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派遣労働における二重派遣について

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

派遣労働に関する問題のうちのひとつに、「二重派遣」があります。二重派遣は様々な問題をはらむため、職業安定法や労働基準法で明確に禁止されており、発覚すれば行政指導や罰則が下される場合もあり得ますので、注意が必要です。

ここでは、派遣労働に絡む二重派遣の問題について詳しく解説します。

二重派遣の概要としくみ

二重派遣の概要としくみ

二重派遣とは、図のように、派遣元A社から派遣労働者を受け入れている派遣先B社が、注文者の要請を受け、当該労働者をさらに注文者のもとへと派遣することをいいます。この場合、当該労働者の就労場は本来の派遣先B社ではなく、注文者の会社となります。

通常であれば派遣先のB社のみが労働者への指揮命令権を持つことになりますが、二重派遣では派遣先のB社に加えて、同時に注文者も労働者に対する指揮命令権を持つことになってしまいます。また、当然ながら、もともと雇用関係にあるのは派遣元A社と労働者で、派遣先B社と労働者のあいだに雇用関係はありません。

二重派遣の罰則

二重派遣は様々な法に抵触し、違反には罰則が伴います。

労働者供給事業の禁止を定めた職業安定法44条『何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない』、中間搾取の排除を定めた労働基準法6条『何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない』等に違反します。

また、職業安定法64条9号にて、44条に違反した場合、『一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する』、労働基準法1018条1項にて、6条に違反した場合、『一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する』と罰則の規定があります。

さらに、二重派遣が発覚した場合、罰則に加えて行政処分として事業許可の取消し、業務停止命令、業務廃止命令などを受ける場合があることにも注意が必要です。

なお、労働者派遣は、労働者派遣法2条1号で『自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする』と定義があり、労働者の供給とは区別されています。よって、違法とはなりません。

罰則の対象

二重派遣では、かかわった会社すべてが罰則の対象になるとは限りません。

労働者との雇用契約がある派遣元A社が、労働者を派遣先B社に派遣し、そのうえB社が別会社Cに当該労働者を派遣するような行為を、二重派遣といいます。

このとき、二重派遣に対する罰則を負うのは、派遣先B社、C社となります。ただし、C社が二重派遣にあたると知らないで派遣労働者を受け入れたのであれば、原則として罰則対象にはなりません。また、派遣元A社はもともと派遣先B社に通常の労働者派遣を行っているだけですので、原則として罰せられません。

使用者責任の成否について

使用者責任について、民法では『ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(715条1項)』、『使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う(715条2項)』と定められています。

派遣元A社から、派遣先B社に派遣され、さらに別会社Cへ派遣された労働者が事故などを起こしてしまった際、どの立場の者が使用者責任を負うことになるのでしょうか。

使用者責任は、当該労働者を直接指揮監督していた場合に成立します。二重派遣において、労働者に指揮監督権を持っているのは派遣先B社と別会社Cですので、労働者が事故などを起こした場合、B社とC社は使用者責任を問われ、罰則を受けるおそれがあります。

二重派遣に該当するケース

派遣の派遣

派遣元会社Aが会社Bに派遣していた労働者が、別の会社Cに派遣されたと想定します。また、そのときB社は、C社に派遣契約のもと労働者を送っていたとします。この場合、B社はいわゆる「派遣の派遣」にあたる行為をし、自社と雇用契約を結んでいない者を派遣し、他社の指揮命令下に置くこととなります。よって、あきらかに違法と判断され、罰則を受けます。

偽装請負

偽装請負とは、実態は労働者派遣であるものの、契約上では業務請負(委託)を偽装して行われているもののことをいいます。

派遣労働は就労先に労働者への指揮命令権がありますが、業務請負では労働者と雇用契約を結んだ会社に指揮命令権があります。契約は業務請負であるのに、就労先から指揮命令がなされている形態を「偽装請負」といいます。労働者派遣は許可も必要で規制が多く、コストもかかりますが、業務請負ならば規制もなくコストもかからないために横行した時期があり、現在も問題となっています。

この偽装請負も、二重派遣の一種となります。

二重派遣に該当しないケース

一見、二重派遣のように見えて、実際はそうではないケースもあります。

労働者が雇用契約を結んでいる派遣元会社Aから、派遣先会社Bに派遣されたとします。Bは別会社Cと請負契約を結んでおり、労働者はCで就労します。このとき、就労場所が別会社Cであったとしても、本来指揮命令権をもつ派遣先会社Bが当該労働者の指揮命令を行っているのであれば、二重派遣には該当しません。他方、別会社Cが指揮命令を出している場合、それは偽装請負に該当し、二重派遣とみなされます。

二重派遣が生じる背景

違法であり、発覚すれば行政処分や刑事罰もあり得る二重派遣がなぜ生じてしまうのでしょうか。

派遣労働者は労働者派遣法で保護されているとともに、労働者派遣には厳格なルールが存在します。定められた規制をすべて守り、適正に労働者を派遣すること、あるいは派遣された労働者を使用することには、コストもかかります。二重派遣が発生する理由に、そのような規制やコストがかかることを避けようとする取引先に、労働者を二重派遣するよう求められ、力関係があるゆえ断れない、ということがあります。

また、人手不足も理由のひとつです。二重派遣を受け入れる側が、派遣労働者の管理をする人員すら不足してしまい、正規の派遣労働者の受け入れができないということが考えられます。

二重派遣の問題点

労働者の利益低下

労働基準法では、『何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない(6条)』と中間搾取が禁じられています。

通常の派遣では、雇用関係は派遣元会社と派遣労働者のあいだで結ばれていますので、給与は派遣元会社から労働者に支払われます。しかし、二重派遣では、二重派遣先会社→派遣先会社→派遣元会社→労働者というお金の流れができてしまい、派遣先会社において中間搾取が発生します。中間搾取は労働者が本来得られるはずの利益を低下させるという問題があります。

責任の所在の不明確さ

派遣労働者が業務中に事故に遭った場合、通常は派遣元会社に労災保険を申請し、派遣先会社の責任者がその状況などを証明します。

しかし、二重派遣されている派遣労働者が業務中に事故に遭った場合、責任の所在が派遣先会社であるのか、二重派遣された先の会社であるのか曖昧であり、派遣先会社がいつ、どこで、どんな状況で事故に遭ったかということを把握していないため、それらを証明できず、労災保険で補償されないおそれがあります。また、二重派遣が明るみに出るのをおそれ、二重派遣先が事故に遭ったことの証明を拒否するというケースも考えられます。

二重派遣の防止策

二重派遣を防ぐには、無意識のうちに発生させてしまわないよう、派遣先会社が常にチェックを怠らないことが重要です。発覚しても継続して受入れを続けていれば、二重派遣を受け入れている派遣先会社側にも行政処分や刑事罰が下されることがあり得ます。

以下に防止策をまとめましたので、ご一読ください。

指揮命令系統の確認

通常の労働者派遣では、派遣労働者は派遣元会社と雇用契約を結び、指揮命令権は派遣先会社にある、という三者関係で完結します。派遣先会社は、派遣されてきた労働者が誰の指揮命令で働く契約を結んでいるのか、事前に確認するようにしましょう。例えば、本来は別会社の指揮命令で働く契約になっていれば、それは二重派遣、あるいは偽装請負となっているおそれがあり、違法となります。

定期的な勤務実態の確認

派遣先会社は、労働者が派遣されてきてすぐはもちろん、その後も定期的に勤務実態を確認するようにしましょう。派遣元会社と交わした契約と相違点がないか、事前に確認していたものと異なる勤務実態となっていないか、勤務実態を確認することはもちろん、契約自体を見直して、実態が異なってしまっていないかを確認することが必要となります。もし異なる点があれば、派遣元へ問い合わせることも必要です。

聞き取り調査の実施

二重派遣が故意によるものではない場合、防止が難しくなるおそれがあります。そのような理由で二重派遣が発生してしまうことを防ぐためにも、派遣労働者に対して、派遣元会社とどのような雇用契約を結んでいるか、指揮命令権がどこにあると伝えられているか、派遣元から伝えられている雇用条件と勤務実態が異なっていないか等、聞き取り調査を行うことも重要です。もし問題が発覚するようであれば、情報源は匿名のものとし、派遣労働者を保護することにも努めましょう。

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