弁護士が解説する【法定休日・法定外休日の違い】について
YouTubeで再生する監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
「法定休日」と「法定外休日」の違いについて、厳密に理解されていらっしゃるでしょうか?
労働者が法定休日に労働を行った場合、使用者は、その労働者に対して、35パーセント以上の割増率で算出した割増賃金を支払わなければなりません(労基法37条1項本文、労基法37条1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限を定める政令)。そのため、法定休日と法定外休日との区別が必要となります。
ここでは、「法定休日」と「法定外休日」の違いに着目し、使用者が注意すべき点などについて解説していきます。
目次
「法定休日」と「法定外休日」の違いとは?
法定休日と法定外休日の違いを明らかにするために、それぞれの概要を確認しましょう。
法定休日の定義
使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えるか、4週間を通じ4日以上の休日を与えなければなりません(労基法35条1項、同条2項)。この1週1日又は4週4日のことを「法定休日」といいます。
法定外休日の定義
使用者が労働者に対して付与する、法定休日以外の休日のことを「法定外休日」といいます。一般的には、「所定休日」と呼ばれています。
法定休日を与えなかった場合の罰則について
法定休日を労働者に付与しなかった場合、使用者は、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられるおそれがあります(労基法119条1号)。
就業規則に法定休日を記載していない場合
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、休日に関する事項等について就業規則を作成のうえ、行政官庁に届け出なければなりません(労基法89条1号)。就業規則に休日に関する事項をまったく記載しなければ、30万円以下の罰金に処せられるおそれがあります(労基法120条1号)。
しかしながら、労働基準法は、使用者に対して、就業規則において法定休日を特定させることを義務づけておらず、就業規則に法定休日を具体的に記載していなくても罰則の対象にはなりません。
36協定を締結せずに休日労働させた場合も罰則の対象
使用者は、労働組合又は労働者の過半数を代表する者と書面による協定を結び、それを行政官庁に届け出た場合、労働者に休日労働をさせることができます(労基法36条1項)。
一方、使用者が協定を締結せずに労働者に休日労働をさせた場合、法定休日付与義務に違反することになり、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられるおそれが生じます(労基法119条1号)。
「法定休日」と「法定外休日」の割増賃金における違いとは?
労働者が“法定休日に”労働をした場合、使用者は、その労働者に対して、割増賃金(割増率35%以上)を支払う必要があります。
一方で、労働者が“法定外休日に”労働をした場合において、週40時間の労働時間を超過したとき、使用者は、その労働者に対して、その超過した時間について割増賃金(割増率25%以上)を支払う必要があります。
深夜労働をさせた場合の割増賃金について
深夜労働(原則、午後10時から午前5時まで)は、法定休日労働に対しても、法定外休日労働に対しても影響を与えるため、使用者は、割増賃金を算出する際、割増率を25%以上上乗せする必要があります(労基法37条4項)。
「代休」と「振替休日」の違いとは?
代休とは、休日労働を行った後、その代償として、労働日であった日を休日とした場合のその休日のことをいいます。
一方、振替休日とは、予め、労働義務のない休日を労働義務のある労働日と入れ替えた場合に、休日となったその休日のことをいいます。
「代休」や「振替休日」で労働させた場合の割増賃金の違い
代休の場合、労働した休日が法定休日のときは35%以上の割増率を、その休日が法定外休日で法定労働時間を超過したときは25%以上の割増率を用いて、割増賃金を算出します。
一方、振替休日の場合、事前に労働日に振り替えられているので、割増賃金は通常発生しません。
法定休日は必ず特定しておく必要があるのか?
法定休日の特定は法的義務ではなく、その特定は必ずしも必要ではありません。
とはいえ、使用者としては、その扱いについて正しく理解しておかなければなりません。詳細をみていきましょう。
法定休日はどのように決める?
使用者は、事業の内容及び性質を考慮して、就業規則に、特定の日を法定休日とする旨を定めることができます。
祝日は法定休日になるのか?
従って、使用者が就業規則に祝日を法定休日とする旨を定めた場合、その祝日が法定休日となります。
就業規則にはどのように規定すべき?
就業規則には、特定の日のみならず、以下の内容を規定しておくことが望ましいと考えられます。
- 会社が指定する日も法定休日になる旨
- 業務の都合により会社が必要と認める場合には、予めその法定休日を他の日に振り替えることがある旨
法定休日や法定外休日が争点となった裁判例
法定休日か否かが争点となった裁判例として、日本マクドナルド事件(東京地方裁判所 平成20年1月28日判決)を紹介します。
事件の概要
これは、日本マクドナルド株式会社の直営店の店長が、管理監督者に当たらないことを理由に、日本マクドナルド株式会社に対して、時間外割増賃金及び休日割増賃金を請求した事件です。
裁判所の判断
裁判所は、実質面を重視し、店長(原告)の管理監督者性を否定したうえで、日本マクドナルド株式会社(被告)の時間外割増賃金及び休日割増賃金支払義務を認めました。
裁判所は、店長(原告)に支払われるべき休日割増賃金の額を算出する過程で、土曜日の勤務を法定休日における労働と判断しました。
ポイント・解説
日本マクドナルド株式会社(被告)の就業規則には、店長の休日を特定する規定が定められていませんでしたが、裁判所は、労働基準法35条1項の存在及び日曜日から土曜日までの歴週を理由に、暦週の最終日である土曜日は法定休日であると判断しました。
このことから、使用者は、就業規則で法定休日を特定していない場合、土曜日が法定休日と判断されることを念頭に置いて、36協定の届出、休日出勤の命令、及び割増賃金の算出を行う必要があると考えられます。
法定休日と法定外休日の違いで不明点があれば、労務問題に強い弁護士にご相談ください
法定休日及び法定外休日は割増賃金の算定等に影響を与え、将来の紛争の火種となり得ます。使用者として、しっかりとそれらの違いを認識し、適法に取り扱っていく必要があります。
就業規則を作成してみたが正しいかどうかわからない、労働者から不満の声があがっているなど、不明点やトラブルを抱えている場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。弁護士法人ALGは、労務分野に特化した体制を整えていますので、法定休日と法定外休日の取り扱いについてお困りの際にも、適切にサポートすることができます。まずはお悩みの胸の内をお聴かせください。
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執筆弁護士
- 弁護士法人ALG&Associates
この記事の監修
- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
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