
監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
近年、「コンプライアンス違反」などという言葉を耳にする機会が多くなっています。
コンプライアンス違反があった場合には、企業に金銭的な損害が発生するだけでなく、その企業に対する信頼も失ってしまう可能性が高いため、企業利益の損失は大きなものになります。
以下では、コンプライアンス違反が起きることを未然に防止するために、企業がとるべき5つの対策を以下にご紹介していきます。
目次
- 1 コンプライアンス違反とは?
- 2 コンプライアンス違反のリスクと影響
- 3 【5つの対策】コンプライアンス違反を未然に防ぐには
- 4 コンプライアンス対策を成功させるためのポイント
- 5 よくあるコンプライアンス違反の事例
- 6 コンプライアンス違反を未然に防ぐために、弁護士法人ALGがサポートいたします。
- 7 よくある質問
- 7.1 なぜ企業はコンプライアンス対策を重視する必要があるのでしょうか?
- 7.2 中小企業でもコンプライアンス対策に取り組むべきですか?
- 7.3 「ガバナンス」や「CSR」とコンプライアンスの違いは何ですか?
- 7.4 機密情報や個人情報の漏洩を防止するには、どのような対策が有効ですか?
- 7.5 反社リスクに対して企業はどう備えるべきですか?
- 7.6 コンプライアンスの相談窓口は社外にも設置した方が良いですか?
- 7.7 コンプライアンスに関する社内規程には、どのような内容を盛り込むべきでしょうか?
- 7.8 社内のコンプライアンス対策チームに、外部の弁護士を加えることは可能ですか?
- 7.9 労務コンプライアンス体制を構築する際のポイントを教えて下さい。
- 7.10 コンプライアンス違反が発生した場合の対処法について教えて下さい。
コンプライアンス違反とは?
「コンプライアンス」とは、その言葉自体の意味だけで言えば、「法令遵守」ということであり、「法令に違反せず、法令などの規範を守る」ことを指します。
そうすると、コンプライアンス違反とは、法令や条例、社内規則に違反する行為を指すこととなります。
しかし、昨今では、公正・適切な企業活動を通じて企業の社会的責任を果たす、という意味も付加されているものと考えられています。
企業のコンプライアンスが重視されている背景
近年、メディアにおいて、上場企業等における不祥事が相次いで報道されており、不祥事を起こす企業は、年々増加しています。そして、不祥事をおこした企業は、今まで築いてきた信頼関係や信用が失墜することにより、売上が大幅に落ち込むなど、企業の経営に多大な影響を及ぼすものとなっています。
このような事情が、コンプライアンスが注目される要因の1つとなっていると考えられ、事業者としては、今一度、コンプライアンスに関する意識を高める必要があります。
コンプライアンス違反が起こる要因
コンプライアンス違反が起こる要因は、複数考えられ、企業の体制・環境から起因する場合もあれば、従業員個人の特性によるものもあります。
また、法令に対する知識不足により無意識的にコンプライアンス違反をする場合もあれば、粉飾決算など、コンプライアンス違反になることを認識しながらあえて行われるものもあります。
コンプライアンス違反のリスクと影響
コンプライアンス違反があると、企業には様々な面においてリスク及び影響が生じ、事情によっては、企業の経営を危うくさせかねないものすらあります。
以下に、具体例を挙げます。
行政処分・刑事罰
対象となる企業が、許認可等を必要とする事業を行っている場合、当該事業について、監督官庁の指導・監督が行われることとなります。
そして、法令違反行為を行った場合には、期間を定めた営業停止処分等が下される可能性がある上、違反の程度が重大な場合には、許認可の取消しが行われる可能性もあります。
このような処分をされれば、企業の事業活動に重大な影響を与え、大きな経営上の損失が発生します。
また、刑事罰に関して、企業の従業員が業務の遂行に当たって違反行為を行った場合に、違反行為をした従業員本人に刑事罰を下すほか、当該企業にも刑事罰を下すという両罰規定がある法律については、企業にも刑事罰が下され、多額の罰金を支払わなければならない可能性もあります。
損害賠償責任
企業が法令に違反する行為をしたことによって、第三者に損害が発生した場合には、当該被害者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
そして、損害賠償請求が認められた場合には、被害者に対して多額の賠償金の支払義務が発生し、経済的な損失を被ることとなります。
社会的な信用の失墜
企業によるコンプライアンス違反が報道された場合には、多くの人に知られることになり、 取引先等からの企業イメージの低下は必至となります。
また、近年では、SNSの普及により、コンプライアンス違反が知られるスピードが格段に速くなっているため、迅速な対応をしなければ、取り返しのつかない損害が発生する可能性すらあります。
従業員の離職
従業員の中には、イメージの低下した企業で働き続けることに抵抗を示す人も少なくないと考えられます。
そのため、自身の所属する企業において不祥事が発生した場合には、働きづらさを感じて、モチベーションが低下したり、当該企業にはもういられないとして、退職する従業員が増加するなどの影響が出てくる可能性があります。
株主離れ
上場企業のように、株式が市場で取引されている企業において不祥事が発生した場合には、株価が下落することが予想され、そのような下落した株式を早いうちに売却してしまおうと考える株主は少なくないと考えられます。
【5つの対策】コンプライアンス違反を未然に防ぐには
コンプライアンス違反により発生するリスクを未然に防ぐための対策を講じる必要があります。
以下では、コンプライアンス違反防止のための5つの対策を紹介していきます。
①自社リスクの洗い出し
まずは、企業内でどんなコンプライアンス違反が発生する可能性が高いのかを洗い出すことが必要です。
そのような調査をすることによって、発生する可能性のあるコンプライアンス違反を防止するために、どのような体制を作るべきかを検討することができます。
②社内ルール・マニュアルの作成
コンプライアンス違反を防止するためには、社内規程や業務遂行マニュアルを整備することが重要となります。
社内規程等の整備により、従業員による適切な業務遂行をできるようにすることで、コンプライアンス違反が発生しにくい環境を作ることができます。
③コンプライアンス研修の定期的な実施
コンプライアンス違反は、事業主による経営判断のみならず、従業員の行為によっても発生する可能性があります。
そのため、従業員に対し、定期的なコンプライアンス研修を実施することにより、コンプライアンス遵守意識を持たせることが重要となります。
④コンプライアンス相談窓口の設置
企業内でコンプライアンス違反の疑いが生じた場合、すぐに事実調査等の対応をして、損害の発生を回避できるように、社内又は社外にコンプライアンスの相談窓口を設置することが必要となります。
⑤内部監査の実施
コンプライアンス違反を未然に防止するためには、コンプライアンス違反の報告を受け付けるだけでは足りず、企業側からより積極的に、違反の原因となる事情を発見できるように、業務遂行について定期的な報告を求めるなど内部監査を実施することが不可欠です。
コンプライアンス対策を成功させるためのポイント
コンプライアンス対策により、効果的にコンプライアンス違反を防止するためのポイントがいくつかあります。
以下、具体的な例を紹介していきます。
企業のトップが違反を許さない決意を示す
たとえコンプライアンス違反を発生させたのが、経営陣ではなく一従業員にすぎない場合であっても、最終的には、企業の責任としてイメージの低下をもたらす可能性は往々にしてあります。
そのため、企業トップのコンプライアンスに対する熱意が重要な要素となります。
具体的には、取締役会でのコンプライアンスに関する対応策の提案、コンプライアンス担当部署の設置や優秀な人材の配置等、経営陣のコンプライアンス違反に対する姿勢を示すことにより、従業員のコンプライアンス違反に対する意識を高めることが期待できます。
コンプライアンス教育は階層別に行う
研修等のコンプライアンス違反防止を目的とした教育・指導は、従業員の立場毎に変えることが大切です。
なぜなら、管理職、中間管理職、新入社員のそれぞれで、発生コンプライアンス違反の内容が異なり、それに応じて注意すべきポイントも異なるためです。
法律の専門家である弁護士に相談する
企業内の体制を整備するだけでなく、弁護士と顧問契約を締結しておくなどして、いつでも弁護士に相談できる状態を作ることも重要です。
コンプライアンス違反が発生した場合だけでなく、まだ顕在化していないものの、今後の対応が心配な場合でも、専門知識のある弁護士に相談することをお勧めします。
よくあるコンプライアンス違反の事例
企業によるコンプライアンス違反事例
企業のコンプライアンス違反の一例として、企業の秘密情報が外部へ流出してしまう「情報漏洩」が挙げられます。
特に、企業は顧客の個人情報や取引先の情報など多くの機密情報を扱っている傾向にあるため、情報漏洩が発生してしまうと社会的な信用の喪失は避けられず、企業経営に対する影響は、計り知れないものとなります。
従業員によるコンプライアンス違反事例
従業員個人によって行われやすいコンプライアンス違反の代表例として、ハラスメント行為が挙げられます。
上司が部下に対して必要以上の叱責をしたり、あるいは非常に簡単な業務しか与えなかったりするパワーハラスメントが増加しており、近年、パワーハラスメントの防止を目的とした法改正も行われました。
コンプライアンス違反を未然に防ぐために、弁護士法人ALGがサポートいたします。
コンプライアンス違反は、企業リスクの最小化を図るために、防がなければなりません。
弁護士法人ALGは、このような予防に専門家として尽力します。
ぜひご相談ください。
よくある質問
なぜ企業はコンプライアンス対策を重視する必要があるのでしょうか?
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コンプライアンス違反を起こしてしまうと、取引先などとの信頼関係や顧客からの信用が失墜することとなってしまい、それにより、企業の経営に多大な影響を及ぼす可能性があることが主な理由となります。
中小企業でもコンプライアンス対策に取り組むべきですか?
-
中小企業であっても、コンプライアンス対策に取り組むべきです。
大企業であれ中小企業であれ、コンプライアンス違反により経営に影響を与えかねないことに変わりはなく、企業価値低下を防止するために、コンプライアンス対策を講じることは重要となります。
「ガバナンス」や「CSR」とコンプライアンスの違いは何ですか?
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コンプライアンスは、「法令順守」を意味し、法令や条例等を遵守することのほか、企業が社会的要請に応えることを指します。
一方、企業における「ガバナンス」とは、企業が健全な経営を行う上で必要となる体制を構築・運用することを指すものであり、社内の仕組み・制度構築に焦点が当てられた概念と考えられます。また、「CSR」とはCorporate Social Responsibilityの略であり、企業が果たさなければならない社会的な責任を意味します。コンプライアンスよりも倫理的要請や社会的公正に応える点により焦点が当てられた概念と理解できるでしょう。
機密情報や個人情報の漏洩を防止するには、どのような対策が有効ですか?
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情報漏洩を防止するためには、情報管理に関する社内規定を整備し、情報管理に関する研修を実施する等、従業員に遵守させる体制を作ることが有効と考えられます。
反社リスクに対して企業はどう備えるべきですか?
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典型的には、各種契約書や取引規程などにいわゆる“反社条項”を設けることが考えられます。
ただし、契約書等に反社条項を設けるだけでは不十分であり、企業が反社会的勢力と関係を持たないようにするために、取引に入る前に、取引相手の素性を調査することが有用となります。
具体的には、インターネットによる検索や登記情報、雑誌や新聞等から情報を収集することが重要です。
コンプライアンスの相談窓口は社外にも設置した方が良いですか?
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社外にも相談窓口を設ける方がより効果的です。
社員としても、会社に自分が通報したことが知られないことで、安心して通報してもらえることが期待できることに加え、専門家が対応することにより、迅速かつ的確な処理が期待できます。
コンプライアンスに関する社内規程には、どのような内容を盛り込むべきでしょうか?
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社内規程には、規程及びその目的、適用範囲、遵守事項、組織体制、違反行為があった場合の懲罰等を規定することが望ましいと考えられます。
社内のコンプライアンス対策チームに、外部の弁護士を加えることは可能ですか?
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社内のコンプライアンス対策チームに社外の弁護士を加えることも可能です。
なお、実際に紛争が生じた際に、当該弁護士に訴訟の代理や事件処理を依頼することができなくなる場合もあるため、例えば、顧問弁護士がいる場合には、当該顧問弁護士以外の弁護士へ依頼することをお勧めします。
労務コンプライアンス体制を構築する際のポイントを教えて下さい。
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従業員の労務管理において重要となるのは、就業規則等労務に関する規定を作成の上、適正に運用していくことです。
その際には、労働基準法や労働契約法、労働組合法、育児介護休業法等の関係法令もチェックすることが重要です。
コンプライアンス違反が発生した場合の対処法について教えて下さい。
-
処分を急ぐのではなく、まずは、事実関係を調査・把握をすることが重要です。
従業員としては、上司等、自分より上の地位の人へ速やかに報告をする必要があります。
また、被害者がいる場合、損害賠償請求等への対処も必要となる可能性があるため、被害者に対する対応にも注意が必要となります。そして、最終的には、同様のコンプライアンス違反が今後起こらないよう、再発防止策を講じることが必要です。
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執筆弁護士
- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所弁護士田中 佑資(東京弁護士会)
- 弁護士法人ALG&Associates 弁護士須合 裕二
この記事の監修
- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある