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派遣労働における二重派遣について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

派遣労働における問題のひとつに、「二重派遣」があります。二重派遣は労働者の身分を脅かすおそれがあるため、法律で禁止されています。また、厳しい罰則も設けられているため、派遣労働者を受け入れる際は注意が必要です。

本記事では、二重派遣の仕組みについて図解付きで分かりやすく解説していきます。また、派遣先が注意すべきポイントや二重派遣の予防策などもご説明します。

二重派遣の概要としくみ

二重派遣の概要としくみ

二重派遣とは、派遣元(第一派遣元・A社)から労働者を派遣された派遣先(第1派遣先・B社)が、当該派遣労働者をさらに別の派遣先(第二派遣先・C社)に業として派遣することをいいます。

二重派遣は、違法な労働者供給事業にあたり、労働者供給事業を禁止する職業安定法44条に抵触します。また、労働者の利益の中間搾取にあたるものとして、労働基準法6条に抵触する可能性があります。

さらに、法律上、労働者を派遣できるのは、厚生労働省の許可を受けた事業者のみと定められています(労働者派遣法第5条)。上記した図のケースで、第一派遣先B社が労働者派遣をするための許可を得ていない場合は、この点でも法令違反となります。

さて、二重派遣を行うと、第一派遣先B社と注文者C社それぞれが労働者の指揮命令権をもつことになります。

派遣労働の基本的な仕組みについて知りたい方は、以下のページをご覧ください。

派遣労働

二重派遣が生じる背景

二重派遣が行われる背景には、以下のような事情があります。

  • 【人手不足】
    少子高齢化等による人手不足を受け、新規採用が進まない企業も多いです。そこで、取引先から労働者を派遣してもらい、効率良く人手不足を補おうと考えることがあります。
  • 【企業間の力関係】
    上位関係の取引先から派遣要請があると、断りにくいと感じるでしょう。違法行為と分かっていても、取引先に言われるがまま二重派遣を行ってしまうこともあります。
  • 【派遣元の管理不足】
    第一派遣元による労働者の管理が疎かになると、現場で二重派遣が行われていても見落としているケースが多いでしょう。

二重派遣が起こりやすい業種

以下の業種では、二重派遣が起こりやすいといわれています。

製造業や作業員

製造業は、受注量に応じて必要な人材が増減します。そこで、自社の仕事量が少ない日だけ、派遣労働者を他社で働かせようとするケースが多くなっています。

しかし、このような行為も二重派遣にあたるため注意が必要です。

ITやエンジニア

IT業界では、派遣先が他分野の企業と請負契約を締結していることが多いです。そのため、請負先の企業に合った人材を派遣し、常駐させるケースが多くなっています。

また、フリーランスを業務委託として受け入れ、他社に派遣するケースもあります。
この形態自体には問題ありませんが、指揮命令権まで請負先に委ねると、二重派遣にあたり違法となります。

なお、システムの開発、保守又は運用業務に関して、システムエンジニア(SE)を労働力として提供する契約をSES契約(システムエンジニアリングサービス)といいますが、このSES契約が運用されている現場では事実上二重派遣が生じているケースが多いとされており、IT業界における問題の一つとされています。

二重派遣に該当するケース

派遣の派遣

労働者が、第一派遣先からさらに別の事業者(第二派遣先)に派遣されるものです。二重派遣の典型的な形態といえます。

典型的には、上記した図において、第一派遣先B社が派遣事業を営んでいる場合に、B社側の人材が不足している等のため、別の派遣会社であるA社(第一派遣元)から派遣労働者の派遣を受けるというものです。

このケースでは、第一派遣先B社が派遣労働者をさらに派遣することになりますので、二重派遣となります。

偽装請負

偽装請負とは、請負を装い、実際には二重派遣を行うような形態をいい、二重派遣の抜け道とされています。

例えば、第一派遣元A社から派遣労働者を受け入れた第一派遣先B社が、注文者C社と請負契約を締結していたとします。この場合に、請負人でありかつ第一派遣先であるB者が当該派遣労働者を注文者C社に派遣したとしましょう。

 

通常の請負契約において、本来、労働者に指揮命令を行うことができるのは、請負人であるB社のみとなります。これに対し、違法な偽装請負においては、注文者であるC社が派遣労働者に対する指揮命令権を持ちます。これにより、第二派遣元であるB社が第二派遣先であるC社に対し、請負契約を偽装した二重派遣がされたものと判断されるのです。

他方、注文者C社が派遣労働者に対する指揮命令権を持たない場合は、派遣労働者を請負業務に従事させたり、請負契約先に常駐させたりすることに何ら問題はありません。

このように、「請負人と注文者のどちらが、派遣労働者に対して指揮命令を行うのか」が、違法な偽装請負なのかどうかを判断する重要なポイントとなり、注意が必要です。

派遣労働者の出向

派遣労働者を別の企業に出向させることは、二重派遣にあたり違法となります。

出向とは、自社で雇用する労働者を関連会社など他の会社に異動させることをいいます。

そもそも、派遣先(第一派遣先)事業者は派遣労働者と雇用関係にないため、出向命令を行うことはできないわけですが、派遣先(第一派遣先)事業者が派遣労働者との雇用関係があることを前提に出向命令を行うことは、違法な労働者供給(職業安定法44条)に該当します。

二重派遣が禁止される理由

派遣労働者が不利益を被る

二重派遣によって、労働者の給与が下がるおそれがあります。

通常、派遣元は派遣先から“派遣料金”を受け取り、その中から労働者の給与を支払います。
しかし、二重派遣では、「第二派遣先→第一派遣先→第一派遣元」というお金の流れができ、第一派遣先(第二派遣元)が“仲介手数料”を得ることになります。この関係は、第一派遣元に支払われるべき派遣料金の一部を第一派遣先が搾取することにつながるため、労働者の給与減額につながります。

 

また、二重派遣先が労働者に指揮命令を行うため、労働条件などが本来の雇用契約と変わってしまう可能性があります。「二重派遣先の労働条件に従わないと受入れを継続しない」などと脅され、労働者が不利益を負うリスクもあります。

責任の所在が曖昧になる

二重派遣では、労働者の指揮命令権を持つ第一派遣先と第二派遣先のそれぞれが「使用者責任」を負います。しかし、実際はどちらが責任を負うのか揉め、“責任の押し付け合い”が発生するケースが多くなっています。

例えば、第二派遣先で労働災害が発生した場合です。
二重派遣が生じている現場においては、派遣労働者の安全衛生管理、指揮命令等に関する責任の所在が不明確になりがちです。現場においては、労働者や業務に混同が生じていることもあり、事故当時の状況の記録が散逸しているケースもあり得ます。

そのため、第一派遣先、第二派遣先が両者とも責任逃れをする可能性があったり、事故当時の状況の立証ができない結果、労働者への補償、賠償が脅かされたりするおそれもあります。

さらに、二重派遣が発覚するのをおそれ、労災隠しがされることも考えられるでしょう。

二重派遣の罰則

二重派遣は違法行為ですので、さまざまな罰則が設けられています。

また、二重派遣を行った事業者(第一派遣先・第二派遣元)は行政処分の対象となり、事業許可の取消し・業務停止命令・業務廃止命令などを受ける可能性もあるため注意が必要です。

職業安定法第44条の違反

職業安定法44条では、労働者供給事業を禁止しています。「労働者供給」とは、①「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させること」のうち、②「労働者派遣法第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するもの」を除いたものとされています(職業安定法第 4 条第7項)。

適法な労働者派遣は、「労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させるもの」であり、上記定義①にあたりますが、“労働者派遣”にあたるため、上記の定義②により、“労働者供給事業”にあたらないこととなります。

これに対し、二重派遣も「労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させるもの」にあたりますが(上記定義①)、労働者と第一派遣先(第二派遣元)との間に雇用関係がなく、第二派遣元が労働者を派遣したとしても、同条における“労働者派遣”に該当しないため(上記定義②)、労働者供給にあたります。

職業安定法44条に違反した場合、第一派遣先と第二派遣先に対し、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科せられます。

労働基準法第6条の違反

労働基準法6条では、中間搾取の排除を定めています。

中間搾取とは、要するに、使用者と労働者の間に入り、“ピンハネ”をする行為です。二重派遣の場合においては、第一派遣先(第二派遣元)が第一派遣元と第二派遣先の間に入り、“仲介手数料”を得る行為を指します。

 

本来、派遣元は派遣先から“派遣料金”を受け取り、手数料や労働者の給与に充てます。
しかし、中間搾取が行われると、第一派遣元に支払われるべき派遣料金の一部が第一派遣先(第二派遣元)に抜き取られてしまうため、労働者の給与を引き下げるおそれがあります。

本規定に違反した場合、第一派遣先に1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられます。

罰則の対象となる企業

誰が罰則を受けるかは、違反した法律によって異なります。

中間搾取の禁止(労働基準法6条)に違反した場合、罰則の対象となるのは手数料を搾取した派遣先(第二派遣元)のみです。

労働者供給事業の禁止(職業安定法4条)に違反した場合、派遣先(第二派遣元)と第二派遣先のどちらも罰則を受ける可能性があります。

ただし、二重派遣とは知らずに労働者を受け入れていた場合、第二派遣先に罰則は適用されません。

なお、第一派遣元は通常通り労働者を派遣しただけなので、基本的に罰則を受けません。

二重派遣として送検された事例

〈事件の概要〉
フォークリフトのリースを営む第一派遣先B社が、第一派遣元A社より受け入れていた労働者を下請先であるC社に二重派遣をしていたという事案です。当該労働者の港湾運送作業中に労働災害に発生したことで、本事案が発覚しました。

B社は、約1年にわたり労働者の二重派遣を繰り返しており、仲介手数料をとることで総額およそ14万円の利益を得ていました。
東京労働局は、B社の行為は労働基準法6条における中間搾取にあたるとして、B社の代表取締役らを東京地方検察庁に書類送検しました。

なお、労働者派遣法では、そもそも労働者を港湾運送業務に従事させることを禁止しています。
しかし、第一派遣元A社は、B社が労働者を当該業務に従事させていると知りながら労働者派遣を継続していました。

その結果、A社に対しても、東京労働局からの行政処分及び100万円の罰金刑が科せられました。

二重派遣に該当しないケース

労働者に対する指揮命令権が派遣先(第二派遣元)にある場合、二重派遣には該当しません。

例えば、派遣元A社から労働者を受け入れた派遣先(第二派遣元)B社が、下請負人であるC社に労働者を再派遣したとします。このとき、労働者がC社に常駐していても、B社の指揮命令下で労働者が業務に従事していれば、二重派遣にはあたりません。

つまり、「誰が指揮命令権を持っているか」が、二重派遣の判断基準となります。

具体的には、IT企業が、自らが指揮命令を及ぼすシステムエンジニアを請負契約先に常駐させるケースなどが考えられます。

二重派遣による通報・告発を防ぐための対策

二重派遣を防ぐには、第一派遣先がチェックを怠らないことが重要です。

労働者派遣の定義上、労働者と雇用関係があるのは派遣元ですが、実際に働くのは派遣先になります。そのため、労働者の就労環境に常に配慮する必要があるでしょう。

また、二重派遣が行われると、労働者からハローワークなどの相談窓口に通報され、行政処分や罰則を受けるおそれがあるため注意が必要です。

二重派遣の予防策を以下でご紹介します。

指揮命令系統の確認

「誰が指揮命令を行うのか」を明確にしておく必要があります。派遣契約の内容を確認し、労働者を受け入れる前に対応しましょう。
例えば、「派遣先以外の指揮命令を受けることがある」などと記載されている場合、違法な二重派遣を容認していると捉えられるおそれがあります。

また、派遣労働者の就業場所についても、「派遣先が指定する」などと定められていると、二重派遣や偽装請負につながる可能性があります。

定期的な勤務実態の確認

派遣労働者を受け入れた後は、定期的に勤務実態を確認するようにしましょう。

具体的には、派遣契約の内容と勤務実態に相違がないかをチェックします。派遣契約で定められた“労働条件”や“指揮命令者”と実態が異なる場合、二重派遣や偽装請負とみなされるおそれがあります。

不明点や曖昧な点があれば、派遣元へ問い合わせるようにしましょう。

派遣労働者への聞き取り調査の実施

違法な二重派遣を生じさせないためには、労働者への聞き取り調査も必要です。
二重派遣に該当するか否かのポイントは、指揮命令関係にありますが、この指揮命令関係は客観的に明らかでない場合もあり、無意識的、無自覚的に二重派遣が生じてしまうことがあるからです。

これを防ぐためにも、派遣先としては、当該派遣労働者に対して、派遣元会社とどのような雇用契約を結んでいるか、指揮命令権が誰にあると伝えられているか、伝えられた雇用条件と現在の勤務実態が異なっていないか等、聞き取り調査を行うことも重要です。

このような派遣労働者からの聴取りを行い、労働の実態を把握することで、違法な二重派遣が生じるリスクを予防できることは勿論、その他の問題点を発見できるきっかけになるかもしれません。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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