初回1時間 来所・zoom相談無料

0120-630-807

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません 会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

育児・介護休業

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

少子高齢化による労働人口の減少対策や女性の社会進出の促進等のために、育児・介護休業法が定められています。

制定からこれまで何度かの改正を経て、事業主にさまざまな措置を講じることが求められるようになってきました。2022年の改正により男性の育休が取りやすくなる等、今後も改正されていく可能性があります。

企業は、これからの改正に対応するためにも、育児休業や介護休業を従業員が取得しやすい環境を整えなければなりません。

このページでは、育児・介護休業法とはどのような法律なのか、事業主が講じるべき措置等について解説します。

育児・介護休業法とは

育児・介護休業法とは、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の略称であり、子供や要介護の家族がいる労働者が、仕事を続けながら育児や介護を行えるようにするために、雇用継続や再就職の促進を目的として制定された法律です。

正社員でなくても育児休業や介護休業を取得することは可能なので、契約社員や派遣社員、パート・アルバイト等であっても取得できます。
また、育児休業や介護休業は国が定めた制度であり、もしも会社で規則が定められていなくても取得できます。

かつては「育児か仕事」、「介護か仕事」という二者択一の状態でしたが、育児・介護休業法は労働者が仕事と家庭を両立しながら長く働き続けられるよう、事業主にさまざまな義務や努力義務を課しています。

育児・介護休業法が制定された背景

育児・介護休業法は、少子高齢化と労働人口の減少への対策として制定されました。
日本では、合計特殊出生率が年々減少しており、高齢化による介護離職も増加傾向にあります。そして、それらの影響で労働人口が減少しており、人手不足に陥る企業や業種が発生しています。

このような社会問題を改善するために、育児・介護をしなければならない労働者の継続就労・再雇用支援を目的としているのです。

育児休業の取得率を上げると、企業のイメージアップや人材の確保につながります。また、新たな発想による生産性の向上や、特定の従業員しかできない仕事を減らしていくきっかけになるため、積極的に取り組むことが望ましいでしょう。

近年では、男性の育休の取得を促進するための法改正が行われており、この取り組みは今後も継続されると考えられます。

育児・介護休業法における各制度の概要

育児・介護休業法によって定められている制度には、次のものがあります。

  • ①育児休業制度
  • ②介護休業制度
  • ③子の看護休暇制度
  • ④介護休暇制度

これらの制度について、以下でそれぞれ解説します。

育児休業制度

育児休業制度とは、労働者が事業主へ申し出れば、子供が1歳になるまで休業を取得できるという制度です。子供が保育所に入れなかった場合には、最長で2歳まで延長可能です。

育休は、母親だけでなく父親も取得可能であり、父母が同時に取得することも可能です。そして、事業主は、従業員からの申出を基本的に拒否できません。

なお、母親は産後56日まで「産後休業」を取得できるので、その後で育児休業を取得します。一方で、父親は出産予定日から育児休業を取得できます。

詳しくは以下のページで解説していますので、ご参照ください。

育児休業

介護休業制度

介護休業制度とは、要介護状態にある親族等を介護するために、要介護者1人につき通算93日を限度として、最大で3回に分割して休業することができる制度です。
ここでいう「要介護状態」とは、「負傷、疾病、または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」を指します。

育児休業と同じく、事業主は基本的にこの申出を拒否できません。また、パート・アルバイト等の非正規社員でも介護休業を利用できます。

詳細は以下のページで解説していますので、ご参照ください。

介護休業制度の正しい知識と会社が取るべき対応

子の看護休暇制度

小学校入学までの子供を持つ労働者が、負傷または疾病にかかった子供を看病するために取得できる休暇が子の看護休暇制度です。

1年度につき5日(子供が2人なら10日)と限りがありますが、事業主はこの申出を拒むことができません。また、この休暇を取得できる子供の症状についても制限はありません。

詳細は以下のページで解説していますので、ご参照ください。

子の看護休暇

介護休暇制度

介護休暇制度とは、要介護状態にある対象家族の介護、または通院等の付き添い、介護サービスの代行等の世話をするために、労働者が1年につき5日(対象者が2人以上なら10日)の休暇を取得できます。事業主は、基本的にこの申出を拒否できません。

また、介護休暇は、近年の法改正により、取得できる従業員の範囲が広がり、時間単位での取得も認められるようになりました。

詳しくは以下のページで解説していますので、ご参照ください。

介護休暇制度とは|改正内容や介護休業との違い

令和3年(2021年)に改正された育児・介護休業法について

育児・介護休業法は、令和3年1月に「子の看護休暇」と「介護休暇」の規定が改正されました。
施行前と施行後の規定は、それぞれ表のとおりです。

施行前 施行後
1日の所定労働時間が4時間を超えていなければ取得できない。 1日の所定労働時間が4時間以下でも取得できる。
半日単位でしか取得できない(1時間や2時間だけ取得することはできない)。 1時間単位で取得できる。

また、以前は1日の労働時間が4時間以上でなければ「子の看護休暇」と「介護休暇」は取得できませんでしたが、改正後はすべての労働者が取得できるようになりました。

さらに使い勝手が良くなるように、令和4年(2022年)にも改正が行われています。

令和4年(2022年)の施行の改正内容

育児・介護休業法は、令和4年(2022年)に次の改正が行われました。

  • ①環境整備や周知、意向確認措置を事業主に義務化
  • ②有期雇用労働者の育児・介護休業取得の要件の緩和
  • ③男性の育児休業取得推進
  • ④育児休業の分割取得

これらの改正について、以下で解説します。

環境整備や周知、意向確認措置を事業主に義務化

令和4年(2022年)4月1日より、本人や配偶者が妊娠・出産したと申し出た労働者に対して、育児休業を取得するかを確認することが義務化されました。

育児休業を取得するためには労働者が申し出なければなりませんが、制度についてよく知らない労働者は取得しないおそれがあるため、育児休業制度の概要や申請先などを個別に周知して意向を確認することが求められます。

このとき、育児休業を取得しないように誘導することは認められていないので注意しましょう。

有期雇用労働者の育児・介護休業取得の要件の緩和

令和4年(2022年)4月1日より、雇用されていた期間が1年未満であった有期雇用労働者について、育児休業や介護休業を取得できるようになりました。
これにより、就業規則の改正が必要になる場合があるため、確認して、改正したときには労働者への周知や労働基準監督署への届出を行いましょう。

なお、無期雇用労働者を含めて、雇用期間が1年未満の労働者については労使協定によって育児休業や介護休業を取得できる者から除外することが可能です。

男性の育児休業取得推進

令和4年(2022年)10月1日より、出生時育児休業(産後パパ育休)が導入されました。
新制度の概要は以下のとおりです。

  • 出生時から連続して育休を取得することの難しい男性が、出生後8週間のうち4週間分について育休を取得できる
  • まとめて4週間取得することも、2分割して取得することも可能
  • 子供が生まれてからすぐに、連続して育休を取得できる男性については、最初から通常の育休を取得することも選択できる

育児休業の分割取得

令和4年(2022年)10月1日より、通常の育休を分割して取得することができます。産後パパ育休と併せると、子供が1歳になるまでに、最大で4回に分割した育休の取得が可能となっています。

育児・介護に関して事業主が講ずべき措置

育児・介護休業法において、事業主が講ずべき措置として、次のものが挙げられます。

  • ①育児・介護休業に関する定めの周知
  • ②育児・介護のための労働時間の短縮措置
  • ③小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置
  • ④育児・介護休業に関するハラスメントの防止
  • ⑤労働者の配置に関する配慮
  • ⑥所定外労働・時間外労働・深夜業の制限
  • ⑦再雇用特別措置等
  • ⑧職業家庭両立推進者の選任
  • ⑨休業取得者の代替要員の確保

これらの事項について、以下で解説します。

育児・介護休業に関する定めの周知

事業主は、あらかじめ育児・介護休業取得者の待遇を定めておき、次に挙げるような事情を知ったときには、それを周知させる措置をとる努力をしなければなりません(育介法21条1項)。

  • 労働者、もしくはその配偶者が妊娠したとき
  • 労働者が家族等を介護していることを知ったとき

ここでいう待遇とは、賃金、配置、その他の労働条件等です。この具体的な取扱いを明示するにあたって、事業主はこれを文書として交付することになっています。

なお、労働者が事業主に対して、自発的に妊娠や介護について知らせやすいように、事業主にはハラスメントの防止措置をとることが求められています。

育児・介護のための労働時間の短縮措置

育児・介護休業法において、子育てや介護をしている労働者のうち条件を満たす者については、それらが容易になるような措置を講じることとされています(育介法23条)。

対象となる労働者の条件は、次に挙げる者のうち所定労働時間の短縮を希望した者です。

  • 3歳に満たない子を養育する労働者
  • 要介護状態にある対象家族を介護する労働者

なお、措置を講じている状態とは、就業規則等で制度化されていることをいいます。

労働時間の短縮措置について、詳細は以下のページをご参照ください。

労働時間の短縮措置について

小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置

事業主は、小学校就学前の子供がいる労働者に対して、労働者の区分に応じて、必要な措置を講ずるよう努力しなければなりません。
具体的には、次のような措置を講じる必要があります。

  • 遅刻や早退ができる制度を作る
  • 配偶者出産休暇を与える
  • 子供の行事のための休暇を与える
  • フレックスタイム制度を導入する

労働者の区分、またそれに応じた措置は以下のようになっています。

労働者の区分 講ずべき措置
1歳に満たない子供を養育する労働者で、育児休業を取得していない労働者 始業時間変更等の措置
1歳から3歳に達するまでの子供を養育している労働者 ・育児休業に関する制度
・始業時間変更等の措置
3歳から小学校就学の始期に達するまでの子供を養育している労働者 ・育児休業に関する制度
・所定外労働の制限に関する制度
・短時間勤務制度
・始業時刻変更等の措置

育児・介護休業に関するハラスメントの防止

育児・介護休業法では、事業主は、相談窓口の設置その他のマタニティ(パタニティ)ハラスメント防止に必要な措置を講じなければならないと定められています(育介法25条1項)。

具体的には、労働者が育児休業、介護休業、その他の制度や措置を利用することによって、上司や周囲から「非正規社員になれ」と言われたり、同僚から「お前だけが楽をしていて迷惑だ」と言われたりして、働きにくくなることがないようにします。これは性別や雇用形態にかかわらない義務です。

また、労働者が相談をしたことを理由に、解雇や不利益な扱いをすることは禁じられています。

具体的にどんな内容がハラスメントに当たるのか等、詳しくはこちらのページをご参照ください。

企業のハラスメント対応と法的義務

労働者の配置に関する配慮

労働者に転勤をともなう異動をさせようとするとき、事業主は労働者の子供の養育や、家族の介護の状況に配慮しなければなりません(育介法26条)。
配慮のない転勤命令等を行うと、裁判などで争われるリスクがあるだけでなく、労働者が退職してしまうリスク等もあるため注意しましょう。

育児や介護を行っている労働者については、例えば次のような配慮をするのが望ましいでしょう。

  • 労働者の状況を把握する
  • 本人の意思を汲む
  • 代替手段がないか確認する

所定外労働・時間外労働・深夜業の制限

所定外労働・時間外労働・深夜業について、一定年齢未満の子供を養育する労働者が申し出た場合に、以下のような制限が設けられています。事業主は労働者の申し出を拒むことはできないため、注意が必要です。

満3歳に満たない子供を養育する労働者が申し出たとき 所定外労働をさせてはならない(所定外労働の制限)
小学校入学前の子供を養育する労働者が申し出たとき ・1ヶ月24時間、1年間150時間を超えて残業させてはならない(時間外労働の制限)
・午後10時から午前5時までの深夜労働をさせてはならない(深夜業の制限)

上記の制限について、詳しくは以下のページをご参照ください。

所定外労働・時間外労働・深夜業の制限について

再雇用特別措置等

妊娠、出産、育児、介護を理由として退職する労働者について、事業主は、希望があれば再雇用をするよう努めなければならないと定められています。

前述の理由で退職した労働者(育児等退職者)が退職の際、復帰可能となったときに再雇用を希望する旨を申し出ていた場合には、求人募集をする前に、再雇用の希望がどうかあるかを確認しましょう。

また、労働者の募集や採用にあたって、再雇用を希望していた育児等離職者に特別の配慮をしなければなりません(育介法27条)。
これについても、女性だけでなく男性労働者も対象となります。

職業家庭両立推進者の選任

事業主は、職場において、職業家庭両立支援推薦者を選任するよう努めなければならないと定められています。

この「職業家庭両立支援推薦者」とは、育児・介護休業法21条から27条に定められている措置、子供の養育や家族の介護を行う労働者の仕事と家庭の両立を図るための業務を担当するものとされています(育介法29条)。

具体的には、

①育児休業・介護休業等の就業規則の作成、周知
②育児・介護休業をしている労働者の職業能力の開発等に関する措置の企画立案、周知
③短時間勤務の企画立案、周知
④転勤をともなう異動をしようとする際の各社員への配慮
⑤育児等離職者の再雇用の企画立案、周知

等です。

休業取得者の代替要員の確保

労働者が育児・介護休業を取得しても問題ないよう、事業主は、有期の代替職員を雇う等、ほかの労働者の配置、雇用を管理する必要があります。有期の代替職員は、休業中の労働者が予定より早く休業を終えても、あらかじめ定められた雇用期間が終了する前に解雇することはできません。

また、育児・介護休業を取得している労働者が職場に復帰したとき、事業主は、原則として元の職またはそれに相当するポジションに復帰させるように配慮しなければいけません。具体的には、次のような点に注意しましょう。

  • 職務上の地位が休業前より下がっていないこと
  • 休業前後で職務内容が異なっていないこと
  • 勤務する場所が同一であること

育児介護休業制度のメリット

育児・介護休業法により、従業員が育休や介護休業を取得しやすい環境を整備すると、従業員にとってメリットがあるのは当然ですが、企業にとってもメリットがあります。

具体的に、企業にとってどのようなメリットがあるのかについて、みていきましょう。

信頼を得られる

育児休業や介護休業を取得しやすい企業になることで、従業員やその家族から「困った状況に陥っても守ってもらえる」という信頼を得ることができます。それにより、企業に対する帰属意識が向上する等の影響が生じると考えられます。

モチベーションアップ

育児休業や介護休業を取得しやすい企業であれば、従業員のワーク・ライフ・バランスが向上し、働き続けることに対するモチベーションが高まります。それにより、従業員の体調や精神状態が良好に維持されて、生産性や業績の向上が見込めます。

企業のイメージアップ

育児休業や介護休業の取得率が高まることによって、働きやすい企業であるというイメージが広まり、企業のイメージアップにつながります。その効果により、優秀な労働者を採用しやすくなる等の良い影響が生じることが期待できます。

各種助成金制度

育児・介護休業法により、従業員に育児休業を取得させたり、育児休業から職場復帰させたりしたときに、企業が両立支援等助成金を受け取ることができる場合があります。

両立支援等助成金には、各種の取組みに対応して、以下のようなコースが設けられています。

  • 出生時両立支援コース(男性の育児休業等取得推進に取り組む)
  • 介護離職防止支援コース(中小企業が仕事と介護の両立支援に取り組む)
  • 育児休業等支援コース(中小企業が労働者の円滑な育児休業取得・職場復帰に取り組む)

育児・介護における不利益取扱いの禁止

育児・介護休業の取得等を理由に、事業主が労働者に対し以下のような不利益扱いをすることは禁止されています。

  • 解雇
  • 降格
  • 減給
  • 不利益な異動
  • 非正規職員への変更の強要
  • いやがらせを行う

これらは、育児・介護休業を取得した男女労働者に対してだけでなく、妊娠・出産した女性労働者に対しても男女雇用機会均等法で禁じられています。

ちょこっと人事労務

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-630-807

受付時間:平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

0120-630-807

平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます