平均賃金の計算方法|必要となる場面や具体例・注意点などを解説

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
平均賃金は、会社が従業員に「休業手当」や「年次有給休暇中の賃金」などを支払うときの基準となる金額であるため、正しく計算することが重要です。
ただし、平均賃金の計算方法は、労働者の雇用形態や勤務状況によって異なり、最低保障額も定められているため、著しく低い金額は認められません。
本記事では、平均賃金の計算方法や注意点について、具体例を織り交ぜながら解説していきますので、ぜひご一読ください。
平均賃金とは
平均賃金とは、労働者に直近3ヶ月間に支払われた賃金をもとに、1日あたりの平均額を算出したものです。この平均賃金は、休業手当や解雇予告手当、年次有給休暇中の賃金、さらに労災による災害補償など、さまざまな場面で基準として使われます。
ただし、平均賃金は単なる「賃金の平均」ではありません。労働者の生活を守るために支払う賃金として、労働基準法で細かな算定ルールが定められています。計算を誤ると労使トラブルにつながるため、会社は正しく理解し適切に対応することが不可欠です。
平均賃金が必要となる場面
平均賃金は、会社や国が労働者に手当や補償を支払う際、その金額を決めるための基準となります。
具体的には、以下のような場面で使われます。
- 休業手当
業績悪化による生産停止など、会社都合で従業員を休業させる場合、休んだ日ごとに平均賃金の60%以上を支払う義務があります。 - 解雇予告手当
従業員を解雇する際は、原則30日前に予告する必要があり、予告せずに即時解雇する場合には、解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。 - 年次有給休暇の賃金
有給休暇中の賃金を平均賃金で支払う方法を選んだ場合、その計算に平均賃金が使われます。 - 労災補償
業務中のケガや病気で労災が認められた場合、休業補償や障害補償などの金額は、平均賃金(給付基礎日額)をもとに算出されます。 - 転換手当
じん肺管理区分による作業変更時には、平均賃金の30日分または60日分が支給されます。 - 減給制裁の限度額
懲戒処分による減給は、1日につき平均賃金の半分まで、1ヶ月の総額は給与の10分の1までと法律で制限されています。
平均賃金の計算方法
平均賃金の計算方法は、月給制・日給制・時給制の労働者、さらに日雇労働者で異なるため注意が必要です。ここからは、それぞれの具体的な計算方法を確認していきましょう。
月給制の場合
月給制の労働者の平均賃金は、基本的に以下の計算式で算出します。
算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 3ヶ月の暦日数
ここでいう「算定事由発生日」とは、平均賃金を計算するきっかけとなる日を指します。例えば、解雇予告手当の場合は解雇を通告した日、休業手当の場合は休業した日、有給休暇の賃金の場合は有給休暇を取った日が該当します。
「3ヶ月間」の起算日は、通常は算定事由発生日の前日から数えるのが基本です。ただし、毎月賃金の締め日がある場合は、直前の賃金締め日を起算日とします。例えば、賃金締め日が4月10日で、算定事由発生日が5月1日の場合、4月10日から遡った3ヶ月間の賃金総額を使います。
また、「暦日数」とは、労働日数ではなく、カレンダーの総日数のことです。
さらに、平均賃金の端数処理にも注意が必要です。平均賃金の端数は銭未満(小数第3位以下)を切り捨てますが、実際に解雇予告手当などを支払う際には1円未満(小数第1位以下)を四捨五入します。
日給または時給の場合
パート・アルバイト等のように日給または時給の場合も、基本的には月給と同じように計算します。
ただし、労働日数が少ない場合、月給制と同じ計算方法を使うと、平均賃金が少なくなってしまう可能性があるため、日給や時給等の場合は、平均賃金の最低保障額(労働日1日あたりの賃金の60%)が定められています。
具体的には、以下の①原則の平均賃金と、②最低保障額を比べて、高い金額の方を平均賃金とします。
①原則の平均賃金 = 算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 3ヶ月の暦日数
②最低保障額 = 算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 3ヶ月のうち働いた日数 × 60%
なお、月給と日給等が併給されているときは、以下の①原則の平均賃金と、②最低保障額を比べて、高い方を平均賃金とします。
①原則の平均賃金 = 算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 3ヶ月の暦日数
②最低保障額 =(算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた月給等の総額 ÷ 3ヶ月の暦日数)+(算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた日給、時給等の総額 ÷ 3ヶ月のうち働いた日数 × 60%)
日雇労働者の場合
日雇労働者の場合、稼働にむらがあり、日によって勤務先が変わることもあるため、賃金が変動しやすいです。
そのため、一般労働者とは区別して算定する必要があります。
具体的には、厚生労働大臣が定める以下の金額が平均賃金となります(労基法12条7項)。
平均賃金 =(1ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 1ヶ月間の総労働日数)× 73%
平均賃金の計算例
ここでは、平均賃金の計算方法について理解を深めるために、いくつかの具体的な計算例をご紹介します。最近ではWEB上に平均賃金を簡単に計算できるツールも多数公開されているため、併せてご活用ください。
休業手当(月給制)のケース
月給制の労働者の休業手当を、以下の例を使って計算してみましょう。
| 過去3ヶ月 | 暦日数 | 賃金額 |
|---|---|---|
| 1月分給与 | 31日 | 26万円 |
| 2月分給与 | 28日 | 24万円 |
| 3月分給与 | 31日 | 26万円 |
| 合計 | 90日 | 76万円 |
【平均賃金】
- 計算方法:算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 3ヶ月の暦日数
- 76万円(賃金総額)÷ 90日(暦日数)= 8444.444
- 銭未満は切り捨てるので、8444円44銭が平均賃金となります。
【休業手当】
- 計算方法:平均賃金の60%を支給する。
- 会社都合で1日休業した場合、8444円44銭(平均賃金) × 0.6 × 1日(休業日数)= 5066.664円
- 円未満を四捨五入して計算するので、5067円が休業手当となります。
年次有給休暇の賃金(日給)のケース
日給労働者の年次有給休暇の賃金を、以下の例をもとに算出してみましょう。
【具体例】
- 事由発生日(有給休暇の取得日):4/1
- 賃金締め日:毎月10日
- 有給休暇を取得した日の賃金の計算方法:平均賃金を選択
| 過去3ヶ月 | 暦日数 | 働いた日数 | 賃金額 |
|---|---|---|---|
| 1月分給与 | 31日 | 11日 | 11万円 |
| 2月分給与 | 28日 | 13日 | 13万円 |
| 3月分給与 | 31日 | 15日 | 15万円 |
| 合計 | 90日 | 39日 | 39万円 |
日給労働者の場合、以下の①②のいずれか高い方を平均賃金として採用します。
① 3ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 暦日数
② 3ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 働いた日数 × 60%
計算すると、
①=39万円 ÷ 90日=4333.33円
②=39万円 ÷ 39日 × 60%=6000円
②の方が高額なので、平均賃金は6000円となります。
したがって、日給労働者の有給休暇1日あたりの賃金は6000円です。
労災の休業補償(日雇い)のケース
日雇労働者は、勤務先や労働日数が日ごとに変わるため、通常の平均賃金の計算方法では正確な金額を求めることができません。そのため、基本的には、以下の専用の計算式を使って平均賃金を算出します。
平均賃金 =(同一事業場で直近1ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 1ヶ月間の総労働日数) × 73%
この金額が、労災保険や事業主負担による休業補償の基準となります。
以下の例をもとに計算してみましょう。
【具体例】
- 事由発生日(休業補償の対象日):4/1
- 賃金締め日:毎月10日
- 3月分給与:20万円
- 3月の総労働日数:20日
平均賃金は20万円÷20日×73%=7300円、休業補償給付は7300円×60%=4380円、休業特別支給金は、7300円×20%=1460円です。したがって、日雇労働者の1日あたりの休業補償額(休業補償給付と休業特別支給金の合計)は5840円となります。
平均賃金を計算する上での注意点
平均賃金を計算する上で注意すべきポイントについて、次項から解説していきます。
算定期間から除外される期間
算定期間に以下の期間が含まれる場合は、その日数とその期間中の賃金は、平均賃金の算定期間と賃金の総額から控除されます(労基法12条3項)。
- ①業務上の負傷、又は疾病による療養のために休業した期間
- ②産前産後に休業した期間
- ③使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
- ④育児休業または介護休業をした期間
- ⑤試用期間
これは、上記期間は賃金が発生しなかったり、通常よりも賃金額が低かったりすることがあるためです。
上記期間の賃金も含めて計算すると、平均賃金が著しく低くなるおそれがあるため、労働者の生活を保障するため、控除期間が設けられています。
なお、上記の5つに加えて、「正当な争議行為による休業期間」も同じく控除されます(昭 29.3.31 28 基収 4240 号)。
賃金の総額に含まれる手当等
「賃金の総額」とは、平均賃金の算定期間中に支払われる賃金、各種手当、賞与、その他労働の対償として使用者が労働者に対して支払うすべてのものをいいます(労基法11条)。
具体的には、以下のようなものが含まれます。
- 基本給、歩合給
- 3ヶ月ごとに支払われる賞与
- 時間外手当
- 通勤手当、住宅手当、家族手当、扶養手当、精皆勤手当
- 通勤定期券など労働協約の定めに基づき支払われる現物給与
- 年次有給休暇中の賃金
- 休業手当
- 昼食代補助
- 事業主が労働者に代わって負担する所得税や社会保険料 など
また、未払い賃金がある場合、すでに支払いが確定しているならば、未払い分も含めて計算します。
なお、賃金の総額とは、税金や社会保険料などの控除をする前の総支給額であり、差し引き支給額ではないことに留意する必要があります。
会社が支給する諸手当については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。
賃金の総額から除外される手当等
以下の3つは、“賃金の総額”から除外されます。
- (1)臨時に支払われた賃金(結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金など)
- (2)3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(半期ごとの賞与など。賞与であっても、3ヶ月ごとに支払われる場合は除く)
- (3)労働協約で定められていない現物給与
平均賃金の最低保障額
賃金が日給、時間給、出来高払制等の場合、労働日数が少ないと平均賃金が低額になる可能性があります。また、病気やケガで欠勤した場合も、給与が減り平均賃金が低くなるでしょう。
これらの事情を考慮し、平均賃金には以下の最低保障額が定められています。
最低保障額:(算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 3ヶ月間の実労働日数)× 60%
最低保障額が通常の平均賃金を上回る場合は、最低保障額が平均賃金となります。
以下のケースを使って、実際に比較してみましょう。
| 過去3ヶ月 | 暦日数 | 実労働日数 | 賃金額 |
|---|---|---|---|
| 1月分給与 | 31日 | 15日 | 16万円 |
| 2月分給与 | 28日 | 13日 | 14万円 |
| 3月分給与 | 31日 | 15日 | 16万円 |
| 合計 | 90日 | 43日 | 46万円 |
①原則の平均賃金
・計算方法:算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 3ヶ月の暦日数
・46万円(賃金総額)÷ 90日(暦日数)= 5111.111円
・銭未満は切り捨てるので、5111円11銭が原則の平均賃金となります。
②最低保障額
・計算方法:(算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ 3ヶ月間の実労働日数)× 60%
・46万円(賃金総額)÷ 43日(実労働日数)× 0.6 = 6418.604円
・銭未満は切り捨てるので、6418円60銭が最低保障額となります。
① < ②なので、平均賃金は最低保障額が適用され、6418円60銭となります。
なお、出来高払制の詳細については、以下のページをご覧ください。
平均賃金計算における例外規定
通常の方法で平均賃金の算定ができない場合、例外規定が適用されます。 例外規定が適用されるケースを具体的にみてみましょう。
雇入れから3ヶ月に満たない場合
雇入れから間もないと、労働期間が3ヶ月に満たないこともあるかと思います。
そのようなケースでは、平均賃金の算定期間は、雇入後の期間を用いることになります(労基法12条6項)。
また、雇入れから3ヶ月未満の場合であっても、賃金締め日があれば賃金締め日から起算します。
さらに、雇入れから2週間に満たない労働者の場合、すべての日数を稼働していれば、その労働者に支払った賃金の総額に6/7を乗じた金額を平均賃金とします(昭和45年5月14日基発第375号)
試用期間中の場合
試用期間については、平均賃金の算定期間から除外するのが基本です。
ただし、試用期間中に“平均賃金を算定すべき事由”が発生した場合は例外です。この場合、試用期間を除外すると、算定期間がゼロになってしまうからです。
そこで、試用期間の日数及び賃金を、通常の平均賃金の計算式にあてはめて計算することとされています(労基法施行規則3条)。
一昼夜交替勤務者の場合
一昼夜交替勤務者の労働時間が2暦日にわたるような場合、暦日単位で取り扱うのが基本です。
ただし、1勤務が2日の労働とみなされる場合は、2日間の労働として計算します。
なお、2暦日目に平均賃金算定事由が生じた場合、2日間のうち1日目に算定事由が発生したものとして扱われます。また、総日数も“1日”とカウントされることになります。
労働時間についての詳細は、下記のページをご覧ください。
平均賃金が争点となった裁判例
平均賃金について労使間でトラブルになった裁判例を2つご紹介します。
【平成15年(受)1099号 最高裁判所第3小法廷 平成18年3月28日判決】
【事件の概要】
保育所(被告)で働いていた保母(原告)が清掃業務に配置転換された後、勤務態度不良を理由に解雇されました。そのため、原告が配置転換・解雇は無効であるとして、配転・解雇期間中の賃金の支払いを求めて訴えた事案です。配転と解雇の効力、解雇期間中に原告が得た「中間利益」の控除の可否と程度が争われました。
【裁判所の判断】
裁判所は、配転・解雇ともに権利の濫用により無効とし、以下のことを判示しました。
- 被告は配転・解雇期間中に保育業務に従事していたならば得られたであろう賃金を支払う。
- 原告は、解雇期間中に他社で働いて得た中間利益を平均賃金の4割を上限額として償還する。
- 中間利益が平均賃金の4割を超える場合は、さらに賞与など平均賃金の算定基礎に含まれない賃金についても控除できる。
※解雇無効と判断された場合、使用者は解雇期間中の賃金を支払う必要がありますが、解雇期間中に従業員が他社で得た中間利益を控除することが可能です(民法536条2項)。
ただし、解雇期間は会社都合による休業とみなされるため、休業手当規定に基づき、平均賃金の6割については控除が禁止されています。
【昭和61年(行ツ)72号 最高裁判所第3小法廷 昭和61年12月16日判決(昭和59年(行コ)54号 東京高等裁判所 昭和60年12月26日判決)】
【事件の概要】
A会社で業務中にケガをした原告が、労災補償における平均賃金の算定方法について訴えた事案です。
原告はA会社の他にB会社でも勤務していましたが、労働基準監督署(被告)は、A会社から支払われた賃金のみによって平均賃金を算定していました。そこで原告は、B会社から支払われた賃金も含めて平均賃金を算定するよう求めました。
【裁判所の判断】
原審(高裁)は、労災補償における平均賃金は、労災が発生した事業場の賃金に基づいて算出すれば足りるとし、B会社は無関係であると判断しました。
その結果、原告に対する労災補償は、A会社からの賃金を基礎として算出した平均賃金を使えば良いとして、原告の訴えを棄却しました。
そして、最高裁も上記原審の判断を認めています。
※2020年9月の法改正により、複数の会社に勤務する労働者については、各就業先で支払われた賃金の合計額が算定額の基礎として用いられることとなりました。
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この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、企業法務担当執行役員を務め、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
