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外国人雇用

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

少子高齢化による労働人口減少が問題となっている昨今、人手不足を解消する鍵として、外国人雇用が注目されています。
ただし、外国人の雇用に際して、厚生労働省は事業主に対してさまざまな義務の履行を求めているため、あらかじめ外国人雇用に関する知識を得ておくことが有用です。

本記事では、外国人労働者の募集・採用から離職までに必要な手続や、注意しなければならない点を解説していきますので、ぜひご一読ください。

外国人労働者の雇用について

外国人労働者とは、日本国籍を持たず、特別永住者並びに在留資格が「外交」及び「公用」の者以外の労働者のことをいいます。

外国人が日本で安心して働き、その能力を最大限発揮できる環境整備を目的とし、厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」に、外国人労働者を雇う際に事業主が講じるべき措置が定められています。具体的には、外国人労働者の募集・採用の適正化、適正な労働条件や安全衛生の確保、社会保険の適用などの事項が含まれています。

以下では、本指針の内容に沿って、事業主が外国人労働者を雇用する際の義務、講ずるよう努めるべき措置等について解説していきます。

なお、本指針は厚生労働省の以下のサイトで閲覧できますので、ご確認ください。

「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」|厚生労働省

日本における外国人雇用の現状

在留資格
出典:在留資格別外国人労働者数の推移

日本の労働人口は少子高齢化により年々減少し、有効求人倍率も2014年から現在まで続けて「1」を超え、募集をかけても人が集まらないという、採用の売り手市場が続いています。
他方、上図「在留資格別外国人労働者数の推移」のとおり日本で働く外国人の数は、年々増加しています。

厚生労働省公表の「外国人雇用状況の届出状況」によると、2022年10月末現在、日本で働く外国人労働者数は182万人を突破し、過去最多を更新しました。つまり、人手不足を補うため、外国人を雇入れたいという企業の需要は高まっているといえます。

また、在留資格別にみると、身分に基づく在留資格はここ数年ほとんど変化がありませんが、資格外活動、技能実習、専門的・技術的分野の在留資格は大きく割合が増加していることがわかります。

労働関係法令・社会保険の適用

外国人労働者にも、日本人労働者と同様に、労働基準法や労働契約法、労働安全衛生法、最低賃金法等が適用されます。また、雇用保険や労災保険、健康保険、厚生年金保険も同様に外国人労働者にも適用されることになっています。なかでも健康保険や厚生年金保険は、外国人には理解の難しい制度ということもありますので、十分な説明が必要です。

外国人雇用における労働関係法規・社会保険等に関しては、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

外国人雇用の労働関係法規・社会保険の適用に関する法律上の定め

外国人雇用のメリット

外国人を雇用する企業側のメリットとして、以下のような点が挙げられます。

  • 労働力の確保
    少子高齢化により、日本の労働人口は年々減少していますが、外国人の雇用により人手不足の解消が期待されます。特に、介護や飲食業、製造業など慢性的な人手不足に悩む業界では、外国人雇用が課題解決の鍵となる可能性があります。
  • 若くて優秀な人材の確保
    少子高齢化が進む日本では、若手社員の採用が困難な状況ですが、海外から働きに来ている労働者は若くて労働意欲に満ちた人材が多いため、若くて向上心のある優秀な人材を確保できる可能性があります。
  • 組織の活性化
    異なる価値観を持つ外国人を雇用することで、多様性のある会社へと変化し、イノベーションが生まれやすい環境が整備され、また、ダイバーシティ能力やコミュニケーション能力など社員のビジネススキルの向上も期待されます。
  • 海外進出時の即戦力
    海外進出を目指す会社にとって、相手国の法律や文化、言語の壁は大きな課題です。現地の商習慣や母国語が話せる外国人労働者を雇用すれば、海外進出時の即戦力となる可能性があります。
    また、外国人の人脈によっては、新たな販路の拡大も期待されます。

外国人雇用のデメリット

一方、外国人を雇用する企業側のデメリットとして、以下のような点が挙げられます。

  • コミュニケーションの問題
    外国人労働者の日本語レベルが低いと、意思疎通がスムーズに進まない可能性があります。
    また、文化の違いから、日本人に対する指示と同様の指示を外国人に対してした場合に、指示者の想定と異なる受け止められ方がされる可能性があります。そのため、言いたいことを意識的に言語化し、明確に伝える努力が必要となります。
  • 文化や風習の違い
    文化や風習の違いから、トラブルへと発展する可能性があります。例えば、日本では評価が良い行動でも、海外では評価が悪いと判断される行動があり、お互い不愉快になって、従業員同士の関係が悪化するおそれがあります。
  • 雇用手続が煩雑
    外国人を雇用する場合は、その職種で働く在留資格を取得するための手続が必要となり、この手続は基本的に雇用する企業が代理で行う必要があります。
    具体的には、在留資格申請書類の準備や入国管理局への許可申請、外国人雇用状況届出書の提出、在留資格の更新手続等を行う必要があり、雇用手続が煩雑です。

外国人雇用に関する助成金

外国人の雇用により、厚生労働省から助成金を受給できる場合があります。
外国人雇用に活用できる助成金を以下にご紹介します。

助成金の種類 概要
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定) 景気悪化など経済上の理由により事業縮小をする事業主が、労働者を一時的に休業させたり、教育訓練又は出向させたりしたことに対して交付される助成金
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) 日本の雇用ルールについての知識不足や言語の違いなど、外国人特有の事情に配慮した労働環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して交付される助成金
人材開発支援助成金(特定訓練コース) 労働者の職業訓練の経費や賃金に対して交付される助成金。OJT(実地研修)とOFF-JT(机上研修)が組み合わさった研修コースなど、最長半年の訓練期間が助成対象となります。
キャリアアップ助成金 アルバイトやパート、契約社員などの非正規社員を正社員として雇用した場合や、非正規社員の処遇を改善した場合に事業主に交付される助成金

外国人雇用に関する助成金について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧下さい。

外国人労働者の雇用管理に関する助成金

外国人雇用手続きの流れ

それでは、外国人労働者を雇用する際の具体的な手続について、見ていきましょう。
基本的には、以下の手順で進めていくことになります。

  1. 外国人労働者の募集
  2. 在留資格の確認
  3. 面接
  4. 雇用契約の締結
  5. 就労ビザの申請
  6. 受け入れ準備
  7. 外国人雇用状況の届出

①外国人労働者の募集

まず、最初に行うべきことが、外国人労働者の募集です。
外国人労働者の募集方法として、以下の方法が挙げられます。

  • 公的機関の活用(ハローワークや外国人雇用サービスセンターなど)
  • 自社従業員、取引先、学校からの紹介
  • 求人広告の活用
  • 人材紹介会社の活用
  • SNSや自社のホームページでの募集
  • 外国人インターシップで募集

募集の際は、仕事内容や賃金、労働時間、労働契約の期間、社会保険に関する事項を明示した書面の交付又はメール送信を、就労を希望する外国人に対して行う必要があります。

また、外国人を日本に呼び入れて雇用する場合は、渡航費用や住居の確保などについても募集事項に明示するよう努めなければなりません。
求人表は多言語で作成することで、外国人雇用への積極性をアピールすることが可能です。

ただし、求人の申込みを行うにあたり、国籍による条件を設ける等の差別的取扱いは法律上禁止されていますので注意が必要です。

②在留資格の確認

外国人を雇用する際には、就労させようとする業務の内容が在留資格の範囲内の活動か、在留期間を過ぎていないかを、在留カード等により、必ず確認する必要があります。

なお、在留資格とは、「外国人が日本で行うことができる活動等を類型化したもので、法務省(出入国在留管理庁)の審査・許可によって付与される資格」のことです。在留資格には、日本での就労が認められている資格や、就労が認められていない資格など、すべて合わせて29種類の資格があります。下表をご確認ください。

例えば、外国人が日本でITエンジニアとして働くには、「技術・人文知識・国際業務」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者」「定住者」のいずれかの在留資格が必要です。よって、これらの在留資格を持つ者か、又はこれから取得見込みのある者を雇用しなければなりません。

在留資格のない外国人を雇い入れると、不法滞在および不法就労にあたる可能性があるため注意が必要です。詳しくは後述します。

在留資格
出典:在留資格|法務省

アルバイト・パート雇用の在留資格

すべての外国人をアルバイト・パートとして雇用できるわけではありません。
アルバイト・パートとして雇用することが可能である、特定の「在留資格」が必要となります。

ただし、就労が認められない在留資格者であっても、地方出入国在留管理局で「資格外活動の許可」を受ければ、一定の時間以内でのアルバイト・パートとしての就労が認められるのが通常です。

アルバイト・パートとして就労可能な在留資格についての詳細は、以下の記事をご覧ください。

外国人アルバイト・パートの雇用について

外国人研修生・技能実習生の在留資格

外国人研修生制度とは、実務を通じて日本の技術や知識を身につけてもらい、母国の産業・経済発展に役立ててもらうことを目的とした制度です。

この制度のもとで就労する外国人を、外国人研修生と呼びます。外国人研修生は「研修」の在留資格のもと就労しますが、技術を学ぶという目的であるため、会社と雇用関係を結ぶことができず、報酬を伴う実務研修は行えません。

一方、技能実習制度とは、外国人研修制度と目的は同じ制度であり、技能実習制度のもと働く外国人を、技能実習生と呼びます。技能実習生は「技能実習」の在留資格のもと、会社と雇用契約を結んだうえで実務研修を行うため、報酬が支給されます。また、技能実習の受け入れ方式や入国してからの年数に応じて、技能実習の在留資格の区分が変化します。

外国人研修生・技能実習生に関しては、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

外国人研修・技能実習生について
 

ワーキングホリデーの在留資格

ワーキングホリデーは、外国人の青少年が日本に滞在し、日本の文化や生活様式を理解するために一定期間の休暇を過ごす活動です。もっとも、本制度では滞在中の生活費や旅行資金を補うために、働いて給料を得ることが認められています。

ワーキングホリデーのために来日した外国人は、「特定活動(ワーキングホリデー)」の在留資格で就労します。
ワーキングホリデーの在留資格を得るためには、目的が主として休暇であることや、年齢制限(査証申請時の年齢が18歳以上30歳以下であること)など、いくつかの要件を満たしている必要があります。

ワーキングホリデー制度を利用できるのは1回のみ最長1年間で、在留期間の延長は認められていません。

事業主は在留カードの提示を受け、「特定活動」の記載があるか、在留期限を過ぎていないか確認することが必要です。

③面接

外国人労働者と面接をする場合に注意すべき点は、主に以下のとおりです。

日本語のレベルを確認する

自社の求める日本語能力のレベルに達しているかを確認します。ただし、日本語要件を高くしすぎると採用が難しくなるため注意が必要です。

業務内容や労働条件を詳細に伝える

入社後のミスマッチを防ぐため、仕事内容、賃金、残業時間、有給休暇、昇給などの労働条件について、面接時にできる限り詳細に伝える必要があります。また、労働条件について、双方の認識が異なりトラブルになることを防止できるよう労働条件通知書や雇用契約書については、外国人の母国語でも作成することが望ましいものとなります。

不法就労でないか確認する

外国人が日本で働く場合は、就労可能な在留資格を取得している必要があります。
そのため、在留カードに記載された在留資格の種類、在留期間の満了日、資格外活動許可の有無等を確認し、就労の可否を判断しなければなりません。不法就労に該当すると、外国人だけでなく、事業主も罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。

国籍による差別を禁止する

国籍による差別は法律で禁止されています。国籍や人種ではなく、会社の求めるスキルや知識、実績等を有しているか否か、人物重視の面接を行う必要があります。また、面接中に差別ととられる発言はしないように注意しましょう。

④雇用契約の締結

外国人を採用する場合でも、日本人と同じく、労働条件について話し合い、労働条件を書面により明示するか雇用契約書を締結することが必要です。その際に作成する労働条件通知書や雇用契約書は、日本語のものだけでなく、外国人が理解可能な言語や母国語でも作成することが望ましく、外国人に理解しにくい社会保険などについては、特にわかりやすく説明しなければなりません。

また、後のトラブルを防ぐため、雇用契約の際は、在留資格が失効した又は取得できなかった場合に備えた条項、例えば、「在留資格があることを前提に雇用契約が効力を持つ」等を明記するのが望ましいでしょう。

なお、使用者が労働条件を明示する際に交付が必要となる「労働条件通知書」は法律上の義務となっていますが、「雇用契約書」までの作成は義務ではありません。しかし、外国人を雇用する場合は、労働条件通知書よりも、お互いが合意した証拠になる「雇用契約書」のほうが、就労資格(VISA)の申請の際にも有利になるため、この作成をおすすめします。

⑤就労ビザの申請

海外にいる、あるいは業務内容にあたる在留資格を持たない外国人を雇用したい場合は、就労ビザの取得手続きを行う必要があります。就労ビザとは、日本で働くことのできる在留資格のことです。

すでに日本で働いている外国人について、その在留資格をもって現在就いているものと同種の業務を行わせようとする場合は、在留資格の変更は必要ありません。しかし、現在、当該外国人が就いているものと別の職種で採用しようとする場合や、卒業見込みの留学生を新卒で採用しようとする場合等には、在留資格の変更が必要になります。

在留資格の変更は「在留資格変更許可申請」を地方出入国在留管理局に提出することで行います。

外国人を海外から呼び寄せ雇用する場合 在留資格認定証明書交付申請
日本に留学中の留学生を採用する場合 在留資格変更許可申請
転職前と別の職種で採用する場合 在留資格変更許可申請

⑥受け入れ準備

採用を予定している外国人の在留資格を確認し、雇用契約を結んだら、事業主は以下のような受け入れ準備を行う必要があります。

  • 来日時のフライトの手配
  • 住居の手配や住民登録の指導
  • 教育訓練の準備
  • 就業規則や安全衛生事項、外国人用のマニュアルなど各種資料の準備
  • 日本の習慣についての教育(ゴミ出しなど生活上のルールについて)
  • 外国人労働者を受け入れやすい職場環境の整備(全従業員への説明会の開催、勉強会や研修の実施など)

なお、マニュアルなどの資料準備においては、平易な日本語で記載したものや、英語または外国人労働者の母国語で記載したものを作成しておくことが重要です。

⑦外国人雇用状況の届出

厚生労働省の指針では、外国人労働者の雇用・退職の際、事業主は外国人雇用状況の届出をハローワークに行う義務があるとされています。

雇入れの場合は、雇い入れた月の翌月10日までに、退職の場合は離職した日の翌日から起算して10日以内に届け出なければなりません。届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合には、30万円以下の罰金が科される場合があるため注意が必要です。

なお、届出方法は、外国人労働者が雇用保険の被保険者となるか否かで変わってきます。

外国人雇用状況の届出の詳細については、以下の記事をご覧ください。

外国人雇用状況の届出

外国人雇用において事業主が努めるべきこと

外国人雇用において事業主が務めるべきことが、厚生労働省の「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」に定められています。
外国人労働者の人材定着のためにも、これらの指針に沿って、適切な措置を講じるよう務めなければなりません。

以下で、本指針の具体的な内容について見ていきましょう。

安全衛生の確保

外国人労働者にも、日本人と同じく、労働安全衛生法が適用されます。
そのため、事業主は外国人労働者に対して、主に以下の措置を講じなければなりません。

  • 定期的な健康診断、産業医や衛生管理者による面接指導、ストレスチェックなどを実施する。
  • 外国人労働者が労働災害防止のための指示等を理解することができるよう、必要な日本語教育を行う。
  • 外国人労働者に安全衛生教育を行う際は、外国人労働者がその内容を理解できる方法により行う。特に、外国人労働者に使用させる機械設備、安全装置又は保護具の使用方法等が確実に理解されるよう注意する。
  • 労働災害防止に関する標識、掲示等
    事業主は、事業場内における労働災害防止に関する標識、掲示等について、図解等の方法を用いる等、外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うよう努めるものとする。

労働安全衛生法の詳細については、以下の記事をご覧ください。

労働安全衛生法

人事管理・教育訓練・福利厚生

事業主は、外国人労働者に対して、以下のような人事管理・教育訓練・福利厚生を行う必要があります。

①人事管理
賃金や労働時間などの労働条件を、就業規則や労働条件通知書、雇用契約書などの書面等で明示し、また、人事評価制度や配置についても説明する必要があります。これらについては、外国人労働者の母国語を使う、ふりがなを振る、平易な日本語で記載するなどして、労働者が理解できるよう配慮する必要があります。

②教育訓練
外国人労働者に対して、母国語を用いた教育訓練を実施したり、苦情や相談体制の整備等をして、働きやすい職場環境の整備に努める必要があります。

③福利厚生
外国人労働者にも、日本人労働者と同じく、福利厚生を受ける権利を保障し、福利厚生の利用方法を説明し、利用を促す必要があります。
なお、日本人と外国人とで福利厚生において差別することは、各種法令等により禁止されているため、してはなりません。

外国人労働者に対する人事管理等の詳細については、以下の記事をご覧ください。

適切な人事管理・教育訓練・福利厚生

解雇予防・再就職の援助

整理解雇等によって外国人労働者を解雇する場合について、厚生労働省の指針は以下のように定めています。

外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針
第4の6(解雇の予防及び再就職の援助)

「事業主は、事業規模の縮小等を行おうとするときは、外国人労働者に対して安易な解雇等を行わないようにするとともに、やむを得ず解雇等を行う場合は、その対象となる外国人労働者で再就職を希望する者に対して、関連企業等へのあっせん、教育訓練等の実施・受講あっせん、求人情報の提供等当該外国人労働者の在留資格に応じた再就職が可能となるよう、必要な援助を行うように努めること。その際、公共職業安定所と密接に連携するとともに、公共職業安定所の行う再就職援助に係る助言・指導を踏まえ、適切に対応すること。」

出典:厚生労働省:外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(全文)

解雇や雇止めについては、労働契約法等により厳しい制限がなされており、日本人だけでなく外国人に対しても同様に適用されます。そのため、事業規模の縮小等を行う場合であっても、外国人労働者に対して安易な解雇や雇止めを行うことのないようにしなければなりません。

また、解雇予定の外国人労働者が引き続き日本での就労を希望している場合は、関連企業へのあっせんや求人情報の提供など、在留資格に応じた再就職の援助を行うよう事業主は努める必要があります。これについては、ハローワーク(公共職業安定所)と連携することが望ましいとされています。

雇用労務責任者の選任

外国人労働者を常時10人以上雇用する場合は、「雇用労務責任者」(外国人労働者の雇用管理に関する責任者)を選任し、適正な労働条件や安全衛生の確保など雇用管理全般を担当させて、必要な措置を講じさせることが、事業主の努力義務とされています。

外国人雇用に対応した就業規則の策定

使用者は、国籍を理由として、労働条件等について差別的取扱いをすることが禁止されているため(労基法3条)、外国人労働者専用の就業規則を作成することはできません。

ただし、内容を理解してもらうため、英語や母国語に翻訳した就業規則を作成すること自体は問題ありません。日本人と異なる文化で育った外国人は、日本人以上に労使間でトラブルが発生するケースが多いため、労働者が理解できる言語で就業規則を作成するのが望ましいでしょう。

また、労働者が常時10人以上の事業場については、就業規則の作成が義務付けられており(同法89条)、この10人には外国人労働者も含まれます。

外国人を雇用する際の就業規則の作成方法については、以下の記事で解説しています。

外国人雇用の就業規則

外国人を雇用する際の注意点

外国人を雇用する場合にしてはいけないこと、注意すべきこと等は以下のとおりです。

国籍による労働条件差別の禁止

使用者は、労働者の国籍を理由に、他の労働者と賃金や労働時間などの労働条件で差別的取扱いをすることが禁じられています(労働基準法3条)。
つまり、国籍を理由として、外国人労働者の賃金を日本人労働者よりも低額とすることは禁止され、外国人労働者にも最低賃金法のルールが適用されることになります。

国籍による労働条件差別の禁止について詳しく知りたい方は、以下の記事をご一読ください。

 
国籍による労働条件差別の禁止

不法就労等の違法性と罰則

不法入国者、不法滞在者、不法就労者などを雇用することは違法となります。
これらの者を雇い入れた事業主は、不法就労助長の罪により3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が課されます(入管法73条の2)。外国人労働者を雇用する際は、在留カードの提示を受け、就労の可否をしっかり確認するなどして、雇用自体が違法とならないか注意するようにしましょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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