初回1時間 来所・zoom相談無料

0120-630-807

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません 会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

労働安全衛生法の改正要点

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守る重要な法律です。事業主に様々な措置を義務付けていますが、働き方改革の一環として、2019年に改正が行われました。
改正では、事業主の責務がより厳格化され、実効性の高い規定も追加されているため注意が必要です。

では、具体的な改正内容はどういったものでしょうか。また、事業主はどんな措置を講じていけば良いのでしょうか。本記事で詳しく解説していきます。

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康を守り、快適な職場環境を整えるための法律です。主に労働災害の発生を防ぐため、事業主に様々な措置を義務付けています。

例えば、以下のような措置が定められています。

  • 職場の安全・衛生管理を担うスタッフの配置
  • 危険又は有害物質に対する措置
  • リスクアセスメントの実施
  • 労働者への安全衛生教育
  • 労働者の健康管理

どの措置が義務付けられるかは、会社の規模や事業内容によっても異なります。詳しくは以下のページをご覧ください。

労働安全衛生法について

従来の労働環境の問題点

日本の労働環境は、以下のような点が問題視されています。

  • 長時間労働
  • 業務過多
  • 有給休暇取得率の低さ
  • ハラスメントや社内いじめ
  • 職場の安全性(建設業・製造業・運送業など)

これらは、いずれも健康障害や精神障害、過労死などを招くおそれがあります。近年の“過労死等による労災申請”も、2835件と高い水準を保っています(令和2年度「過労死等の労災補償状況」)。

2019年に始まった働き方改革では、これらの労働問題を是正し、すべての人が生き生きと働ける社会作りが図られています。また、労働安全衛生法の改正もそのひとつです。労働者の勤怠管理やメンタルヘルス管理を強化することで、過労死等を減らすことを目的としています。

2019年に改正された労働安全衛生法

働き方改革により、2019年4月1日以降、労働安全衛生法は下記のように改正されました。

  • 労働時間の把握の義務化
  • 産業医・産業保健機能を強化
  • 長時間労働者に対する面接指導を強化

以下、それぞれの改正点について詳しく解説していきます。

労働時間の把握の義務化

事業主は、すべての労働者の労働時間を適正に把握することが義務付けられました(労働安全衛生法第66条の8の3、労働安全衛生規則第52条の7の3)。

具体的には、以下のような“客観的な方法”によって労働時間を管理・記録する必要があります。

  • タイムカードの打刻履歴やパソコンの使用時間のチェック
  • 労働者名簿や賃金台帳の保存(3年間)
  • 労働時間が自己申告制の場合、書面で申告させ、適宜実態を調査すること

また、1ヶ月の時間外・休日労働が80時間を超えた労働者については、その旨を本人に通知しなければなりません。さらに、本人から申告があった場合、医師による面接指導を実施することが義務付けられています(労働安全衛生規則第52条の2)。

この点、以前の基準は“月100時間”だったため、改正によって厳格化されたといえます。

なお、これらの義務に違反しても罰則はありませんが、労働者の安全と健康を守るため、必ず実施することが重要です。

産業医・産業保健機能の強化

法改正では、産業医の在り方を見直し、産業保健機能の強化が図られています。

産業医とは、労働者の健康管理について専門的な立場から助言・指導する医師のことです。労働安全衛生法では、労働者が常時50人以上いる事業場おいては、必ず産業医を選任しなければなりません。

また、産業保健機能とは、労働者の安全と健康を守るために、会社が行う取組みのことをいいます。産業医や保健師、外部の専門家などと連携し、快適な職場作りに努めることが求められます。

具体的な改正内容について、以下でご説明します。

産業医の活動環境の整備

産業医の権限が拡大されたのがポイントです。具体的には、以下の2点が挙げられます。

  • 産業医への“健康管理に関する情報”の提供(労働安全衛生規則第14条の2)
    長時間労働者がいる場合、会社は産業医へ報告する必要があります。
    また、産業医から健康管理に関する情報を求められた場合、会社は速やかに提供しなければなりません。
  • 産業医による勧告(労働安全衛生規則14条の3)
    労働者の健康に問題がある場合、産業医から会社へ勧告することができます。また、勧告を受けた会社は、衛生委員会などへ報告する必要があります。

これにより、産業医がより独立的・中立的に職務を遂行できると期待されています。
さらに詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。

産業医の機能強化・活動環境の整備の改正要点

健康相談の体制整備、健康情報の適正な取扱い

労働者が安心して産業医への健康相談等ができるようにするためには、産業医が健康相談に応じることができる適切な体制が整っていることが前提です。
また、産業医の具体的な業務内容や健康相談の申出方法が労働者に周知されていなければなりません。

その他にも、健康相談等から得られる労働者のプライベートな情報の取扱いについて適切な規程を定めるなど、労働者が情報漏洩の心配なく相談できるようにする必要があります。

事業者に求められる責務の詳細は、下記の記事をご確認ください。

産業医への健康相談の体制整備、健康情報の適正な取扱いの改正要点

長時間労働者に対する面接指導の強化

法改正に伴い、産業医による長時間労働者・高ストレス者への面接指導を強化する旨も定められました。

具体的には、面接指導の対象者の範囲が「(月の時間外・休日労働時間の合計が)100時間を超える労働者」から「80時間を超える労働者」へと拡大され、より多くの者が面接指導の対象になりました。

さらに、事業者は、労働時間の状況を把握することや、面接指導対象者に自身の労働時間に関する情報を知らせるといった義務も課せられています。

これらの変更から、改正により、事業者に対する健康管理義務は厳格化されたといえるでしょう。

事業者に望まれる具体的な対応については、下記の記事で説明しています。

長時間労働者への面接指導

安全衛生管理による職場環境改善の重要性

労働安全衛生法の改正は、働き方改革の一環として行われました。
そもそも働き方改革の背景には、少子高齢化による労働力不足の深刻化があります。また、育児や介護によって離職せざるを得ない人が多いのも現実です。

そこで、ワークライフバランスを実現し、すべての労働者が働きやすい社会を作ることで、これらの問題を解決しようというのが働き方改革の目的です。

また、ワークライフバランスを実現するには、長時間労働や過度なストレスといった課題をクリアしなければなりません。労働安全衛生法の改正によって労働環境を改善することで、より健全で働きやすい職場を提供できると期待されています。

働き方改革により安全衛生管理体制が強化された職場へ

働き方改革を成功させるためには、労働者の安全衛生管理健康管理が欠かせません。これは、労働安全衛生法の改正により、事業者の義務が強化されたことからも明らかでしょう。

そこで事業者には、より一層労働安全衛生法上の義務について注意することが求められます。具体的には、人事労務の管理体制や法律上義務付けられる安全衛生管理に必要な制度の現状を把握し、定期的に見直し・改善を行うべきでしょう。

また、事業者自身が個々の労働者の安全衛生や健康に気を配り、安心で快適な労働環境を提供するよう努めることはもちろん、労働者の安全衛生に関する意識を啓発することも重要です。

労使が協力し合いながら、安全衛生管理体制を強化していくことが重要です。

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-630-807

受付時間:平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

0120-630-807タップで電話開始

平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます