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労働基準監督署

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

「労働基準監督署」は、職場の安全や労働者の健康を守るための重要な機関です。日頃から企業の労働条件等を厳しく監視し、必要に応じて是正勧告を下すことも認められています。

企業は監督署に不信の目を向けられないよう、適切な労働環境を整備することが重要です。また、監督署へのさまざまな手続きも漏れなく対応する必要があります。

本記事では、労働基準監督署の役割や、企業に求められる対応について詳しく解説していきます。
「知らずに処分を受けることになってしまった」という事態を避けるため、しっかり確認しておきましょう。

労働基準監督署について

労働基準監督署とは、企業が労働基準法・労働安全衛生法・最低賃金法・労災保険法といった「労働関係法令」を守って運営するよう管理・監督する機関です。例えば、労働条件の確認や改善指導・安全衛生の指導・労働者や雇用者からの相談対応等を行います。また、労災保険給付における事務手続きも担っています。

労働基準監督署は、「労基」や「労基署」と略して呼ばれるのが一般的です。また、全国に“321署及び4支署”が置かれており、それぞれの管轄下にある企業を取り締まっています。

その他機関との関係

労働基準監督署は、厚生労働省が管轄する第一線機関(最も現場に近い機関)です。なお、厚生労働省には他にも複数の下部組織があり、

厚生労働省 > 労働基準局 > 労働局 > 労働基準監督署
という組織関係になっています。名称が似ているため混同されやすいですが、各機関の役割は大きく異なります。それぞれの違いについて、次項から整理していきましょう。

労働基準局

「労働基準局」は、労働基準監督署や都道府県労働局の上部組織として、これらの指揮・監督を行う機関です。
また、厚生労働省の内部部局として労働条件や労働者の保護に関する事務を統括していることから、労働基準法97条の「労働基準主管局」にあたります。

さらに、労働関係法令の施行も統括しており、法令の解釈や運用に関する通達を作成・発出する業務も行っています。

一方、下部組織の指揮・監督や労働問題全般の管理が主な業務ですので、労働者からの個別相談には基本的に応じていません。

都道府県労働局

「都道府県労働局」は、厚生労働省の地方支分部局のひとつです。全都道府県に設置されており、労働基準局に代わって労働関係の実務を行っています。

労働局の主な役割は、中立的な立場より企業と労働者の間で発生した労働トラブルの解決のあっせんをすることです。例えば、残業代の未払い・長時間労働・不当解雇といった問題が生じた際、紛争解決のための助言や指導を行ったり、企業と労働者の間に入り和解をあっせんしたりします。

また、労働者からの相談受付・企業からの雇用保険料の徴収・公共職業安定所(ハローワーク)での仕事紹介といった業務も行い、“人々が働きやすい環境作り”のために大きな役割を担っています。

労働基準監督署の権限

労働基準監督署は、企業に法律上の規則を順守させ、労働者の安全や健康を守るという重要な役割を担っています。
そこで、労働基準監督官は「行政監督としての権限」と「特別司法警察員としての権限」の2つの権限をもち、企業に対してさまざまな対応をとることが認められています。

2つの権限について、以下で詳しくご説明します。

行政監督としての権限

労基署が持つ、行政監督としての権限の一つとして、労働基準監督官は“事業場への立ち入り調査(臨検)”があります。

具体的には、労働基準法101条1項において、「事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿や書類の提出を求めたり、使用者又は労働者への尋問を行ったりすることができる」と定められています。

また、労働安全衛生法91条1項でも、「事業場に立ち入り、関係者に質問し、帳簿、書類その他の物件を検査し、若しくは作業環境測定を行い、又は検査に必要な限度において無償で製品、原材料若しくは器具を収去することができる。」と定められています。

なお、「帳簿や書類」とは、労働者名簿(労基法107条)、賃金台帳(同法108条)及び雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係にかかわる重要書類(同法109条)を指します。企業は、これらの書類を5年間(当面の間は、3年間です)保管することが義務付けられており、労働基準監督官から提出を求められた際は速やかに応じる必要があります。

司法警察員としての権限

労働基準法102条では、「労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う」と定められています。つまり、労働基準監督官は警察と同等の権限をもつ「特別司法警察員」として、捜査・逮捕・差押え・検証・送検を行うことが認められています。

例えば、企業が以下のような法令に違反した場合、労働基準監督官は司法警察員の権限を行使できます。

  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 最低賃金法
  • 賃金の支払の確保等に関する法律
  • じん肺法
  • 家内労働法
  • 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法
  • 作業環境測定法

法令違反とならないよう、事業主に課せられる義務をしっかり把握しておくことが重要です。この点、詳しくは以下のページで解説していますので、ぜひご覧ください。

労働安全衛生法
企業が遵守すべき「最低賃金制度」について

労働基準監督署の内部組織

労働基準監督署の内部組織

労働基準監督署は、厚生労働省の出先機関として、労働問題に関する業務を実質的に行っています。
また、署の内部組織は、担当する業務に応じて「方面(監督課)」「安全衛生課」「労災課」「業務課」の4つの課に分けられています(ただし、署の規模によって構成が異なる場合があります)。

それぞれの課における業務内容は、上図をご覧ください。

労働基準監督署の職員構成

労働基準監督署の職員は、「労働基準監督官」「厚生労働技官」「厚生労働事務官」の3つで構成されており、これを「三官制度」といいます。それぞれの業務や役割をみていきましょう。

労働基準監督官

労働基準監督官は、労働関係法令に基づく事業場の検査・監督や、法令違反をした企業の捜査・送検といった業務を行います。また、労災の被災者に対する補償手続きも担っています。

また、平成27年4月には、労働基準監督官によって構成される「過重労働撲滅特別対策班」(通称かとく)が新設されました。これは、特に悪質な法令違反をした企業を取り締まるために設けられた特別チームです。

労働技官

労働技官はいわゆる“技術職員”のことで、事業場の労働安全衛生を守る役割を担っています。そのため、労働技官の多くは「安全衛生課」に配属されます。具体的な業務としては、

・災害調査
・ボイラー検査
・工事の届出の受理
・クレーンやエレベーターの設置届けの受理

等が挙げられます。

労働事務官

労働事務官は、一般事務・会計・経理事務・庶務業務などを行います。また、労災認定や労災保険手続きなど、労災に関する業務全般も担っています。なお、労働事務官の多くは「業務課」に配属されます。

労働基準監督署の役割

労働基準監督署は、一般的に「方面(監督課)」「安全衛生課」「労災課」「業務課」という4つの部署で構成されています。それぞれどんな役割や業務を担っているのか、以下で確認していきましょう。

方面(監督課)

方面(監督課)では、以下のような業務が行われています。

申告や相談の受付

法定労働条件に関する相談や、労働基準法等に違反している企業への行政指導を求める申告を受け付けます。

臨検監督(監督指導)

定期的に、又は労働者からの申告により、労働関係法令に基づく事業場への立ち入り調査を行います。調査では、機械や設備・帳簿等を検査し、労働者の労働条件が適切かどうか確認します。

調査によって法令違反が認められた場合、是正するよう企業に指導を行います。また、危険性の高い機械や設備があった場合、その場で使用停止といった行政処分を下すこともあります。

司法警察事務

何度指導しても法令違反が是正されないような場合、重大な事案として“刑事事件”と扱われる可能性があります。刑事事件になると、捜査の対象になったり、検察庁への送検といった処置がなされたりするおそれがあります。

安全衛生課

安全衛生課は、労働安全衛生法等に基づき、労働者の安全と健康を確保するための措置をとるよう企業に指導等を行っています。具体的な業務として、以下が挙げられます。

  • ボイラー、クレーン、エレベーターといった機械の検査
  • 足場や建設工事に関する計画書の審査
  • 事業場における健康診断の実施状況の調査
  • 有害な化学物質の取扱いに対する措置(マスクの着用等)の確認
  • 労働者死傷病届の確認

したがって、企業は常に労働者にとって安心・安全な職場環境を維持することが重要といえます。具体的な対策や注意点は以下のページで解説していますので、併せてご確認ください。

労働安全衛生法
機械等に関する規制

労災課

労災課は、労災保険法に基づき、労働者が業務上又は通勤上で被った負傷・疾病・死亡に対する労災保険給付を行っています。

具体的には、労働者又は遺族からの請求により、関係者からの聴き取り・実地調査・医学的知見の収集といった調査を行い、労災認定の審査を行います。また、労災と認められた場合、事業主から徴収した労災保険料をもとに保険給付を行います。

さらに、事業主の労災保険加入に関する業務も労災課が対応しています。

労災が認定されるケースや補償内容は、以下のページをご覧ください。

企業が知っておくべき労働災害の基礎知識

業務課

業務課は、労働基準監督署全体の庶務業務や、会計処理といった経理業務を行います。これらの業務を担う「労働管理官」が主に配属されます。

労働基準監督署が取り扱う内容

労働基準監督署が取り締まるのは、「労働関係法令上の規定に対する違反行為」です。
主に労働基準法・労働安全衛生法・労災保険法等を対象とし、以下のような違反行為について監督・指導を行っています。

  • 違法な長時間労働
  • 不当解雇
  • 残業代の未払い
  • 退職金の未払い
  • 労働者の健康診断を行わない
  • 事業場における労災防止措置を行わない
  • 有給休暇の取得を認めない
  • 労災隠し

企業は、違反とならないよう労働関係法令で定められた義務・罰則について理解しておく必要があります。詳しくは以下のページで解説していますので、それぞれご確認ください。

労働時間
退職・解雇による労働契約の終了と証明書の交付義務
労働安全衛生法

民事不介入の原則

労働基準監督署は、労働関係法令で規定されていない“民事上の問題”については監督・指導することができません。これを「民事不介入の原則」といいます。

企業で起こりやすい民事上の問題としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ハラスメント問題(セクハラ、パワハラ等)
  • 能力不足や経歴詐称による解雇
  • 人員削減のためのリストラ
  • 懲戒処分の妥当性
  • 異動や配置転換の妥当性

ただし、これらの問題は、労働基準監督署ではなく都道府県労働局で扱われる可能性があります。
そのため、企業は民事上の問題にも十分注意すべきでしょう。民事上の問題については以下のページでより詳しく解説していますので、ご確認ください。

ハラスメント
懲戒処分

労働基準監督署への届出

労働者を雇用する場合、労働基準監督署への届出義務を怠らないようにしましょう。届出義務は労働関係法令で定められており、違反すると罰則を受ける可能性があります。
また、書類の提出先や提出条件もさまざまですので、以下で確認していきましょう。

監督課への届出

労働者に時間外労働や休日労働を行わせる場合、監督課に「36協定書」を提出する必要があります(労基法36条)。

また、常時10人以上の労働者を使用する企業は、「就業規則」を提出することも義務付けられています(同法89条)。なお、変形労働時間制を導入する場合、その対象者や対象期間、労働日や労働時間について労使協定又は就業規則で定め、監督課に提出する必要があります。

書類の作成方法や作成上のポイントは、以下のページでそれぞれ解説しています。

時間外労働とは
会社を守る36協定の締結方法
変形労働時間制の導入手順や注意点
就業規則の作成義務と届出義務

安全衛生課への届出

労働者(パートタイマー等を含む)が50人以上の事業場は、労働者の「健康診断結果」について報告書を作成し、安全衛生課に提出しなければなりません(労安衛則52条)。

また、同規模の事業場は、総括安全衛生管理者を選任し、その選任届を提出することも義務付けられています(同規則2条)。

また、労働者が業務上で負傷・疾病を負ったり死亡したりした場合、安全衛生課への「労働者死傷病報告」の届出も必要です(同規則97条)。

安全衛生について企業が押さえるべきポイントは、以下のページをご覧ください。

健康診断の種類と会社の費用負担について
安全衛生体制|管理者の選任と委員会の設置について

労災課への届出

労災課には、労災発生時に給付金を受け取るための「労災保険給付請求書」を提出します。

また、労災に加入するための「保険関係成立届」や、労災保険料の年度更新における「概算・確定保険料申告書」といった書類も、適宜労災課に提出します。

労働基準監督署が行う調査

労働基準監督署は、企業が労働関係法令に違反していないか調べるため、事業場への立ち入り調査(臨検)を行います。

調査には「定期監督」「申告監督」「災害時監督」「再監督」の4種類があり、実施されるタイミングや調査内容がそれぞれ異なります。

労基署からの是正勧告

臨検により法令違反が認められた場合、労働基準監督署から企業に「是正勧告」が行われます。また法律違反にあたらなくても、改善の必要性や設備の危険性がある場合、「指導票」や「使用停止等命令書」が交付されることがあります。

企業にはこの指摘について是正(改善)・報告することが義務付けられており、義務の履行を怠った場合、検察庁に送検され逮捕されるおそれがあるため注意が必要です。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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