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採用基準の決め方|最適な人材を見極めるためのポイントと注意点

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

採用を成功させるためには、採用基準を設けることが重要です。求めるスキルを持つ応募者を見極めながら、必要な人数の採用を成功させるためには、自社に合った採用基準が必要です。

また、企業で採用基準を設けるときには、応募者の基本的人権を侵害しないようにする等、気をつけるべき事項が多数あります。採用基準を定めるときに、その点に関する注意を盛り込んでおけば、トラブルを防止することができます。

本記事では、企業における採用基準について解説していきます。

採用基準を設けることの重要性

採用基準とは、自社に適した能力や人格を有する応募者を採用するための基準です。
基準を作成する目的として、主に次のものが挙げられます。

  • ①入社後のミスマッチを防ぐ
  • ②選考の公平性を保つ
  • ③採用活動の効率化

これらの目的について、以下で解説します。

入社後のミスマッチを防ぐ

会社が適切な採用基準を定めることによって、自社とマッチする人材を採用しやすくなります。

採用基準がないと、自社の仕事や社風に適していない応募者を採用してしまうおそれがあります。
そのような採用をしてしまうと、入社した労働者がミスマッチを感じて、短期間で離職してしまうリスクがあります。離職による損害は決して小さくないため、適切な採用を行うことが重要です。

選考の公平性を保つ

会社が採用基準を定めておけば、その基準に合うか否かによって選考結果が決まるため公平です。
採用基準がないと、面接官の主観によって選考結果が左右されてしまうおそれがあります。すると、面接官の価値観に合う者だけが採用されることになります。

このとき、面接官が複数いると、誰が面接するかによって合否が左右されてしまうため公平ではありません。そのため、統一された基準によって採用されることは重要と考えられます。

採用活動の効率化

採用基準を決めておけば、応募者ごとに社内の意見をすり合わせる必要がなくなるため、採用活動を効率化することができます。

事前に採用基準を決めておかないと、個別の応募者が社風に合っているか等を個別に検討しなければならないため、時間がかかり、辞退者の増加につながるおそれがあります。

適切な採用基準を設けることにより、一定の基準をクリアした人材だけを効率よく確保して、早いレスポンスも可能となります。

採用基準の決め方

採用基準を決めるときには、次のような手順で行います。

  1. 各部署へのヒアリング
  2. コンピテンシーモデルの作成
  3. 求める人物像の明確化
  4. 評価項目の優先順位付け

これらの手順について、以下で解説します。

①各部署へのヒアリング

採用基準を決めるときには、どのような人材が必要なのかについて、社内でヒアリングを行いましょう。採用担当者のイメージと、現場が欲しいと考えている人材に差がある場合には、ヒアリングの結果を反映すれば誤差を抑えられる可能性があります。

ヒアリングのときには、管理職などの上司だけでなく、先輩になる平社員も対象にしましょう。

ヒアリングによって確認するべき事項として、次のものが挙げられます。

  • 必要なスキル及び経験
  • 求められる価値観や性格
  • 採用する人数
  • 職場環境
  • 育成環境

また、不適切だと考えられる人物像についても確認するようにしましょう。

②コンピテンシーモデルの作成

「コンピテンシーモデル」とは、営業成績など、社内で高い成果を挙げて、会社に大きく貢献している社員の行動特性を参考にして作成する「理想の社員像」です。これを作成して、同じような行動特性のある応募者を採用することにより、仕事ができる社員と近い特性を持った人材を確保することができると考えられます。

コンピテンシーモデルを作成する手順は次のような流れになります。

  1. 高い成果を出している社員を選ぶ
  2. 調査した行動特性から重要な項目を選ぶ
  3. 選定した社員にヒアリングを行い、成果を出したときの考え方や行動を確認する

③求める人物像の明確化

ヒアリングやコンピテンシーの作成によって、採用したい人物像を明確化していきます。複数の面接官に、自社で採用したい人物像の共通認識を持たせることによって、早期離職などを防止します。

面接官がイメージしやすいように、なるべく細かく人物像を言語化しておくことによって、解釈の違いが生じないようにしましょう。

④評価項目の優先順位付け

採用したい応募者の人物像を明確化することができたら、そのような応募者を採用するための評価項目を設定します。

このとき、評価項目が多すぎると、面接で質問することも多くなりすぎるおそれがあります。また、すべての項目で希望と合致していることを求めると、合格基準が必要以上に高くなってしまい、必要な人数を採用できなくなるかもしれません。

そのため、特に重視する評価項目の配点を重くする等の工夫が必要です。例えば、サービス業などではコミュニケーション力や対人スキルを必須とすること等が考えられます。

能力 学力、コミュニケーション能力、論理的思考力など
スキル 営業力、マネジメント能力、保有資格など
経験 実務経験年数、ブランクの有無など
社会適合性 規律を重んじる姿勢、協調性、共感性、忍耐力、責任感など

最適な人材を見極める採用基準の作成ポイント

最適な人材を採用するために、新卒採用と中途採用では異なる採用基準を定めましょう。
新卒採用では将来性のある人材を採用し、中途採用では即戦力となる人材を採用するように努めることが一般的です。

それぞれの採用基準について、以下で解説します。

新卒採用の場合

新卒採用では、以下のような事項を重視する採用基準にすると良いでしょう。

【コミュニケーション能力】
特に重視される能力であり、多岐に渡る能力が必要となります。 相手の立場を理解した言動ができることや、相手にとってわかりやすい説明ができること、相手にあわせたコミュニケーションができること等が該当します。

【協調性】
社内のチームワークのために重要です。
意見や立場が異なる人とも円滑にコミュニケーションできることや、周囲を率先して助けること等が該当します。

【誠実性】
近年、コンプライアンスが重視されるようになってきており、欠かせなくなっています。
法令を順守できることや、社内の慣習に従えること等が該当します。

【主体性】
問題解決能力を発揮してもらうために必要です。
上司の指示がなくても自ら考えて行動に移すこと等が該当します。

【チャレンジ精神】
自ら率先して行動してもらうために重要な要素です。
困難な仕事に取り組めること、未経験の仕事であっても積極的になれること等が該当します。

中途採用の場合

中途採用では、応募者の年齢によって求めるべき能力が変わるものの、主に以下のような事項を重視する採用基準にすると良いでしょう。

【経験やスキル】
即戦力として貢献してもらうために必要です。
今までの職歴において挙げた成果や、身につけてきたスキルを確認します。

【仕事への熱意】 自社で前向きに働いてもらうために必要です。
志望動機や転職理由を確認して、自社のネガティブな部分についても理解しているかを確認します。

【コミュニケーション能力】
新卒採用と同じように、中途採用でも重視するべき能力です。

適切な採用基準の具体例

適切な採用基準として、なるべく「可」「不可」の区別ができる基準にしましょう。

【採用基準の例】

〇履歴書
必要不可欠 四年制大学卒以上、普通自動車運転免許
あればなお良い 弁護士資格、司法書士資格、社会保険労務士資格、行政書士資格

〇実技試験
必要不可欠 Wordタイピング200文字(5分以内)
あればなお良い Wordタイピング300文字(5分以内)、文字サイズの変更、文字色の変更

〇面接

  • 志望動機が明確である
  • 話す内容に一貫性がある
  • 当社の事業について調べている
  • 当社のサイトに目を通している
  • 学業以外について、1つの作業に長時間集中した経験がある

採用基準を決める際の注意点

企業の採用基準は、基本的に「採用の自由」として尊重されるものですが、厚生労働省は「公正な採用選考」を求めていることに注意しましょう。
「公正な採用選考」のために、次のことを基本的な考え方にする必要があります。

  • 応募者の基本的人権を尊重すること
  • 応募者の適性・能力に基づいて行うこと

以下で詳しく解説します。

性別や年齢等を理由とする差別の禁止

労働者の均等な雇用の機会と待遇の確保という観点から、次のように、一定の理由で応募者を募集・採用から排除することが法律に違反する差別として禁止されています。

  • 募集又は採用にあたって、「男性歓迎」「女性向きの職種」等の表示を行うこと(男女雇用機会均等法5条)
  • 募集又は採用にあたって、特別な理由なく年齢に制限を設けること(労働施策総合推進法9条)
  • 障害があることを理由に不採用とすること(障害者雇用促進法第34条)

障害者雇用について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

障害者雇用とは|雇用に関する法律や制度について詳しく解説

その他の就職差別の禁止

「個人の自由であるべき」あるいは「本人に責任のない」事項について質問すると、就職差別につながるおそれがあります(個人情報保護法27条、労組法7条1号、障害者雇用促進法34条等)。

そのため、以下のような事項については面接時に質問するべきではありません。

【本人に責任のない事項】

  • 本籍や出生地
  • 家族に関すること(職業・続柄・健康・地位・学歴・収入・資産等)
  • 住宅状況(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設等)
  • 生活環境や家庭環境等

【個人の自由であるべき事項】

  • 信仰している宗教
  • 支持政党
  • 人生観や生活信条等
  • 尊敬する人物
  • 思想
  • 労働組合(加入状況や活動歴等)、学生運動等の社会運動に関すること
  • 購読新聞や雑誌、愛読書等

また、次のようなことをして採用・不採用の根拠にするのは適切ではありません。

  • 身元調査等の実施
  • 全国高等学校統一応募用紙やJIS規格の履歴書(様式例)にはない事項を含んだ応募書類の使用
  • 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

採用基準の開示義務

会社には、採用基準を開示する義務はありません。そのため、不採用とした応募者について、理由を明示することなく通知を行っても問題ありません。

採用活動をしていると、応募者から「不採用の理由を教えてほしい」といった問い合わせを受けることがあります。しかし、採用基準は会社にとって重要な情報であり、詳細を開示するのは望ましくないでしょう。

なお、採用・不採用の効力を巡って裁判で争われる事例は存在します。トラブルを予防するためにも、明確な採用基準のもとに、不採用の理由を記録しておくことは必要でしょう。

採用基準の見直しについて

採用基準は、社内の状況や社会情勢などにより、定期的に見直すことが望ましいでしょう。応募者の選考通過率が低い場合には、採用基準が厳しくなりすぎていると考えられます。

また、有効求人倍率や、就活・転職市場のトレンドを調査することで、採用の成功率を高められるでしょう。昔ながらの価値観を大事にすることは間違いではありませんが、現代の若者とはまったく異なる人物像を想定して採用活動をしてしまうと、いつまで経っても希望する応募者が現れないおそれがあります。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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