監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
2023年4月から、企業に男性の育児休業取得状況の公表が義務づけられ、2025年4月には対象が従業員1000人超から300人超の企業へ拡大されました。
これは男性の育休取得を後押しし、男女ともに仕事と育児を両立できる環境を整えることを目的としたものです。企業も積極的に育児休業の取得を促すことが求められます。
この記事では、最新の法改正を踏まえて、公表義務の対象企業や公表時のルール、育児休業取得率の計算方法などについて詳しく解説します。
目次
育児休業取得状況の公表の義務化とは?
2023年4月に施行された改正育児・介護休業法により、一定規模以上の企業は、年1回「男性従業員の育児休業の取得状況」を公表することが義務付けられました。
また、公表内容や算定期間、公表方法なども決まっているため、事業主はルールを理解したうえで適切に対応することが重要です。
なお、育児・介護休業法では他にもさまざまな措置を企業に義務付けています。
詳しくは以下のページで解説していますので、併せてご確認ください。
公表する目的・効果
育児休業の取得状況を公表する目的は、男性の育児休業取得率を上げることにあります。
日本の男性の育児休業取得率は、女性と比べてまだまだ低いのが現状です。そのため、女性に過度な負担がかかり、離職率の増加や人手不足を招きやすくなっています。
そこで、男女ともに育児休業を取得しやすい環境を整備し、育児による離職を防止するため、取得状況の公表が義務付けられることとなりました。
育休取得率の公表は、企業にもメリットがあります。育休の取得に前向きな従業員が増えるだけでなく、企業イメージ向上や優秀な人材の確保なども期待できるでしょう。
厚労省の令和5年調査によれば、公表義務のある企業の男性の育休取得率は46.2% でした。対象企業では取り組みが進み、取得率が上昇したとみられます。
2025年4月からは公表義務が300人超の企業に拡大
これまで育児休業取得状況の公表義務は、常時雇用する労働者が1000人を超える企業に限定されていました。しかし、2025年4月からは対象範囲が拡大され、300人を超える企業にも公表が義務化されました。
「常時雇用する労働者」とは、正社員や契約社員、パート・アルバイトなど雇用形態を問わず、次のいずれかに該当する者をいいます。
- ①期間の定めなく雇用されている者
- ②雇用期間の定めはあるが、事実上①と同視できる者
例:1年以上雇用が継続している者、雇用契約が反復更新されている者など
一時的に従業員数が減っても、常態として300人を超えていれば公表義務の対象となります。
また現時点で300人以下でも、常時雇用する労働者が300人を超えた時点で公表義務が課されるため、企業は早めの準備が必要です。
公表しない場合の罰則はあるのか?
育児休業の取得状況を公表しなくても、直接的な罰則を受けることはありません。
ただし、公表しないと育児・介護休業法違反となり、厚生労働大臣からの報告要求や、助言・指導・勧告などの行政指導が行われる可能性があります。この報告の求めに対して報告をせず、または虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料が科されます。
さらに、勧告に従わない場合は、その事実と企業名が公表される可能性があるため注意が必要です。
企業名が明らかになればイメージダウンは避けられません。企業の信用低下や採用への悪影響にもつながるため、対象企業はしっかり義務を守りましょう。
育児休業取得状況公表のルール
育児休業取得状況の公表では、以下の事項についてルールが定められています。
- 公表する内容
- 公表する方法
- 公表する時期
公表する内容
事業主は、以下2つのうちいずれかを公表する必要があります。
| 公表内容 | 算定に含むもの |
|---|---|
| ①男性の育児休業等の取得率 |
|
| ②男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率 |
育児休業等のほか、「育児を目的とすることが明らかな休暇制度」
ただし、育児目的で取得した年次有給休暇や、子の看護休暇は含みません。 |
法令で義務付けられた項目に加え、厚生労働省は企業に対し「女性の育児休業取得率」や「育児休業の平均取得日数」などの公開も推奨しています。
これらを公表することで、企業の子育て両立支援の姿勢をアピールでき、働きやすい職場としてのイメージ向上や採用力強化につながるでしょう。
男性社員の育休制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
公表する方法
育児休業の取得率は、社外の一般の方も閲覧できる形で公表する必要があります。
自社サイトや厚生労働省の「両立支援ひろば」などに、年1回掲載するのが一般的です。社内公表だけでは義務を満たさないため注意が必要です。
また、公表時には「男性の育児休業等の取得率」と「育児休業等と育児目的休暇の取得率」のどちらを公表しているのか明記すると、見る側も分かりやすいでしょう。
公表する時期
育児休業の取得状況は、前事業年度が終了してからおおむね3ヶ月以内に公表する義務があります。
例えば、2024年4月から2025年3月までが対象事業年度であれば、公表期限は2025年6月末です。この公表は毎年必ず実施する必要があり、過去の年度に遡ってまとめて公表することはできません。正確な公表のためには、取得状況を月ごとに継続して管理することが不可欠です。
育児休業取得状況の計算方法
公表内容のうち以下のいずれかを選択し、取得率を算定します。
- ①男性の育児休業等の取得率
- ②男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率
①男性の育児休業等の取得率
育児休業等の取得率は、以下の計算式で算出します。
育児休業等をした男性従業員の数 ÷ 配偶者が出産した男性従業員の数
当該事業年度に対象者がいない場合、計算できないため公表時は「-」と記載します。
②育児休業等と育児目的休暇の取得率
育児休業等と育児目的休暇の取得率は、以下の計算式で算出します。
(育児休業等をした男性従業員の数+小学校就学前の子供の育児を目的とした休暇制度を利用した男性従業員の数)÷ 配偶者が出産した男性従業員の数
どの休暇をカウントすれば良いか迷われる場合、一度弁護士に相談することをおすすめします。
育児休業取得状況の公表に関するQ&A
誤った数字を公表してしまった場合はどうなりますか?
-
単純な計算ミスや情報の取り違えによる誤公表であれば、速やかに正しい数字へ訂正し、訂正理由を明示すれば大きな問題には発展しにくいでしょう。
一方で、他社よりも有利に見せる目的で意図的に数値を操作した場合は、虚偽報告と判断される可能性があります。虚偽報告とみなされると、行政指導だけでなく、過料や企業名公表など厳しい措置がとられることもあり、企業の信用そのものに深刻な影響が及びます。必ず正しい情報を公表するようにしましょう。
複数回に分割して育児休業を取得した場合は、どのように計算しますか?
-
育児休業を複数回に分けて取得した場合や、育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合でも、これらが同じ子供を対象としていれば、取得者数は1人としてカウントします。
例えば、従業員Aが4月に2週間の育児休業を取り、同じ年度の10月に再度1ヶ月の育児休業を取得した場合でも、取得者数は1人です。さらに、従業員Aが同じ年度の12月に、子供の予防接種のために育児目的休暇を取ったとしても、対象となる子供が同じであればカウントは1人のままです。
育児休業取得状況の計算で、事業年度をまたぐ取得はどう扱いますか?
-
事業年度をまたいで育児休業を取得した場合は、育児休業を開始した日が属する事業年度で取得者としてカウントします。
例えば、事業年度が4月1日から翌年3月31日までの企業で、従業員Aが2025年3月に育児休業を開始し、休業が4月まで続いたとします。この場合、取得者として計上されるのは2024年度(2024年4月~2025年3月)です。また、分割して育児休業を複数の事業年度にわたり取得した場合でも、集計対象となるのは、最初に取得した育児休業のみです。2回目以降の休業は別年度であってもカウントされません。
育児休業取得状況の公表のご不明点は弁護士にご相談ください
従業員数300人を超える企業には、育児休業取得状況の公表が義務化されており、多くの中小企業で対応が求められています。取得状況の公表は、企業イメージアップなど多くのメリットがあるため、確実に実施することが重要です。
しかし、従業員数が多いと管理や集計は複雑になります。日数に含める休暇と含めない休暇の区別など、判断に悩むケースも多く見られます。
弁護士であれば、取得状況の正確な計算から漏れのチェック、最新の法改正への対応まで、専門知識に基づいたサポートを行うことが可能です。
弁護士法人ALGには、労働法務に精通した弁護士が多く在籍しています。育児休業取得状況の公表に不安がある企業の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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執筆弁護士

- 弁護士法人ALG&Associates
この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
