フレックスタイム制の留意点

近年、時間に縛られない働き方を実現する制度として、フレックスタイム制が注目されており、既に多くの企業が導入しています。
しかしながら、フレックスタイム制を導入しても、会社として従業員の労働時間を管理する義務がなくなることはありません。また、フレックスタイム制における残業代の計算は、通常の残業代計算とは異なったルールによって行う必要があります。
本記事では、フレックスタイム制の導入からその運用についての留意点を説明していきます。

目次

フレックスタイム制における留意点

フレックスタイムとは

フレックスタイム制とは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、従業員が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度のことをいいます。

詳細については、以下のページをご覧ください。

フレックスタイム制のメリット・デメリット

フレックスタイム制は、従業員に自由な働き方を提供できる反面、通常の労働時間管理とは異なるルールにより時間管理をしなくてはなりません。

時間管理の詳しい内容は、以下の各ページをご覧ください。

フレックスタイム制の導入にあたっての留意点

フレックスタイム制の導入には、以下のステップを踏む必要があります。

  • (1)就業規則等への規程
  • (2)労使協定で所定の事項を定めること

本項では、それぞれのステップで注意すべき点について解説をしていきます。

就業規則の規定と従業員への周知

まず、フレックスタイム制を導入するには、就業規則に、「始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる」旨の定める必要があります。

具体的な記載内容については、以下の各ページをご覧ください。

労使協定の締結

そして、労使協定にフレックスタイム制の具体的内容となる以下の事項を、労使協定に定めましょう。

  1. 対象となる労働者の範囲
  2. 清算期間
  3. 清算期間における総労働時間
  4. コアタイム
  5. フレキシブルタイム

具体的な定め方については、以下の各ページをご覧ください。

労働時間の管理における留意点

フレックスタイム制の性質上、業務上の必要があるとしても、始業及び終業の時刻を指定するような業務命令は行い得ないと考えられます。

しかしながら、業務上やむを得ない理由(取引先との打ち合わせ等)により、特定の時間についての勤務を命じる必要がある場合も想定されます。

休憩時間の付与について

フレックスタイム制においても、労働時間にあわせた休憩時間の付与が必要となっています。

一般的には、コアタイム内に休憩時間を設定しておく方法がありますが、コアタイムの指定のないフレックスタイム制(いわゆるスーパーフレックス)を導入している場合には、その管理や休憩時間の一斉付与の適用除外等の点で、注意が必要となります。

遅刻・欠勤・早退の取扱い

フレックスタイム制においては、時間外割増賃金を、清算期間内における総労働時間を基準に計算します。

したがって、各日ごとの遅刻・欠勤・早退は、清算期間内における実労働時間の過不足を算出する際に、考慮されるに過ぎません。

フレックスタイム制の清算期間に関する留意点

フレックスタイム制における清算期間は、原則として1ヶ月以内とされ、月ごとの給与計算期間に合わせて設定することが一般的とされています。

2019年4月の労働基準法改正により、清算期間について1ヶ月を超える期間(3ヶ月以内)を設定することが可能となりました。

清算期間について1ヶ月を超える期間を設定する場合には、時間外割増賃金の計算等について、別のルールがありますので注意が必要です。

法改正による清算期間の上限延長

詳しくはこちらをご覧ください。

時間外労働に関する留意点

詳しくはこちらをご覧ください。

時間外労働の上限規制

フレックスタイム制においても、時間外労働をするには、36協定の締結・届出が必要です。

なお、フレックスタイム制が適用される労働者については、1日について時間外労働ができる時間を協定する必要はありませんが、清算期間を通算して時間外労働をすることができる時間を協定する必要があります。

フレックスタイム制のよくある質問

清算期間における実労働時間の合計が、総労働時間を下回った場合の対応について教えてください

詳細は、以下の各ページをご参照ください。

フレックスタイム制において、休日労働や深夜業の取扱いはどのようになりますか?

フレックスタイム制を導入しても、休日勤務や深夜勤務にかかる割増賃金は発生することとなります。

会社の部署ごとに清算期間を変えることは可能ですか?

詳細は、以下のページをご覧ください。

フレックスタイム制における、年次有給休暇の取り扱いについて教えてください

フレックスタイム制において年次有給休暇を取得した場合には、「標準となる1日の労働時間」(所定労働時間)について労働したものとみなします。
なお、時間外割増賃金については、“実労働時間”に対して支払われることから、年次有給休暇を取得したことによって、清算期間内における労働時間が、総枠の労働時間を超過したとしても、“実労働時間”が超えた範囲でしか時間外割増賃金は発生しません。

フレックスタイム制の導入において、時間管理が苦手な社員への対処法を教えてください

フレックスタイム制を導入すると、時間管理が不得意な社員が出てくることがあります。
そのような社員に対しては、フレックスタイム制の解除ができるようにしておくべきです。
解除については、労使協定にフレックスタイム制の解除事由を定めておく必要がありますので、ご留意ください。

フレックスタイム制で生じる問題解決に向けて、弁護士がアドバイスさせて頂きます

フレックスタイム制を導入に際しては、実際の運用を意識した内容により就業規則や労使協定の作成を進める必要があります。

また、実際の運用の場面においても、時間外割増賃金の計算方法等、通常の労働時間管理とは異なるルールを意識しなければなりません。

思わぬところで未払い残業代が発生することもありますので、フレックスタイム制の導入や運用についてご不安な点がある場合には、お気軽にご相談ください。

執筆弁護士

弁護士 大平 健城
弁護士法人ALG&Associates 弁護士大平 健城

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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