フレックスタイム導入の手続き

「フレックスタイム制を導入したいと思っているものの、何から始めたら良いかわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本稿では、フレックスタイム制の導入について、その手順等を解説していきます。

目次

フレックスタイム制を導入するための手続

フレックスタイム制は、以下のステップにより導入されます。

  1. 就業規則の作成・変更
  2. 労使協定の締結

詳しい解説はこちらをご覧ください。

就業規則の作成・変更

フレックスタイム制は、労働時間の始業と終業の時刻について、従来のルールに変更を加えるものです。

そこで、労働時間の始業と終業の時刻を定める就業規則に変更を加える必要があります。

こちらでは就業規則について解説していますので、併せてご覧ください。

就業規則に規定が必要な事項

就業規則には、「始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨」を定める必要があります。

具体的には、以下のような規定を加筆することが一般的です。

※ 労使協定の内容については、後述します。

第○条 (始業終業時刻、フレキシブルタイム及びコアタイム)

1 労使協定により、毎月1日を起算日とするフレックスタイム制を実施する。フレックスタイム制の適用を受ける従業員の始業及び終業の時刻については、労使協定の定めにしたがい、その自主的決定に委ねるものとする。

2 以下の事項については、労使協定の定めによるものとする。

  1. 対象となる労働者の範囲
  2. 清算期間
  3. 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
  4. 標準となる1日の労働時間
  5. コアタイム
  6. フレキシブルタイム

従業員への周知義務について

従業員の労働条件にかかわる就業規則や、後述の労使協定については、その制定や変更をした場合には、従業員に周知をする義務があります。

従業員に対する周知が徹底されていない場合、その効力が認められないおそれもあるため、ご留意ください。

従業員への周知の具体的な方法としては、従業員がいつでも、誰でも、就業規則や労使協定を閲覧できる状況を作る必要があります。

労使協定の締結

フレックスタイム制の導入にあたっては、以下の事項について就業規則に定める必要があります。

  1. 対象となる労働者の範囲
  2. 清算期間
  3. 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
  4. 標準となる1日の労働時間
  5. コアタイム(※任意)
  6. フレキシブルタイム(※任意)

対象となる労働者の範囲

フレックスタイム制を適用する労働者の範囲を明確に定める必要があります。

対象となる労働者の範囲は、全労働者としたり、特定の職種の労働者(企画部、営業部等)と定めたりすることができます。

清算期間

フレックスタイム制における「清算期間」とは、労働契約上、従業員が労働すべき期間を定めるもので、原則、1ヶ月以内とされています。従業員は、この清算期間の範囲内で調整を図ることとなります。

清算期間は労使協定において、その「長さ」と「起算日」を定めなければなりません。

月給制の会社においては、給与の計算期間と一致する「長さ」と「起算日」を定めるのが一般的ですが、1週間単位等とすることも可能です。

詳しくはこちらも併せてご覧ください。

清算期間における総労働時間

この「総労働時間」とは、労働契約上、従業員が「清算期間内において労働すべき時間として定める時間」をいいます。

精算期間内における総所定労働時間のことで、具体的には「契約時間」といいます。契約時間は、清算期間を平均し、1週間の労働時間が法定労働時間の範囲内となるように定める必要があります。従業員は、この契約時間を目安に調節を図ることとなります。

一般的には、清算期間あたりの所定労働日数及び所定労働時間を基準とします。

例えば、「1日あたりの当該精算期間内の所定労働時間を8時間」と定めるとします。清算期間の所定労働日数が「20日」の場合、当該清算期間の総所定労働時間(契約時間)は、「160時間」となります。

また、「1ヶ月あたり160時間」というように清算期間を通じて一律の時間を定めることも可能です。

標準となる1日の労働時間

この「標準となる1日の労働時間」は、年次有給休暇を取得した際に支払われる賃金の算定基礎となる労働時間等となる労働時間の長さをいいます。

したがって、単に時間数を定めれば足ります(始業と終業の時刻を定める必要はありません。)。

フレックスタイム制の適用を受ける従業員が、当該清算期間内において年次有給休暇を取得した場合には、その取得した日について、標準となる労働時間を労働したものとして賃金計算を行うこととなります。

コアタイムとフレキシブルタイム

コアタイムとは、フレックスタイム制の適用を受ける従業員であっても、その時間は労働しなければならない時間帯のことをいいます。

コアタイムは、労使協定において定める法的義務はないものの、業務管理上、特にこだわりがない限りは、コアタイムを定めておくことを推奨します。

もっとも、コアタイムの時間が長時間にわたったり、始業時刻や終業時刻に、従業員の裁量が生じなかったりするような定め方はできない点にご留意ください。

フレキシブルタイムとは、従業員がその選択により労働することができる時間帯をいいます。

フレキシブルタイムを定める場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻を定める必要があります。

フレキシブルタイムは、コアタイムと同様、労使協定において定める法的義務はないものの、労務管理上、定めておくことを推奨します。

具体的には、フレックスタイム制においても、従業員が深夜勤務をすると深夜割増賃金が発生することとなるため、深夜勤務時間帯(22時から翌5時まで)を避けてフレキシブルタイムを設定するのが一般的です。

法改正により必要となった手続

原則、「1ヶ月以内」とされていた清算期間は、労働基準法の改正により、上限が「3ヶ月以内」と改正されました。 清算期間について1ヶ月を超える期間を設定する場合、導入にかかる手続きや労働時間の管理について、これまでの解説と異なる点があります。

詳しくはこちらをご覧ください。

フレックスタイム制を導入するにあたっての注意点

フレックスタイムの導入に関するQ&A

フレックスタイム制においても36協定の締結は必要ですか?

フレックスタイム制においても、清算期間における総労働時間数を超える労働を命じる場合や、休日勤務を命じる場合には、36協定が必要となります。

特定の部署のみにフレックスタイム制を導入することは可能ですか?

可能です。適用される従業員の範囲が特定できれば、部署よりも小さい単位であっても導入することが可能と考えられます。

フレックスタイム制を導入する場合、10人未満の会社の場合でも就業規則の作成は必要ですか?

下記をご参照ください。

就業規則を変更した場合、従業員全員に周知するにはどのような方法が有効ですか?

従業員への周知の具体的な方法としては、従業員がいつでも、誰でも、就業規則や労使協定を閲覧できる状況を作る必要があります。

周知方法の例)

  1. 作業場の見やすい場所に掲示
  2. 書面に各労働者へ交付
  3. 社内のポータルで閲覧可能なページを作成

etc..

フレックスタイム導入による労使協定の様式は、所定のものでないとだめですか?

労使協定の様式については、法的に記載すべき事項が記載されていれば特定の決まりはありません。

労使協定の有効期間はいつまでと定めるべきでしょうか?

有効期間については、特に法的な決まりはありませんが、1年といった期間で有効期間を定めておくのが一般的です。
このような有効期間を定めておかないと、会社と従業員との合意がない限り、労使協定が解約できなくなってしまい、コントロールできない状況が生じるおそれがあります。
なお、1年後に新たに労使協定を締結する手間を省くには、特定の期限までに解約の申し入れがない限り自動更新されるように定めておくことが推奨されます。

フレックスタイムの休憩時間を社員に委ねる場合、労使協定の締結は必要ですか?

下記の記事をご覧ください。

「業務の進捗状況に応じて残業命令を下す」という旨を就業規則に定めることは可能ですか?

下記の記事をご覧ください。

フレックスタイム制の導入手続で不備がないよう、弁護士に依頼することをお勧めします

フレックスタイム制は、原則として、「就業規則の変更」、「労使協定の締結」といった手順で導入できます。 もっとも、一口にフレックスタイム制といっても、各事項の定め方により、その内容は様々となります。

導入時に設定した内容により、その制度が会社にとって使いやすいものとなるか、労務管理が行いやすいものとなるか等が大きく変わります。

会社にとって望ましいフレックスタイム制を導入するために、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

執筆弁護士

弁護士 大平 健城
弁護士法人ALG&Associates 弁護士大平 健城

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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