を未払いとして請求された場合には、支払い済であることを証拠等で会社側が立証する必要が生じますので、ご留意ください。

請求権の時効

2020年4月1日より、これまで2年だった未払い賃金請求権の時効が、3年に延長されました。したがって、賃金請求権の時効は次のようになります。

2020年4月1日より前に発生した賃金請求権の時効:賃金の支払期日より2年
2020年4月1日以降に発生した賃金請求権の時効:賃金の支払期日より3年

つまり、労働者は、賃金請求権の発生から2年ないし3年を経過した未払い賃金の請求はできないということです。

なお、賃金請求権の時効の延長は、同じく2020年4月1日から施行された改正民法において、債権の消滅時効が1年から5年に延長されたことによる影響を受けたものです。

労働基準法は、労働者保護を目的とした民法の特別法にあたります。したがって、賃金請求権の時効は、一般法である民法の時効よりも優先して適用されることになります。しかし、民法改正によって、民法の時効よりも、労働基準法の時効の方が短くなってしまうことで、かえって労働者が不利益を被ることが懸念されたため、労働基準法の時効も同時に見直されました。

もっとも、労働基準法115条は消滅時効を原則5年とする内容になっていますが、法改正後、直ちに2年から5年に延長することは労使の権利関係を不安定にさせるとして、当面の間は3年とされています(労基法143条3項)。

なお、施行5年後、つまり2025年に、この時効期間については再検討されることになっています。

賞与と「同一労働同一賃金」の関係

例えば、正規雇用と非正規雇用とで、携わる業務の内容や責任の程度、範囲等に違いがある場合に賞与の支給額に差を設けることは理にかなっていますが、支給額に差がある理由が“雇用形態”による区別だとすれば、それは不合理な賃金格差と判断されるおそれがあります。

厚生労働省は、このような不合理な待遇を禁止するガイドラインを策定しています。賞与に関する一部記載を確認してみましょう。

短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(平成30年12月28日厚生労働省告示第 430 号)
第3 短時間・有期雇用労働者 2 賞与

賞与であって、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の貢献である短時間・有期雇用労働者には、貢献に応じた部分につき、通常の労働者と同一の賞与を支給しなければならない。また、貢献に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた賞与を支給しなければならない。

会社の業績等への貢献に応じた、いわゆる業績連動型の賞与を支給する場合、非正規雇用の労働者に対しては、正規雇用の労働者と同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた賞与額を支給することとしています。

もっとも、このガイドラインの規定は業績連動型の賞与の支給に関して言及するものであり、「月給の●ヶ月分」等の方法で支給額を算定する給与連動型の賞与について当然に適用されるものではありません。

賞与支給後の手続き

労働者に賞与を支給した際には、『被保険者賞与支払届』のほか、70歳以上の労働者に賞与を支給した場合には『70歳以上被用者賞与支払届』『70歳以上被用者算定基礎届』』『70歳以上被用者月額変更届』を加えて、支給してから5日以内に管轄の年金事務所等に提出しなければなりません。これらの届書は、賞与にかかる社会保険料算出、老齢厚生年金の調整のために必要な書類です。

他方で、賞与を支給しなかった場合にも、『賞与不支給報告書』を提出する必要があるため、手続きに漏れがないよう注意しましょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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