初回1時間 来所・zoom相談無料

0120-630-807

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません 会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

有期雇用の無期転換ルールとは|条件や注意点などをわかりやすく解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

無期転換ルールは、契約社員などの「有期雇用労働者」が一定期間同じ企業で働いた場合、本人の希望により無期雇用に転換できるルールです。長期的で安定した雇用を確保できるという点で、企業・労働者双方にメリットがある制度です。
ただし、労働者が無期転換を希望した場合、企業は基本的に拒否できない点に注意が必要です。

本記事では、無期転換ルールの対象者や適用要件、導入の流れや注意点などを詳しく解説していきます。

有期雇用の無期転換ルールとは

無期転換ルールとは、同じ企業との有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者からの申込みにより、無期労働契約に転換されるルールのことです(労契法18条)。
適用対象は、平成25年4月1日以降に有期労働契約を締結した労働者となります。

無期転換ルールは、有期雇用労働者が雇止めの不安なく、安心して働き続けるための制度です。よって企業は、労働者からの無期転換の申込みを拒否することはできず、必ず転換に応じなければなりません。

ただし、実際に無期労働契約が開始するのは、現在の有期労働契約期間が満了した翌日からとなります。
申込みと同時に転換されるわけではないため、ご注意ください。

無期転換ルールの対象となる労働者

無期転換ルールの対象は、平成25年4月1日以降に企業と有期労働契約を締結し、契約期間が通算5年を超えたすべての労働者です。
また、契約社員や準社員、パートタイマー、アルバイト、派遣社員など、名称を問わず有期雇用の全労働者が対象となります。

無期転換ルールの特例

高度な専門的知識等を持つ有期契約労働者 5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く期間(上限10年)
定年後に引き続き雇用される有期契約労働者 定年後引き続き雇用されている期間

無期転換ルールには特例があり、以下の者には一定期間「無期転換申込権」が発生しません。

【高度な専門的知識を有する者】

  • 1年間の賃金額が、確実に1075万円を超えることが見込まれる
  • 当該専門的知識を要する業務に就いている
  • 当該業務が、5年を超える一定期間内に完了すると予定されている

これらの要件を満たす場合、当該業務に就いている限り(上限10年)は、無期転換申込権が発生しません。

【定年後引き続き雇用されている者】
定年後引き続き雇用されている間は、無期転換申込権が発生しません。

【大学教員や研究者】
契約期間が通算10年を超えるまで、無期転換申込権が発生しません(通常は5年)。
なお、特例の適用にあたり、都道府県労働局長の認定を受ける必要はありません。

有期雇用を無期転換する企業側のメリット

無期転換ルールは、企業にも以下のようなメリットがあります。

優秀な人材を確保できる

契約期間が長い労働者は、自社の業務や社内ルールに精通しているといえます。無期転換することで、それらの貴重な人材を社内に留めておくことができます。
また、雇い止めの不安がなくなるため、労働者のモチベーションアップや生産性の向上も期待されます。

人材確保のコストを削減できる

有期雇用労働者が契約更新の度に退職する状況では、人材育成にかかった労力やコストが無駄になってしまいます。無期転換すれば、新たな人材確保のために必要な求人広告費や研修費などのコストを削減できます。

長期的な人材戦略を立てやすくなる

無期転換することで社員の定着率が上がるため、企業は長期的な視点で社員の育成を行うことができます。また、労働者も長期的なキャリア形成に取り組むことができます。

無期転換申込権が発生する条件

無期転換申込権は、ある一定の要件を満たした有期雇用労働者に認められる、無期労働契約への転換を申し込む権利です。
無期転換申込権は、以下の3つの要件を満たした場合に発生します。

  • ①契約更新回数が1回以上
  • ②有期労働契約の通算期間が5年を超えている
  • ③同一の使用者との間で契約している

上記の要件をすべて満たす場合、有期雇用労働者から無期転換の申込みがあった時点で、使用者も申込みを承諾したものとみなされ無期労働契約が成立します。
では、以下で各要件の詳細について見ていきましょう。

出典:無期転換申込権の発生・行使の要件について(厚生労働省)

①契約更新回数が1回以上

有期労働契約の更新が1回以上行われていること、つまり、同一の使用者との間で2つ以上の有期労働契約を締結していることが、無期転換申込権の発生要件となります。

②有期雇用契約の通算期間が5年を超えている

同一の使用者との間で締結された2つ以上の有期労働契約の通算契約期間が、5年を超えていることが必要です。

同一の使用者かどうかは、事業主単位(企業や個人事業主等)で判断し、例えば、A支店からB支店に異動するなど事業場を変更したとしても、事業主に変更がなければ、労働契約は継続していると判断されます。

また、通算契約期間5年のカウントは、平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約が対象となります。(平成25年3月31日以前に開始した有期労働契約は、通算契約期間には含まれません)

労働契約期間の通算方法については、以降の項目で解説します。

③同一の使用者との間で契約している

申込み時点で、同一企業(通算5年を超える有期労働契約を締結・更新してきた企業)と契約を締結していることが必要です。
過去に5年以上の有期労働契約を締結していたが、現在は在籍していないようなケースでは、無期転換を申し込むことはできません。

また、企業は、無期転換申込権の発生を阻止する目的で「派遣」や「請負」の形態に偽装することが禁止されています。
勤務実態は変わらないのに、形態を派遣や請負に変更し、労働契約の当事者を“形式上”ほかの使用者に置き換えるような行為は認められません。

このような偽装行為があった場合、同じ使用者との契約が継続しているとみなされ、通算契約期間にカウントされます。

無契約期間の前の通算契約期間が1年以上の場合
無契約期間が6ヶ月以上の場合 有期労働契約とその次の労働契約の間に、無契約期間が6ヶ月以上ある場合は、その無契約期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含まれません(クーリングされます)。
無契約期間が6ヶ月未満の場合 有期労働契約とその次の労働契約との間に無契約期間があったとしても、その長さが6ヶ月未満の場合は、前後の有期労働契約を通算します(クーリングされません)。
無契約期間の前の通算契約期間が1年未満の場合
無契約期間の前の通算契約期間 無契約期間(契約がない期間)
2ヶ月以下 1ヶ月以上
2ヶ月超~4ヶ月以下 2ヶ月以上
4ヶ月超~6ヶ月以下 3ヶ月以上
6ヶ月超~8ヶ月以下 4ヶ月以上
8ヶ月超~10ヶ月以下 5ヶ月以上
10ヶ月超~ 6ヶ月以上

無期転換制度の導入手順

無期転換制度を導入する際は、制度の趣旨や内容を十分理解したうえで、以下のような流れで進めましょう。

  1. 有期雇用労働者の勤務実態を把握する
    有期雇用労働者の人数や職務内容、労働時間、契約期間、更新回数、勤続年数、キャリアに対する考え、無期転換申込権の発生時期などを確認します。
  2. 社内の仕事を整理し、無期転換社員の活用方法を検討する
    社内の仕事内容を整理し、誰にどんな仕事を任せるのか検討します。
    具体的には、「補助的な業務と基幹的な業務」「一時的に必要な業務と恒常的に必要な業務」などと分類し、無期転換社員の仕事の役割などを決定しましょう。
  3. 無期契約労働者・正社員の就業規則を作成・見直しする
    無期転換後の労働条件を検討し、「無期契約労働者用の就業規則」を作成します。
    ただし、この場合、無期転換者を通常の就業規則の対象から除外する必要があります。そのため、通常の就業規則も一緒に見直しを行う必要があるでしょう。

【2024年4月】労働条件明示のルールが改正

出典:2024年4月から労働条件明示のルールが変わります(厚生労働省)

企業は、労働契約の締結時、労働者へ一定の労働条件の内容を明示することが義務付けられています(労契法15条1項)。また、2024年4月の法改正により、明示義務のある労働条件の項目が追加されました。
具体的には、有期雇用労働者の場合、労働契約の締結時と更新時において、更新の内容や上限、無期転換ルールについて必ず説明しなければなりません。

法改正の背景には、「働き方の多様化」という動きがあります。働き方改革の一環として、政府は正社員にとらわれず、多様な人がより柔軟に働ける社会の実現を掲げています。これに対応し、有期雇用労働者が安心して働けるよう、説明義務も強化されたといえます。

また、雇用形態が複雑化すると、労働者との間でトラブルも起きやすくなります。労働条件をあらかじめ明示することで、不要なトラブルの防止にもつながるでしょう。

無期転換の申込みがあった場合の対応

有期雇用労働者から無期転換の申込みがあった場合、企業は基本的に拒否することはできません。よって、申込みがあった時点で企業もこれを承諾したとみなされ、無期労働契約が成立します。
ただし、実際に無期雇用が開始するのは、現在の有期労働契約が満了した日の翌日からとなります。

なお、無期転換を阻止するため、申込み後に当該労働者を解雇・雇止めすることは基本的に認められません。
一方、無期転換後の雇用形態は企業によって異なります。例えば、「正社員に転換する」「職務や勤務地を限定した正社員にする」「契約期間だけ無期に変更する」などの対応が挙げられるでしょう。
また、無期転換後の労働条件は、基本的に直前の有期労働契約と同じものが適用されます。

もっとも、就業規則に定めがあれば労働条件の変更も可能ですが、労働者に不利な内容にならないよう注意が必要です。

有期雇用の無期転換に関する注意点

①無期転換の申込みは拒否できない

無期転換申込権を得た有期雇用労働者が、現在締結している有期労働契約の契約期間が終了するまでの間に、無期転換の申込みをした場合は、企業は申出を承諾したものとみなされ、拒否はできません。
無期転換の申込みの時点で、始期付無期労働契約が成立します。

②無期転換申込権を放棄させることはできない

企業が労働者に対し、無期転換申込権を放棄させることは基本的にできず、以下のような対応は無効となる可能性が高いです。

  • 「無期転換の申込みをしない」という採用条件を設ける
  • 有期雇用労働者に対し、無期転換申込権を放棄する旨の書面にサインさせる
  • 無期転換申込権の発生前に、「給与を上乗せする代わりに無期転換の申込みをしない」と約束させる

ただし、無期転換を行うかは労働者の自由であり、申込権の発生後に、本人の同意を得たうえで権利を放棄させることは問題ありません。

③無期転換前の雇止めは無効

無期転換を免れる目的で、無期転換申込権の発生前に雇止めをしたり、契約期間中に解雇したりすることは、違法となる可能性があります。
不当な雇止めや解雇は、「労働者の雇用の安定を図る」という無期転換ルールの趣旨に反するためです。

また、解雇については厳しく制限されており、合理性や相当性がなければ無効となります。特に、有期労働契約期間中の解雇は通常よりも厳しく判断される傾向があるため、注意が必要です。

なお、有期労働契約の期間や更新回数に上限を設けることは可能ですが、特段の理由なく、無期転換申込権の発生を阻止するためだけに行った場合、不当な雇止めとして無効となる可能性があります。

④問題のある契約社員からの無期転換申込も拒否できない

勤務態度や能力に問題がある社員でも、契約期間の通算が5年を超えていれば無期転換の申込みが可能です。また、企業も特段の事情がない限り、問題社員からの申込みを拒否することはできません。
なお、定年後に契約社員として再雇用された者にも、無期転換申込権は発生します。

しかし、無期転換した労働者には定年制が適用されないため、企業は無制限の雇用が義務付けられてしまいます(就業規則で定年を定めている場合を除く)。
そこで、定年後の再雇用者については、無期転換ルールが適用されない「特例」も設けられています(有期雇用特別法)。

ちょこっと人事労務

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-630-807

受付時間:平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

0120-630-807

平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます