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年俸制における残業代の支払い義務や計算方法

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

年俸制は、労働者の給与額を1年単位で決定する給与体系です。年間の給与額が事前に決まるため、「残業代は支払わなくて良い」と思われるかもしれません。

しかし、年俸制であっても残業代は発生しますし、割増賃金も適用されるのが基本です。そのため、年棒制でない労働者と同じく、労働時間はしっかり管理しなければなりません。

一方、残業代の計算方法労働契約の定め方については、月給制と異なる点もあります。労使トラブルを防ぐためにも、しっかりポイントを押さえておく必要があるでしょう。

本記事では、年俸制における残業代の取扱いについて解説していきます。導入を検討されている方は、ぜひご覧ください。

年俸制とは

年俸制とは、給与額(年俸額)を1年単位で決定する給与体系のことです。労働者の前年度の成績を踏まえ、その年の給与額を“事前に”決定します。主にプログラマーなど高いスキルが求められる職種や、成果主義の会社で導入されています。

年俸制は「業績重視」の制度なので、労働者のモチベーションを維持するのに有効な制度といえます。また、基本的に一度決まった年俸額が途中で変わることはないため、長期的な経営計画も立てやすくなるでしょう。

一方、年俸制にはデメリットや注意点もあります。詳しくは以下のページをご覧ください。

年俸制とは

年俸制における残業代の支払い義務

年俸制でも、法定労働時間を超えて働いた場合は「割増賃金」を支払わなければなりません。通常の労働者と同じく、労働基準法の規定が適用されるためです。

なお、あらかじめ年俸額に固定残業代みなし残業代を含めることは可能です。例えば、「年俸額には〇時間分の残業手当を含む」などと規定しておく方法です。

もっとも、管理監督者など、一部残業代が発生しない労働者もいることに注意が必要です(詳しくは後ほど解説します)。

また、割増賃金の概要から知りたい方は、以下のページをご覧ください。

割増賃金とは

年俸制の法定労働時間

労働基準法上、年俸制に関する規定はなく、通常の労働者と同じ法定労働時間が適用されます。具体的には、「1日8時間、週40時間」を超えて勤務した場合、「割増賃金」が発生します。

また、深夜残業法定休日労働についても割増賃金が生じます。

労働時間のルールについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

労働時間とは

残業代が発生しない職種・勤務形態と留意点

年俸制であっても、法定労働時間を超えた分は「割増賃金」を支払うのが基本です。労働条件のルールを定めた労働基準法は、年俸制の労働者にも適用されるためです。

ただし、役職や労働契約の内容によっては、残業代の支給対象外となる労働者もいます。具体的には、一例として、以下の4ケースが考えられます。

  • 管理監督者
  • みなし残業制(固定残業制)
  • 裁量労働制
  • 個人事業主

それぞれの特徴について、次項からみていきます。

管理監督者

管理監督者の場合、労働基準法における労働時間・休憩・休日などに関する規定が適用されません。そのため、残業代も支払う必要がないのが基本です。

ただし、管理監督者でも、「深夜残業」に対する割増賃金は支払う必要があります。
深夜残業とは、22時~翌朝5時の間に勤務することで、通常よりも高い割増率が設定されています。

そのため、管理監督者についても労働時間はしっかり管理しましょう。

また、管理監督者であると認められるための条件には、「企業において相当の地位と権限が与えられていること」、「労務管理について経営者と一体的な立場にあること」が必要であると考えられています。
そのため、単に役職名や肩書だけでなく、実際の職務内容に基づいて判断することが必要です。

管理監督者の残業代の計算方法については、以下のページもご覧ください。

管理職と残業代請求

みなし残業制(固定残業制)

年俸額に、あらかじめみなし残業代(固定残業代)を含む方法です。この場合、労働契約で定めたみなし残業時間以内の勤務であれば、別途残業代(割増賃金)を支払う必要はありません。
一方、みなし残業時間を超えて勤務した場合、追加で割増賃金の支給が必要となります。

ただし、みなし残業制を用いる場合、残業代がいくらなのか基本給としっかり区別することが重要です。
みなし残業代が含まれていると認識できない場合や、時間外手当の内訳が不明瞭な場合、当該契約が無効となるおそれがあります。

みなし残業制(固定残業制)の詳細は、以下のページで解説しています。

みなし残業制(固定残業制)とは

裁量労働制

裁量労働制の労働者には、残業代が発生しない可能性があります。

裁量労働制とは、実労働時間にかかわらず、労使協定等で合意した「みなし労働時間」分の働きをしたものとみなす制度です。つまり、定めた“みなし労働時間”に応じた年俸額を支払うことで足りるため、基本的に残業代は発生しません。

ただし、契約上のみなし労働時間が8時間を超える場合、超えた部分については割増賃金を支払う必要があります。
例えば、みなし労働時間が8時間の場合、何時間働いても割増賃金は発生しません。一方、みなし労働時間が10時間の場合、2時間分の賃金は1.25倍の割増率が適用されます。

裁量労働制の厳格な適用要件や、制度導入のメリット・デメリットなど、「裁量労働制」の仕組みについて詳しく知りたい方は、以下のページでご確認いただけます。ぜひこちらも併せてご覧ください。

裁量労働制とは

個人事業主

個人事業主に対しては、残業代が発生しません。

個人事業主とは、個人で事業を営んでいる人(いわゆる自営業者)のことをいいます。労働基準法のルールは、会社と雇用契約関係にある労働者に対して適用されるものですから、個人事業主には適用されません。

また、会社と業務委託契約を結んでいる場合の相手方も、労働基準法上の労働者ではなく個人事業主になりますから、この場合にも、会社は残業代の支払義務を負いません。

残業代込みの年俸の支給方法

年俸に残業代を含める方法で支給するためには、次の3つの条件を満たすことが求められます(平成12年3月8日基収78号)。

  • ①年俸に残業代が含まれていることが、労働契約の内容からみて明らかである
  • ②残業代に相当する部分と、基本給部分とが区別されている
  • ③残業代に相当する額が、法律で定められた金額以上に支払われている

つまり、年俸に残業代が含まれていることと、年俸の内訳(「1ヶ月あたり●時間分の残業代●万円を含む」等、具体的に残業代として扱う額)について、就業規則や雇用契約書等に明記する必要があります。

実際の残業時間がこの定めの範囲に収まれば、残業代はすでに支払っていることになりますから、別途発生することはありません。他方で、実際の残業時間が定めを上回った場合には、追加で残業代を支払う必要があります。

年俸内訳の明確化

残業代、つまり【割増賃金】が発生する事由としては、法定労働時間外の労働のほか、割増率が異なる法定休日労働深夜労働があります。そのため、それらと残業代部分との区別も明確にしておかなければなりません。

就業規則や雇用契約書の定めから残業代の部分を特定できない場合、当該契約は無効となるおそれがあります。よって、年俸とは別に割増賃金の支払義務を負うことになります。

残業代の計算方法

年俸制における残業代の計算方法は、以下のとおりです。

  1. 年俸額を12で割って1ヶ月あたりの賃金を算出する
  2. 「①」を1ヶ月の所定労働時間で割り、1時間あたりの賃金を算出する
  3. 「②」に割増率と残業時間を掛ける

計算式で表すと、以下のようになります。

1時間あたりの賃金 = 年俸額 ÷ 12 ÷ 1ヶ月の所定労働時間
残業代 = 1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間

残業代の計算に関する詳しい解説は、以下のページで解説しています。法定時間外労働、法定休日労働、深夜労働に対する割増率など、ケースごとに解説していますのでぜひご覧ください。

割増賃金の計算方法について

賞与の取扱い

残業代の計算において、賞与は基礎賃金に算入されません。法令上、「臨時に支払われる賃金」と「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当する部分は、基礎賃金に含まれないためです(労基則21条4号、5号)。

そのため、年俸額に賞与が含まれるケースでは、賞与分を除外したうえで1時間あたりの賃金(前項の計算式参照)を求める必要があります。

もっとも、賞与の定義は、「支給額があらかじめ確定されていないもの」とされています(昭和22年9月13日発基17号)。
そのため、例えば、「年俸額のうち、16分の1の額を月給として、16分の4を2分割した額を賞与として支給する」といった契約である場合、支給額があらかじめ確定しているため、法的には、賞与とはみなされず、賞与分も基礎賃金に含めることになります。

“賞与”という名称であっても、会社によって取扱いが異なるため注意が必要です。

以下のページでは、年俸制における賞与の支給方法の例について紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。

年俸制における賞与の取り扱い

年俸制の残業代における企業対応

年俸制の労働者についても、労働時間の管理は必ず行う必要があります。年俸制でも労働基準法は適用され、法定労働時間を超えて働いた場合は残業代(割増賃金)が発生するためです。

また、労働契約や36協定において、「年俸制の者は残業代不支給とする」などと定めることは認められません。

また、労働基準法では「時間外労働時間の上限」も定められており、基本的に月45時間、年360時間までとされています。これを超えた場合、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。
年俸制でもこの規定は適用されますので、十分注意が必要です。

なお、残業代は「賃金に関する項目」のため、必ず就業規則に記載しなければなりません。また、時間外労働時間の計算方法も複雑ですので、しっかり整理しておくことが重要です。

それぞれ以下のページで解説していますので、ぜひご覧ください。

就業規則に必須の内容と業種ごとの注意点
時間外労働
ちょこっと人事労務

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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