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女性従業員の労働

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

少子高齢化が進むなか、日本の経済を持続的に発展させるためには、新たな労働市場の開拓が不可欠です。そのためにも、労働者が性別に囚われることなく、自身の能力を十分に発揮できる雇用環境を整備することが重大な課題とされています。なかでも、妊娠・出産・育児と仕事の両立を望む女性労働者に対するサポートは、特に重要視されるようになってきました。

では、企業には、どのような配慮が求められるのでしょうか。それを考えるうえで前提となる、男女間に事実上生じている格差の解消、および女性労働者の母性の尊重を目的に設けられた法律の定めについて、解説していきます。

一般女性労働者に対する定め

1999年4月に労働基準法が改正される以前は、女性労働者に関して、時間外労働や休日労働を規制し、深夜業についても禁止するといった定めがありました。しかし、こうした雇用における女性の過剰な保護は、女性の社会進出を阻む一因になると考えられるようになったため、妊産婦に関する保護規定を残して、その他の定めは原則として削除されました。

もっとも、身体的に妊娠・出産することができる機能を持つ女性が、性別に囚われずに働き、仕事と私生活を両立させるためには、職場における理解と一定の保護が求められます。そこで、現行の労働基準法における、一般女性労働者(妊産婦でない女性労働者)に関する保護規定について、次項より説明します。

生理休暇

生理休暇」とは、生理日に就業することが著しく困難な女性が休暇を請求した場合に、使用者がその女性を生理日に就業させることを禁止する、一般女性労働者に対する保護規定です(労基法68条)。当該規定に違反した使用者には、30万円以下の罰金が科されます。

生理休暇の日数制限や取扱い(有給か無給か)等について、使用者側の裁量をどのように考えるのかといった制度の詳細については、下記の記事で説明しています。

生理休暇

一般女性労働者の坑内労働の禁止

18歳以上の一般女性労働者が、坑内労働に就業することは原則として可能ですが、一部の業務※1への就業は制限されます(労基法64条の2)。また、妊産婦に関しては、下表のとおりより強く保護されます。

対象者禁止される業務
  • ・妊娠中の女性
  • ・坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た、産後1年を経過しない女性
坑内で行われるすべての業務
上記以外の18歳以上の女性労働者※1:坑内で行われる業務のうち人力による掘削の業務その他女性に有害な業務として、厚生労働省令で定める業務(女性労働基準規則1条各号に列挙)
18歳未満の年少者(男女を問わない)すべての坑内労働

女性労働基準規則

(坑内業務の就業制限の範囲)第1条

  1. 人力により行われる土石、岩石若しくは鉱物(以下「鉱物等」という。)の掘削又は掘採の業務
  2. 動力により行われる鉱物等の掘削又は掘採の業務(遠隔操作により行うものを除く。)
  3. 発破による鉱物等の掘削又は掘採の業務
  4. ずり、資材等の運搬若しくは覆工のコンクリートの打設等鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務(鉱物等の掘削又は掘採に係る計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、保安管理その他の技術上の管理の業務並びに鉱物等の掘削又は掘採の業務に従事する者及び鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務に従事する者の技術上の指導監督の業務を除く。)

一般女性労働者の危険有害業務の禁止

妊産婦だけでなく一般女性労働者も、妊娠または出産に係る機能に有害である業務への就業が制限されます(労基法64条の3 2項)。主に以下の業務が、妊娠または出産に係る機能に有害である業務とされています。

  • ・重量物を取り扱う業務(女性則2条1項1号)
    (18歳以上の場合:継続作業20キログラム、断続作業30キログラムまで)
    ※年齢により重量の制限が異なります。
  • ・PCB、水銀、クロム酸塩、砒素化合物、PCP、鉛など女性則2条1項18号に掲げる有害物のガス、蒸気または粉塵を発散する場所における同号に定める業務(女性則2条1項18号参照)
男女雇用機会均等法のあらまし(厚生労働省)

産前産後の休業制度

妊産婦以外の一般女性労働者も、雇用において最低限の保護を受けますが、妊産婦に関してはより手厚い保護がなされています。

例えば、女性の持つ、生命再生産のための身体的機能(母性機能)を保護する「母性保護」の観点から、産前産後の女性労働者に関しては、次のような保護規定が設けられています(労基法65条1項、2項、3項)。

  • ・産前6週間(多子を妊娠している場合は14週間)以内の女性から請求があった場合に、当該女性を就業させることの禁止
  • ・産後8週間以内の女性を就業させることの禁止 *例外として、産後6週間を経過した女性から請求がある場合に、医師が就業に支障がないと認めた業務に就かせることは可能
  • ・妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければならない

詳しくは下記の記事をご覧ください。

産前産後の取扱い

妊産婦に係る労働制限

妊産婦には、母性保護の観点から、労働に一定の制限を課す規定も設けられています。具体的にどのような範囲の就業であれば制限に抵触しないのか等、詳細については下記のリンク先でご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/danjyokoyou_s.pdf

労働時間の制限

労働基準法66条1項によると、使用者は、変形労働時間制や非定型的変形労働時間制を適用する妊産婦が請求した場合妊産婦の1週間または1日の労働時間について、法定労働時間1日8時間週40時間を超えさせてはならないと規定しています。

なお、妊産婦から請求がない場合には、当該規定は適用されないことに注意が必要です。また、フレックスタイム制は、自分で労働時間を調整できるため、ここでは対象になりません。

時間外・休日労働や深夜労働の制限

労働基準法66条2項、3項によると、使用者は、妊産婦が請求した場合、妊産婦に時間外労働・休日労働・深夜業をさせてはいけません

なお、この請求は、時間外労働についてのみ、あるいは休日労働についてのみ等、部分的に請求することも可能です。この場合、使用者は、請求された範囲内の業務に妊産婦を従事させなければ良いとされています。

妊産婦の坑内労働の禁止

1985年以前には一律に禁止されていた、女性の坑内労働への就業ですが、女性労働者の能力発揮の場を広げるといった観点から、母性保護の規定のみを残して緩和されることとなりました。その結果、女性労働者の坑内労働への就業は、原則として可能となり、妊産婦の就業と一般女性労働者の一部の業務への就業が禁止されるのみとなりました。具体的には、労働基準法は、妊娠中の女性及び産後1年以内で使用者に申し出た女性を、いかなる坑内労働にも従事させてはならない旨を規定しています(労基法64条の2 1項)。こちらも併せてご覧ください。

妊産婦の危険有害業務の禁止

労働基準法64条の3では、使用者に対して、妊産婦を危険有害業務に就業させることを禁止しています。危険有害業務とは、①重量物を取り扱う業務や②有害ガスを発散する場所における業務、③その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務をいいます。妊産婦が就業を制限される業務の具体的な範囲は、女性労働基準規則2条1項に規定されているので、併せてご覧ください。

男女雇用機会均等法のあらまし(厚生労働省)

軽易業務転換

労働基準法65条3項によると、使用者は、妊娠中の女性から請求された場合、当該女性労働者を他の軽易な業務に転換させなければなりません。原則として、請求された業務に転換させる義務が発生するとされます。

もっとも、行政通達(昭和61年3月20日基発151号、婦発69号)によると、転換させられるような軽易な業務がない場合に、新しく軽易な業務を作り出してまで転換させる必要はないとされています。例えば、事務作業への転換を希望したものの、人員が十分に足りているような場合には、従来の業務の負担を軽減するといった措置で足りると解されます。

なお、軽易な業務に転換したことを理由とした降格は、原則として違法であるとした判例があります。

育児時間

育児時間とは、満1歳未満の子供(養子を含む)を育てる女性が、通常の休憩時間のほかに請求できる、育児を行う時間のことで、原則として1日2回各30分以上とされています(労基法67条1項、2項)。これは授乳や母体保護の観点から設けられた制度のため、育児休業等とは異なり、男性労働者は対象外となっています。

なお、上述の育児時間は、フルタイム勤務(8時間)の場合を想定しています。1日の勤務時間がフルタイム勤務の半分以下の場合には、使用者は、1日30分の育児時間を与えれば良いとされています。

育児時間中の賃金の取り扱い等、詳細は下記の記事をご覧ください。

育児時間

妊娠中および出産後の母性健康管理措置

事業主は、妊産婦である女性労働者が、保険指導または健康診査の受診に必要な時間を確保することが求められます(雇均法12条)。また、上述の指導や診査のための時間を確保するだけでなく、指導事項を守ることができるようにするための措置を講じなければなりません(雇均法13条1項)。さらに、こうした妊娠や出産に伴う制度や措置を利用したことを理由として、不利益取扱いをすることも禁止されています(雇均法9条3項)。

詳しくは下記の記事をご覧ください。

母性健康管理

育児・介護休業

少子高齢化が進む現代社会においては、「就労」と「出産・育児」あるいは「就労」と「介護」を二者択一とせず、仕事と私生活の両立が実現できる環境の整備が求められています。したがって、育児休業や介護休業といった制度を取得しやすい職場環境を整備することが必要だといえます。そのために改正されたのが、「育児・介護休業法」です。

育児・介護休業法で定められている、育児休業・介護休業は、女性労働者だけでなく男性労働者も取得することができます。

育児休業および介護休業の詳細については、下記の記事をご覧ください。

育児休業及び介護休業

短時間勤務制度

育児短時間勤務」とは、2009年の育児・介護休業法の改正により、企業に導入が義務づけられた制度です(育介法23条1項)。3歳に満たない子供を養育する労働者は、原則として、1日の所定労働時間を6時間にすることができます。なお、業務の性質や実施体制のため、短時間勤務制度の適用が難しい労働者に対しては、フレックスタイム制や時差出勤制度の導入、事業所内保育施設の設置運営といった代替措置を講じる必要があります。

また、要介護状態にある家族を介護する労働者に関しても、事業主は、連続する3年以上の期間にわたって、所定労働時間短縮等の措置を講じなければなりません(育介法23条3項)。

制度の対象となる労働者の条件や制度利用中の賃金について等、各制度の詳細について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

育児・介護休業法における所定労働時間の短縮措置について

妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止

事業主は、女性労働者が、妊娠・出産したことや母性健康管理措置の適用を受けたこと、産前産後休業を取得したこと、軽易な業務に転換したこと等を理由として、解雇やその他不利益取扱いをしてはなりません(雇均法9条3項)。

不利益取扱いとは、解雇をはじめ、降格や減給、就業環境を害する(仕事をさせない、嫌がらせ的な言動をする)といった行為を指します。

妊娠を理由とした不利益取扱いに関する裁判例

ここで、妊娠を理由とした不利益取扱いに該当するとして、事業主である被告に対して、不法行為または債務不履行に基づく慰謝料の支払義務を認めた裁判例をご紹介します。

広島高等裁判所 平成27年11月17日判決、X生活協同組合事件(上告後の差戻審)

<事案の概要>

理学療法士で副主任(管理職)の職に就いていた原告が妊娠し、軽易な業務へ転換したことをきっかけとして降格させられ(本件措置1とします)、育児休業後も復位されなかった(本件措置2とします)措置に関して、主位的請求として、本件措置1が雇用機会均等法9条3項に違反する無効なものであるとし、不法行為または労働契約上の債務不履行に基づく損害賠償金を請求した事案です。(なお、予備的請求として、本件措置2が育児・介護休業法10条に違反するものであるとした、不法行為または労働契約上の債務不履行に基づく損害賠償請求も行われました。)

当該請求は第一審・控訴審ともに棄却されましたが、上告審で破棄差戻しの判決が下り、本訴訟が行われました。

<裁判所の判断>

最高裁は、雇用機会均等法の趣旨から、妊娠・出産、産前産後の休業または経緯業務への転換等を理由として不利益な取り扱いをすることは、原則として違法であり、無効であることを確認しました。しかし、①当該労働者が軽易業務への転換およびそれをきっかけとする事業者の措置(降格等)により受ける、有利な影響並びに不利な影響の内容や程度、事業主の措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者が自由な意思に基づいて降格を承諾したと認められる合理的な理由が客観的に存在するとき、または②事業主に、当該労働者について降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務の運営や人員の適正配置の確保等の業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度および上述の有利または不利な影響の内容や程度に照らして、事業者の措置に、雇用機会均等法9条3項の趣旨および目的に実質的に反しないと認められる特段の事情があるときは、不利益取扱いには当たらないと解するのが相当であるという基準を示しました。

この基準を本件にあてはめると、以下のようになります。

【①について】 原告は、本件措置1による影響について、事業主から適切な説明を受け十分に理解したうえで判断を下したとはいえず、自由な意思に基づいて降格を承諾したと認められる合理的な理由が客観的に存在するとはいえない

理由

  • ・本件措置1の時点で、被告が原告に対して、育児休業後の現場復帰の際に副主任の地位がどうなるかを明確に説明したと認めるに足りる証拠はないこと
  • ・経緯作業への転換(リハビリ科への異動)の辞令後、これに伴い副主任の地位を免除されることを事後承諾したものの、事後承諾の経緯からすると、この事後承諾が原告の自由意思に基づいてなされたとする合理的な理由が客観的に存在するとはいえないこと
  • ・リハビリ科への異動によって、従前の訪問リハビリ業務よりは肉体的負担の少ない病院リハビリ業務を担当できるという利益を得たと認められるものの、本件措置1は、副主任を免除されたことによる賃金の低下等の重大な不利益を与えていること
  • ・育児休業終了後も副主任への復帰を保障したものではないこと

【②について】 降格措置の必要性と、当該土地が男女雇用機会均等法9条3項に実質的に反しないと認められる特段の事情があったとはいえない

理由

  • ・「原告は独善的であり、かつ協調性がない」等、被告が原告に職責者適性がないことを裏付ける事実として主張した点は、すべて理由がないこと
  • ・リハビリ科への異動(業務上の軽減措置)によって、業務上の負担の軽減という利益を得られたといえるものの、降格による不利益を考慮すると、この措置が原告に対して与えた不利益を補うものであるとは到底いえないこと

【結論】 【①】【②】の判断を踏まえ、裁判所は、被告は原告に対して損害賠償責任を負う旨判示しました。

理由

本件措置1を行うにあたり、被告には、女性労働者の母性を尊重し職業生活の充実の確保を果たすべき義務に違反した過失(不法行為)と、労働法上の配慮義務違反(債務不履行)があるというべきであり、その重大さも、不法行為または債務不履行として民法上の損害賠償責任を負わせるのに十分な程度に達している

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