計画年休とは?有給との違いやメリット・デメリット、注意点を解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

働き方改革が進む中、企業には従業員の年次有給休暇の取得促進が求められています。その取り組みとして注目されているのが「計画年休制度」です。

企業が計画的に休暇を割り振ることで、取得率の向上が期待でき、業務量の調整もしやすくなるため、企業・従業員の双方にメリットがあります。

本記事では、計画年休の仕組みや導入のメリット・デメリット、導入の手順、労使協定で注意すべき点など、企業が押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。

計画年休とは

計画年休とは、年次有給休暇のうち、労働者が自由に取得できる5日を除いた残りの日数について、企業があらかじめ休む時期を指定して付与する制度です(労働基準法39条6項)。

導入するには、事業場の過半数代表と労使協定を結び、どの時期に有給休暇を割り振るのかを取り決める必要があります。また、この制度は義務ではなく、導入するかどうかは企業が自由に決められます。

計画年休として割り振れるのは、有給休暇のうち5日を超える部分だけです。例えば、有給休暇が14日付与されている従業員であれば、最大9日までを計画年休として指定できます。一方で、有給休暇の付与日数が5日以下の従業員は、そもそも自由取得分しかないため、計画年休の対象にはなりません。

計画年休と有給休暇の違い

計画年休と通常の有給休暇の一番大きな違いは、休む日を「誰が決めるのか」という点です。
有給休暇は、従業員が自分の都合に合わせて取得日を選ぶのに対し、計画年休は企業があらかじめ休む日を決め、労使協定に基づいて従業員に付与します。

計画年休は、従業員の有給休暇取得を促進するために設けられた制度であり、いわば有給休暇を取得する方法のひとつです。計画年休として指定された日については、通常の有給休暇と同じ扱いとなり、その分の有休が消化されます。

特に有給休暇の取得率が伸び悩んでいる企業や、繁忙期に個別で休まれると業務が回りにくい職場では、計画年休がとても効果的に機能します。

計画年休のメリット・デメリット

計画年休制度の導入・運用にあたっては、以下のメリット・デメリットがあります。

計画年休のメリット

計画年休制度を導入すると、企業と従業員の双方にとって、次のようなメリットが期待できます。

  • 有給休暇の取得が促進される
    一定の日数を計画的に消化できるため、有給の取得率が高まります。さらに、計画年休で取得した分は年5日の取得義務にカウントできるため、法令対応もスムーズに進みます。
  • 労務管理が楽になる
    個別の取得状況の確認や促しが不要になり、管理負担を軽減できます。
  • 忙しい時期の休暇集中を防げる
    閑散期に休暇をまとめて取得してもらうなど、業務への影響を抑えた運用が可能になります。
  • リフレッシュ効果で生産性が高まる
    定期的に休むことで心身がリセットされ、パフォーマンス向上につながります。

有給休暇の取得義務についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

計画年休のデメリット

計画年休には多くのメリットがある一方で、導入にあたって押さえておきたい注意点があります。具体的には、次のようなデメリットが考えられます。

  • 就業規則の整備や労使協定の締結など、導入手続きに手間がかかる
  • 自由に休みたい日を選べず、不満を抱く従業員が出る可能性がある
  • 労使協定を結び直さない限り、会社都合で勝手に日程変更ができない
  • 計画年休の対象外となる従業員がいる場合は、別途対応を考える必要がある

これらの点を理解したうえで計画年休を導入し、従業員への丁寧な説明や、自社の実情に合わせたルールづくりを行うことが重要です。

計画年休の導入手続きの流れ

計画年休を導入するときは、法律に基づいた手続きを踏むことが大切です。基本的には、以下の3つのステップに沿って進めます。

  1. 就業規則へ記載する
  2. 付与方式を決定する
  3. 労使協定を締結する

①就業規則へ記載する

企業が計画年休制度を導入するには、就業規則に、計画年休に関する条項を設けることが必要です(労働基準法89条)。就業規則に盛り込む内容としては、例えば次のような記載が考えられます。

「労使協定により、労働者の年次有給休暇のうち5日を超える部分について年次有給休暇の付与日を定めた場合には、労働者の時季指定によることなく、その労使協定の定めにより年次有給休暇を付与する。」

このように制度の内容を就業規則に明確に示しておくことで、後のトラブル防止にもつながります。
なお、就業規則を変更した場合、常時10人以上の労働者を雇用している企業は、変更後の就業規則を労働基準監督署へ届け出る必要があるためご注意ください。

②付与方式を決定する

企業が計画年休を導入するときは、まずどのような方法で休暇を付与するかを明確に決める必要があります。選択できる付与方式として、以下の3つがあげられます。

  • 一斉付与方式
  • 交替制付与方式
  • 個人別付与方式

一斉付与方式

一斉付与方式とは、企業・事業場全体の休業による一斉付与方式により、全従業員に対して同一日に年次有給休暇を付与する方式をいいます。
この方式の採用は、製造部門等、操業を止めて全従業員を休ませることのできる事業場に適しています。

交替制付与方式

交替制付与方式とは、班・グループ別の交替制付与方式により、それぞれの班・グループごとに交替で年次有給休暇を付与する方式をいいます。
この方式の採用は、流通・サービス業など、定休日を増やすことが難しい企業、事業場などが適しています。

個人別付与方式

個人別付与方式とは、年次有給休暇付与計画表により個人別に付与する方式をいいます。
この方式の採用は、従業員数が限られており、年次有給休暇付与計画表により各人の年次有給休暇を指定することが可能な事業場が適していると考えられます。

③労使協定を締結する

企業は選択した付与方式を反映させた内容で、労使協定を作成・締結します。

労使協定とは、使用者と事業場の過半数の労働者で組織する労働組合(そのような労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者)との間で締結する、書面による協定をいいます。
この労使協定は、労働基準監督署には届け出る必要がありません。

労使協定に記載すべき事項

労使協定には以下の事項を定めることとなります。

  • 計画的付与の対象者
  • 対象となる年休の日数
  • 計画的付与の具体的方式
  • 年休付与日数が少ない者の取扱い
  • 計画的付与日の変更手続き

以上の記載を設けた、適法な労使協定が締結された時点で、労使協定によって定められた日に年休の効果(就労義務の消滅・年休手当請求権の発生)が発生します。

労使協定を締結しない計画年休は違法なのか?

労使協定を結ばずに計画年休を行うことは違法です。

計画年休は労働者の時季指定権を制限する特例であるため、労使協定が必須とされています(労働基準法39条6項)。協定がなければ会社が指定した休日は年次有給休暇として認められません。また、会社が年5日の取得義務を計画年休で達成しようとしていた場合、義務を果たしていないとみなされ違法となる可能性もあります(同法39条7項)。

実際に労使協定がないまま計画年休を運用し、無効と判断された裁判例(東京高等裁判所 令和元年10月9日判決)もあるため、労使協定の整備が不可欠です。

計画年休の無効が認められた判例

【事件の概要】
(平成31年(ネ)第1859号 東京高等裁判所 令和元年10月9日判決 シェーンコーポレーション事件)

年次有給休暇の残日数を超えて休んだとして、無断欠勤を理由に英会話講師が雇止めされた事案です。

英会話教室Y社は、入社半年後に講師Xに年次有給休暇を20日与え、そのうち15日を会社が指定する計画年休として運用していましたが、計画年休に必要な労使協定を適法に結んでいませんでした。

Xが計画年休とは別の日に有給取得を申し出たところ、Y社はこれを認めず欠勤扱いとし、これを理由に契約更新を拒否しました。そこで、Xは労使協定のない計画年休は無効であり、欠勤扱いや雇止めは不当だとして提訴したものです。

【裁判所の判断】
裁判所は、まずY社が計画年休に必要な労使協定を整備していなかった点を問題視しました。

Y社は複数校をまとめたエリア単位で選出した講師3名と合意していたと主張しましたが、これは法律上求められる「事業場の過半数代表」に当たらず、計画年休としては無効と判断しています。

また、裁判所は、就業規則で15日間の計画年休について法定年次有給とそれを超える分の有給が区別されていない点も指摘しました。どの日が法定年休か特定できない以上、時季指定は全体として無効となり、Xは20日間全ての有給を自由に取得できると結論づけました。さらに、Xの取得を無断欠勤と扱った判断にも合理性はなく、これを理由とする雇止めも無効と判断しています。

【ポイント・解説】
計画年休を導入するには、労基法39条6項で定められた「過半数代表との書面による労使協定」が不可欠で、これがなければ計画年休は無効となります。また、過半数代表者の選出手続が適正でない場合も協定は無効と判断されるため注意が必要です。

従業員の一部のみを母数とした選出、事業場ではなくエリア単位での選出、会社が代表者を指名する方法などは不適切とされています。さらに、就業規則で法定年休と会社独自の年休を区別せずにまとめて時季指定していると、どれが法定分か判別できず、会社の時季指定がすべて無効と判断されるリスクがあります。計画年休を適法に運用するには、適正な協定締結と年休の区分の明確化が重要です。

有給休暇の計画的付与を拒否されたらどうする?

計画的付与を拒否されたときの対応は、制度の導入前と導入後で異なります。
まず導入前であれば、従業員の一部が反対していても制度導入は可能です。法律上、過半数代表と労使協定を結べば計画年休は導入できるため、少数の反対だけでは計画年休の導入は妨げられません。

一方、制度導入後は、計画年休の日に従業員が出勤を希望しても、原則として出勤日に変更することはできません。計画年休は、企業・労働者側のどちらからも変更が認められない仕組みであるからです。ただし、労使協定に変更手続きが定められている場合や、新たに労使協定を結ぶ場合には、例外的に付与日の変更が可能です。やむを得ず変更するときは、協定に基づいた適切な手続きを踏んで対応しましょう。

計画年休を導入する際に企業が注意すべきこと

企業は計画年休を導入する際、従業員とのトラブルを防ぐため、以下の点に注意しましょう。

計画年休について従業員にしっかり説明する

計画年休を導入するときは、まず制度の内容を従業員にしっかり説明することが必要です。
どのように休暇が付与されるのかに加え、業務調整がしやすくなるなどのメリットや、個人の希望日で休みにくくなるデメリットも伝えるようにしましょう。あらかじめ理解を深めてもらうことで、導入後のトラブルを防ぎ、スムーズな運用につながります。

計画年休の付与日は企業側の都合で自由に変更できない

計画年休の付与日は、いったん労使協定で具体的に定めると、企業の都合で勝手に変更することはできません。たとえ業務上の都合で日程を動かす必要があったとしても、労使協定を改めて締結するなど、正式な手続きが必要になります。

そのため、計画年休の付与日を決めるときは、職場の繁忙期や業務の状況などを踏まえ、慎重に行うことが大切です。

有給休暇がない人・不足している人への配慮も必要

企業は計画年休を導入するにあたっては、有給休暇がない人や、不足している人への配慮をすることも必要になります。

そもそも計画年休は、年次有給休暇の付与日数が5日以下の従業員には適用されません。そのため、事業場全体を休業にする一斉付与方式を採用するときは、この点をきちんと説明し、対象外の従業員には自分で有給休暇を取得するよう案内する必要があります。

ただし、企業が年休取得を促しても、そもそも年休が付与されておらず自ら取得できないケースも考えられます。この場合は、企業側が年休とは別の特別有給休暇を与える、休業手当を支払って休業させる、休日として扱うなど、適切な対応をとらなければなりません。

なお、有給休暇がない従業員だけを出勤させる運用も、労使協定次第で可能ではあるものの、公平性を欠き不満を招きやすいため、極力避けるべきでしょう。

計画年休の導入に向く企業・向かない企業

計画年休は、有給休暇の取得を促進したい企業にとって有効な制度です。特に以下のような企業では、導入メリットが大きくなります。

  • 有給休暇の取得率が低い企業
  • 年末年始休暇や夏季休暇などの特別休暇が設けられていない企業
  • 業務量に閑散期があり、休暇日をまとめて設定しやすい企業

こうした企業では、計画年休により従業員の休暇取得がスムーズに進み、企業側も業務調整がしやすくなるというメリットがあります。
一方で、以下のように計画年休が向かない企業もあります。

  • すでに有給休暇の取得率が高い企業
  • 特別休暇が充実している企業

このように従業員が自由に休暇を取れる環境では、企業が休暇日を指定するとかえって不満を招くおそれがあります。

計画年休の活用例

計画年休の活用例として、以下のものがあげられます。

  • ①大型連休
    夏季や年末年始に計画的付与の年次有給休暇を組み合わせることで、大型連休とすることができます。
  • ②ブリッジホリデー
    暦の関係で休日が飛び石となっている場合に、休日の橋渡し(ブリッジ)として計画年休を活用し、連休とすることができます。
  • ③閑散期における計画的付与
    業務の比較的閑散な時季に計画的に付与する例です。
  • ④アニバーサリー休暇制度
    年次有給休暇制度の取得に対する職場の理解を得やすくするため、従業員本人の誕生日や結婚記念日、子供の誕生日などを「アニバーサリー休暇」とし、年次有給休暇の取得を促進することができます。
  • ⑤土曜日を計画年休として付与
    土曜日が通常の出勤日となっている企業であれば、土曜日を計画年休として設定することが可能です。

計画年休に関するよくある質問

新入社員にも計画年休を適用できますか?

新入社員には原則として計画年休を適用できません。

計画年休は、年次有給休暇を5日以上持つ従業員だけが対象となる制度です。
有給休暇が付与される基準日は、入社から6ヶ月が経過したタイミングです。そのため、有給休暇を付与されていない新入社員は、計画年休の対象には含まれません。

新入社員を休ませる必要がある場合は、特別休暇の付与、休業手当を支払って休業扱いにする、有給休暇を前倒して付与するなど、別の方法で対応することが求められます。

計画年休の付与日や計画はいつまでに決める必要がありますか?

計画年休の付与日や計画を決める時季について、法的な規制はありません。
もっとも、計画年休を付与するにあたっては、就業規則に計画年休に関する条項を設ける必要や、計画年休の付与方式等を記載した労使協定を締結する必要等があるため、それらの手続きを事前に完了できるよう時間的余裕をもって、計画年休の付与日や計画は決める必要があります。

計画年休の導入・運用でお困りの際は弁護士にご相談ください

計画年休制度は、企業にとってはスムーズな人員管理ができるメリットがあり、従業員にとっても有給休暇を取りやすくなるという利点があります。

ただし、この制度を導入する際には、会社側が正しい手続きを踏むことはもちろん、従業員との間で誤解やトラブルが起きないよう、丁寧な説明や配慮が必要です。

制度の導入や運用にあたって不安や疑問がある場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。企業の状況に合わせた適切なアドバイスをいたします。

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執筆弁護士

弁護士法人ALG&Associates
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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