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労働基準法改正の要点や労務管理の注意点

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

2018年6月に成立した「働き方改革関連法案」により労働基準法が改正され、2019年4月から、改正後の労働基準法が順次施行されました。働き方改革は、「長時間労働の是正」「雇用形態の違いによる不合理な格差の解消」「柔軟かつ多様な働き方の実現」を3本の柱とする改革であり、労働基準法の改正もこれに則って行われました。

では、労働基準法の改正により、企業としてはどのような対応をとらなければならなくなったのでしょうか?労働基準法の改正内容を確認しながら、企業に求められる対応について考えていきましょう。

働き方改革における労働基準法の改正点

働き方改革に伴う労働基準法の改正点は以下のとおりです。

  • 年5日の年次有給休暇の取得義務化
  • フレックスタイム制の清算期間の延長
  • (中小企業の)時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ
  • 時間外労働の上限規制
  • 高度プロフェッショナル制度の創設

義務化されるもの

年5日の年次有給休暇の取得義務化

法改正が行われるより前は、年次有給休暇(以下、「有休」とします)の取得日数について、使用者は特段の義務を負っていませんでした。しかし、労働基準法の改正によって、法定の有休の付与日数が10日以上の労働者に“年5日”の有休を取得させること、ひいては年間の有休取得日数が5日を下回る労働者に対して「有休の時季指定」を行うことが義務づけられました(労基法39条7項本文)。詳しくは下記の記事をご覧ください。

年5日の有給取得が義務化|罰則や取得させるための方法

36協定とは

36協定の正式な名称は、「時間外・休日労働に関する協定届」といいます。法定労働時間を超えて労働させる必要がある場合に、労使間で当該協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出なければならない旨が、労働基準法36条によって義務づけられているため、「36協定」という通称で呼ばれています。

36協定の締結及び届出が必要になるケース等、詳細に関する説明は下記の記事をご覧ください。

36協定とは|働き方改革での変更点と違反した場合の罰則

制度の仕組みを変更

フレックスタイム制の清算期間の延長

今回の改正により、フレックスタイム制の清算期間の上限が1ヶ月から“3ヶ月”に延長されました(労基法32条の3第1項2号)。これによって、月をまたいだ労働時間の調整ができるようになり、繁忙期と閑散期で労働時間のバランスをとれるようになる等、よりワーク・ライフ・バランスを重視した働き方が可能になりました。詳細については下記の記事をご覧ください。

フレックスタイム制の改正|清算期間の延長

月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率引き上げ

働き方改革により、中小企業を対象とする、月60時間を超える時間外労働(残業)に対する割増賃金率の下限の引き上げ猶予の終了が決定しました。つまり、2023年4月以降は、中小企業であっても、時間外労働時間が月60時間を超えた場合には、超過分について50%以上の割増賃金率を適用しなければならなくなります。詳しく知りたい方は下記の記事をご参照ください。

2023年から中小企業の割増賃金率が引き上げられます

規制や制度の新設

時間外労働の上限規制

労働基準法の改正により、36協定で定めることができる時間外労働の上限が、原則、月45時間・年間360時間となりました(労基法36条4項)。

労働基準法上の労働時間は、基本的に1日8時間・週40時間までとされていますので、この法定労働時間を超えて働いてもらうには、使用者と労働者の代表が36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出る必要があります。

また、繁忙期や緊急時といった特別の事情があり特別条項を結んだ場合でも、月100時間・年720時間を超えることはできません。なお、原則の月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月までとなることについても押さえておく必要があります。

ただし、適用されない又は適用が猶予される事業や業務も存在します。

高度プロフェッショナル制度の創設

高度プロフェッショナル制度」とは、高度の専門知識を有し、職務範囲が明確かつ一定の収入要件等を満たす労働者を対象に、労働時間に基づく制限を撤廃して、労働時間ではなく成果に応じた賃金報酬が得られるようにする制度をいいます。

当該制度もまた、働き方改革に伴う法改正によって労働基準法に創設する規定が設けられた取り組みの一つです(労基法41条の2)。

具体的にどのような制限が撤廃されるのか等、詳しくは下記の記事をご覧ください。

高度プロフェッショナル制度の仕組みや注意点

改正が見送られたもの

裁量労働制

働き方改革に伴う労働基準法改正案のひとつとして、「裁量労働制」を適用できる業種を拡大する案も出ていましたが、今回の改正では見送られました。

「裁量労働制」とは、あらかじめ設定しておいた時間分は働いたものとみなして、実際に働く時間は労働者の裁量に委ねる制度です。対象となる業種や職種により、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」に区別できます。

裁量労働制には適用拡大の障害となる問題点が複数あります。どのような問題点があるのかといった詳しい説明については、下記の記事をご覧ください。

裁量労働制の仕組みとメリット・デメリット

労働基準法改正による労務管理の注意点

これまでに説明してきた法改正により、企業には、「正確な労働時間の把握」がより強く求められるようになるとともに、より厳格な労務管理が求められるようになりました。

具体的には、タイムカード等の客観的な記録によって一定期間の平均労働時間等を管理し、法定労働時間の上限を超えないように管理することに加え、適宜労働者に労働時間について指導できる仕組みを作ったり、年休管理簿等を活用しながら労働者の有休取得状況を把握し、取得を促進したりすることが求められているといえるでしょう。

また、労働時間の集計等にミスが発生しにくい労務管理システムを構築するだけでなく、書類上の労働時間を短くするために、打刻時間をずらすよう管理監督者が労働者に強要する等、システムを潜脱するような運用がなされていないか確認することも重要になるでしょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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