自信過剰なモンスター社員の対処方法とは?配置転換による対応と注意点

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

自信過剰なモンスター社員が会社にいる場合、どのように対処したらよいでしょうか。
一番はそのような社員を採用の段階で見極めて採用しないことですが、採用段階でモンスター社員であるかどうかを見極めることは極めて困難です。

この記事では、そのような社員を採用してしまった場合に、どのように対処すべきであるか解説していきます。

目次

自信過剰型のモンスター社員とは?

自信過剰なモンスター社員とは、能力が低いにもかかわらず、プライドは高いため、注意指導に反発して、上司の指示を無視したり、上司の指示に従わなかったりするような問題社員のことをいいます。

自信過剰型のモンスター社員を放置するリスク

自信過剰型のモンスター社員は、その対応に窮する会社が多く、また対応する担当者のストレスも大きいため、結局放置してしまうといった事例が多いように思います。

しかし、自信過剰なモンスター社員を放置すると、さらに増長し、他の社員や業務への悪影響が広がる可能性があります。他の善良な社員のモチベーションまで低下し、会社の雰囲気が悪くなることも想定されます。

また、仮にモンスター社員を放置して必要な注意・指導を行わないままに解雇を行ってしまった等の場合には、裁判所から適切な指導・教育がなされなかったために改善されなかったのであり、解雇は無効である(モンスター社員は未だ従業員の地位にある)と判断される可能性が高いです。

そのため、自信過剰型のモンスター社員が発生した場合には、放置するのではなく、適切な対応を行っていく必要があります。

自信過剰なモンスター社員の正しい対処方法

自信過剰なモンスター社員に対する対処方法としてまず想定されるのは、「解雇」ではないでしょうか。しかし、日本の解雇法制は極めて厳格であり、労働者に対し手厚い保護を与えているため、安易に解雇してしまうと、解雇が無効であると判断される可能性があります。
そのため、モンスター社員だからといって、すぐに解雇するのではなく、まずは、問題点を改めさせる努力を行うことが必要です。

問題点を改めさせるための努力としては、①注意指導 ②人事考課面談 ③配転 ④教育 ⑤降職 ⑥解雇以外の懲戒処分 ⑦賞与減額 等の手段があります。①から⑦をすべて履践しなければならないというわけではありませんが、どれをどの程度実施するかは、事案によって柔軟に判断することとなります。大事なのは、モンスター社員の問題点改善のために最大限努力をすることです。

モンスター社員の正しい対処法と辞めさせ方については、以下の記事をご覧ください。

モンスター社員を配置転換する際の注意点

モンスター社員への対処方法として、配転を行うことが挙げられますが、どのような配転であっても問題がないというわけではありません。本項目では、配転を行う際に気を付けるべき事項や、参考となる判例を紹介します。

人事異動については、以下の記事をご覧ください。

配置転換が認められるための要件

問題社員への対応の一つとして、配置転換が想定されます。配置転換についても、会社が常に自由に行えるわけではありません。問題のある配置転換を行ってしまった場合には、配転命令の有効性が争われることがあります。

判例では、配置転換を有効に行うためには、以下の要件を充足する必要があるとされています。

  • 労働契約上、転勤について定められている
  • 職種限定がない
  • 業務上必要がある
  • 動機・目的が不当ではない
  • 労働者に対して著しい不利益を負わせるものではない

配置転換を拒否されたらどうする?

配転命令を行い、それを拒否された場合、会社はどのような対応を採るべきでしょうか。

有効な配置転換が行われた場合には、従業員はこれを拒むことは許されません。そのため、有効な配置転換を従業員が頑なに拒否するようであれば業務命令違反と評価されることになります。

会社としては、まずは配置転換の必要性を説明して配置転換に応じるように説得します。それでも配置転換に応じない場合には、業務命令違反として、注意・指導を行ったり、場合によっては懲戒処分を検討します。

人事権に基づく配置転換を拒否された場合の対処法については、以下の記事をご覧ください。

配置転換の有効性が争われた判例

本項目では、配置転換をした際に、配置転換命令の有効性が問題となった判例を紹介します。

【昭和59年 (オ)第1318号・昭和61年7月14日・最高裁第二小法廷判決】
事件の概要:

配置転換命令の有効性が問題となった判例として東亜ペイント事件(最判昭和61年7月14日)があります。この事案は、塗料会社において、使用者が従業員に対して転勤(配置転換)を命じたところ、従業員が当該転勤命令は無効であると主張して提訴した事案です。

裁判所の判断:
最高裁は、転勤命令の有効性について、
① 労働協約・就業規則の根拠規定の存在、頻繁な転勤が実施されていること、勤務地限定の合意がないことといった事情を理由に、使用者の転勤命令権を認めた上で、
② 転勤命令については使用者側の裁量があるものの、裁量権の濫用がある場合には転勤命令が違法となる旨判示しました。

そして、裁量権の濫用があるかどうかについて、転勤命令につき以下のように述べ、本事案における転勤命令は裁量権の濫用がなく、有効であると判断しました。

当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもつてなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではない

ポイント・解説:
本判決は、配転命令を行う権限の有無の審査と権利濫用性の審査とを2段階でチェックするという枠組みを採用しました。そして、後者の権利濫用性の審査にあたっては、以下の観点から判断すると述べています。

①配転命令を行う業務上の必要性があるか
②必要性があるとしても、他の不当な動機・目的をもってなされていたり、労働者に著しい不利益を負わせたりするものではないか

自信過剰型のモンスター社員を解雇することはできるのか?

モンスター社員を解雇すること自体は具体的事情によっては可能な場合もあります。
しかし、日本の解雇法制は極めて厳格であり、解雇が有効であると認められるハードルは極めて高いです。そのため、安易に解雇に踏み切ることはお勧めできません。まず、解雇以外の手段で対応したほうがよいと考えられます。

モンスター社員を解雇し、解雇の有効性が争われた場合、解雇が法的に有効かどうかは、解雇権の濫用に該当するかどうかという観点から判断されます。全般的な傾向として、裁判所は一般に「解雇は最終手段」と考えており、解雇以外の方法によって問題が改善される可能性があるのであれば、解雇は無効であると判断する傾向があります。

懲戒解雇について、詳しくは以下のページをご確認ください。

よくある質問

自信過剰なモンスター社員への接し方のポイントはありますか?

自信過剰なモンスター社員に対しては、なるべくモンスター社員が抱える問題点を改善させるように努めるとよいでしょう。問題点を改めさせるための努力としては、以下の手段があります。

  • ① 注意指導
  • ② 人事考課面談
  • ③ 配転
  • ④ 教育
  • ⑤ 降職
  • ⑥ 解雇以外の懲戒処分
  • ⑦ 賞与減額 など

安易な解雇は紛争を生じさせる可能性があるため絶対に行ってはなりません。

採用時、自信過剰型のモンスター社員であるかどうかを見抜く方法はありますか?

自信過剰型のモンスター社員は、自分に自信があるため、それを魅力として採用してしまうことがあります。華やかな経歴や実績がある場合でもそれのみで採用するのではなく、謙虚な姿勢があるか、独善的な人物でないか、協調性に欠ける部分はないかといったところを採用面接等で見極める必要があります。

自分の非を認めないモンスター社員に対して、配置転換を命じることは可能ですか?

配転命令を行うこと自体は、要件を充足する限り可能です。ただし、モンスター社員を最終的に解雇することを目的とした配転は、不当な目的による配転命令であるとして、無効と判断される可能性があるため、注意が必要です。

業務命令に従わないモンスター社員に対して、配置転換を命じることはできますか?

配転を命ずること自体は、要件を充足する限り可能です。ただし、解雇のための配転命令は、不当な目的による配転命令であるとして、無効であると判断される可能性があるため、注意が必要です。

自信過剰型のモンスター社員への配置転換が、違法になるケースはありますか?

モンスター社員であったとしても、要件を充足しない配転命令は違法であると判断される可能性があります。たとえば、解雇を目的とした配転命令や業務に従わないから閑職に追いやるといった対応は、不当な目的による配転命令とされる可能性が高いです。

自信過剰型のモンスター社員が、異動先でも問題を起こした場合には解雇できますか?

具体的な状況によっては解雇が可能な場合もあります。
ただし、日本では、客観的に合理的な理由があり社会通念上の相当性が認められる場合でなければ解雇は有効とならないため、異動先で問題を起こしたからといって即解雇をしてしまうと、後々争いになる可能性があるため、注意が必要です。解雇は専門家の判断を仰いだ上で行うことをお勧めします。

配置転換を重ねてもモンスター社員の改善が全く見られない場合、解雇できますか?

繰り返し注意・指導を行った上で配置転換を行ってもなお改善が見られない場合には、有効に解雇できる可能性があります。
もっとも、配転以外の方法によってモンスター社員の改善がみられる可能性があるのであれば、別の手段を講じるなどしなければ、解雇について争われた際に、解雇は無効であると判断される可能性が高まります。

配置転換によって給与が下がる場合、モンスター社員の同意は必要ですか?

配置転換によって給料が下がるということは、当該社員とそもそも締結していた労働契約における労働条件を不利に変更することに該当します。
賃金に関する労働契約の内容の変更については、原則的として、労働者の自由な意思のもとになされた同意がなければ変更はできません。

したがって、就業規則等によって配転自体を行うことができたとしても、賃金の変更は、被用者の同意がないと行うことができない場合が多いです。

モンスター社員から配置転換命令を拒否された場合はどうしたらいいですか?

従業員は有効な配置転換を拒むことはできません。会社としては、まず配置転換の必要性を説明して配置転換に応じるように説得し、それでも応じない場合には、業務命令違反として注意・指導を行ったり、場合によっては懲戒処分の検討も想定されます。

詳しくは以下のページをご覧ください。

自信過剰型のモンスター社員から訴訟を起こされた場合の対処法を教えてください。

モンスター社員から、特に解雇に関する訴訟を提起された場合、対応を誤ると、会社に莫大な金銭的負担が生ずるおそれがあります。そのため、まずは労務に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

モンスター社員の正しい対処法について、企業法務に強い弁護士がアドバイスいたします。

会社がモンスター社員への対応を誤ると、社員との間で大きな紛争に発展する場合があります。

例えば、違法な解雇と判断された場合には、裁判所から多額の賠償を命じられる可能性があります。そのため、モンスター社員への対応は慎重に行う必要があるでしょう。また、モンスター社員への適切な対応は、その時々で異なります。

誤った対応をしないためにも、モンスター社員にお困りの場合には、弁護士に相談いただくことをお勧めいたします。

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執筆弁護士

 宇佐美 和希
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所宇佐美 和希(東京弁護士会)
弁護士 髙木 勝瑛
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所弁護士髙木 勝瑛(東京弁護士会)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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