計画年休とは?有給との違いや労使協定の締結、導入時の注意点を解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

近年、働き方改革の一環として、従業員の年次有給休暇の取得促進が企業に強く求められるようになっています。その中でも注目されているのが「計画年休制度」です。これは、有給休暇のうち、法定で義務付けられている5日を超える部分について、企業があらかじめ休暇日を定めて従業員に付与することができる制度で、労働基準法にも規定されています。

本記事では、計画年休制度の概要から、導入によるメリット・デメリット、制度導入の具体的な手続き、労使協定締結時の注意点まで、企業が制度を導入・運用するうえで知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。

目次

計画年休とは

計画年休とは、有給休暇のうち5日を超える部分について、労働者からの時季指定がなくとも、企業が有給休暇を強制的に付与できる制度です(労働基準法39条6項)。
使用者は、事業場の労働者の過半数代表との労使協定により、年休を与える時季に関する定めをすることで、計画年休制度を導入することができます。

計画年休と有給休暇の違い

昨今では、企業に対し、従業員に有給休暇の取得を促す取り組みを講じることが推奨されているところ、計画年休制度は、従業員に有給休暇取得を促す取り組みとして、導入されています。

なお、有給休暇は、従業員が自ら休暇日を指定し、有給休暇申請書を提出することで、取得することができますが、計画年休制度では、あらかじめ企業が休暇日を決めて従業員に割り当てます。

そのため、従業員としては、有給休暇と比べて計画年休を利用した場合の方が、ためらいを感じずに休暇を取得できるというメリットがあります。また、企業においても、事前に従業員の休暇日が確定していることから、円滑に労務管理・業務運営をすることができるというメリットがあります。

計画年休の活用例

計画年休の活用例としては、以下のものが挙げられます。

  • ①大型連休
    夏季や年末年始に計画的付与の年次有給休暇を組み合わせることで、大型連休とすることができます。
  • ②ブリッジホリデー
    暦の関係で休日が飛び石となっている場合に、休日の橋渡し(ブリッジ)として計画年休を活用し、連休とすることができます。
  • ③閑散期における計画的付与
    業務の比較的閑散な時季に計画的に付与する例です。
  • ④アニバーサリー休暇制度
    年次有給休暇制度の取得に対する職場の理解を得やすくするため、従業員本人の誕生日や結婚記念日、子供の誕生日などを「アニバーサリー休暇」とし、年次有給休暇の取得を促進することができます。

計画年休のメリット・デメリット

計画年休制度の導入・運用にあたっては、以下のメリット・デメリットがあります。

計画年休のメリット

計画年休制度を活用すれば、企業は有給休暇の日程を計画的に決めることができ、労務管理がしやすく計画的な業務運営ができるというメリットがあります。また、従業員も忙しい場合や休みを取りにくい雰囲気の中でも有給休暇が取りやすくなり、有給休暇の取得率が向上し、労働時間の短縮につながるというメリットがあります。

計画年休のデメリット

その一方、企業は労使協定の締結等の手続きの手間がかかる、従業員が自分の都合のよい日を自由に有給休暇に指定することができない、というデメリットもあります。
なお、労使協定によって有給休暇の計画的付与を決めた場合には、従業員の時季指定権も企業の時季変更権も共に使えなくなります。

計画年休の導入手続きの流れ

企業としては、計画年休のメリット・デメリットを理解したうえで、計画年休制度の導入を検討することが適切であるところ、計画年休制度を導入するにあたっては、以下の手続きを取る必要があります。

①就業規則へ記載する

まず、企業が計画年休制度を導入するには、就業規則に、計画年休に関する条項を設けることが必要です(労働基準法89条)。具体的には、「労使協定により、労働者の年次有給休暇のうち5日を超える部分について年次有給休暇日を定めた場合には、労働者の時季指定によることなく、その労使協定の定めにより年次有給休暇を付与する。」などの文言を、就業規則に設けることが考えられます。

②付与方式を決定する

次に、企業は、具体的にどのような方式で休暇を付与するかについて、労使協定において明らかにするため、以下の中から付与方式を選択する必要があります。

  • ①一斉付与方式
  • ②交替制付与方式
  • ③個人別付与方式

いずれの方式であっても、労使協定では、対象となる従業員や具体的な年次有給休暇の付与日(付与計画表作成による個人別付与方式の場合には計画表を作成する時季・手続等)を定めることになります。

以下で各方式について具体的に紹介いたします。

一斉付与方式

一斉付与方式とは、企業・事業場全体の休業による一斉付与方式により、全従業員に対して同一日に年次有給休暇を付与する方式をいいます。
この方式の採用は、製造部門等、操業を止めて全従業員を休ませることのできる事業場に適しています。

交替制付与方式

交替制付与方式とは、班・グループ別の交替制付与方式により、それぞれの班・グループごとに交替で年次有給休暇を付与する方式をいいます。
この方式の採用は、流通・サービス業など、定休日を増やすことが難しい企業、事業場などが適しています。

個人別付与方式

個人別付与方式とは、年次有給休暇付与計画表により個人別に付与する方式をいいます。
この方式の採用は、従業員数が限られており、年次有給休暇付与計画表により各人の年次有給休暇を指定することが可能な事業場が適していると考えられます。

③労使協定を締結する

最後に、企業は選択した付与方式を反映させた内容で、労使協定を作成・締結します。

労使協定とは、使用者と事業場の過半数の労働者で組織する労働組合(そのような労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者)との間で締結する、書面による協定をいいます。

この労使協定は、労働基準監督署には届け出る必要がありません。

労使協定に記載すべき事項

具体的に、労使協定には以下の事項を定めることとなります。

  • ①計画的付与の対象者
  • ②対象となる年休の日数
  • ③計画的付与の具体的方式
  • ④年休付与日数が少ない者の取扱い
  • ⑤計画的付与日の変更手続き

以上の記載を設けた、適法な労使協定が締結された時点で、労使協定によって定められた日に年休の効果(就労義務の消滅・年休手当請求権の発生)が発生します。

労使協定を締結しなければ違法?

労働基準法39条7項は、事業者による年5日の時季指定義務について定めているところ、労使協定に定めのないまま、計画年休を付与した場合には、労働基準法39条7項に違反することになります。

そして、適法な労使協定が存在しない場合は、法律上の計画的年休制度を採用できないため、従業員に休暇を付与したとしても計画年休制度が無効になると示した判例も存在します(東京高裁令和元年10月9日判決)。

そのため、計画年休を導入する際は、上記の記載事項を入れた適切な労使協定を、必ず締結するようにしましょう。

有給休暇の計画的付与を拒否されたらどうする?

従業員の中に有給休暇の計画的付与に反対する人がいても、計画年休の制度を導入できる場合があります。

この制度を導入するには、労働者の過半数を代表する者との間で労使協定を結ぶ必要があります。
つまり、一部の従業員が反対していたとしても、過半数代表者の同意が得られれば、計画年休の導入は可能ということです。

計画年休を導入する際に企業が注意すべきこと

企業は計画年休を導入する際、従業員とのトラブルを防ぐため、以下の点に注意しましょう。

計画年休について従業員にしっかり説明する

まず、計画年休の制度の内容について、従業員にしっかりと説明をすることが必要です。具体的には、計画年休制度によって、どのように休暇が付与されるかを説明するとともに、計画年休制度の導入によって、従業員がどのようなメリット・デメリットを受けるのかを、きちんと説明するようにしましょう。

計画年休の付与日は企業側の都合で自由に変更できない

また、企業は、労使協定で計画的付与日を明確に定めている場合付与日を変更することができないことについても、注意する必要があります。
やむを得ず付与日を変更する場合には、再度労使協定を締結する等の対応が必要になるため、付与日の決定は慎重に行いましょう。

有給休暇がない人・不足している人への配慮も必要

最後に、企業は計画年休を導入するにあたっては、有給休暇がない人や、不足している人への配慮をすることも必要になります。

そもそも計画年休は、年次有給休暇の付与日数が5日以下の従業員に適用されないところ、事業場全体の休業による一斉付与方式を採用する場合には、一斉付与方式による休暇を実施することを説明し、従業員に自ら年休を取得するよう促すことが必要になります。

もっとも、企業が年休取得を促しても、従業員が取得を拒否する場合や、そもそも年休を付与されておらず、従業員が任意に年休を取得できない場合には、年休とは別の特別有給休暇を付与するか、休業手当を支払って休業させる対応が必要になります。

計画年休の導入・運用でお困りの際は弁護士にご相談ください

計画年休制度は、企業にとってはスムーズな人員管理ができるメリットがあり、従業員にとっても有給休暇を取りやすくなるという利点があります。

ただし、この制度を導入する際には、会社側が正しい手続きを踏むことはもちろん、従業員との間で誤解やトラブルが起きないよう、丁寧な説明や配慮が必要です。

制度の導入や運用にあたって不安や疑問がある場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。企業の状況に合わせた適切なアドバイスをいたします。

計画年休に関するよくある質問

年5日の有給取得義務に計画年休は含められますか?

はい。労働者が取得する「年5日」には、「計画的付与」で取得した年休を含めることができます。

厚生労働省のサイトには、「計画年休をもって5日分の付与がなされた場合には、年休5日取得の目的自体が実現されたことになるため、使用者による年休5日付与義務が消滅します。」と示しています。

ただし、年次有給休暇のうち、少なくとも5日は労働者が自由に取得できるようにする必要があるため、計画年休として指定できるのは、5日を超える部分に限られます。

計画年休は全従業員に適用できますか?

いいえ。計画年休は、年次有給休暇の付与日数が5日以下の従業員には適用されません。

そもそも、計画年休は、有給休暇のうち5日を超える部分について、休暇を付与する制度であるため、年次有給休暇の付与日数が5日を超えない従業員は、計画年休制度の対象になりません。

新入社員にも計画年休を適用できますか?

いいえ。新入社員には原則として計画年休を適用できません。

上記の通り、計画年休は、年次有給休暇の付与日が5日以下の従業員には適用されないところ、有給休暇付与の基準日は、入社後6ヶ月を経過した時点となります。そのため、有給休暇を付与されていない新入社員は、計画年休の適用対象外となります。

土曜日に計画年休を付与することは可能ですか?

はい。土曜日が出勤日とされている企業においては、土曜日を計画年休として付与することが可能です。

閑散期に計画年休を設定しても問題ありませんか?

問題ありません。閑散な時季に計画的付与を実施することによって、業務に支障をきたさないで年次有給休暇の取得率を向上させることができます。

計画的付与できる日数に上限はありますか?

はい。計画年休は、有給休暇のうち、労働者が自由に取得できる5日を除いた残りの日数を上限として付与できます。

計画年休の付与日や計画はいつまでに決める必要がありますか?

計画年休の付与日や計画を決める時期について、法的な規制はありません。

もっとも、計画年休を付与するにあたっては、就業規則に計画年休に関する条項を設ける必要や、計画年休の付与方式等を記載した労使協定を締結する必要等があるため、それらの手続きを事前に完了できるよう時間的余裕をもって、計画年休の付与日や計画は決める必要があります。

計画年休の導入に適している企業と適さない企業はありますか?

はい。そもそも計画年休は、労働者の有給休暇取得を促進するために導入された制度であるところ、すでに有給休暇取得率の高い企業においては、計画年休を導入する必要がありません。

むしろ、有給休暇取得率が高く、労働者が休暇を指定しやすい企業においては、会社が休暇を指定する計画年休制度に対し、労働者から不満が生じるおそれがあるため、計画年休制度の導入には適していないと考えられます。

計画年休の日に従業員が出勤したいと申し出た場合はどうすればいいですか?

原則として、従業員は、計画年休の日に出勤することができません。
計画年休として定められた日は、使用者も労働者も、原則変更することができないため、計画年休が付与された日を出勤日に変更することはできないこととなります。

もっとも、労使協定に、変更手続きが定められているような場合や、改めて労使協定を締結する場合には、変更が例外的にできるため、やむを得ず付与日を変更する場合は、適切な手続きを踏んだ変更が必要です。

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執筆弁護士

弁護士 中山 詢
弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所弁護士中山 詢(埼玉弁護士会)
弁護士 東條 迪彦
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所弁護士東條 迪彦(東京弁護士会)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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