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育児・介護休業

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

少子高齢化による労働人口の減少対策、女性の社会進出促進、現代の家族形態への対応、ワーク・ライフ・バランスの実現等のために制定された育児・介護休業法は、労働者に育児・介護のための休業を認め、休業を取得する労働者が育児・介護をしながらでも仕事を辞めずに働き続けることができるよう、事業主にさまざまな努力義務を定めた法律です。

制定からこれまで何度かの改正を経て、事業主にさまざまな措置を講じるよう配慮が求められています。

このページでは、育児・介護休業法とはどのような法律なのか、事業主が講じるべき措置等について解説します。

育児・介護休業法とは

育児・介護休業法とは、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の略称であり、子供や要介護の家族がいる労働者が、仕事を続けながら育児や介護を行えるようにするために、雇用継続や再就職の促進を目的として制定された法律です。

かつては「育児か仕事」、「介護か仕事」という二者択一の状態でしたが、労働力不足が叫ばれるようになり、共働き世帯も年々増加しているため、育児・介護休業法は労働者が仕事と家庭を両立しながら長く働き続けられるよう、事業主にさまざまな努力義務を課しています。

育児・介護休業法が制定された背景

育児・介護休業法は、少子高齢化と労働人口の減少への対策として制定されました。

日本では、合計特殊出生率が年々減少しており、高齢化による介護離職も増加傾向にあります。そして、それらの影響で労働人口が減少しており、人手不足に陥る企業や業種が発生しています。

このような社会問題を改善するために、育児・介護をしなければならない労働者の継続就労・再雇用支援を目的としているのです。

近年では、男性の育休の取得を促進するための法改正が行われています。

育児・介護休業法における制度の概要

育児・介護休業法によって定められている制度について、それぞれ解説します。

育児休業制度

育児休業制度とは、1歳未満の子供を養育する労働者が事業主へ申し出れば、子供が1歳になるまで(保育所に入れなかった場合は最長2歳まで延長可能)休業を取得できるという制度です。つまり、生まれて間もない子供を育てるために取得する休業です。

育休は、母親だけでなく父親も取得可能であり、父母が同時に取得することも可能です。そして、事業主は、従業員からの申出を基本的に拒否できません。

詳しくは以下のページで解説していますので、ご参照ください。

育児休業

介護休業制度

介護休業制度とは、要介護状態にある配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母を介護するために、要介護者1人につき通算93日を限度として、最大で3回に分割して休業することができる制度です。

ここでいう「要介護状態」とは、「負傷、疾病、または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」を指します。

育児休業と同じく、事業主は基本的にこの申出を拒否できません。

詳細は以下のページで解説していますので、ご参照ください。

介護休業制度の正しい知識と会社が取るべき対応

子の看護休暇制度

小学校入学までの子供を持つ労働者が、負傷または疾病にかかった子供を看病するために取得できる休暇が子の看護休暇制度です。1年度につき5日(子供が2人なら10日)と限りがありますが、事業主はこの申出を拒むことができません。また、この休暇を取得できる子供の症状についても制限はありません。

詳細は以下のページで解説していますので、ご参照ください。

子の看護休暇

介護休暇制度

介護休暇制度とは、要介護状態にある対象家族の介護、または通院等の付き添い、介護サービスの代行等の世話をするために、労働者が1年につき5日(対象者が2人以上なら10日)の休暇を取得できます。事業主は、基本的にこの申出を拒否できません。

また、介護休暇は、近年の法改正により、取得できる従業員の範囲が広がり、時間単位での取得も認められるようになりました。

詳しくは以下のページで解説していますので、ご参照ください。

介護休暇制度とは|改正内容や介護休業との違い

育児・介護休業法の改正について

育児・介護休業法は、令和3年1月に「子の看護休暇」と「介護休暇」の規定が改正されました。
施行前と施行後の規定は、それぞれ以下のとおりです。

【施行前】

  • 1日の所定労働時間が4時間を超えていなければ取得できない。
  • 半日単位でしか取得できない(1時間や2時間だけ取得することはできない)。

【施行後】

  • 1日の所定労働時間が4時間以下でも取得できる。
  • 1時間単位で取得できる。

なお、すでに令和3年6月にも改正がなされており、令和4年4月1日より段階を踏んで施行する予定です。詳しくは以下の厚生労働省のページをご参照ください。


育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(リンク先はPDF)
育児・介護休業法について

育児・介護に関して事業主が講ずべき措置

育児・介護休業法において、事業主が講ずべき措置として定められている事項について、以下で解説します。

育児・介護休業に関する定めの周知

事業主は、あらかじめ育児・介護休業取得者の待遇を定めておき、労働者、もしくはその配偶者が妊娠したとき、または労働者が対象となる家族を介護していることを知ったとき、それを周知させる措置をとる努力をしなければなりません(育介法21条1項)。

ここでいう待遇とは、賃金、配置、その他の労働条件等です。この具体的な取扱いを明示するにあたって、事業主はこれを文書として交付することになっています。

なお、労働者が事業主に対して、自発的に妊娠や介護について知らせやすいように、事業主にはハラスメントの防止措置をとることが求められています。

育児・介護のための労働時間の短縮措置

育児・介護休業法において、事業主は3歳に満たない子を養育する労働者、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が所定労働時間の短縮を希望したときは、子育て、介護が容易になるような措置を講じなければなりません(育介法23条)。「措置を講じ」ている状態とは、就業規則等で制度化されていることをいいます。

労働時間の短縮措置について、詳細は以下のページをご参照ください。

労働時間の短縮措置について

小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置

事業主は、小学校就学前の子供がいる労働者に対して、労働者の区分に応じて、必要な措置を講ずるよう努力しなければなりません(育介法24条1項)。具体的には、遅刻・早退ができる制度、配偶者出産休暇、子供の行事による休暇、フレックスタイム制度の導入等です。

労働者の区分、またそれに応じた措置は以下のようになっています。

労働者の区分 講ずべき措置
1歳に満たない子供を養育する労働者で、育児休業を取得していない労働者 始業時間変更等の措置
1歳から3歳に達するまでの子供を養育している労働者 ・育児休業に関する制度
・始業時間変更等の措置
3歳から小学校就学の始期に達するまでの子供を養育している労働者 ・育児休業に関する制度
・所定外労働の制限に関する制度
・短時間勤務制度
・始業時刻変更等の措置

育児・介護休業に関するハラスメントの防止

育児・介護休業法では、事業主は、相談窓口の設置その他のマタニティ(パタニティ)ハラスメント防止に必要な措置を講じなければならないと定められています(育介法25条1項)。

具体的には、労働者が育児休業、介護休業、その他の制度や措置を利用することによって、上司や周囲から「非正規社員になれ」と言われたり、同僚から「お前だけが楽をしていて迷惑だ」と言われたりして、働きにくくなることがないようにします。これは性別や雇用形態にかかわらない義務です。

また、労働者が相談をしたことを理由に、解雇や不利益な扱いをすることは禁じられています。

具体的にどんな内容がハラスメントに当たるのか等、詳しくはこちらのページをご参照ください。

企業のハラスメント対応と法的義務

労働者の配置に関する配慮

労働者に転勤をともなう異動をさせようとするとき、その転勤により、労働者の子供の養育、または家族の介護に支障が出て、就業しながらの子育て・介護が困難にならないよう、事業主はその状況に配慮しなければなりません(育介法26条)。例えば、状況を把握する、本人の意思を汲む、代替手段がないか確認する等の総合的な考慮が必要です。

所定外労働・時間外労働・深夜業の制限

事業主は、満3歳に満たない子供を養育する労働者が申し出たときは、当該労働者について以下のことを守らなければなりません。

・所定外労働をさせてはならない(所定外労働の制限)

また、小学校入学前の子供を養育する労働者が申し出たときは、当該労働者について以下のことを守らなければなりません。

  • 1ヶ月24時間、1年間150時間を超えて残業させてはならない(時間外労働の制限)
  • 午後10時から午前5時までの深夜労働をさせてはならない(深夜業の制限)

上記の制限について、詳しくは以下のページをご参照ください。

所定外労働・時間外労働・深夜業の制限について

再雇用特別措置等

妊娠、出産、育児、介護を理由として退職する労働者は少なくありませんが、事業主は、希望があればそのような人たちの再雇用をするよう努めなければならないと定められています。

前述の理由で退職した労働者(以下、育児等退職者)が退職の際、復帰可能となったときに再雇用を希望する旨を申し出ていた場合、求人募集をする前に、再雇用の希望がどうかあるかを確認し、また労働者を一般募集・採用する際に、再雇用を希望していた育児等離職者に特別の配慮をしなければなりません(育介法27条)。

これについても、女性だけでなく男性労働者も対象となります。

職業家庭両立推進者の選任

事業主は、職場において、職業家庭両立支援推薦者を選任するよう努めなければならないと定められています。

この「職業家庭両立支援推薦者」とは、育児・介護休業法21条から27条に定められている措置、子供の養育や家族の介護を行う労働者の仕事と家庭の両立を図るための業務を担当するものとされています(育介法29条)。

具体的には、

①育児休業・介護休業等の就業規則の作成、周知
②育児・介護休業をしている労働者の職業能力の開発等に関する措置の企画立案、周知
③短時間勤務の企画立案、周知
④転勤をともなう異動をしようとする際の各社員への配慮
⑤育児等離職者の再雇用の企画立案、周知

等です。

休業取得者の代替要員の確保

労働者が育児・介護休業を取得しても問題ないよう、事業主は、有期の代替職員を雇う等、ほかの労働者の配置、雇用の管理する必要があります。有期の代替職員は、休業中の労働者が予定より早く休業を終えても、あらかじめ定められた雇用期間が終了する前に解雇することはできません。

また、育児・介護休業を取得している労働者が職場に復帰したとき、事業主は、原則として元の職またはそれに相当するポジションに復帰させるように配慮しなければいけません。具体的には、職務上の地位が休業前より下がっていないこと、休業前後で職務内容が異なっていないこと、勤務する場所が同一であること等です。

育児介護休業法のメリット

育児・介護休業法により、従業員が育休や介護休業を取得しやすい環境を整備すると、従業員にとってメリットがあるのは当然ですが、企業にとってもメリットがあります。

具体的に、企業にとってどのようなメリットがあるのかについて、みていきましょう。

信頼を得られる

育児休業や介護休業を取得しやすい企業になることで、従業員やその家族から「困った状況に陥っても守ってもらえる」という信頼を得ることができます。それにより、企業に対する帰属意識が向上する等の影響が生じると考えられます。

モチベーションアップ

育児休業や介護休業を取得しやすい企業であれば、従業員のワーク・ライフ・バランスが向上し、働き続けることに対するモチベーションが高まります。それにより、従業員の体調や精神状態が良好に維持されて、生産性や業績の向上が見込めます。

企業のイメージアップ

育児休業や介護休業の取得率が高まることによって、働きやすい企業であるというイメージが広まり、企業のイメージアップにつながります。その効果により、優秀な労働者を採用しやすくなる等の良い影響が生じることが期待できます。

各種助成金制度

育児・介護休業法により、従業員に育児休業を取得させたり、育児休業から職場復帰させたりしたときに、企業が両立支援等助成金を受け取ることができる場合があります。
両立支援等助成金には、各種の取組みに対応して、以下のようなコースが設けられています。

  • 出生時両立支援コース(男性の育児休業等取得推進に取り組む)
  • 介護離職防止支援コース(中小企業が仕事と介護の両立支援に取り組む)
  • 育児休業等支援コース(中小企業が労働者の円滑な育児休業取得・職場復帰に取り組む)

育児・介護における不利益取扱いの禁止

育児・介護休業の取得等を理由に、事業主が労働者に対して不利益な扱いをすることは禁止されています。例えば、解雇、降格、減給、不利益な異動、非正規職員への変更の強要、いやがらせ発言等です。これらは「不利益取扱い」とされ、育児・介護休業を取得した男女労働者に対してだけでなく、妊娠・出産した女性労働者に対しても男女雇用機会均等法で禁じられています。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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