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不当労働行為の不利益取扱について

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働組合法には、労働者の労働条件向上等を目的として、労働者で構成される労働組合が使用者と対等な立場で交渉できるよう、使用者に対し、いくつかの行為を禁止する規定が設けられています。この規定により使用者が禁止される行為を、「不当労働行為」といいます。

このページでは、「不当労働行為」のうち【不利益取扱い】に分類されるケースについて、詳しく解説していきます。 なお、「不当労働行為」の概要、【不利益取扱い】以外の分類について知りたい方は、以下のページをご覧ください。

不当労働行為について

不当労働行為に該当する不利益取扱い

労働者が①「労働組合」「組合員」であること、②労働組合に「加入し」、もしくは労働組合を「結成しようとした」こと、③「労働組合の正当な行為」をしたことを理由に(④「故をもって」)、使用者が当該労働者を解雇その他不利益に取り扱うことは、不当労働行為として禁止されています(労組法7条1号前段)。

不利益取扱いに該当する要件

では、不当労働行為に該当する不利益取扱いの要件(前項で述べた①~④)について、順に説明していきます。

不利益取扱い禁止の保護を受ける「労働組合」とは

ここでいう「労働組合」とは、労働条件の維持や改善、経済的地位の向上を主たる目的として、労働者が主体となって自主的に組織する団体を指します。自主性が求められることから、“使用者の利益代表者”が加入する団体や、使用者からの経費援助を受ける団体等は、これに該当しないとされています。

「労働組合」について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページも併せてご覧ください。

労働組合及び労働組合員の状況

労働組合の「組合員」の範囲

不利益取扱い禁止の保護を受ける「労働組合」の「組合員」の範囲は、労働組合が自由に、そして自主的に決められるものとされています。

なお、「組合員」の範囲については、以下のページでさらに詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

組合員の範囲

労働組合に「加入し」もしくは労働組合を「結成しようとした」こと

労働者は、労働組合に自由に加入できる権利及び自由に結成することができる権利を、憲法28条によって保障されています(=団結権)。なお、労働組合の結成にあたっては、特段の手続や届出等の必要はなく、使用者の承認を得る必要もありません。

これらを踏まえ、“労働組合に「加入し」もしくは労働組合を「結成しようとした」こと”とは、労働者が現実に労働組合に加入もしくは労働組合を結成したことに限られません。例えば、労働者が企業内外のいずれかの労働組合へ加入する希望を伝えたことや、労働組合結成のための勧誘活動を行ったこと等にも及ぶ場合があります。

「労働組合の正当な行為」

「労働組合の正当な行為」とあるように、保護の対象となる労働組合の行為には“正当性”が求められます。

組合活動の“正当性”の有無について、裁判等では、当該行為の主体、目的、時期、態様、手続といったいくつかの観点から総合的に判断されます。例えば、組合活動の主たる目的である労働条件の維持や改善、経済的地位の向上とは何らかかわりのない内容の争議行為や、団体交渉を経ずに行われたストライキは、“正当性”を欠くものと判断されるケースもあります。なお、個別の事情によっては判断が異なる場合もあるということに注意が必要です。

「故をもって」

「故をもって」なされた不利益取扱いかどうかも大きなポイントとなります。つまり、不利益取扱いの前提に使用者の不当労働行為の意思(=反組合的な意図ないし動機)”があることが求められます。

ただし、“不当労働行為の意思”の立証は、使用者の内心を立証することであるため、状況等に照らして推定するほかありません。具体的には、(ア)使用者が前項までにあげた①~③の事実を認識しており、(イ)その事実に関連して当該労働者を不利益に取り扱ったことが、(ウ)使用者が日頃から組合嫌悪をしていた事実等から認められる場合には、“不当労働行為の意思”が推認されます。この点、使用者が不利益取扱いの正当性を反証できない限り、その推認は覆りません。

不利益取扱いの類型

労働者の地位の得喪に関する不利益取扱い

例えば、解雇や懲戒解雇したり、退職願の提出を強要したり、労働契約の更新を拒否したり、本採用を拒否したりといった、労働者の雇用上の地位について不利益に取り扱う処遇がこれにあたります。

なお、採用や解雇に関する詳しい解説がそれぞれ以下のページにありますので、ぜひ併せてご覧ください。

本採用拒否について
退職及び解雇
退職事由について

人事上の不利益取扱い

例えば、組合活動や通勤が困難な場所等への配置転換や出向、転籍を行ったり、あるいは降格したりといった、労働者にとって不利益となる人事異動命令がこれにあたります。

なお、以下の各ページでは、人事異動の概要、及び人事異動のうち「出向」、「降格」に焦点を当てて解説しています。ぜひ併せてぜひご覧ください。

異動について
出向について
降格について

経済的待遇上の不利益取扱い

例えば、基本給や諸手当を減額したり、賞与等の一時金や昇給査定で差別したり、残業をさせなかったりといった、労働者の経済状況を逼迫させるような扱いをすることがこれにあたります。

なお、給与や手当、残業代の取扱いに関する詳しい解説がそれぞれ以下のページにありますので、ぜひ併せてご覧ください。

会社が支給する給与の諸手当について
残業代について

不利益取扱いが不当労働行為にあたるケース

それでは、不利益取扱いが不当労働行為にあたるケースについて、具体的にみていきましょう。

組合員の解雇

労働組合法7条1号には、組合員であること等を理由とした、解雇という不利益取扱いは不当労働行為に該当する旨が明記されています。

解雇は、使用者側が一方的に労働者との労働契約を終了させるものです。そのため、解雇には“客観的に合理的な理由”を要し、また、その処遇が“社会通念上相当”といえなければなりません(労契法16条)。よって、組合員であるといったことのみを理由とする場合は客観的に合理的とはいえず、また、解雇という処遇は、その軽重という点で、社会通念上相当とはいえないでしょう。

解雇に関するさらに詳しい内容の説明は、以下のページに譲ります。

退職及び解雇

賃金に関する差別

賃金、賞与、退職金査定方法について、組合員と非組合員、あるいは他組合員とで差別し、支給額に格差を生じさせるといった不利益取扱いは、不当労働行為にあたります。

昇進・昇格に関する差別

賃金に関する差別と同様、組合員であること等を理由に人事考課において不当な評価を行い、当該労働者の昇進・昇格に影響させるといった不利益取扱いは、不当労働行為にあたります。人事考課制度が整備されていない場合、差別の有無について争われるリスクがあります。

残業命令・仕事の差別

特定の組合員に対してのみ残業をするよう命じた場合、長時間の拘束、健康被害、また、組合活動への支障が懸念されることから、労働者にとって不利益な取扱いであるといえます。一方で、特定の組合員に対してのみ残業をさせない場合、残業により生じる経済的利益の獲得機会を奪うことになるため、これも労働者にとって不利益な取扱いといえるでしょう。 このように、仕事の割り振りに関して差別するといった不利益取扱いも、不当労働行為にあたるといえます。

企業としての不利益取扱いの対応策

不当労働行為は、当該不利益取扱いが労働者の組合活動等を理由になされたものであり、使用者に“不当労働行為の意思”があるときに成立します。そのため、労働者から不当労働行為であるという指摘を受けた場合、使用者としてはこれらを否定すべく反論していくことになります。

この点、解雇や賃金に関する規定、昇進・昇格に係る人事考課制度等の整備を行っておくことで、適切な手続及び審査を経た処遇であることを客観的に証明することが可能です。

また、日ごろから使用者に組合嫌悪の言動が見られる場合は“不当労働行為の意思”が推認される傾向にあるため、日ごろからそのような言動は控えるべきといえるでしょう。

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