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女性活躍推進法について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

少子高齢化による労働力不足が懸念される中、女性の社会進出がますます重視されています。また、グローバル化やダイバーシティの促進に伴い、性別を問わず多様な視点を持つことは会社にとって大きなメリットといえるでしょう。一方で、育児と家庭の両立の難しさや、女性の管理職への登用率の低さなど、課題も多いのが現状です。

そこで、女性が安心して長く活躍できる社会を目指して制定されたのが、女性活躍推進法です。女性活躍推進法では、女性の活躍を図るための具体策を定めるとともに、会社に対して様々な義務付けがなされています。

では、会社は具体的にどのような対応をすべきなのでしょうか。また、女性活躍推進法に従わなかった場合、何かしらリスクがあるのでしょうか。本記事で詳しく解説していきます。

女性活躍推進法について

女性活躍推進法とは、働くことを希望するすべての女性がその職業生活において活躍できるような社会の実現を目指して、平成28年に施行された法律です。正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といい、国や自治体、会社等に対し、女性の活躍を図るための具体的な取組みを求めています。

この法律の基本原則としては、主に以下の3つが掲げられています。

  • 女性に対する採用・昇進の機会を積極的に提供・活用し、性別による固定的役割分担が女性の活躍に及ぼす影響を配慮すること
  • 職業生活と家庭生活を継続的に両立できるような環境を整備すること
  • 女性の職業生活と家庭生活の両立について、本人の意思が尊重されるべきこと

なお、女性活躍推進法は10年間の時限立法(有効期間を定めた法律)となっています。

女性活躍推進法の目的

近年、自らの意志で職業生活を営み、又は営もうとする女性の個性や能力が十分発揮されることの重要性が増しています。そこで、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し、もって男女の人権尊重や様々な社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することを目的として、女性活躍推進法が制定されました(同法1条)。

この背景には、将来の労働力不足・慢性的な長時間労働・グローバル化に伴う多様化の重要性・女性管理職の割合の低迷など、日本の様々な課題が挙げられます。また、出産・育児を経て職場復帰した女性が、キャリアアップを図りづらいというのも大きな課題です。

女性活躍推進法は、これらの問題を軽減するために有効な法律といえるでしょう。

女性活躍推進法の改正

女性活躍推進法は、女性の職場における活躍をより一層推進すべく、令和元年5月に改正されました。主な改正点は、以下のとおりです。

  • 「一般事業主行動計画」の策定・届出義務の対象拡大(常時雇用する労働者が301人以上の事業主から、101人以上の事業主へと拡大)
    ※令和4年4月1日施行となります。
  • 女性活躍に関する情報公表義務の対象拡大・厳格化(常時雇用する労働者が101人以上の事業主に義務化。また、301人以上の事業主は、公表項目を1つ以上から2つ以上に変更。)
    ※令和4年4月1日施行となります。
  • 女性の活躍推進の認定制度に「プラチナえるぼし」を新設
    ※令和2年4月1日施行となります。

義務や制度の詳細については、次項から解説していきます。

事業主の義務について

女性活躍推進法では、事業主に以下4つの対応を義務付けています。義務の対象となるのは、基本的に常時雇用する労働者が101人以上の事業主です(法改正後の内容を反映しています)。

  • 自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
  • 一般事業主行動計画の策定、社内周知、公表
  • 一般事業主行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
  • 女性の活躍に関する情報公表

なお、「常時雇用する労働者」とは、正社員・パートタイマー・アルバイトを問わず、期間の定めなく雇用されるすべての従業員をいいます。また、契約社員であっても、1年以上継続して雇用されている者又は1年以上継続して雇用されることが見込まれる者は対象となります。

一般事業主⾏動計画

対象事業主は、女性の活躍推進に関する一般事業主行動計画を策定し、厚生労働省大臣に届け出なければなりません(女性活躍推進法8条1項)。

一般事業主行動計画とは、法令上、「一般事業主が実施する女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する計画」と定義されています。女性の活躍の推進を目指すにあたり、そのための取組期間や達成しようとする目標、取組みの内容やその実施時期を定めた計画です。

一般事業主行動計画は、それぞれの会社の実情に応じて、具体的に策定することが必要です。

一般事業主行動計画の策定方法等は、以下のページで確認できます。

女性活躍推進法の一般事業主行動計画について

女性の活躍に関する情報公表

対象事業主は、自社における女性の活躍に関する情報として、以下の①及び②の区分ごとに公表項目を選択して定期的に公表しなければなりません(女性活躍推進法20条)。

① 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供の実績

  • 全労働者に占める女性の割合
  • 採用における男女別の競争倍率
  • 管理職に占める⼥性労働者の割合
  • 男女別の再雇用や中途採用の実績
  • 男女別の雇用形態の転換実績
    など

② 職業⽣活と家庭⽣活との両⽴に資する雇用環境の整備の実績

  • 男女の平均勤続年数の差異
  • 男女別の育児休暇取得率
  • 労働者の一月当たりの平均残業時間
  • 有給休暇取得率
    など

※厚生労働省が定める項目のうち、常時雇用する労働者が301人以上の事業主は区分ごとに2つ以上、101人以上の事業主は区分ごとに1つ以上を選択し、行動計画の策定及び情報公表を行うことが義務付けられています。

これらの情報を公表することは、就職活動中の学生や子育て中の女性の企業選択に役立ちます。また、女性の活躍推進における自社の取組みをアピールでき、優秀な人材確保や社会的評価の向上につながるなど様々なメリットが期待できます。

情報公表のサイクルと方法

公表する情報の内容は、おおむね年1回のペースで更新すべきとされています。また、いつの情報なのかが分かるよう、更新日時は必ず明記しましょう。

公表方法については、自社ホームページに掲載するなど、求職者等が簡単に閲覧できるよう工夫する必要があります。

この点、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」に掲載するのもおすすめです。ここでは、女性の活躍に関する情報だけでなく、会社の行動計画や取組みを自由に記載することができるため、自社を広くアピールするのに有効です。また、先行する他社の取組みを検索・閲覧し、自社の行動計画を策定する際の参考にすることも可能です。

えるぼし認定制度

一般事業主行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組みの実施状況が優良である事業主は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣から「えるぼし認定」を受けることができます(女性活躍推進法9条)。

えるぼし認定を受けた事業主は、自社の商品や広告に認定マークを付けることができ、女性の活躍推進企業であることをアピールすることができます。

えるぼし認定は3段階あり、評価基準を満たす項目数に応じていずれかが認定されます。

また、令和元年5月の法改正では、新たに「プラチナえるぼし」が設けられました。プラチナえるぼしは、えるぼし認定を受けた事業主のうち、特に優良な取組みを行った事業主に認定されるものであり、女性の活躍推進を後押しするための有効な制度といえるでしょう。

※「プラチナえるぼし」認定の施⾏は2020年(令和2年)6⽉1⽇からです。

えるぼしの認定基準については、下表をご覧ください。

認定の段階 認定の要件
えるぼし(1段階目) ・評価基準のうち1つ又は2つの項目を満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。
・満たさない基準については、事業主行動計画策定指針に定められた取組みの中から当該基準に関連するものを実施し、その実施状況を「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、その実績が2年以上連続して改善していること。
えるぼし(2段階目) ・評価基準のうち3つ又は4つの項目を満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。
・満たさない基準については、事業主行動計画策定指針に定められた取組みの中から当該基準に関連するものを実施し、その実施状況を「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、その実績が2年以上連続して改善していること。
えるぼし(3段階目) 評価基準の5項目をすべて満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。
プラチナえるぼし ・策定した一般事業主行動計画に基づく取組みを実施し、目標を達成したこと。
・男女雇用機会均等推進者、職業家庭両立推進者を選任していること。
・プラチナえるぼしの評価基準の5項目をすべて満たしていること。
・女性活躍推進法に基づく情報公表項目(社内制度の概要を除く。)のうち、8項目以上を公表していること。
※実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していることが必要です。

えるぼしの評価基準は、正式には「女性の職業生活における活躍の状況に関する実績に係る基準」といい、5つの項目が定められています。詳しくは次項でご紹介します。

女性の職業生活における活躍の状況に関する実績に係る基準

えるぼし認定における5つの評価項目と、それぞれの認定基準をご説明します。

採用

採用における競争倍率(応募者数/採用者数)が男女で同程度であること
又は、直近の事業年度において、以下の両方に該当すること

  • 正社員に占める女性労働者の割合が、産業ごとの平均値以上であること(平均値が4割を上回る場合は、4割以上であること)
  • 正社員の基幹的な雇用管理区分における女性労働者の割合が、産業ごとの平均値以上であること(平均値が4割を上回る場合は、4割以上であること)。ただし、正社員に雇用管理区分を設定していない場合は不要とする。

※労働者の職種・雇用形態・就業形態等の区分であり、区分ごとに異なる雇用管理が行われます。例えば、「総合職又は一般職」、「事務職、営業職又は技術職」といった区分があり、異動や転勤の有無、昇進の上限において異なるのが一般的です。

継続就業

直近の事業年度において、以下のいずれかに該当すること

  • 「女性労働者の平均継続勤務年数」÷「男性労働者の平均継続勤務年数」が、各雇用管理区分で7割以上(プラチナえるぼしは8割以上)であること
    ※期間の定めがない労働契約を締結している労働者のみを対象とすること
  • 「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が、各雇用管理区分で8割以上(プラチナえるぼしは9割以上)であること
    ※10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者(新卒者等に限る。)のうち、継続して雇用されている者のみを対象とすること

上記を算出できない場合、以下でも可とする。

直近の事業年度において、正社員の女性労働者の平均勤続勤務年数が、産業ごとの平均値以上であること

労働時間等の働き方

雇用管理区分ごとの労働者の“法定時間外労働”及び“法定休日労働時間”の合計時間数の平均が、直近の事業年度のすべての月において45時間未満であること

管理職比率

以下のいずれかに該当すること

  • 直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上(プラチナえるぼしは1.5倍以上※1であること
  • 直近3事業年度における、「1つ下位の職階から課長級に昇給した女性労働者の平均割合」÷「1つ下位の 職階から課長級に昇進した男性労働者の平均割合」が8割以上であること※2

※1:1.5倍後の数字が“15%以下”の場合は、管理職に占める女性労働者の割合が15%以上であること。“40%以上”の場合は、管理職に占める女性労働者の割合が、正社員に占める女性比率の8割以上であること。

※2:10割を上回る場合、産業計の平均値以上であればプラチナえるぼしとなります。

多様なキャリアコース

直近の3事業年度において、以下4項目のうち、大企業では2項目以上、中小企業では1項目以上の実績があること
  • 女性の非正社員から正社員への転換
  • 女性労働者のキャリアアップとなる雇用管理区分間の転換
  • 過去に在籍した女性を正社員として再雇用したこと
  • およそ30歳以上の女性を正社員として採用したこと

認定の取消し

えるぼし認定は、場合によっては取消しとなるおそれがあります。
具体的には、以下のケースで取り消されます(女性活躍推進法11条)。

  • 基準に適合しないとき
    • 認定後に公表された実績が、えるぼし認定基準を満たさないこと。かつ、翌年度の公表でも同じ状況が継続しており、認定を受けた段階に必要な項目数を満たせなくなったこと。
    • 認定取得時以降の公表を2年にわたり怠ったこと
  • 同法又は同法に基づく命令に違反したとき
  • 不正な手段で認定を受けたとき

また、プラチナえるぼしが取り消されるケースとしては以下が挙げられます(同法15条)。

  • えるぼし認定が取り消されたとき
  • 基準に適合しないとき
    • 認定後に公表された“女性の活躍推進に関する取組みの実施状況”が、プラチナえるぼし認定基準を満たさないこと。かつ、翌年度の公表でも同じ状況が継続していること。
  • 女性の活躍推進に関する取組みの実施状況を2年にわたり公表せず、又は虚偽の公表を行ったとき
  • 同法又は同法に基づく命令に違反したとき
  • 不正な手段で認定を受けたとき

その他、是正勧告を受けて改善しない事業主も、これら認定の取消対象となりえます。

女性活躍推進法の実施義務に違反した場合の罰則

女性活躍推進法の実施義務を怠っても、罰則を受けることはありません。
しかし、インターネットで情報を公表しないことが会社のイメージダウンにつながる可能性はあります。
これは、女性の活躍推進という社会のニーズに応えておらず、働きにくい職場だという印象を与えてしまうためです。

また、求職者に対するアピールもできないため、人材確保が難しくなるおそれもあります。

履行確保措置

厚生労働大臣は、女性活躍推進法の施行に関し必要があると認める場合、事業主に対して報告を求めたり、助言・指導・勧告をしたりすることができます(女性活躍推進法30条)。

また、情報公表の実施義務を怠った事業主又は虚偽の公表を行った事業主に勧告を行い、当該事業主が勧告に従わなかった場合、その旨を公表することもできます(同法31条)。

これらは行政に認められた「履行確保措置」であり、措置を受けた事業主は適切な対応をすることが求められます。

また、勧告を受けた会社は、改善策の検討・実施や改善状況の報告を行う必要があるため、大きな負担を負うことになります。履行確保措置の対象とならないよう、実施義務はしっかり行うようにしましょう。

報告を怠った場合の罰則

女性の活躍推進に関する取組みについて、厚生労働大臣から報告を求められた場合、定められた期限までに必ず対応しましょう。

なお、報告の要求に応じなかったり、虚偽の報告を行ったりした事業主には、20万円以下の過料が課されるおそれがあるため注意が必要です(女性活躍推進法39条)。

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)

女性の活躍推進に関する取組みを行う中小企業※1は、国から助成金を受け取れる可能性があります(女性活躍加速化コース)。

これは、女性の活躍推進のために有効な「数値目標」や「取組目標」を策定し、それらを達成した事業主に支給されるものです。
具体的には、行動計画に盛り込んだ取組内容を実施し、3年以内に数値目標を達成した場合、47.5万円〈60万円〉※2の助成金が支給されます。

ただし、令和2年3月31日までに行動計画を策定した中小企業は、以下いずれかの支給となります。
なお、これらはすべて1事業主1回限りの支給となります。

  • 加速化Aコース
    行動計画の取組内容を2つ以上実施した場合、38万円〈48万円※2の助成金が支給されます。
  • 加速化Nコース
    行動計画の取組内容を実施し、数値目標を達成した場合、28.5万円〈36万円※2の助成金が支給されます。また、女性管理職比率が15%以上に上がった場合、47.5万円〈60万円※2も支給されます。

※1:常時雇用する労働者が300人以下の事業主
※2:厚生労働省が定める生産性要件を満たす場合の金額

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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