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女性従業員の労働

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

少子高齢化が進むなか、日本の経済を持続的に発展させるためには、労働者が自分の性別に囚われることなく、自身の能力を十分に発揮できる雇用環境を整備することが重大な課題とされています。そのために、妊娠・出産・育児と仕事との両立を望む女性労働者に対するサポートは、特に重要視されるようになってきました。

そこで、企業は、現状において女性労働者が抱えている問題について、どのような配慮が求められるかを考える必要があります。そのために、男女間に生じている格差の解消、及び女性労働者の母性の尊重を目的に設けられた法律の定めについて解説していきます。

妊娠・出産・育児中の女性労働者に対する配慮

女性労働者の中でも、妊産婦(妊娠中の女性と出産後1年が経過していない女性)及び育児中の女性に対する配慮は特に重要です。
そこで、男女雇用機会均等法には「母性健康管理措置」が設けられており、労働基準法には「母性保護規定」が設けられています。それぞれ詳しくみていきましょう。

男女雇用機会均等法における母性健康管理措置

男女雇用機会均等法には、母性健康管理措置として以下のものが定められています。

・保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保(雇均法12条)
働いている女性は、妊産婦のための保健指導や健康診査を受ける時間が取れないことがあるので、企業はそのための時間を確保できるようにしなければなりません。

・指導事項を守ることができるようにするための措置(雇均法13条)
企業は、妊娠中や出産後の女性が健康診査等で受けた指導事項を守れるように、以下のような措置を取らなければなりません。

  • ①妊娠中の通勤緩和(ラッシュ時を避けて通勤できるようにする措置等)
  • ②妊娠中の休憩を増やす・休憩時間を延長する等の措置
  • ③妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置(重量物を扱う作業の免除、休業等の措置)

・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(雇均法9条)
企業は、女性が妊娠・出産・産前産後休業の取得、妊娠中の勤務時間短縮などの男女雇用機会均等法による母性健康管理措置又は深夜業免除などの労働基準法による母性保護措置を受けたことなどを理由に、解雇・降格・減給等の不利益取扱いをしてはなりません。

なお、母性健康管理の詳細について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

母性健康管理

新型コロナウイルス感染症に関する措置

新型コロナウイルス感染症が流行したことにより、「感染のおそれに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響がある」と主治医等から指導を受けるケースがあります。

そこで、指導を受けた労働者が申し出た場合には、企業は職場における配慮を行う必要があります。具体的には、以下のような措置が必要となります。

  • 休みやすい環境の整備
  • テレワークや時差通勤の促進
  • 感染リスクが低い作業への転換

労働基準法における母性保護規定

労働基準法における母性保護規定の目的は、体調等に個人差のある妊産婦を、本人が希望に応じて保護することです。
母性保護規定には、具体的に以下のものがあります。

  • 産前産後休業
  • 育児時間
  • 変形労働時間制の適用制限
  • 時間外労働、休日労働、深夜業の制限
  • 危険有害業務の就業制限
  • 軽易作業への転換
  • 生理休暇

産前産後休業

産前産後休業とは、女性労働者が出産する前と出産後に休む権利を保障する制度です。
母性保護の観点から、産前産後の女性労働者に関しては、次のような保護規定が設けられています(労基法65条1項、2項、3項)。

  • 産前6週間(多子を妊娠している場合は14週間)前の女性から請求があった場合に、当該女性を就業させることの禁止
  • 産後8週間以内の女性を就業させることの禁止
    *例外として、産後6週間を経過した女性から請求がある場合に、医師が就業に支障がないと認めた業務に就かせることは可能
  • 妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければならない

産前産後休業について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

産前産後休業とは|休業中の給与や必要な手続き

育児時間

育児時間とは、満1歳未満の子供を育てる女性が請求できる、育児を行うための時間のことです。

育児時間は、通常の休憩時間のほかに請求することが可能であり、基本的には1日2回・各30分以上とされています(労基法67条1項、2項)。1日2回とされていますが、必ず2回に分けて取得させなければならないわけではなく、1時間以上の育児時間をまとめて取得させるといった運用も可能です。

なお、1日の勤務時間がフルタイム勤務の半分以下の場合(例えば、元々のフルタイムが8時間の方が4時間以下の時短勤務となる場合)には、使用者は、1日30分の育児時間を与えれば良いとされています。

育児時間中の賃金の取扱い等、詳細は下記の記事をご覧ください。

育児時間とは | 労務管理上の注意点や時短勤務との併用について

変形労働時間制の適用制限

変形労働時間制とは、労働時間を週単位や月単位、年単位で調整することによって、繁忙期等に法定労働時間を上回る労働時間が生じても、一定の範囲で時間外労働としての取扱いをしないことが許容される制度です。

使用者は、変形労働時間制を適用する妊産婦が請求した場合、妊産婦の1週間または1日の労働時間について、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えさせてはならないと規定されています(労基法66条1項)。

なお、妊産婦から請求がない場合には当該規定は適用されないため、労働時間を一方的に削減してはならないことに注意してください。

時間外・休日労働・深夜労働の制限

労働基準法では、妊産婦から請求された使用者は、妊産婦に対して時間外労働・休日労働・深夜業をさせてはならないことを定めています(同法66条2項、3項)。

なお、時間外労働だけ、休日労働だけ等、限定的に請求可能ですので、使用者は、請求された範囲内の業務に妊産婦を従事させないように配慮する必要があります。

妊産婦の坑内労働の禁止

労働基準法は、妊娠中の女性及び産後1年以内で使用者に申し出た女性を、いかなる坑内労働にも従事させてはならない旨を規定しています(労基法64条の2第1項)。

1985年以前には、女性の坑内労働への就業は一律に禁止されていました。しかし、女性労働者の能力発揮の場を広げる観点から、母性保護の規定のみを残して、制限が緩和されることとなりました。その結果、女性労働者の坑内労働への就業は、原則として可能となり、妊産婦の就業と一般女性労働者の一部の業務への就業が禁止されるのみとなりました。

妊産婦の危険有害業務の禁止

労働基準法64条の3では、使用者に対して、妊産婦を危険有害業務に就かせることを禁止しています。
危険有害業務とは、以下に該当する業務です。

  • ①重量物を取り扱う業務
  • ②有害ガスを発散する場所における業務
  • ③その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務

妊産婦の就業制限業務の具体的な範囲は、女性労働基準規則2条1項に規定されているので、併せてご確認ください。

軽易業務への転換

労働基準法65条3項によると、使用者は、妊娠中の女性から請求された場合、当該女性労働者を他の軽易な業務に転換させなければなりません。原則として、請求された業務に転換させる義務が発生するとされます。

もっとも、行政通達(昭和61年3月20日基発151号、婦発69号)によると、転換させられるような軽易な業務がない場合に、新しく軽易な業務を作り出してまで転換させる必要はないとされています。例えば、事務作業への転換を希望したものの、人員が十分に足りているような場合には、従来の業務の負担を軽減するといった措置で足りると解されます。

なお、軽易な業務に転換したことを理由として不利益な取扱いを行うことは禁止されています。判例でも、妊娠中の軽易な業務への転換を契機とした降格は、原則として違法であるとされているため、注意が必要です。

育児・介護に関するその他の制度

少子高齢化が進む現代社会においては、「就労」と「出産・育児」あるいは「就労」と「介護」を二者択一とせず、仕事と私生活の両立が実現できる環境の整備が求められています。

したがって、職場環境において、育児休業や介護休業を取得しやすい制度を整備することが必要だといえます。そのために改正されたのが、「育児・介護休業法」です。

育児・介護休業法では、育児休業・介護休業、子の看護休暇、短時間勤務制度等が定められています。これらは、女性労働者だけでなく男性労働者も取得することができます。

介護休業・介護休暇

介護休業とは、労働者が、介護を要する状態の家族を介護するために、【対象家族1人につき3回・通算93日まで】休業できる制度です。

これに対し、介護休暇とは、介護を要する状態の家族の介護や送迎・付き添い等をするために、【1年度に5日(対象家族が2人以上いる場合は1年度につき10日)まで】休暇を取得できる制度です。この休暇は、1日又は時間単位での取得が可能です。

介護休業と介護休暇について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

介護休業制度の正しい知識と会社が取るべき対応
介護休暇制度とは|改正内容や介護休業との違い

育児休業

育児休業とは、労働者が子供を養育するため、原則としてその子供が1歳に達するまで(要件を満たせば最長で2歳に達するまで)の期間、休業が認められている制度です。実子だけでなく養子についても取得可能です。

また、育児休業は、母親に限ったものではなく、父母ともに認められている制度です。近年では、父親に対して育児休業取得を推進する動きが活発になってきています。

なお、育児休業について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

育児休業

子の看護休暇

子の看護休暇とは、小学校に就学するまでの子供を養育する従業員が、事業主に申し出ることによって、負傷したり傷病にかかったりした子の世話又は疾病の予防を図るために必要な世話(予防接種又は健康診断を受けさせることをいいます。)を行うために取得できる休暇です。1年度において5日を限度として、1日もしくは時間単位で取得できます。

なお、子の看護休暇について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

従業員の子育て支援制度「子の看護休暇」について

短時間勤務制度

「育児短時間勤務」とは、2009年の育児・介護休業法の改正により、企業に導入が義務づけられた制度です(育介法23条1項)。3歳に満たない子供を養育する労働者は、基本的に1日の所定労働時間を6時間にすることができます。

なお、業務の性質や実施体制のため、短時間勤務制度の適用が難しい労働者に対しては、フレックスタイム制や時差出勤制度の導入、事業所内保育施設の設置運営といった代替措置を講じる必要があります。

また、要介護状態にある家族を介護する労働者に関しても、事業主は所定労働時間短縮等の措置を講じなければなりません(育介法23条3項)。

制度の対象となる労働者の条件や制度利用中の賃金について等、各制度の詳細について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

育児・介護休業法における所定労働時間の短縮措置について

一般女性労働者に対する配慮

妊産婦でない女性労働者についても、母親になるための身体的特性を有していることから、そのような要因に由来する不調や、将来の哺育への配慮等が必要です。

そこで、現行の労働基準法には、一般女性労働者(妊産婦でない女性労働者)に関する保護規定として、生理休暇や特定の業務への就業制限等が設けられています。詳しくみていきましょう。

生理休暇

生理休暇とは、生理日に就業することが著しく困難な女性が休暇を請求した場合に、使用者がその女性を生理日に就業させることを禁止する、一般女性労働者に対する保護規定です(労基法68条)。

「生理日の就業が著しく困難」な女性労働者から休暇を請求された場合、使用者は必ず休暇を与えなければならず、これに違反した使用者には、30万円以下の罰金が科されます。

なお、生理休暇を与える際に、「生理日の就業が著しく困難」であることの証明をどの程度まで求めて良いか、あるいは、日数制限や取扱い(有給か無給か)などについて使用者がどの程度まで決められるのか等、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

生理休暇の概要と日数制限

坑内労働の就業制限

坑内労働とは、鉱山の坑内やトンネル内での労働のことです。
18歳以上の一般女性労働者は、坑内労働に就業することは基本的に可能ですが、一部の業務(※1)への就業は制限されます(労基法64条の2)。
また、妊産婦については、坑内労働に就業することが禁止されています。

女性労働基準規則
(坑内業務の就業制限の範囲)第1条

  • 人力により行われる土石、岩石若しくは鉱物(以下「鉱物等」という。)の掘削又は掘採の業務
  • 動力により行われる鉱物等の掘削又は掘採の業務(遠隔操作により行うものを除く。)
  • 発破による鉱物等の掘削又は掘採の業務
  • ずり、資材等の運搬若しくは覆工のコンクリートの打設等鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務(鉱物等の掘削又は掘採に係る計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、保安管理その他の技術上の管理の業務並びに鉱物等の掘削又は掘採の業務に従事する者及び鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務に従事する者の技術上の指導監督の業務を除く。)

危険有害業務の就業制限

妊産婦だけでなく一般女性労働者も、妊娠または出産に係る機能に有害である業務への就業が制限されます(労基法64条の3第2項)。主に以下の業務が、妊娠または出産に係る機能に有害である業務とされています。

  • 重量物を取り扱う業務(女性則2条1項1号)
    (18歳以上の場合:継続作業20キログラム、断続作業30キログラムまで)※年齢により重量の制限が異なります。
  • PCB、水銀、クロム酸塩、砒素化合物、PCP、鉛など女性則2条1項18号に掲げる有害物のガス、蒸気または粉塵を発散する場所における同号に定める業務(女性則2条1項18号参照)

男女同一賃金の原則について

労働者が女性であることを理由として、男性よりも賃金を低くすることは禁止されています(労基法4条)。しかし、日本の実態として、女性の賃金は男性の7割程度だとされており、格差の存在は否定できません。これは、女性が長く勤めたり、昇進したりするのが難しかったのが主な原因であると考えられています。

男女雇用機会均等法における差別の禁止

男女雇用機会均等法(以下「雇均法」といいます。)とは、労働者が性別により差別されることなく働くことができるようにするための法律です。
雇均法によって禁じられている女性労働者に対する差別としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 採用や昇進、労働契約の更新等について、性別を理由として差を設けること。
  • 合理的な理由なく、身長が高いことや筋力があること、転居を伴う転勤が可能であること等を、採用や昇進の要件とすること。
  • 結婚や妊娠、出産等を理由に退職を強要することや、退職勧奨の対象にすること。

なお、女性だけを優遇することも禁止されていますが、既に存在する格差を改善するためならば認められるケースがあります(雇均法8条)。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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