自信過剰なモンスター社員の対処方法とは?配置転換や解雇の注意点

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

自信過剰なモンスター社員が会社にいる場合、どのように対処したらよいでしょうか。
一番はそのような社員を採用の段階で見極めて採用しないことですが、採用段階でモンスター社員であるかどうかを見極めることは極めて困難です。

この記事では、そのような社員を採用してしまった場合に、どのように対処すべきであるか解説していきます。

自信過剰型のモンスター社員とは?

自信過剰なモンスター社員とは、自分の能力に強い自信を持つあまり、上司や同僚からの指摘やアドバイスを素直に受け入れない社員のことです。

仕事に自信を持つこと自体は悪いことではありません。しかし、その自信が行き過ぎるとミスを認めず、周囲の意見も聞かなくなり、チームワークや職場環境に悪影響を及ぼすおそれがあります。こうした言動によって業務に支障が生じている場合には、会社として適切な対応を検討しなければなりません。

自信過剰なモンスター社員に見られる行動例

自信過剰なモンスター社員の行動例として、以下があげられます。

  • 自分の能力を高く評価している
    自分の知識やスキルに強い自信を持っており、実際以上に自分を高く評価する傾向があります。その結果、会社からの評価と自己評価にギャップが生じ、なぜ評価されないのかと不満を抱きやすいのが特徴です。
  • 指摘やアドバイスを受け入れない
    自分の考えが正しいと思い込んでいるため、上司や同僚からの指摘や助言に耳を傾けないことが多いです。そのため、自身の問題点を改善できず、同じ失敗を繰り返すことも少なくありません。
  • 周囲を見下すような言動をとる
    「自分の方が優秀だ」という意識が強く、他人の意見を軽く扱ったり、否定的な発言をしたりすることがあります。このような態度は職場環境の悪化を招く原因となります。
  • 自分だけの功績として主張する
    チームで達成した成果であっても、自分一人の手柄であるかのようにアピールし、周囲の貢献を認めない場合があります。

自信過剰型のモンスター社員を放置するリスク

自信過剰なモンスター社員は指導に応じないことが多く、対応する側の負担も大きいため、後回しにされがちです。
しかし、こうした社員を放置することは、大きなリスクを伴います。「自分は何をしても許される」と思い込み、問題行動がさらにエスカレートするおそれがあります。その結果、職場環境が悪化し、周囲の社員のモチベーション低下につながりかねません。

また、「真面目に働いても正当に評価されない」と感じた優秀な社員が、退職してしまう可能性もあります。人材流出は会社にとって大きな損失です。さらに、必要な注意・指導を行わないまま解雇すると、後に解雇が無効と判断されるリスクもあります。

こうした事態を防ぐためにも、自信過剰なモンスター社員は放置せず、早い段階から適切に対応していくことが大切です。

自信過剰型モンスター社員の正しい対処方法

モンスター社員への対応では、すぐに解雇を検討するのではなく、まずは改善の機会を与えることが重要です。具体的には、以下のような対応が考えられます。

  • ①注意・指導を行う
    問題となっている言動を具体的に指摘し、どのような点を改善すべきかを明確に伝えます。
  • ②人事考課面談を実施する
    評価基準や会社が求める役割を説明し、本人の自己評価と会社の評価の違いを認識してもらいます。
  • ③配転を行う
    現在の仕事内容や人間関係が問題行動の原因となっている場合は、配置転換や転勤を検討します。
  • ④教育を実施する
    研修や面談を通じて、自身の言動が周囲に与える影響を理解してもらい、コミュニケーション能力や協調性の向上を図ります。
  • ⑤降職を検討する
    管理職としての適性に問題がある場合は、降職を検討します。
  • ⑥解雇以外の懲戒処分を行う
    注意や指導を重ねても改善しない場合は、戒告や譴責、出勤停止などの懲戒処分を検討します。
  • ⑦賞与減額を検討する
    問題行動の内容や程度に応じて、賞与の減額を行うことも考えられます。

①から⑦まですべて行う必要はなく、どの方法を選択するかは事案に応じて判断します。

モンスター社員の対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

自信過剰なモンスター社員への接し方のポイント

自信過剰なモンスター社員に対しては、自分の能力を実際以上に高く評価しているという特徴を理解したうえで接することが必要です。感情的に反論したり頭ごなしに否定したりすると、「自分は間違っていない」という思いを強め、さらに反発を招くおそれがあります。

そのため、注意や指導を行うときは、「仕事ができていない」といった曖昧な指摘ではなく、業務実績や会社のルール、評価基準などの客観的な事実をもとに説明しましょう。根拠を示しながら伝えることで、本人も受け入れやすくなり、無用な対立を避けることができます。

また、人格や能力を否定するのではなく、「どのような行動に問題があるのか」「会社として何を求めているのか」を具体的に伝えることも大切です。

モンスター社員を配置転換する際の注意点

モンスター社員への対処方法として、配置転換を行うことが考えられます。しかし、会社が常に自由に配置転換を命じられるわけではなく、配転命令の有効性が争われるケースもあるため注意が必要です。

人事異動については、以下の記事をご覧ください。

配置転換が認められるための要件

配置転換を行うためには、会社に配置転換を命じる権限があるだけでなく、その内容に合理性があり、権利濫用にあたらないことが求められます。配置転換命令が権利濫用と判断されると、違法・無効となるため、慎重に検討しなければなりません。

配置転換を実施するときは、次のような要件を満たしているか確認しましょう。

  • 就業規則や労働契約上で配置転換を定めている
  • 勤務地や職種が限定されていない
  • 業務上の必要性が認められる
  • 不当な動機や目的によるものではない
  • 従業員に著しい不利益を与えない

例えば、退職に追い込むことを目的とした配転命令や、業務に従わないから閑職に追いやる行為は、不当な配置転換とされる可能性が高いため注意が必要です。

配置転換が違法・無効となるケースや、会社が負う法的リスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。

配置転換を拒否されたらどうする?

配置転換が有効である場合、従業員は基本的にこれを拒否できません。そのため、正当な理由がないにもかかわらず配置転換を拒否し続けると、業務命令違反と評価されることになります。

会社としては、まずは配置転換の必要性を丁寧に説明し、配置転換に応じるよう説得することが必要です。それでも配置転換に応じない場合は、業務命令違反として注意・指導を行い、場合によっては懲戒処分を検討することになります。

配置転換を拒否された場合の対処法や、業務命令に従わない従業員への処分について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

配置転換の有効性が争われた判例

【昭和59年 (オ)第1318号・昭和61年7月14日・最高裁第二小法廷判決】

事件の概要:
配置転換命令の有効性が問題となった判例として東亜ペイント事件(最判昭和61年7月14日)があります。
この事案は、塗料会社において、使用者が従業員に対して転勤(配置転換)を命じたところ、従業員が当該転勤命令は無効であると主張して提訴した事案です。

裁判所の判断:
最高裁は、転勤命令の有効性について、
① 労働協約・就業規則の根拠規定の存在、頻繁な転勤が実施されていること、勤務地限定の合意がないことといった事情を理由に、使用者の転勤命令権を認めた上で、
② 転勤命令については使用者側の裁量があるものの、裁量権の濫用がある場合には転勤命令が違法となる旨判示しました。

そして、裁量権の濫用があるかどうかについて、転勤命令につき以下のように述べ、本事案における転勤命令は裁量権の濫用がなく、有効であると判断しました。

当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもつてなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではない

ポイント・解説:
本判決は、配置転換の有効性を判断するときは、会社に配置転換を命じる権限があるかだけでなく、その配置転換が権利濫用にあたらないかも確認する必要があるとしています。そのうえで、権利濫用にあたるかどうかは、以下の観点から判断すると述べています。

  • ①配転命令を行う業務上の必要性があるか
  • ②必要性があるとしても、他の不当な動機・目的をもってなされていたり、労働者に著しい不利益を負わせたりするものではないか

自信過剰型のモンスター社員を解雇することはできるのか?

モンスター社員を解雇すること自体は具体的事情によっては可能な場合もあります。
しかし、日本の解雇法制は非常に厳格であり、解雇が有効であると認められるハードルは高いです。
そのため、安易に解雇に踏み切ることはお勧めできません。まず、解雇以外の手段で対応したほうがよいと考えられます。

モンスター社員を解雇し、解雇の有効性が争われた場合、解雇が法的に有効かどうかは、解雇権の濫用に該当するかどうかという観点から判断されます。全般的な傾向として、裁判所は一般に「解雇は最終手段」と考えており、解雇以外の方法によって問題が改善される可能性があるのであれば、解雇は無効であると判断する傾向があります。

懲戒解雇について、詳しくは以下のページをご確認ください。

自信過剰な社員への対処方法におけるQ&A

採用時、自信過剰型のモンスター社員であるかどうかを見破る方法はありますか?

面接での質問内容を工夫することで、自信過剰型モンスター社員かどうか見破れる可能性があります。
例えば、失敗経験や退職理由、チームでの経験について質問し、「上司が悪かった」「会社の体制に問題があった」など、他人や環境の責任ばかりを強調する場合は注意が必要です。

また、チームの成果を自分一人の手柄として語る場合も、自信過剰な傾向がうかがえます。ただし、面接だけでは判断が難しいため、試用期間中の勤務態度も含めて見極めることが必要です。

試用期間中の社員に問題があるときの対応については、以下の記事で詳しく解説しています。

自信過剰な部下にはどのように対応すればよいですか?

自信過剰な部下に対応するときは、感情的に叱ったり、本人の能力や意欲そのものを否定したりしないことが大切です。頭ごなしに批判すると反発を招き、かえって改善が難しくなるおそれがあります。

注意や指導を行うときは、業務実績や勤務態度などの客観的な事実に基づいて、フィードバックしましょう。例えば、「営業成績は目標の120%を達成している一方で、チームへの情報共有が不足している」のように、良い点と改善すべき点を分けて伝えることで、本人も指摘を受け入れやすくなります。

また、定期的に本人と面談し、目標の達成状況を確認することも効果的です。本人が自らの課題を把握しやすくなり、行動の改善につながることが期待できます。

配置転換によって給与が下がる場合、モンスター社員の同意は必要ですか?

配置転換に伴って給与を引き下げる場合は、基本的に従業員本人の同意が必要です。給与の減額は労働条件の不利益変更にあたるため、会社が一方的に行うことはできません。

もっとも、役職や職務に応じた賃金制度が存在し、配置転換によって給与が変動することが就業規則に定められている場合は、本人の同意がなくても減給が認められることがあります。ただし、この場合は、就業規則が従業員に周知されていることに加え、賃金制度の内容に合理性が認められることが必要です。

労働条件の不利益変更についてより詳しく知りたい方は、こちらの解説をご覧ください。

配置転換を重ねてもモンスター社員の改善が全く見られない場合、解雇できますか?

繰り返し注意・指導を行った上で配置転換を行ってもなお、改善が見られない場合には、有効に解雇できる可能性があります。

もっとも、すぐに解雇できるわけではありません。異動後も改善しない場合は、就業規則に基づき、戒告やけん責などの懲戒処分を段階的に行い、改善を促すことが一般的です。

懲戒処分を重ねても問題行動が改まらない場合は、退職勧奨を行い、自主的な退職を促します。それでも退職に応じない場合に、初めて解雇を検討することになります。

解雇を有効に行うには、問題行動や業務への影響、指導内容、改善状況などを踏まえ、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が認められなければなりません。解雇はあくまで最終手段として慎重に検討することが大切です。

自信過剰型のモンスター社員の解雇で、訴訟を起こされた場合の対処方法を教えてください。

裁判を起こされた場合は、まず会社が行った注意指導や配置転換、懲戒処分などの経緯を整理し、対応に問題がなかったかを確認しましょう。

解雇の有効性が争われる場合には、会社側が「なぜ解雇が必要だったのか」を証拠に基づいて説明することが求められます。そのため、指導記録や面談記録、懲戒処分通知書、配置転換に関する資料などを確保しておくことが必要です。

訴訟対応を誤ると会社に大きなリスクが生じるため、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

モンスター社員の正しい対処方法について、企業法務に強い弁護士がアドバイスいたします

モンスター社員への対応で最も避けたいのは、「何もしないこと」と「いきなり解雇すること」です。
問題行動を放置すると、他の従業員のモチベーション低下を招くおそれがあります。一方で、必要な手続きを踏まずに解雇すると不当解雇と判断され、バックペイの支払いなど、会社が大きな負担を負う可能性があります。

そのため、まずは注意や指導を通じて改善を促すことが大切です。また、改善が見られない場合には、配置転換や懲戒処分なども検討し、適切に対応していく必要があります。

モンスター社員への対応は、会社を守るためのリスク管理でもあります。対応に迷ったときは、労働問題を得意とする弁護士法人ALGへお気軽にご相談ください。

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執筆弁護士

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、企業法務担当執行役員を務め、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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