| 事例内容 | 相談事例 |
|---|---|
| 雇用 | 合意退職 |
| 問題社員 | 懲戒解雇 |
| 担当した事務所 | ALG 東京法律事務所 |
概要
2024年4月に入社した社員Aについて、入社前の経歴詐称(正社員としての経理経験の詐称など)が発覚したため、雇用関係の解消を望んでいる。社員Aは現在休職中である。
会社が負担すべきリスクを把握するため、以下の点について法的アドバイスを求めたい。
- 1. 解雇方法とリスク:普通解雇と懲戒解雇のどちらを選択すべきか、また、会社にとってのリスクや両者の違いについて詳細に把握したい。
- 2. 損害賠償請求の可否: 採用時に発生した費用(エージェント費用や新規採用費など、合計約400万円)を社員A本人に請求できるのか、また、その法的な構成(不法行為に基づく損害賠償請求など)について明確にしたい HTMLのリスト化して
弁護士方針・弁護士対応
1.解雇の見通しと最善策
労働契約法に基づき、懲戒解雇を有効とするためには、「客観的合理的理由」と「社会通念上の相当性」という 非常に高い要件を満たす必要がある。
経歴詐称が懲戒解雇に相当すると認められるためには、詐称された経歴が雇用契約の「重要な要素」であったこと (例:その経歴を前提に給与やポジションが決定されたこと)を客観的に立証しなければならない。
現時点では、求人票において「社会人経験」というハードルの低い要件しか明記されていないため、詐称の重大性を立証することは難しい可能性がある。
過去の裁判例では、詐称した経歴を前提に高い給与が決定されていたにもかかわらず、その核心的な経歴が虚偽であったという点を重視し、懲戒解雇が認められた事例は存在する。
しかし、上記のように求人票でハードルの低い要件しか明記されていない場合には、会社側が面接時に当該経歴を重要な条件としていたかどうかの話をしたか否かがポイントとなるが、立証が困難となるため、面接時の状況に関する証拠収集が必要となる。
2.解雇に伴う重大なリスク
会社の一方的な意思表示である「解雇」を選択した場合、後に裁判で解雇が無効と判断されると、解雇日から判決までの賃金全額を会社が支払わなければならない(「バックペイ」)のリスクがある。
3.弊所からの助言:合意退職の推奨
バックペイリスクを回避するため、会社が一方的に契約を解除する「解雇」ではなく、社員Aと相談者との合意をもって契約を終了させる「合意退職(合意解約)」が最も安全な選択肢である。
合意退職であれば、そもそも解雇の有効性が争われることがなく、紛争そのもののリスクを大幅に低減できる。
なお、依頼者が社員Aに対し試用期間(2026年1月末まで延長中)を設けている状況であれば、試用期間満了による退職(解雇)も、通常の解雇よりはハードルが下がる安全な選択肢となり得る。
4.損害賠償請求について
損害賠償請求は、社員Aの経歴詐称が不法行為(詐欺に近い行為)に基づくものといえなければならず、「経歴詐称がなければ採用しなかった」という事実を客観的な証拠で固める必要がある。
また、算定した損害額(約400万円)の中には、エージェント費用と新規採用費が重複して計上されている可能性があり、二重計上分は法的に認められない可能性が高い。
また、短期間での退職になる場合は、エージェントから返金される可能性もあるため、その要件も確認しておくことが望ましい。
多額の金銭支払いなど労働者側の不利益が大きすぎる合意は、労使間のパワーバランスを考慮し、労働者の「自由な意思に基づく同意ではない」として、後に無効とされるリスクが高まる。
このリスクを考慮したうえで、現実的に同意を得られる水準を探っていく必要がある。
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