監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
契約社員は非正規雇用であることから、「正社員よりも簡単に解雇できる」と考えられがちです。しかし、契約社員の解雇は労働契約法によって厳しく制限されており、契約期間中は原則として解雇することができません。
本記事では、契約社員の解雇が例外的に認められるケースをはじめ、契約期間満了時の雇止めや、解雇以外に取り得る対応について詳しく解説します。
契約社員を契約期間の途中で解雇することはできる?
契約期間の定めがある契約社員については、原則として期間途中の解雇は認められません。ただし、例外的に「やむを得ない事由」がある場合にのみ、解雇が可能です(労働契約法17条1項)。
「やむを得ない事由」がある場合は例外的に認められる
この「やむを得ない事由」は、無期契約者の解雇に求められる「客観的に合理的な理由」(同法16条)よりも厳格に判断されます。
「やむを得ない事由」があると言えるためには、期間満了を待つことができず、直ちに雇用を終了させざるを得ないほどの特別な重大事由が必要とされます。
能力不足を理由に契約社員を解雇できるのか?
能力不足を理由とした期間中の解雇も可能ではありますが、実務上のハードルは非常に高く、その存在を主張・立証することは困難です。そのため、実務上は契約期間の満了を待って「雇止め」として対応することが一般的です。
詳しくは以下のページをご覧ください。
契約期間中の契約社員の解雇が認められた裁判例
事件の概要(令和元年(ワ)22998号 東京地方裁判所 令和2年3月27日判決)
介護グループホームYが、契約社員として採用したXを試用期間中に解雇した事案です。
Xは、入居者に対して小学生に話しかけるような言葉遣いをしたり、大きな声で「オムツだよ」と発言したりするなど、配慮を欠く言動を繰り返していました。また、その言動を注意した同僚に対しても、「いい加減にしろ」「おぼえていろよ」などの威圧的な発言をしていました。
そこでYは、Xの業務内容を介護業務から買い物や見守りを中心とする業務へ変更しました。しかし、その後もXの粗暴な態度や威圧的な言動は改善されず、指導を重ねても改まらなかったことから、YはXを解雇しました。
これに対しXは、当該解雇は無効であるとして訴訟を提起しました。
裁判所の判断
裁判所は、以下の理由から、本件における契約社員Xの解雇は有効であると判断しました。
Xは、会社から繰り返し注意や指導を受けていたにもかかわらず、入居者の心情への配慮を欠く言動を改めませんでした。その結果、入居者の意欲や自立心を損なったり、羞恥心を抱かせたりするおそれのある行為を続けていたほか、同僚に対しても粗暴な言動を繰り返していました。
また、Xは入居者の介護業務に従事することが予定されていましたが、このような言動を踏まえると、入居者と直接接する介護業務を任せることは困難な状況にありました。さらに、同僚に対しても威圧的な態度を取り続けていたことから、入居者と接しない業務へ配置転換したとしても、就労を継続させることは容易ではないと判断されました。
加えて、本件解雇は試用期間中に行われたものであることも考慮されました。そのため、雇用契約が有期契約であった点を踏まえても、解雇には「やむを得ない事由」が認められ、本件解雇は有効であると結論付けられました。
ポイント・解説
本件は、契約社員に対する解雇について、「やむを得ない事由」が存在するとして解雇の有効性が認められた事例です。
職場で暴力行為に及んだり、同僚や利用者に対して暴言を繰り返したりする従業員については、「解雇されてもやむを得ない」と考える方もいるでしょう。
しかし、類似の事案であっても、会社による注意・指導や改善の機会の付与が不十分であることなどを理由に、解雇が無効と判断されるケースは少なくありません。
契約社員の解雇には、正社員の場合よりも厳しい要件が課されており、有期労働契約の期間中に解雇するためには、「やむを得ない事由」が必要とされています。そのため、本件のように解雇の有効性が認められるためには、会社が継続的な注意・指導を行うだけでなく、配置転換や業務内容の変更といった改善措置を講じ、それでもなお問題行動が改善されないという事情が求められます。
契約社員を契約期間中に解雇する場合は解雇予告が必要
会社側から契約期間途中に解雇を行う場合は、労働基準法20条に基づき、少なくとも30日前の解雇予告、または30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要です。
これは正社員(無期契約者)の解雇と同様の手続きです。
詳しくは以下のページをご覧ください。
契約社員は契約期間満了による雇止めが原則
契約期間中の解雇の要件が正社員の解雇よりも厳しいため、契約終了を検討する際は、期間満了に伴う雇止めによることが基本となります。
雇止めには「合理的な理由」が必要
更新の合理的期待が生じている場合、雇止めを行うには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です(労働契約法19条)。
詳しくは以下のページをご覧ください。
契約社員の雇止めが違法になるケースとは?
以下の2つの場面に該当する場合であって、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を欠く雇止めは違法(無効)となります。
- ①過去に更新が繰り返されており、実態として無期契約と変わらない状態にある場合。
- ②業務の継続性や会社側の言動などから、更新されると期待することに合理的な理由がある場合。
雇止めが不当と判断された場合のリスク
雇止めが無効と判断された場合、従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新されたものとみなされ、雇用を継続しなければなりません。
さらに、雇止め期間中の賃金をさかのぼって支払う「バックペイ」、あるいはそれに加えて付加金を命じられ、多額の金銭支払いが発生するリスクがあります。
契約社員の雇止めにも解雇予告は必要なのか?
雇止めは有期労働契約の更新を行わないものであり、解雇とは異なるため、原則として解雇予告制度の適用対象にはなりません。
もっとも、有期労働契約の更新を3回以上繰り返している労働者や、継続して1年を超えて雇用している労働者について契約更新を行わない場合には、使用者には雇止めの予告義務が課されています。
具体的には、契約期間満了日の30日前までに、契約を更新しない旨を労働者に通知しなければなりません。通知は書面の交付など、後日内容を確認できる方法で行うことが望ましいでしょう。
よくある質問
契約社員は正社員よりも解雇しやすいですか?
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契約社員を契約期間途中に解雇する場合、正社員を解雇する場合よりもハードルが高いと考えられています。
詳しくは以下のページをご覧ください。
試用期間中であっても契約社員の解雇は認められますか?
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解雇が認められる場合もありますが、試用期間中であっても、解雇に関する厳しい規制は同様に課せられます。
詳しくは以下のページをご覧ください。
勤務態度不良を理由に契約社員を解雇できますか?
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解雇できる場合もありますが、「やむを得ない事由」(労働契約法17条)が必要です。
契約社員がうつ病になった場合、契約期間中に解雇できますか?
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解雇できる場合もありますが、「やむを得ない事由」(労働契約法17条)が必要です。
また、うつ病が業務上の理由を原因とする場合には、解雇制限が課されます(労働基準法19条)。
契約社員を即日解雇することは可能ですか?
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解雇できる場合もありますが、「やむを得ない事由」(労働契約法17条)が必要なほか、少なくとも30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う義務が生じます。
詳しくは以下のページをご覧ください。
契約社員を解雇する場合は何日前に予告する必要がありますか?
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原則として少なくとも30日前に予告を行う必要があります。
契約社員にも解雇理由証明書の交付は必要ですか?
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契約社員からの請求があれば、解雇理由証明書の交付は必要です(労働基準法22条1項)。
契約社員を解雇した場合は会社都合退職になりますか?
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契約社員を契約期間の途中で解雇した場合は、会社都合退職になります。
契約社員の解雇トラブルを防止するためにも弁護士にご相談ください
契約社員を解雇する場合は、正社員を解雇する場合よりも、さらに高いハードルをクリアする必要があります。
適切な対応を取らなかった場合、解雇が無効であると判断される等して、会社に大きな損害が生じるおそれがあります。
契約社員の解雇トラブルを防止するためにも、個別の事案ごとに専門家のアドバイスを受けることが重要ですので、ぜひ弁護士にご相談ください。
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執筆弁護士

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所弁護士久保田 惇(東京弁護士会)

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所廣瀬 文人(東京弁護士会)
この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、企業法務担当執行役員を務め、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
