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安全衛生教育とは|種類や内容、注意点をわかりやすく解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働者が安全に働ける環境を作ることは、企業の義務といえます。

労働災害が発生すると、労働者の健康が脅かされるだけでなく、企業も多額の損害賠償責任を負う可能性があるため注意が必要です。特に、「現場での事故」や「過重労働によるうつ病」などは発生しやすいため十分注意しましょう。

これらのリスクを未然に防ぐには、日頃から安全衛生教育を徹底しておくことが重要です。
本記事では、安全衛生教育の実施方法や流れ、注意点などを詳しく解説していきます。

安全衛生教育とは

安全衛生教育とは、労働災害の発生を防ぐため、労働者に職場の安全や健康に関する知識を与える教育をいいます。

事業主は、自社の労働者に対して、必要な安全衛生教育を行うことが義務付けられています。
また、安全衛生教育にはいくつか種類があるため、雇入れ時だけでなく、すでに雇用している労働者に対しても適切に実施する必要があります。

では、対象となる労働者や教育の内容について詳しくみていきましょう。

労働安全衛生法については以下のページをご覧ください。

労働安全衛生法とは|事業者の義務や改正内容をわかりやすく解説

対象者

安全衛生教育の対象者は、業種や職種を問わない「全労働者」となります。また、正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員、日雇い労働者などすべての労働者に対して実施する必要があります。

ただし、「職長等を対象とした教育」など、特定の業種にのみ実施が義務付けられているものもあります(労安衛法60条)。

安全衛生教育の種類

安全衛生教育には、以下の6種類があります。

  • ①雇入れ時・作業内容変更時の教育
  • ②特別の危険有害業務従事者への教育(特別教育)
  • ③職長等に対する教育
  • ④危険有害業務従事者への教育
  • ⑤安全衛生管理者等に対する能力向上教育
  • ⑥労働者に対する健康教育

このうち、①~④の教育については実施が「義務」となっており、⑤⑥については「努力義務」とされています。それぞれ詳しく解説していきます。

①雇入れ時・作業内容変更時の教育

労働者を雇い入れた際や作業内容を変更する際は、当該労働者に対して安全衛生教育を行うことが義務付けられています。
新たな業務に就いたときは労働災害が特に発生しやすいため、あらかじめ教育を徹底しておくことが重要です。

具体的な教育内容について、以下で解説します。

教育の内容

雇入れ時や作業内容変更時は、以下の事項について教育を行う必要があります。

  • (1)機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること
  • (2)安全措置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること
  • (3)作業手順に関すること
  • (4)作業開始時の点検に関すること
  • (5)当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
  • (6)整理、整頓及び清潔の保持に関すること
  • (7)事故時等における応急措置及び退避に関すること
  • (8)前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

ただし、建設業や運送業、その他機械設備や有害物質を扱わない「事務作業」が中心となる業種については、(1)~(4)の教育を省略することができます。
また、上記の事項についてすでに十分な知識を有している者については、該当する教育を省略することも可能です。

②特別の危険有害業務従事者への教育(特別教育)

一定の「危険有害業務」を行う労働者に対しては、その業務の安全や衛生に関する特別教育を行うことが義務付けられています。ただし、その業務について十分な知識や技術がある者については、特別教育を省略できます。

「危険有害業務」の内容は、法律で具体的に定められています。以下でその一部をご紹介します。

  • 研削といしの取替え又は取替え時の試運転の業務
  • 動力により駆動されるプレス機械の金型、シャーの刃部又はプレス機械もしくはシャーの安全装置もしくは安全囲いの取付け、取外し又は調整の業務
  • アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等の業務
  • 対地電圧が50ボルトを超える低圧の蓄電池を内蔵する自転車の整備の業務
  • 最大荷重1トン未満のフォークリフトの運転の業務
  • チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理又は造材の業務 など

なお、特に危険性や有害性が高い業務に就く場合、免許や技能教習などの資格が必要となります(就業制限)。そのため、雇入れ時や配置転換の際は、労働者の資格の有無をしっかり確認しましょう。

危険有害業務については、以下のページも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

労働安全衛生法上の機械・危険物・有害物に関する規制

教育の内容

特別教育の内容は、業務によって科目や時間数が異なります。以下で一部をご紹介します。

  • 研削といしの取替え等の業務に係る特別教育 → 学科7時間、実技3時間
  • アーク溶接等の業務に係る特別教育 → 学科11時間、実技10時間
  • 電気自動車等の整備の業務に係る特別教育 → 学科6時間、実技1時間
  • 伐木等の業務に係る特別教育 → 学科9時間、実技9時間

その他の業務についても、具体的な内容は「安全衛生特別教育課程」などで定められています。

記録の作成・保存の必要性

特別教育を行った場合、事業主は受講者や科目について記録を作成し、3年間保存しなければなりません。

もっとも、この記録は特別教育の免除者を確認する際などにも役立ちます。そのため、実際は3年を超えて保存する企業が多いようです。

また、特別教育を受けた者には「修了証」を交付するのが良いでしょう。修了証は外部の教育機関で受講した際に発行されるものですが、社内でも同様に準備しておくと安心です。

記載事項は、以下の項目が一般的です。

  • 特別教育の内容
  • 交付日
  • 証明者
  • 修了者 など

なお、特別教育以外の教育については、記録の保存義務はありません。
ただし、労働災害が発生した場合などに備え、記録を作成しておくのが望ましいでしょう。

③職長等に対する教育

現場の指揮命令を行う職長等に対し、安全衛生教育を行うことが義務付けられています。
これは、現場のトップが安全管理に必要な知識を身に付け、労働災害を未然に防ぐことを目的としています。

なお、「職長」という名称でなくとも、実質的に労働者を直接指導する者はすべて対象となります。例えば、監督・現場リーダー・工場長なども該当する可能性があります。

実施時期は、新たな職長が就任したときだけでなく、目安として5年ごと、または機械や設備に変更があったときも行うのが望ましいでしょう。

職長等への教育が必要な業種は、以下のとおりです。

  • 建設業
  • 製造業
    ※たばこ製造業、繊維工業、繊維製造業、紙加工品製造業を除く
  • 電気業
  • ガス業
  • 自動車整備業
  • 機械修理業
  • 食品製造業
  • 新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業

教育の内容

職長等に対する教育は、2日間に渡って行われます。また、教育の内容と受講時間は以下のとおり定められています(労働安全衛生規則40条)。

  • (1)作業方法の決定及び労働者の配置に関すること(2時間)
  • (2)労働者に対する指導又は監督の方法に関すること (2.5時間)
  • (3)危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置等に関すること (4時間)
  • (4)異常時、災害発生時における措置に関すること (1.5時間)
  • (5)安全衛生責任者の職務等(安全衛生責任者と兼任する場合)(2時間)

具体的には、作業を行う際の注意点だけでなく、労働災害の防止に関する取り組みや作業の見直し方法などさまざまな教育が行われています。

④危険有害業務従事者への教育

危険性や有害性が高い業務に就く者に対しては、労働安全衛生法に基づき、業務の安全や衛生に関する教育を行う必要があります。この教育の目的は、事業場の安全衛生の水準を向上させ、労働災害を防止することにあります。

ただし、これは「努力義務」なので、実施しなくても罰則は設けられていません。

教育の対象者は、以下のとおりです。

  • 就業制限に係る業務に従事する者
  • 特別教育を必要とする業務に従事する者
  • 上記に準ずる危険有害業務に従事する者

教育の内容

教育の内容などは、以下のように定められています。

  • 内容:労働災害の動向、技術革新の進展等に対応した事項
  • 時間:1日程度
  • 方法:講義、事例研究、討議など

なお、機械設備の変更などがあった場合、その都度教育を行います。その際、運転操作や設備点検に関する実技も教育内容に追加する必要があります。

⑤安全衛生管理者等に対する能力向上教育

「労働災害の防止に向けた業務」を行う者に対し、各人の能力向上を図るための教育を実施する必要があります(労働安全衛生法19条の2)。
基本的に、対象者が初めて該当業務にあたる際に実施します。また、社内ではなく外部の講習を受けさせるのも良いでしょう。
ただし、能力向上教育は「努力義務」なので、実施しなくても罰則を受けることはありません。

対象となるのは、以下の労働者です。

  • 安全管理者
  • 衛生管理者
  • 安全衛生推進者
  • 衛生推進者
  • 作業主任者
  • 元方安全衛生管理者
  • 店社安全衛生管理者
  • その他の安全衛生業務従事者

詳しくは以下の記事をご覧ください。

安全衛生管理体制とは|委員会や管理者の設置についてわかりやすく解説

教育の内容

能力向上教育には、以下の3種類があります。

実施時期 教育内容
①初任時教育 対象者が初めてその業務に就くとき 業務に関する全般的な事項や注意点
②定期教育 業務に従事してから一定期間ごと(目安として5年ごと) 社会経済状況や職場の変化などに対応した内容
③随時教育 機械設備や作業方法に大幅な変更があったとき 社会経済状況や職場の変化などに対応した内容

なお、実施期間は基本的に「1日程度」とされています。
これらの教育を継続的に受講することで、情報がアップデートされ、労働災害防止の効果が高まると期待できます。

⑥労働者に対する健康教育

使用者は労働者に対して、健康教育や健康の保持・増進を図る措置をとるよう努めなければなりません(労安衛法69条)。

健康教育とは、健康の保持・増進を目的とし、労働者個人が健康を維持し、向上するために必要な知識や技能、行動を身につけるための教育です。
代表例として、健康的な食生活や運動習慣などの生活習慣病予防教育、メンタルヘルス教育などが挙げられます。なお、これらは医学的な専門知識を要するため、産業医等に研修を依頼するのも良いでしょう。

特に、近年は仕事によるストレスや過重労働、不健康な生活により健康を害する労働者が増えています。そのため、健康教育は今後いっそう重要なものとなるでしょう。

安全衛生教育を実施する方法

安全衛生教育は、以下のポイントを押さえて実施します。

【実施計画書の作成】
教育の種類ごとに、対象者や実施時期、実施方法、資料などをまとめた“計画書”を作成します。

【実施責任者の選任】
計画書の作成や、労働者への教育、教育記録の保存などを担う“責任者”を決定します。

【教育記録の保存】
安全衛生教育を実施した場合、その内容や結果を記録し保存します。また、受講者には修了証を交付しましょう。

【教育の実施】
実際の労働災害事例などを取り上げ、実態に即した教育を行います。講義方式だけでなく、現場での実技やディスカッションなども行うと効果的です。
また、DVDや動画も活用し、労働者の理解を深めましょう。

【安全衛生教育センターの活用】
国が設置する本センターでは、講師の育成や管理監督者向けの講座などを実施しています。積極的に活用しましょう。

安全衛生教育の指導者

安全衛生教育を社内で行う場合、以下のような者が指導者となります。

  • 総括安全衛生管理者
  • 衛生管理者
  • 安全管理者
  • 業務に精通した労働者 など

もっとも、社内でイチからカリキュラムを作成するのは手間や時間がかかるため、外部の教育機関に委託するのもひとつの方法です。
該当業種の協会や民間企業でも行われているため、自社での対応が難しい場合は利用を検討しましょう。

安全衛生教育に関する注意点

安全衛生教育を実施する際の注意点として、以下のようなものが挙げられます。

教育時間の確保

安全衛生教育の時間をしっかり確保し、担当者が直接教育を行うことが重要です。
企業によっては、労働者にマニュアルを渡しただけで教育を終了させてしまうこともあります。しかし、マニュアルを渡すだけでは本人が読まない可能性があり、どの程度理解しているのか判断することも困難になるため、避けるようにしましょう。

労働時間内での実施と給与

安全衛生教育は、使用者の責任において実施することが義務付けられているものですので、原則として所定労働時間内に行う必要があります。
よって、教育を行う時間は「労働時間」にカウントされ、仮に法定労働時間外に行った場合は、割増賃金を支払わなければなりません。

派遣社員・外国人労働者の教育

派遣社員への安全衛生教育は、派遣元・派遣先どちらが行うのでしょうか。この点、教育の種類によって実施責任者が異なります。下表をご覧ください。

安全衛生教育の種類 実施責任者
雇入れ時の教育 派遣元
作業内容変更時の教育 派遣元と派遣先
特別の危険有害業務従事者への教育 派遣先

また、外国人労働者や技能実習生についても、安全衛生教育は必要です。ただし、外国人労働者は日本語や日本の労働慣行を熟知していない可能性が高いため、以下のような配慮が必要です。

  • 母国語での教育の実施
  • 視聴覚教材を用いる
  • 標識やピクトグラムを活用する
  • 基本的な合図を決めておく など

特別教育以外の教育記録

特別教育以外の教育記録に関しては、法律上保管する義務はありません。
しかし、これらの記録は、仮に労働災害が起きた際、企業がこれまでどのような安全衛生教育を行い、安全配慮義務を果たしていたのか証明するのに役立つ可能性があります。

トラブルを避けるためにも、安全衛生教育に関する記録はしっかり保存しておくのがおすすめです。

安全衛生教育を怠った場合の罰則

安全衛生教育を怠った場合は、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金を科される可能性があります(労安衛法119条1号、120条1号)。

例えば、特別教育を修了していない労働者にフォークリフトを運転させ、大ケガを負わせた大手企業とその社員が、書類送検された事件も発生しています。
安全衛生教育を怠ると、重大な労働災害につながるおそれがあるため、確実に実施しましょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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