Ⅰ.改正法の概要
平成24年10月1日から、労働者派遣事業規制の強化、派遣労働者の保護を目的とした、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律(以下、「派遣法」といいます。)が施行されています。労働者派遣事業については、以前から法律がありましたが、改正されるとともに、名称も新しくなりました。
改正によって派遣法が変わった点は大きく3点あり、事業規制の強化、派遣労働者の待遇の向上、違法派遣への対応(違法派遣への対応のみ平成27年10月1日施行)につき、規定が新設されました。
そこで、今回は、事業規制の強化について述べたいと思います。
事業規制の強化は、派遣元企業に大きく関係する点ですが、派遣先企業にも一部関係する点があるので、派遣労働者を受け入れている企業も注意が必要です。
Ⅱ.日雇派遣の原則禁止
今回の派遣法において、まず派遣元企業が注意しなければならないのは、日雇派遣が原則として禁止されたことです。「日雇派遣」とは、1日のみの労働契約だけではなく、雇用期間が30日以内の労働契約が「日雇派遣」となります。30日以内ですので、1か月という雇用期間の場合には、31日ある月もあるので、必ずしも日雇派遣となるわけではありません。
今回原則禁止された背景には、日雇派遣のような短期間の雇用形態は、雇用の不安定な派遣の中でも特に不安定なものであって、かつ、派遣元 ・ 派遣先双方において、適切な雇用管理ができていなかったということがあります。
このような背景・ 趣旨に反しない程度で、日雇派遣にも、一部例外が設けられています。
例外としては、①日雇い派遣をしても適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる一定の業務の場合、②雇用機会の確保が特に困難な労働者の雇用継続等を図るために必要な場合、の2つです。
①については、派遣法施行令4条1項において定められており、ソフトウェア開発や財務処理等、特別の雇用管理の必要ではない業務である18業務(名称として「17.5業務」と呼ばれています)につき、例外が認められています。
②については、60歳以上の者や、昼間学生(夜間や通信、社会人学生等でない者)、副業として行う者(主たる業務の収入が500万円以上)、主たる生計者以外の者(世帯収入が500万円以上)の場合に、例外が認められています。
例外②については、年齢を確認できる書類や本人または配偶者等の所得証明をもって確認し、派遣元管理台帳に記録を残しておく必要があります。さらに、誓約書をもらうことも推奨されています。
Ⅲ.グループ企業派遣の8割規制
あるグループ企業の派遣会社が当該グループ内企業に派遣する場合には、全派遣労働者の8割以下にしなければならないという規制が新設されました。併せて、派遣元企業は、事業年度終了後、グループ内企業への派遣割合を厚生労働大臣に報告する必要があります。
グループ企業と言えるかは、連結決算を導入しているか否かで判断の基準が異なります(派遣法施行規則18条の3)。
連結決算を導入している場合には、派遣元会社の親会社と、当該親会社の連結子会社がグループ企業とされます。連結子会社と言えるかどうかは、会計基準が用いられ、実質的な支配力の有無によって判断されます。具体的には、親会社が当該会社の議決権の過半数有している場合だけではなく、議決権の40%以上を有し、かつ、財務及び事業方針の決定を支配している場合には、連結子会社と認められます。
連結決算を導入していない場合には、派遣元会社の親会社と、当該親会社の子会社がグループ企業とされます。子会社と言えるかは、親会社が当該会社の議決権等の過半数を有しているか否かで判断されます。
また、派遣割合については、人数ではなく、総労働時間(継続雇用等による高年齢者の総労働時間を除く)を基礎として以下の計算式のように判断します。
Ⅳ.離職後1年以内の派遣禁止
派遣法改正により、派遣先を離職してから1年以内に、その派遣先に派遣労働者として派遣することは禁止されます。また、派遣先もそのような労働者を受け入れてはならないとされています。
これは、就業の実態は変わらないにもかかわらず、直接雇用から派遣に切り替える事態が横行していたことから、設けられた規定です。
禁止となる派遣先については、同一事業者・ 法人であることであって、グループ企業は含まれません。
対象となる労働者としては、正社員のみならず、アルバイトやパート等の非正社員も含まれます。なお、例外として、高年齢者の継続雇用等は対象から除かれています。
本規定に違反すると、派遣元においては派遣事業許可や業務停止命令の取消等が行われ、派遣先においては厚生労働大臣の指導助言、企業名の公表が行われます。
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