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育児・介護休業

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

少子高齢化による労働人口の減少対策、女性の社会進出促進、現代の家族形態への対応、ワーク・ライフ・バランスの実現等のために制定された「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称:育児・介護休業法)」は、労働者に育児・介護のための休業を認め、また休業を取得する労働者が育児や介護をしながらでも仕事を辞めずに働き続けることができるよう、事業主にさまざまな努力義務を定めた法律です。制定からこれまで何度かの改正を経て、父親の育休取得促進等も盛り込まれ、2017年の改正では最長2歳まで育児休業を延長できることになったことにより、事業主も実施を図るためにさまざまな措置を講じるよう配慮が求められています。

このページでは、育児や家族の介護を抱える労働者が増えるなか、事業主がとらなければならない措置等、把握しておくべきことについて解説していきます。

育児・介護休業法の概要

育児・介護休業法は、子供を持つ、または要介護の家族がいる労働者の雇用継続、および再就職の促進を目的として制定された法律です。もとは少子化対策として「育児休業法」が制定されましたが、その後、高齢化を受け「介護離職ゼロ」を目指した介護休業が加わり、「育児・介護休業法」となりました。かつては「育児か仕事」、「介護か仕事」という二者択一の状態でしたが、労働力不足が叫ばれるようになり、共働き世帯も年々増加しているため、育児・介護休業法は労働者が仕事と家庭を両立しながら長く働き続けられるよう、事業主にさまざまな努力義務を課しています。

育児・介護休業法が制定された背景

育児・介護休業法は、もとは1981年に合計特殊出生率が著しく低下したことにより、少子化対策として「育児休業法」が制定されたのがはじまりです。その後、高齢化や、高齢者の在宅ケア施策等から「介護休業」も制定されました。それまでは育児・介護のために離職する労働者が数多くいましたが、育児・介護をしなければならない労働者の継続就労・再雇用支援を目的としています。また、男性の育児参加を促進する「パパ休暇」制度や、夫婦ともに育児休暇を取得すると育休期間が延長されるという「パパ・ママ育休プラス」という制度も施行されました。

育児・介護休業法における制度の概要

育児休業制度

育児休業制度とは、1歳未満の子供を養育する労働者が事業主へ申し出れば、子供が1歳になるまで(保育所に入れなかった場合は最長2歳まで延長可能)休業を取得できるという制度です。つまり、生まれて間もない子供を育てるために取得する休業です。事業主は、原則この申出を拒否できません

詳しくは以下のページで解説していますので、ご参照ください。

育児休業

介護休業制度

介護休業制度とは、要介護状態にある配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母を介護するために、要介護者ひとりにつき通算93日を限度として、通算3回まで、分割して休業をすることができるという制度です。ここでいう「要介護状態」とは、「負傷、疾病、または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」を指します。育児休業と同じく、事業主は原則としてこの申出を拒否できません。

子の看護休暇制度

小学校入学までの子供を持つ労働者が、負傷または疾病にかかった子供を看病するために取得できる休暇が子の看護休暇制度です。年度において5日(子供が2人なら10日)と限りがありますが、事業主はこの申出を拒むことができません。また、この休暇を取得できる子供の症状についても制限はありません。

介護休暇制度

労働者は、要介護状態にある対象家族の介護、または通院等の付き添い、介護サービスの代行等の世話をするために、年度につき5日まで(対象者が2人以上なら10日)休暇を取得できます。これを介護休暇制度といいます。介護休暇は、2016年の改正によって、半日単位での取得も認められました。

育児・介護休業法の改正について

育児・介護休業法は、2017年1月と10月にそれぞれ改正されています。介護休業は取得できる回数が1回から3回に増え、育児休業は取得できる期間が、子供が保育所に入れなかった場合は最長2歳までと延長されました。また、育児休業を二度取得できる「パパ休暇」や、夫婦ともに育児休業を取得すると期間が延長される「パパ・ママ育休プラス」制度も施行されました。

現代の家族形態はさまざまで、子育て・介護をしながら働く現役世代が多数います。また、労働者の雇用形態も時代とともに変化しています。多様性に合わせた、また男女ともに労働者の就労継続支援を目指した改正といえるでしょう。

育児休業の改正点

所定外労働・時間外労働・深夜業の制限

事業主は、満3歳に満たない子供を養育する労働者が申し出た場合は所定外労働をさせてはならない(所定外労働の制限)、小学校入学前の子供を養育する労働者が申し出たときは1ヶ月24時間、1年間150時間を超えて残業させてはならない(時間外労働の制限)、午後10時から午前5時までの深夜労働をさせてはならない(深夜業の制限)が定められています。

育児・介護に関して事業主が講ずべき措置とは?

育児・介護休業に関する定めの周知

事業主は、あらかじめ育児・介護休業取得者の待遇を定めておき、労働者、もしくはその配偶者が妊娠したとき、または労働者が対象となる家族を介護していることを知ったとき、それを周知させる措置をとる努力をしなければなりません(育介法21条1項)。ここでいう待遇とは、賃金、配置、その他の労働条件等です。この具体的な取扱いを明示するにあたって、事業主はこれを文書として交付することになっています。条文では「周知」とされていますが、プライバシー保護の観点から、事業主の措置は、労働者が自発的に妊娠、あるいは介護について知らせることを前提としたものである必要があります。

育児・介護のための労働時間の短縮措置

育児・介護休業法において、事業主は3歳に満たない子を養育する労働者、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が所定労働時間の短縮を希望したときは、子育て、介護が容易になるような措置を講じなければなりません(育介法23条)。「措置を講じ」ている状態とは、就業規則等で制度化されていることをいいます。

労働時間の短縮措置について、詳細は以下のページをご参照ください。

労働時間の短縮措置について

小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置

事業主は、小学校就学前の子供がいる労働者に対して、労働者の区分に応じて、必要な措置を講ずるよう努力しなければなりません(育介法24条1項)。具体的には、遅刻・早退ができる制度、配偶者出産休暇、子供の行事による休暇、フレックスタイム制度の導入等です。

労働者の区分、またそれに応じた措置は以下のようになっています。

  • ①1歳に満たない子供を養育する労働者で、育児休業を取得していない労働者
    ・始業時間変更等の措置
  • ②1歳から3歳に達するまでの子供を養育している労働者
    ・育児休業に関する制度
    ・始業時間変更等の措置
  • ③3歳から小学校就学の始期に達するまでの子供を養育している労働者
    ・育児休業に関する制度
    ・所定外労働の制限に関する制度
    ・短時間勤務制度
    ・始業時刻変更等の措置

育児・介護休業に関するハラスメントの防止

育児・介護休業法では、事業主は、『…制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備(育介法25条1項)』等、ハラスメント防止に努めなければならないことも定められています。具体的には、労働者が育児休業、介護休業、その他の制度や措置を利用することによって、周囲から働きにくくなるようなことを言われたり、労働環境が悪くなったりすることがないようにします。これは男女、また雇用形態にかかわらない努力義務です。

また、労働者が相談をしたことを理由に、解雇や不利益な扱いをすることは禁じられています。

具体的にどんな内容がハラスメントに当たるのか等、詳しくはこちらのページをご参照ください。

ハラスメント

労働者の配置に関する配慮

労働者に転勤をともなう異動をさせようとするとき、その転勤により、労働者の子供の養育、または家族の介護に支障が出て、就業しながらの子育て・介護が困難にならないよう、事業主はその状況に配慮しなければなりません(育介法26条)。たとえば、状況を把握する、本人の意思を汲む、代替手段がないか確認する等の総合的な考慮が必要です。

再雇用特別措置等

妊娠、出産、育児、介護を理由として退職する労働者は少なくありませんが、事業主は、希望があればそのような人たちの再雇用をするよう努めなければならないと定められています。前述の理由で退職した労働者(以下、育児等退職者)が退職の際、復帰可能となったときに再雇用を希望する旨を申し出ていた場合、求人募集をする前に、再雇用の希望がどうかあるかを確認し、また労働者を一般募集・採用する際に、再雇用を希望していた育児等離職者に特別の配慮をしなければなりません(育介法27条)。これについては、女性だけでなく男性労働者も対象となります。

職業家庭両立推進者の選任

事業主は、職場において、職業家庭両立支援推薦者を選任するよう努めなければならないと定められています。この「職業家庭両立支援推薦者」とは、育児・介護休業法21条から27条に定められている措置、子供の養育や家族の介護を行う労働者の仕事と家庭の両立を図るための業務を担当するものとされています(育介法29条)。
具体的には、

  • ①育児休業・介護休業等の就業規則の作成、周知
  • ②育児・介護休業をしている労働者の職業能力の開発等に関する措置の企画立案、周知
  • ③短時間勤務の企画立案、周知
  • ④転勤をともなう異動をしようとする際の各社員への配慮
  • ⑤育児等離職者の再雇用の企画立案、周知

等です。

休業取得者の代替要員の確保

労働者が育児・介護休業を取得しても問題ないよう、事業主は、有期の代替職員を雇う等、ほかの労働者の配置、雇用の管理する必要があります。有期の代替職員は、休業中の労働者が予定より早く休業を終えても、あらかじめ定められた雇用期間が終了する前に解雇することはできません。

また、育児・介護休業を取得している労働者が職場に復帰したとき、事業主は、原則として元の職またはそれに相当するポジションに復帰させるように配慮しなければいけません。具体的には、職務上の地位が休業前より下がっていないこと、休業前後で職務内容が異なっていないこと、勤務する場所が同一であること等です。

育児・介護における不利益取扱いの禁止

育児・介護休業の取得等を理由に、事業主が労働者に対して不利益な扱いをすることは禁止されています。たとえば、解雇、降格、減給、不利益な異動、非正規職員への変更の強要、いやがらせ発言等です。これらは「不利益取扱い」とされ、育児・介護休業を取得した男女労働者に対してだけでなく、妊娠・出産した女性労働者に対しても男女雇用機会均等法で禁じられています。

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