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労災補償の対象となる非事故性疾病(職業病)について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

特定の業務に従事する労働者は、「職業病」の症状がみられることがあります。
職業病は軽度なものから重度なものまで幅広いですが、業務上で発生したものは「労災」にあたる可能性があります。労災が発生すると、事業主は補償責任を負ったり、会社の信用低下につながったりするおそれがあるため注意が必要です。

本記事では、労災に該当する可能性がある職業病に焦点をあて、具体的なケースや注意点等を解説していきます。労災の防止策の参考として、ぜひご一読ください。

非事故性疾病(職業病)と労災補償

職業病は、労災保険で補償される業務災害のひとつです。労働基準法上では業務上の疾病といい、使用者は労働者に対して必要な補償をすることが義務付けられています。

また、業務上の疾病は“業務が原因で発症した病気”を指すため、必ずしも業務中に発症するものではありません。業務時間外に発症した場合でも、業務との関連性が認められれば労災にあたります。

では、業務上の疾病が認められる要件はどんなものでしょうか。以下で解説していきます。

また、労災発生時の対応や罰則について知りたい方は、以下のページをご覧ください。

労災保険給付について

業務上の疾病について

業務上の疾病は、業務との間に相当因果関係が認められる疾病をいいます。つまり、業務中に発症したかどうかではなく、業務が原因で発症したものかどうかで判断されます。

例えば、化学物質を扱ったことによる肺炎や、身体に過度の負担がかかる業務(林業など)による運動器の損傷が考えられます。また、働き方が多様化するにつれ、長時間のPC作業に伴う障害が業務上の疾病と認められるケースも出てきました。

これらの疾病は、業務災害として労災補償の対象になりえます。

業務災害の概要や具体例は、以下のページで詳しく解説しています。併せてご覧ください。

業務災害の認定

職業病とされる主な疾病

労災補償の対象となる疾病は、厚生労働省が定める「職業病リスト」で列挙されています(労基則35条別表1の2)。これに該当する疾病で、業務との因果関係が認められる場合、労災補償の対象になります。

具体的には、業務中に負った怪我や病気のほか、以下のような疾病を労災補償の対象としています。それぞれ具体的にみていきましょう(なお、リストにない疾患でも、業務との因果関係が明らかであれば労災にあたります)。

また、職業病リストの一覧をご覧になりたい方は、厚生労働省のホームページでご確認ください。

職業病リスト(厚生労働省)

物理的因子による疾病

業務上の“物理的な要因”によって発症した疾患は、労災補償の対象になります。例えば、以下のような疾患です。

  • 紫外線や赤外線、レーザー光線による皮膚疾患
  • 放射線による皮膚疾患や臓器障害
  • 高圧又は低圧な場所での作業による気圧障害
  • 暑熱な場所での作業による熱中症
  • 高温又は低温な物質の取扱いによる熱傷や凍傷
  • 騒音による難聴
  • 上記に付随する疾病又はその他物理的因子に起因することが明らかな疾病

一方、業務によりアレルギー症状が現れた場合、個人的な要因の影響が大きいものとして、労災補償の対象にならないことが一般的です。

身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病

“身体に過度の負担がかかる作業”とは、重量物を取り扱う業務・機械器具の使用により身体に振動を与える業務・電子機器への入力作業を繰り返す業務・特定の部位に負荷がかかる業務等をいいます。そして、これら業務によって発症した腰痛・頚肩腕障害・振動障害といった疾病が労災補償の対象となります。

ただし、腰痛については、“医師により療養が必要と診断された場合”のみ労災補償の対象になります。また、腰痛は「災害性腰痛」と「非災害性腰痛」に分けられ、それぞれ以下のような認定要件が設けられています。

  • 災害性腰痛:仕事中の突発的な出来事によって急激な力が生じ、それによって腰痛を発症したこと又は腰痛の既往症・基礎疾患を悪化させたこと
  • 非災害性腰痛:重量物を取り扱う業務や腰に強い負荷がかかる業務を行う労働者に発症した腰痛で、作業状況や作業時間からみて仕事が原因で発症したと認められること

化学物質等による疾病

化学物質等による疾病も、労災補償の対象になります。例えば、以下のような疾病です。

  • 合成樹脂の熱分解生成物による眼粘膜や気道粘膜の炎症
  • すす、鉱物油、樹脂硬化剤等による皮膚疾患
  • タンパク質分解酵素による皮膚炎や結膜炎、呼吸器疾患
  • 粉じんを飛散する場所での作業による呼吸器疾患
  • 酸素濃度が低い場所での作業による酸素欠乏症
  • 上記に付随する疾病又はその他化学物質等に起因することが明らかな疾病

なお、労働安全衛生法では、特定の化学物質を取り扱う事業主に対し、その危険性や有害性を見積り、リスク低減策を検討する「リスクアセスメント」の実施を義務付けています。

また、事業主はリスクマネジメントの結果を踏まえ、労働安全衛生規則等で規定される措置を講じる義務や、労働者の危険や健康障害を防止するための措置を検討したりする努力義務を負います。

粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺と合併した疾病

粉じん作業(じん肺法施行の別表)に従事する労働者が、じん肺又はじん肺と合併した疾病(同規則2条)を発症した場合、労災補償の対象になります。

ただし、じん肺には症状の程度に応じた「じん肺管理区分」があり、労災認定を受けるには以下の要件を満たす必要があります。

  • じん肺管理区分が管理4と認定された場合
  • じん肺管理区分が管理2又は管理3と認定され、じん肺と合併した疾病を発症した場合

じん肺で労災補償を受ける場合、まずは病院の診断書又は健康診断の結果をもって、労働局に“じん肺管理区分申請”を行います。そこで上記要件を満たす区分の認定後、労働基準監督署に“労災申請”を行い、給付決定を受けるという流れになります。

細菌、ウィルス等の病原体による疾病

特定の業務中に細菌やウィルスに感染し、疾病を発症した場合、労災補償の対象になります。例えば、以下のような疾病です。

  • 患者の診療や看護の業務、介護の業務や研究その他の目的で病原体を取り扱ったことによる伝染性疾患
  • 動物又はその死体、獣毛、革その他動物性の物やぼろ布等の古物を取り扱ったことによる伝染性疾患
  • 湿潤地での業務によるレプトスピラ症(急性熱性疾患)
  • 屋外での業務による恙虫病
  • 上記に付随する疾病又はその他細菌やウィルス等の病原体に起因することが明らかな疾病

また、海外での業務において感染症にり患した場合も、“その他細菌やウィルス等の病原体に起因することが明らかな疾病”として、労災にあたる可能性があります。

ただし、感染経路・潜伏期間・臨床症状・診断等を踏まえ、業務との関連性が認められる場合のみ補償するとされています。

また、感染リスクの高い病原体が新たに発見された場合、特例で労災の認定要件が設けられる場合があります。

がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による疾病

業務上発生するがん原生物質はさまざまですが、代表的なものに「石綿(アスベスト)」があります。

石綿ばく露作業(石綿鉱山や工場での業務・造船業・車輌製造業・建設業等)に従事する労働者が以下のような疾病を発症した場合、業務との関連性が高いとして労災補償の対象になります。

  • 石綿肺(石綿肺合併症を含む)
  • 中皮腫
  • 肺がん
  • 良性石綿胸水
  • びまん性胸膜肥厚

ただし、それぞれの疾病には認定要件があり、要件を満たすものが労災となります。具体的には、症状の程度・作業内容・作業期間等を踏まえ、労災認定の可否が判断されます。

その他厚生労働大臣の指定する疾病

その他、“厚生労働省が特別に指定する疾病”は、労災補償の対象になります(労基則別表1の2第10号)。具体的には、以下の疾病が列挙されています。

  • 超硬合金の粉じんを飛散する場所で業務したことによる気管支肺疾患
  • 亜鉛黄又は黄鉛の製造業務による肺がん
  • ジアニシジンにさらされる業務に尿路系腫瘍

その他の疾病

一方、“業務内容と直接的な関係がない疾病”も、業務との関連性が認められる場合、労災にあたります(労基則別表1の2第8号、9号)。具体的には、以下のような疾病です。

  • 長期間にわたり長時間の業務その他血管病変等を著しく悪化させる業務をしたことによる脳、心臓疾患
  • 人の生命にかかわる事故への遭遇や、その他心理的に過度の負担がかかる事象を伴う業務による精神障害及び行動障害、又はこれに付随する疾病

精神障害・過労死に関する疾病

精神障害

仕事のストレスによる「うつ病」や「過労自殺」といった精神疾患も、業務上の疾患として労災補償の対象になる可能性があります。

ただし、精神疾患と業務の関連性を証明するのは難しく、さまざまな認定要件を満たす必要があります。認定基準の詳細は以下のページで解説していますので、ご確認ください。

従業員の過労死・過労自殺による労災認定

また、精神疾患による労災の発生を防ぐには、日頃から労働者のメンタルヘルスに配慮することが重要です。この点、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

メンタルヘルスと労災

脳・心臓疾患(過労死)

長時間労働や身体的・精神的に過度の負担がかかる業務により脳・心臓疾患を発症した場合、又は「過労死」であった場合、労災と認定される可能性があります。

ただし、いくつかの認定要件があるため、必ずしも労災にあたるとは限りません。
認定基準の詳細は以下のページで解説していますので、併せてご確認ください。

従業員の過労死・過労自殺による労災認定

職業病の労災認定基準

職業病が労災と認定されるには、業務と疾病の間に“相当因果関係”があることが必要です。具体的には、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの要件を満たさなければなりません。

業務遂行性とは、「事業主の支配・管理下にある状況での災害により、疾病を発症したこと」をいいます。ただし、職業病の業務遂行性は、事業主の支配・管理下にある状況で“疾病を発症すること”ではなく、その状況で“有害因子にばく露すること”とされています。

業務起因性とは、「業務が原因で疾病が生じたこと」をいいます。職業病の場合、業務上の有害因子にばく露したことによって疾病が生じたと認められれば、業務起因性が認定されます。

具体的な判断基準は、以下の3つがあります。これらの要件を満たす場合、業務と疾病の因果関係があることが認められ、労災と認定されるのが一般的です。

労働の場における有害因子の存在

まず、「労働の場に有害因子があること」が必要になります。有害因子とは、

  • 業務に内在する物理的因子
  • 化学物質
  • 身体に過度の負担がかかる作業態様
  • 病原体
等が挙げられます。

ただし、“一般環境の労働の場でも同程度の発生リスクがあるもの”や、“人の健康障害を引き起こすという知見がないもの”については、労働の場における有害因子とみなされません。

有害因子へのばく露条件

健康障害は、上記のような有害因子へのばく露によって起こります。そのため、「当該健康障害の発生に及ぶほどのばく露があったかどうか」がポイントとなります。 この点、“ばく露の程度”や“ばく露期間”をもとに判断されるのが一般的ですが、“ばく露を受けた形態”によっても左右されるため、ばく露条件(労働環境等)をできるだけ詳しく把握しておくことが重要です。

発症の経過及び病態

業務と疾病の相当因果関係を判断する際は、「発症の時期」や「病態」が重視されます。

疾病の発症時期は、“ばく露した有害因子の性質”や“ばく露条件”によって異なるため、ばく露中やその前後以外に発症した場合も労災と認定される可能性があります。ただし、有害因子の性質やばく露条件からみて、医学的に妥当な時期であることが要件です。

また、業務上の疾病の病態は、有害因子やばく露条件に特有の症状がみられると考えられます。そこで、臨床医学・病理学・免疫学等の医学的研究によって確立された知見に基づき、業務と疾病の関連性を判断することが通常です。

職業病における使用者の責任

事業主は、労働者が安全に働ける環境を整備する「安全配慮義務」を負っています(労安衛法3条1項)。安全配慮義務の範囲は広く、単に労災を防ぐための最低基準を守れば良いわけではありません。“労災が発生するリスクを事前に発見し、そのリスクを排除・低減すること”や、“残ったリスクを労働者に周知すること”も求められます。安全配慮義務を怠った場合、事業主はさまざまな責任に問われる可能性があるため注意しましょう(詳しくは次項でご説明します)。

なお、安全配慮義務以外にも、事業主はさまざまな対応が義務付けられています。詳しくは以下のページで解説しますので、ぜひご覧ください。

労働安全衛生法

また、労働者が業務上怪我・疾病を負った場合、事業主は療養補償を行う必要があります(労基法75条)。基本的に、労災保険に加入していれば事業主の補償義務は免除されますが、労災でカバーしきれない部分については事業主が補償義務を負うことになります。

この補償義務に違反した場合、事業主は「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰則」が科せられます(同法119条)。

使用者の損害賠償責任

安全配慮義務違反によって労災が発生した場合、事業主は労働者から損害賠償請求をされるおそれがあります。というのも、事業主は不法行為責任・使用者責任・債務不履行といった民法上の責任が問われる可能性があるためです。

また、労働基準監督署には労災と認定されなくても、裁判所が業務と疾病の相当因果関係を認めた場合、損害賠償責任が生じる可能性があります。

実際の裁判でも、「行政機関(労働基準監督署)における認定要件を満たさないという一事をもって、業務と疾病に因果関係がないと断定することはできない」として、事業主の損害賠償責任を認めた例があります。

事業主が負う損害賠償責任は、以下のページで詳しく解説しています。

労働災害における企業の損害賠償責任

下請労働者の職業病について

建設事業が請負で行われている場合、災害補償責任を負うのは「元請会社」となります(労基法87条)。よって、下請会社の労働者が労災に遭った場合、元請会社が加入する労災保険によって補償がなされます。これは、現場における各会社を一体とみなし、現場にかかわる労働者をひとつの労災保険でカバーするためです。

ただし、下請会社の事業主・役員・一人親方は労働者にあたらないため、元請会社の労災保険では補償されません。

また、下請会社に補償を引き受けさせると書面で契約した場合、その下請会社も同様の災害補償責任を負います。ただし、同一の災害に対して、2社以上に重複して補償を受けさせることはできません(同条2項)。

業務上疾病の対応と手続き

労働者が業務上の疾病を負った場合、事業主はすみやかに適切な対応をとる必要があります。例えば、労働者がしっかり補償を受けられるよう、労災申請手続きを支援すること等が挙げられます。

具体的な対応は以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

労働災害が発生した場合の会社の対応

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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