「残業代」とは何か?- 割増賃金が発生する3つの「労働」

残業代、つまり割増賃金が発生する労働には、①時間外労働、②法定休日労働、③深夜労働の3種類があります。それぞれについて正しく理解していないと、労働者との間において後々トラブルが生じるおそれがあります。
そのような事態を防ぐためにも、ここでは「割増賃金が発生する条件」についてわかりやすく解説していますので、ぜひ最後までお目通しください。

残業代の定義

いわゆる残業とは、一般的には時間外労働の意味で使用されることが多く、時間外労働とは、1日または1週の法定労働時間(8時間、40時間)を超える労働のことをいいます。残業代とは、この時間外労働の割増賃金のことを意味すると考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。

時間外労働の割増賃金

労働基準法では、1週40時間、1日8時間を超える場合、週1日の法定休日に働かせる場合は、36協定の締結と、労基署への届出が義務づけられています。また、これらの労働をさせる場合は割増賃金を支払うことが定められています。

割増賃金率については、法定労働時間を超えた労働には2.5割以上、法定休日の労働には3.5割以上の割増賃金が必要となります。

また、午後10時から午前5時までの労働(いわゆる深夜労働)には、2.5割以上の割増賃金が必要となります。

法定内残業について割増賃金は必ずしも必要ではない

使用者によっては、所定労働時間が法定労働時間より少なく設定されていることがありますが、法定労働時間内の残業については、その割増賃金は必ずしも必要とはいえません。

深夜労働の割増賃金

午後10時から午前5時までの労働(いわゆる深夜労働)には2割5分以上の割増賃金が必要になります。

法定休日労働の割増賃金

法定休日の労働には3割5分以上の割増賃金が必要となります。

法定休日と法定外休日の違い

法定休日とは、使用者が労働者に対して毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないこの「休日」をいいます(労基法35条1項)。
使用者の多くは、毎週2回以上の休日を設ける傾向にありますが、この1回を超える休日は、あくまでも法定外休日となります。

それぞれの割増賃金の扱いについて等、詳しくはこちらをご覧ください。

時間外・深夜・休日労働が重なる場合の割増賃金

時間外労働、または休日労働に深夜労働が重なった場合の割増賃金は、それぞれ5割以上、6割以上の割増になります。

割増賃金に関する裁判例

実際の裁判例では、どのような判断がなされているのでしょうか?
代表的なものとして、【大阪地方裁判所 平成20年1月11日判決、丸栄西野事件】を紹介します。

事件の概要

原告Xが、被告Y社に在籍中に法内外の時間外労働及び深夜・休日の労働を行ったとして、法内残業賃金、時間外手当、深夜勤務手当及び休日勤務手当(以下、時間外手当等)の支払い等を求めた事案です。

時間外労働の有無が争点の一つとなり、この点についてY社は、実際の労働時間はタイムカードの記載より少ないと主張しました。

裁判所の判断

この点に関して裁判所は、以下のとおり判示しました。

被告は、原告の実労働時間がタイムカードの記載より少ない旨主張するが、可能性を指摘するにとどまるもので、喫茶店での休憩や業務外でのインターネットの使用等を裏付ける証拠は見あたらない。デザイナー一般について言えば、確かに被告が主張するような時間管理が困難な態様で業務を行っている場合もあり得る。しかし、…他方でタイムカードや勤怠管理表(〈証拠略〉)が導入されていたこと、日報が乙山GMに日々送信されていたこと(証人乙山GM、〈証拠略〉)、デザイン集計表が乙山GMに送信されていたこと、(証拠略)からうかがわれる企画営業グループの業務の実態は、デザインのアイデアのひらめきを待って一見無為な時間を過ごすような業務形態ではなく、顧客の定めた納期に合わせてデザインを量産する状況であること等からすると、被告の主張は採用できない。

また、被告は、タイムカードの打刻に不正があったことがうかがわれる旨主張するが、全体の信用性を損なうような証拠は見あたらず、希に他の従業員が原告不在のまま打刻したことがあったに過ぎない。

引用元:大阪地方裁判所 平成18年(ワ)第8099号 賃金等請求事件 平成20年1月11日

ポイントと解説

会社側としては、タイムカードが実労働時間を反映していない等と主張することがよくありますが、裁判では、タイムカードに記録がある場合には、適切な反証がないかぎりその記録に従って時間外労働の時間を算定することが多いため、注意が必要です。

割増賃金に関する様々な疑問に弁護士がお答えします。ご不明な点がありましたら一度ご相談ください

割増賃金についてはそもそも労働時間に該当するのか、その場合の算定はどうするのか、割増賃金が発生するのか等難しい部分もありますので、弁護士に相談することをお勧めします。

些細なことと思われるような内容でも結構です。ご不明な点がありましたら、ぜひ一度お問い合わせください。

執筆弁護士

シニアアソシエイト 弁護士 増谷 嘉晃
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所シニアアソシエイト 弁護士増谷 嘉晃(東京弁護士会)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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