監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
「何度注意しても同じミスを繰り返す」「周囲とのトラブルが絶えない」など、モンスター社員への対応に悩む企業は少なくありません。
しかし、その問題行動の裏には、強すぎる承認欲求など、本人も気づいていない弱点が隠れていることがあります。モンスター社員に適切に対応するには、こうした弱点をあらかじめ理解しておくことが大切です。
この記事では、モンスター社員によく見られる弱点やリスク、企業が取るべき対応方法などについて解説します。
モンスター社員にはどのような弱点がある?
モンスター社員は強気な態度や過剰な自己主張を見せることがありますが、その背景にはさまざまな心理的な弱点が存在します。特徴を理解することで、より適切な対応につなげることができるでしょう。
以下でモンスター社員の弱点について解説します。
自分に自信がない
モンスター社員は自信満々に見えることがありますが、実際には不安や劣等感を抱えているケースが少なくありません。そのため、上司からの注意や同僚からの助言を、必要以上に否定的に受け取り、反発したり攻撃的な態度を取ったりすることがあります。
また、自己評価が下がることをおそれ、ミスを認めずに他人へ責任を転嫁したり、言い訳を繰り返したりする場合もあります。こうした問題行動の背景には自信のなさが隠れていることがあるため、表面的な言動だけで判断せず、不安やプレッシャーにも配慮しながら対応することが大切です。
承認欲求・自己顕示欲が強すぎる
モンスター社員は、周囲から認められたいという承認欲求が非常に強い傾向があります。
例えば、自分が一部しか担当していない業務であっても、「この成果は自分のおかげだ」と必要以上にアピールすることがあります。また、人事評価で期待した結果が得られない場合には、上司に強く不満を訴えるケースも少なくありません。
適度な承認欲求は仕事への意欲につながりますが、行き過ぎると職場の人間関係やチームワークを乱すおそれがあります。承認欲求が強い社員がいる場合は、日頃から観察し、問題行動が見られたときは早めに対応することが必要です。
精神的余裕がない
精神的な余裕のなさも、モンスター社員によく見られる特徴の一つです。
業務上のストレスや人間関係の悩み、能力への不安などから心に余裕がなくなり、感情のコントロールが難しくなるケースが多いです。例えば、仕事が思い通りに進まないとイライラし、周囲にきつい言葉を投げかけることもあります。
精神的に追い込まれた状態が続くと、周囲との関係性がさらに悪くなり、問題行動がエスカレートする可能性もあります。モンスター社員への対応では、問題行動だけで判断せず、本人が抱えるストレスや業務負担などの背景も確認することが大切です。
コミュニケーション能力が低い
モンスター社員の中には、コミュニケーション能力に課題を抱えている人もいます。
自分の考えを適切に伝えたり、相手の意図を正しく理解したりすることが苦手なため、職場でトラブルを起こしやすくなります。例えば、上司の指示を十分に確認せず業務を進め、ミスを指摘されると「そんな説明は聞いていない」と反発することも少なくありません。
また、自分では普通のつもりでも、配慮のない発言によって周囲との関係を悪化させることもあります。管理職は日頃から相手の話をしっかり聞けているか、思い込みで判断していないかを注意深く見守ることが必要です。
協調性がない
組織で働くうえでは、従業員同士が協力し合い、必要な情報を共有することが欠かせません。
しかし、協調性に乏しいタイプのモンスター社員は、仕事の能力に大きな問題がなくても、自分本位な行動によって職場に悪影響を与えることがあります。
例えば、手が空いていても「自分の仕事ではない」と言って同僚への協力を拒んだり、業務に役立つ情報やノウハウを自分だけで抱え込み、周囲に共有しなかったりするケースがあります。このような行動は、チームワークを乱すだけでなく、職場全体のパフォーマンス低下につながるおそれがあるため注意が必要です。
仕事への責任感がない
モンスター社員には、自分の仕事に対する責任感が不足しているケースもあります。
例えば、仕事でミスをしても素直に認めず、「指示が分かりにくかった」「引継ぎが十分ではなかった」などと周囲の責任にすることがあります。また、期限までに業務を終えられなかった場合でも反省や改善をせず、最終的には誰かがフォローしてくれるだろうと考えていることも少なくありません。
このような社員がいると、本来であれば本人が対応すべき業務まで、同僚や管理職がカバーする必要があります。職場全体の負担が増え、従業員のモチベーション低下につながります。
適応力・自己認識が欠如している
環境の変化に対応する力や、自分自身を客観的に見つめる力が不足していることも、モンスター社員によく見られる特徴です。
例えば、会社が業務効率化のために新しいシステムを導入しても、「今までのやり方で問題なかった」と変更を受け入れず、従来の方法にこだわり続けることがあります。また、人事評価で期待した結果が得られなかった場合にも、自身の仕事ぶりや課題を振り返るのではなく、「上司の評価がおかしい」と不満を訴えるケースも多いです。職場でのコミュニケーションや業務の運営に支障をきたし、トラブルの原因となることがあります。
モンスター社員を抱えるリスクとは?
「扱いづらい社員がいるだけ」と軽く考えていると危険です。モンスター社員の問題は、一人の従業員だけで完結するものではなく、職場全体へと広がっていきます。ここでは、モンスター社員を放置することで生じるリスクについて解説します。
従業員のモチベーション低下
モンスター社員を放置すると、職場全体のモチベーションが低下するおそれがあります。
例えば、遅刻や指示違反を繰り返す社員に、会社が適切な対応を取らなければ、周囲の従業員は「真面目に働いても意味がない」「ルールを守るだけ損だ」と感じ、不公平感を抱くでしょう。
また、仕事の遅れやミスのフォローを同僚が担うことで、本来の業務以外の負担が増え、不満やストレスもたまっていきます。さらに、会社が問題行動を放置し続けると、「会社はきちんと対応してくれない」という不信感が広がり、職場の雰囲気の悪化や仕事への意欲低下につながる可能性があります。
生産性の低下
モンスター社員は、一人いるだけでも職場全体の生産性を低下させるおそれがあります。
業務への意欲が低く、与えられた仕事を期限どおりに進められなかったり、ミスを繰り返したりすると、プロジェクトの進行が遅れ、納期に影響が及ぶことがあります。また、コミュニケーション上の問題によって、必要な情報共有や連携がスムーズに行われないケースも少なくありません。
さらに、担当業務を十分にこなせない場合には、その穴埋めを周囲の従業員が担うことになります。このような状況が続くと、職場全体の業務効率が悪化し、生産性の低下を招くおそれがあります。
企業の信頼度の低下
モンスター社員の問題行動は、顧客や取引先からの信頼低下につながるおそれがあります。
例えば、顧客に対して高圧的な態度を取ったり、取引先との間でトラブルを起こしたりすると、相手はそれを「一社員の問題」ではなく、「その会社の体質の問題」と受け止める可能性があります。また、SNSや口コミサイトが普及した現在では、不適切な言動が短期間で広く拡散されるリスクもあるため注意が必要です。
問題社員を放置していると、「従業員の管理ができていない会社」「安心して取引できない会社」といった評判が広がり、企業イメージの悪化にもつながりかねません。
優秀な人材の離職
モンスター社員を放置すると、優秀な従業員の離職を招くリスクがあります。
例えば、モンスター社員の身勝手な言動に振り回される状況が続くと、周囲の従業員は「なぜ自分たちばかりが我慢しなければならないのか」と不満を募らせていくでしょう。特に、能力の高い従業員ほど、問題が放置される職場に見切りをつけ、より良い環境を求めて転職を検討する傾向があります。
さらに、一人の退職をきっかけに「自分も転職しよう」と考える従業員が増え、離職が連鎖するおそれもあります。優秀な人材を引き留めるためにも、問題社員の早期対応が欠かせません。
モンスター社員の弱点をふまえた対応方法
モンスター社員への対応では、問題行動に感情的に反応するのではなく、会社のルールに基づいて冷静に対処することが大切です。ここからは、モンスター社員による影響を最小限に抑え、職場環境を守るための具体的な対応方法を解説します。
ルールを決めて周知する
従業員が守るべき行動基準を就業規則などに明確に定め、社内に周知しておくことが必要です。ルールが曖昧なままでは、問題行動が発生しても適切な対応を行うことが難しくなるためです。
例えば、勤務態度や業務遂行上のルールといった服務規律のほか、ハラスメントや情報漏えい、無断欠勤などの禁止行為、さらに違反した場合の懲戒処分の種類や基準を定めておく必要があります。これらの内容はできるだけ具体的に明文化し、従業員に十分理解してもらうことが大切です。
ルールを明確にすることで、従業員は会社から求められる行動を理解しやすくなり、問題行動の予防につながります。また、万が一トラブルが発生した場合でも、説得力のある対応が可能になります。
問題行動についてフィードバックを行う
モンスター社員の中には、自分の言動が周囲にどのような影響を与えているのかを十分に理解していない人もいます。そのため、まずは問題となっている行動を具体的に伝え、本人に自覚してもらうことが必要です。
「態度が悪い」「協調性がない」といった曖昧な指摘ではなく、「顧客への返信を何度も放置した」「報告を求められていたにもかかわらず連絡をしなかった」など、実際に起きた事実をもとにフィードバックを行いましょう。これにより本人も問題点を理解しやすくなり、感情的な対立を避けることにもつながります。
また、注意や指導を行った日時や内容、本人の反応などを記録しておくことも大切です。こうした記録は、将来的に懲戒処分や解雇を検討するときの証拠として役立ちます。
改善に向けた目標を設定する
モンスター社員の問題行動を改善するためには、ただ注意を繰り返すだけでは不十分です。本人が「何を、どこまで改善すればよいのか」を理解できるよう、具体的な目標を設定することが大切です。
例えば、「報告・連絡・相談を当日中に行う」「報告書を期限内に提出する」など、実際の行動に落とし込んだ目標を設定することで、本人も取り組むべき内容が明確になります。
また、目標を立てて終わりではなく、定期的な面談や進捗確認を行い、改善状況をチェックすることも欠かせません。改善が見られた場合には、努力や成果を適切に評価しましょう。小さな進歩であっても認めることで、本人のモチベーションが高まり、問題行動の改善につながる可能性があります。
感情的にならず冷静な態度で接する
モンスター社員への対応では、相手に感情をぶつけないことが何より重要です。身勝手な行動が続くと、つい強い口調で注意したくなるかもしれません。しかし、感情的に叱責すると相手が反発し、問題がさらに深刻化するおそれがあります。
また、注意や指導を行うときは、感情論ではなく事実に基づいて伝えることが大切です。「あなたはダメだ」「やる気がない」といった人格を否定するような言い方ではなく、「依頼した資料が期限までに提出されませんでした。今後は、提出が難しい場合でも事前に状況を報告してください」のように、問題となる行動と改善してほしい点を具体的に伝えましょう。事実に基づいて指導することで、本人も問題を理解しやすくなります。
公平さや一貫性を保つ
モンスター社員への指導や処分は、公平かつ一貫した基準で行うことが重要です。
同じ問題行動であっても、担当者によって指導の仕方や処分内容が異なると、本人は「自分だけ厳しく扱われている」と感じ、不満を抱くおそれがあります。また、周囲の従業員からも「人によって対応が違う」という不公平感が生まれ、職場の雰囲気が悪化しかねません。
そのため、問題行動への対応基準や指導の手順、懲戒処分の基準などをあらかじめ明確に定め、すべての従業員に同じルールを適用することが大切です。また、その場の感情で判断するのではなく、過去の対応との整合性を意識することも求められます。
会社の対応にブレがあると、モンスター社員はその隙を突いて主張を強めるためご注意ください。
モンスター社員を辞めさせることはできるのか?
モンスター社員を辞めさせることは可能ですが、会社の判断だけで自由に解雇できるわけではありません。
解雇が認められるのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当と評価される場合に限られます(労働契約法16条)。そのため、問題行動があったとしても、十分に改善指導を行わずに突然解雇すると、不当解雇と判断される可能性があります。
まずは注意や指導を重ね、改善の機会を与えることが重要です。そのうえで改善が見られない場合には、就業規則に基づく懲戒処分や解雇を検討することになります。
不当解雇と判断されると、未払い賃金の支払いなど会社に大きな負担が生じるおそれがあります。こうしたリスクを避けるためにも、モンスター社員の解雇を検討するときは、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
モンスター社員を解雇する方法についてより詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
よくある質問
モンスター社員にはどのような特徴がありますか?
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自分の考えや要求を強く押し通そうとする傾向があります。ミスを認めずに他人のせいにしたり、会社のルールや上司の指示に従わないことがあります。また、自分の意見が通らないと感情的になることもあり、職場でトラブルを繰り返すことが少なくありません。
モンスター社員の弱点で女性特有のものはありますか?
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モンスター社員の弱点に、女性特有のものは基本的にありません。承認欲求の強さや協調性の欠如、責任感の不足などは男女を問わず見られます。「女性だから問題がある」といった先入観で判断すると、セクハラと受け取られるおそれもあるため注意が必要です。
モンスター社員の弱点はどのようにして分かるのでしょうか?
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日頃の言動や仕事への取り組み方を観察することで見えてきます。ミスを認めず、他人や会社のせいにする場合は責任感の不足が、成果を過度にアピールする場合は承認欲求の強さが背景にある可能性があります。定期的な面談や業務観察が欠かせません。
モンスター社員の弱点と上手く付き合うにはどうしたらいいですか?
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感情的にならず一定の距離感を保つことが大切です。理不尽な要求に振り回されるのではなく、会社のルールや客観的な事実に基づいて対応しましょう。また、口頭だけでなく記録を残しながらやり取りを進めることで、トラブルの予防につながります。
モンスター社員の弱点が改善しない場合、どのような対応が考えられますか?
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改善が見られない場合は、段階的に対応を強化する必要があります。面談や注意指導を繰り返しても問題行動が続く場合は、配置転換や懲戒処分を検討することになります。後のトラブルを防ぐためにも、指導内容や本人の反応を記録として残しておくことが重要です。
従業員が仕事でキャパオーバーにならないためには、どのような配慮が必要ですか?
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業務量を適切に管理することが重要です。特定の社員へ業務が集中していないか定期的に確認し、必要に応じて業務を分担しましょう。また、上司が日頃から声をかけたり、定期的な面談を実施したりするなど、悩みを相談しやすい環境を整えることも大切です。
問題行動のフィードバックを行う際に注意すべきことはありますか?
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感情ではなく事実を伝えることが必要です。「態度が悪い」といった抽象的な表現ではなく、「無断で会議を欠席した」など具体的な行動を指摘しましょう。また、人格を否定するのではなく、改善してほしい行動を明確に伝えることが大切です。
職務怠慢なモンスター社員を辞めさせるにはどうしたらいいですか?
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まず注意・指導を行い、改善のチャンスを与えましょう。そのうえで、職務怠慢が続く場合は、就業規則に基づいて懲戒処分、改善しなければ退職勧奨、解雇を検討します。こうした対応なくいきなり解雇すると、不当解雇となる可能性があるため注意が必要です。
モンスター社員を解雇できますか?
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モンスター社員という理由だけで解雇することはできません。解雇するには客観的に合理的な理由と社会的な相当性が求められます。十分に改善指導を行っても問題が改善せず、業務にも支障が生じている場合に、初めて解雇の可否を検討することになります。
モンスター社員を解雇する方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
モンスター社員の対応は専門家に任せた方が良いですか?
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対応に悩んだら、早めに弁護士へ相談しましょう。対応を誤ると、労働審判や訴訟などの法的トラブルに発展するおそれがあります。専門家のサポートを受けることで、指導方法や懲戒処分の進め方、解雇の可否などについてアドバイスを受けることが可能です。
モンスター社員の適切な対応方法について弁護士がアドバイスいたします。
モンスター社員への対応は、まさに会社と社員の我慢比べになりがちです。しかし、「もう限界だ」と感情的に対応してしまうと、思わぬ落とし穴にはまることがあります。
問題社員を排除しようとしたつもりが、気づけば会社が労働審判や訴訟の当事者になっていたというケースも珍しくありません。モンスター社員対応は、場当たり的な対処ではなく、戦略的に進めることが必要です。
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執筆弁護士

- 弁護士法人ALG&Associates
この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、企業法務担当執行役員を務め、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
