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病気による雇用・労働の差別について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

病気は目に見えず、人々に多くの不安を与えます。「接触すると感染するのではないか」といった不安から、病気がある人をつい遠ざけてしまう方もいるでしょう。

しかし、このような行為は立派な「差別」にあたり得ます。採用や雇用の場面でも、さまざまな法律や指針で差別が禁じられているため、会社として十分注意することが重要です。

本記事では、病気における差別の現状や、偏見や差別をなくすために会社が知っておくべきポイント等を解説しますので、ぜひお役立て下さい。

病気を理由とした差別の禁止

HIVやウイルス性肝炎等の感染者、障害者や難病患者などに対する差別や偏見は、人権侵害にあたり許されるべきことではありませんが、就職など日常生活において、いまだ根強く残っているという現状があります。
しかしながら、労働者の病気を理由に差別を行うことは、障害者雇用促進法など様々な法律や指針によって禁止されているため注意が必要です。

例えば、採用や雇用の場面で禁止される「病気を理由とした差別」の例として、以下が挙げられます。

  • 病気を理由に応募を受け付けないこと、採用を拒否すること
  • 採用基準を満たす者の中から、病気に罹患していない者を優先して採用すること
  • 病気を理由に賃金を引き下げること、低い賃金を設定すること
  • パートタイマーや嘱託等としてしか働かせないこと
  • 研修や現場実習を受けさせないこと
  • 接客業務をさせないこと、清掃業務だけに従事させること
  • 病気を理由に異動を強いること
  • 病気を理由に昇進や昇給をさせないこと
  • 病気を無視して長時間の残業を行わせること
  • 職場内で病気に関する差別的言動を行うこと
  • 優先して退職勧奨の対象にすること、解雇することなど

難病等の病気と労働における差別

難病とは、難病法により、以下の3つの要件を全て満たす病気であると定義されています。

  • ①発病の機構が明らかでない疾病であること
  • ②治療方法が確立していない希少な疾病であること
  • ③長期の療養を必要とする疾病であること

つまり、原因不明の治療が難しい病気で、長期間の療養を必要とする、いわゆる不治の病のことを指します。

しかしながら、昨今の医療の進歩により、難病を抱えながらも定期的な通院・服薬により問題なく日常生活を送れる者が増えており、難病患者であっても、健康管理上の配慮次第で働くことは十分可能となっています。事業主は「難病だから働けない」という偏見を持たず、医師の意見や病状を踏まえ、慎重に判断することが必要です。

また、採用選考時に、難病であることだけを理由に不採用とすることは、障害者雇用促進法が禁止する「差別的取扱い」に当たるため注意が必要です

難病と障害の違い

「障害」とは、日常・社会生活において、継続的に相当な制限を受ける症状をいい、一定の要件を満たせば障害と認定されます。また、障害が認定されると障害者手帳が交付され、様々な福祉サービスを受けることが可能です。

一方、「難病」とは、障害の原因疾病の一つとされています。例えば、パーキンソン病・クローン病といった難病は、肢体不自由・腸の機能障害といった障害を引き起こす原因疾病です。

難病は、症状が重い場合は障害者手帳が交付される場合がありますが、通院や服薬により症状が安定し、交付対象とならないことが通例です。また、難病は障害そのものではないと考えられてきたため、難病患者を保護するための法の整備が進まず、雇用や生活面で難病患者が差別を受けることが問題視されてきました。

しかし、法整備が進むにつれ、難病患者を差別から守るための体制が確立されてきています。
詳しくは後述します。

障害者を雇用する際のポイントについて知りたい方は、以下の記事をご覧下さい。

障害者雇用

障害者雇用促進法による差別の禁止

「障害者雇用促進法」では、事業主に対し、以下の措置を義務付けています。

①雇用における障害者の差別禁止
募集、採用、賃金、配置、昇進、教育訓練など雇用のあらゆる場面で、障害者であることを理由に差別することは禁止されています。そのため、障害者であることだけを理由に、求人応募を拒否したり、低い給与を設けたりした場合は違法となります。

②雇用における障害者への合理的配慮の提供
事業主と障害者で、支障となる事情や必要な配慮について話し合い、事業主にとって過度な負担にならない程度で、合理的配慮(聴覚障害者に筆談で面接を行う、肢体不自由者に対しスロープや手すりを設けるなど)を提供する必要があります。
差別禁止や合理的配慮の提供義務の対象となる障害者は、「身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、その他の心身の機能に障害があるため長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」とされています。障害者手帳の有無にかかわらず、長期間にわたり仕事に制限を受ける者であれば対象者となります。

なお、同法は平成28年に改正され、難病患者についても、差別禁止や合理的配慮の提供義務が課されることになりました。そのため、難病であることだけを理由に不採用・就労不可とすることは、差別的取扱いとして禁止されています。また、事業主は、難病を抱える労働者から環境の改善を求められた場合、過重な負担にならない範囲で配慮することが必要です。

障害者の差別禁止についての詳細は、以下の記事をご覧ください。

障害者への差別禁止

合理的配慮の提供についての詳細は、以下の記事をご確認下さい。

障害者雇用の合理的配慮|障害別の事例や流れについて解説

HIV/エイズへの誤解・労働における差別

「HIV」とは、“ヒト免疫不全ウイルス”の略称です。また、HIVによって発症する“後天性免疫不全症候群”という病気を「エイズ」といいます。エイズはかつて死の病と恐れられていましたが、医療の進歩により、適切な治療を早期に始めることで慢性疾患にまで抑えることが可能になりました。また、血液を介して感染するため、日常の職場生活でHIVに感染することはまずありません。

それでもエイズ患者への偏見は未だ根強く、採用選考や職場で差別を受けるケースも多いのが現状です。事業主は、エイズについて正しい知識を学び、労働者が偏見や恐怖を持たないよう教育する必要があります。また、エイズ患者が適性に応じた仕事を続けられるよう配慮することも重要です。

職場におけるエイズ問題に関するガイドライン

厚生労働省は、平成7年に「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」を発表しました。ガイドラインでは、職場におけるエイズ対策の基本的な考え方を提示し、職場でのエイズ問題に対する自主的な取り組みを促進しています。

また、事業主はこの内容を踏まえ、エイズ問題に関する方針を作成することが推奨されています。ガイドラインで言及されているのは、以下の項目についてです。

  • 労働者に対するエイズ教育
  • HIV検査
  • HIV感染の有無に関する秘密保持
  • 雇用管理
  • 感染予防策

例えば、「労働者の採用選考にあたり、HIV検査を実施しないこと」「HIVに感染していることだけを理由に、就業禁止や解雇の対象にしないこと」「HIVに感染していても健康状態が良好な場合、他の健康な労働者と同様の処遇にすること」等と定められています。

障害の認定について

エイズは、“身体障害者福祉法”における「内部障害」のひとつとして、障害者手帳の交付対象になる場合があります。これは、平成10年の法施行令改正により、内部障害の項目に「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害」が追加されたためです(同法施行令36条)。

また、“障害者雇用促進法”における身体障害にも、「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害」が含まれており(同法施行令27条)、障害者雇用率制度・障害者雇用納付金制度・助成金制度等さまざまな制度が適用される場合があります。

このように、エイズによる免疫機能障害を持つ患者の保護に関する法整備が進められています。

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ウイルス性肝炎への誤解・労働における差別

ウイルス性肝炎とは、肝臓が肝炎ウイルスに感染し、肝機能障害をもたらす病気のことです。母子感染や血液を介した感染、注射器の使い回し等が主な原因のため、職場や通常の業務において感染するとは考えられていません。

また、医療の進歩により、慢性的なウイルス性肝炎であっても、早期に発見し適切な治療をすることでウイルスの増殖を抑えたり、根絶したりすることも可能になりました。

しかし、“感染症”というイメージが強いことや、昔から存在する病気であることから、未だウイルス性肝炎の患者に対する差別は根深いといえます。仕事の場面においては、ウイルス性肝炎を理由に内定を取り消される、解雇されるといった差別が起こっています。

事業者は、ウイルス性肝炎の正しい知識を労働者に普及し、偏見や誤解をなくすよう努めることが求められます。また、ウイルス性肝炎を早期に発見できるような措置を施すことも重要でしょう。

ウイルス性肝炎に罹患している労働者への配慮等

厚生労働省は、ウイルス性肝炎への中長期的な対策の方針として、2011年に「肝炎対策基本指針」を公示しました。
また、ウイルス性肝炎の感染経路について国民の理解が不十分であることや、肝炎患者への不合理な差別があること、感染を自覚していない者が多いこと等も指摘し、事業主に対して「職域におけるウイルス性肝炎対策に関する協力の要請について」も発表しました。

そこでは、肝炎患者が早期に感染を知り、安心して治療を受けられる環境を整備するため、事業主に対し、以下のような対策を講じるよう求めています。

  • 労働者に肝炎ウイルス検査の受診を呼びかけること
  • 検査の受診を希望する労働者や肝炎による入通院が必要な労働者に対し、特段の配慮をすること
  • 検査結果について、プライバシー保護に配慮すること
  • 肝炎の治療と仕事の両立を支援するため、通院に対する休暇の付与など特段の配慮をすること
  • 職場や採用選考時において、肝炎患者が不当な差別を受けないよう、職場に正しい知識を普及すること

障害の認定について

2010年より、身体障害者福祉法における障害として、「肝臓機能障害」が追加されました(同法施行令36条)。
これにより、一定の認定基準を満たした人や、肝臓移植を受けて抗免疫療法を行っている人については、障害者手帳が交付されることになりました。

肝臓機能障害が認められた場合、血液検査等の値に応じた点数や、日常生活の制限の程度などを踏まえた上で、1~4級いずれかの障害程度等級が認定されます。

また、認定された等級により、以下のような措置の対象となる可能性があります。

  • 公職選挙法における不在者投票(1~3級のいずれかが認定された場合)
  • 障害者雇用促進法における障害者雇用率制度や障害者雇用納付金での特別措置(1~2級のいずれかが認定された場合、又は3級の障害を2つ以上有している場合)

肝機能障害者として認定を受けた者には、前述の「障害者雇用促進法」が適用され、事業主に対し、雇用の分野での差別禁止や合理的配慮の提供義務が課されるため、注意が必要です。

ハンセン病への誤解・労働における差別

ハンセン病とは、らい菌に感染することで、皮膚が変化したり、神経が麻痺したりする病気のことをいいます。ハンセン病は、非常に感染力が弱く、感染したとしても発病することは稀で、遺伝することもありません。また、万が一発病しても現在では治療法が確立し、有効な治療薬を使えば、確実に治癒します。

しかしながら、ハンセン病についての正しい知識が周知されなかったことや、療養所への強制入所など国の誤った施策により、ハンセン病患者やその家族への偏見や差別がいまだ残っているのが現状です。

「ハンセン病問題の解決の促進に関する法」では、ハンセン病患者が社会から孤立せずに、豊かな生活を送るための環境整備や、偏見差別のない社会の実現を求めています。

ハンセン病患者が安心して働けるよう、事業主はハンセン病について正しい知識と理解を持ち、従業員にも周知し、採用や雇用の場面で、ハンセン病患者に対し不当な差別を行わないよう注意する必要があります。

採用選考時の病気の把握は違法か

採用選考時に、業務に必要な範囲であれば、応募者に過去の病歴や健康状態について申告を求めたり、健康診断を実施したりすることは法的に可能です。

ただし、応募者に病歴を聞く際には、その必要性を説明した上で、本人の同意を得ることが必要です。また、本人が病歴を答えないことをもって、不採用の理由にすることは望ましくありません。

一方、会社で働く適性や能力を見極める上で明らかに関係のない病気を把握しようとすることは、就職差別にあたる可能性があるため注意が必要です。

なお、行政通達により「労働安全衛生規則43条における雇入時の健康診断は採用選考時の実施を義務付けるものではなく、また、応募者の採否決定のために実施するものではない」と定められていますが、これは採用選考時の健康診断の実施を禁止するものではありません。

また、憲法22、29条による採用の自由の一環として、採用選考時に健康診断を行うことは可能だと認めた裁判例もあります(東京地方裁判所・平成15年6月20日判決)。

採用選考時の健康診断

採用選考時に健康診断を実施する場合、以下の点に留意する必要があります。

  • 応募者の適性や能力を判断するため、合理的かつ客観的に必要といえる範囲で実施すること。
  • 応募者に対して健康診断の必要性や検査内容をしっかり説明し、本人の合意を得たうえで実施すること。

したがって、一律で血液検査や尿検査を実施したり、健康診断書の提出を求めたりした場合、応募者の適性や能力とは無関係な情報を把握することになり、就職差別にあたる可能性があります。

「健康診断を実施すべきかどうか」「どのような検査を行うべきか」については、募集職種や業務内容によって個別具体的に判断することが必要といえます。例えば、運転や配送業務の場合、安全運転に支障をきたすような発作の有無や症状の程度を確認することは、合理的な理由があるといえるでしょう。

病気による差別を防止するための企業の取り組み

病気による差別を防止するための企業の取り組みの例として、以下が挙げられます。

  • 従業員に対する病気による差別禁止の周知と啓発
  • 社内研修や勉強会の実施
  • 上司や同僚への支障となっている事情や配慮事項などの説明
  • ジョブコーチや職業生活相談員など社内外の支援者による啓発や支援
  • 病気差別に対応した相談窓口の設置など

なお、企業は労働者の健康と安全を守るべき「安全配慮義務」を有するため、病気に罹患する労働者の症状が悪化しないよう配慮することが必要です。

例えば、定期通院の時間を確保すること、職務内容や勤務時間等に配慮すること、定期的に産業医等との面談を実施するなどの措置が求められるでしょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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